実力派ミュージカル俳優たちが歌わずに挑むイギリス戯曲 舞台『PRIVATE FEARS in PUBLIC PLACES』が開幕
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◆チーム
舞台『PRIVATE FEARS in PUBLIC PLACES』が2026年4月24日(金)、シアター代官山で開幕した。
本作は、イギリスの劇作家アラン・エイクボーンが2004年に発表した作品の日本初演で、小田島創志による翻訳、演出を元吉庸泰が手掛けている。5月24日(日)までの全36公演を2チーム(◆チーム:駒田一、彩輝なお、原田優一、増田有華、稲垣成弥、冨川智加、★チーム:鈴木壮麻、樋口麻美、塩田康平、音くり寿、田中尚輝、山本咲希)で上演する意欲作で、数々のミュージカルで活躍するキャストたちが一切歌わないストレートプレイに臨むという点も開幕前から話題を呼んでいる。両チームの開幕レポートが到着した。
★チーム
ダンとニコラは長年つきあってきた婚約者同士。一緒に住むための部屋探しをするも、ダンは内見に現れず、ニコラはピリつき気味。行きつけのバーで昼から飲んだくれていたダンの相手をするのは、バーテンダーのアンブローズだ。彼の家には寝たきりの父親・アーサーがいて、仕事の間は父の介護を依頼している。その介護を請け負うシャーロットは、昼間は不動産会社で働いている。同僚のスチュワートはニコラの物件担当。一緒に暮らす妹のイモージェンは、兄に内緒でブラインド・デートに出かけている。そのデートの相手は……。この6人の登場人物たちが、それぞれの日常と人生を抱えながらロンドンを舞台に交差していく。
笑いや明るさ、その裏にある怖れや痛みを 個性派キャストが愛おしく表現
◆チーム
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24日(金)に初日を迎えたのは、◆チーム。軍隊を除隊させられ、今は職探し中のダンを演じるのは駒田一。バーテンダーのアンブローズ役の原田優一とのシーンで早くも笑いが起こる。共演歴も長い二人の掛け合いは安定の面白さだが、それぞれが抱えている重荷のようなものが見え隠れするその絶妙な配分にも注目したい。ニコラを演じるのはコメディからシリアスな演技まで定評のある彩輝なお。パートナーに親愛と期待を向けつつ、コントロール仕切れない人間くささをまとった彼女に共感する人は多いだろう。シャーロット役の増田有華は、前半の普通っぽいのにどこか謎めいた雰囲気から、彼女が一気に場の空気をさらう、とあるシーンまでの振り幅の大きさが見事。スチュワート役の稲垣成弥は、現代の若者らしさとキャラクターのような愉快さを持ち合わせ、観客の目を彼が座るソファーに惹きつけた。本作がストレートプレイ初挑戦となるイモージェン役の冨川智加は、弾むような声と動きで妹らしさをフルスロットルで好演している。 ◆チームの登場人物たちは、ちゃんと格好悪い。だけど愛おしい。
◆チーム
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実力派キャストが繰り広げる 思わず笑ってしまうリアルさ
★チーム
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26日(日)には、★チームが初日を迎えた。ニコラ役の樋口麻美は、開口一番、相手をまくし立てる様子が小気味よい。他人事ながら気にせずにはいられないと観客を一気に作品世界に引き込んだ。そのニコラにパートナーのダンを演じる鈴木壮麻は、独特の落ち着いたトーンで会話を重ねるのだが、それが二人の間に生じ始めているズレにも見えてやけにリアルだ。アンブローズを演じる塩田康平は、ナイーブさを隠して飄々としつつも仕事人らしいバーテンダーの動きで笑いを誘う。笑いといえば、シャーロット役の音くり寿は、敬虔なクリスチャンでありながら…という謎めいた人物を軽やかな動きと表情で笑いに変え、コメディエンヌぶりを発揮。スチュワート役の田中尚輝は、不動産会社での対客、対同僚で使い分ける会話のトーンがサラリーマンらしくてリアル。また山本咲希演じる妹のイモージェンはセンシティブな兄との距離感を声のトーンや動きで表現した。 ★チームの登場人物たちは、どこまでもリアル。だから優しい。
★チーム
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ホテルのバー、不動産会社のオフィス、アンブローズと父が暮らす家、ニコラの部屋、スチュワート兄妹が住む部屋、それらにスポットライトが当たると、それぞれの物語が進んでいく。観客は彼らの時間を次々とザッピングしながら観ているようで、自然に登場人物たちを身近に感じることができる。また、約2時間の上演中、キャストは皆、ほぼ舞台上にいる点もユニーク。演技巧者の面々によるマイクを通した声のみのシーンは、日替わりで楽しめそう。
ほんの少しだけ隣で起きているかもしれない物語、そんな風に境界線を感じさせない理由は、観客席側に設置されたピアノの生演奏によるところも大きいだろう。ちなみにストレートプレイと言われたけれど、ピアノもあるし、ひょっとしたら1曲くらい歌うシーンがあるのでは? と思っていたら、やはり誰も歌わない(笑)。とはいえ、開演前には楽しい演出もあるので、時間に余裕を持って劇場に向かうことをおすすめしたい。 6人のこれまでの暮らしとこれからの人生はどう続いていくのだろう。その想像は観客それぞれに委ねられている。2組の違いを確かめたくなるのはもちろんのこと、登場人物たちの背景を考察するためにリピート観劇するのもいい。公演は、5月24日(日)まで続く。
文=演劇ライター 栗原晶子
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