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ピアニスト・ござが語る、「進化」と「変化」をテーマに綴る最新アルバム『Evolution』~アレンジへの想い、デビュー5年の節目に感じる自身の変化とは?

2026.5.19
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クラシック

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国内外で人気を集めるピアニストのござが2026年5月27(水)に、3枚目のアルバム『Evolution』をリリースする。卓越したアレンジ力を持ち、クラシックはもちろん演歌、アニメソングなど、触れた楽曲を“ござ色”に染めてしまう魔術師に、オリジナル曲も収録した新作について、また2026年7月20日(月・祝)に東京・第一生命ホールで開催する『ござ コンサートツアー2026 -Evolution-』の最終公演に向けた心境を聞いた。

3枚目のアルバムテーマは「変化」と「進化」

――3枚目のアルバム『Evolution』がリリースされます。テーマから教えていただけますか。

『Evolution​』には、「進化」や「変化」という意味があります。「進化」については、今までのアルバムで培ってきた僕のアレンジ力や演奏力の進化を感じてもらえる内容にしたいという想い、そして「変化」は、元々ある曲が変化し別のものになる様を楽しんでいただきたいという想いを込めています。

――1曲目の『エチュード幻想曲』(『黒鍵』~『別れの曲』~『木枯らし』~『革命』)から変化に富んでいます。2枚目のアルバム『Fantasia』でもショパンの楽曲22作品をつなぐ大胆な『CHOPIN SYNDROME』という曲がありました。

ライブツアーで『CHOPIN SYNDROME』を演奏する度に、「この発想、結構面白いな」って自分でも思っていて。これを活かして次も、と作ったのが『エチュード幻想曲』です。『CHOPIN SYNDROME』は激しめだったので、今回は癒し系な感じで。ショパンのエチュードは、元々激しくて速い曲調が多いので、それを変化させることでコントラストが生きてくるかなと、原曲とは全く違った明るい曲調にしたり、落ち着いた雰囲気を出す工夫をしたりしました。

――前回のアルバムでは、「レコーディング中のライブ感を大切にした」とお話しされていました。今回最も大切にされたことはどのようなことでしたか?

『THE GARDEN OF EVERYTHING 〜電気ロケットに君をつれて〜』などYouTubeチャンネルで演奏動画をあげたことがある曲については特に、その時とは違った側面を出せたらと考えていました。アルバムと動画で別のものをお聴かせしたいという気持ちで作っていきましたね。

――リスナーが最も「変化」を感じられる曲はどの曲だと思いますか?

『家路』かなぁ。レコーディングより前に別の企画で弾かせていただいたのですが、そこでは即興演奏みたいな形で弾いていたので、僕自身も当時の演奏を覚えてないんですよ。なのでそれともまた違ったアレンジになっています。

デビューからの5年で変化を感じることは

――デビュー盤『EnVision』をリリースしたのは2021年でした。この5年間の中でご自身が変化、または進化したと感じているところはどのようなことでしょうか。

演奏してる最中に、「今こういう風に聴こえているな」みたいな、お客さんの耳を感じられる瞬間ができたことです。演奏者の視点と聴き手の視点は本来は違うんだけれども、まるで一致したかのような感覚になる時があるんです。そういう目線で曲作りをできないかと思い、完成させたのが今回のアルバムです。

――演奏中にご自身と聴き手の感覚とが一致するというのは、どのような感覚なのでしょうか。

自分で弾いてるけれど、他の人が弾いてるみたいな感覚なんです。視覚的には鍵盤が見えるんだけれども、指は勝手に動いてるみたいな……そんな瞬間がたまにあるんです。

――ゾーンに入っている感覚ですか?

そうですね、近いと思います。演奏してしばらく経たないとその感覚にならないし、こういう感覚を最初に覚えたのは、デビューしたての頃だったかなぁ。ネットの活動中心だった頃には無くて、恐らく、舞台上で演奏するという集中が求められる環境に置かれた時に、そういった意識が芽生えたのかなと思いますね。集中した先にあるものというか。最近は(公演の度に)その感覚を持てることが多いので、いい演奏ができてるんじゃないかなと思います。

この感覚のおかげで、より客観的に自分の演奏を見られるようになりました。だからこそ、どういう音を弾いたらお客さんが喜ぶのか、も分かるようにもなったんですが、そうすると、「アーティストとして表現したいこと」と「お客さんが喜ぶこと」とのバランスを取ろうという意識が芽生えてきました。これもまた、成長の1つなんじゃないかなと思います。

――音楽以外では、変化や進化を感じることはありますか?

少しずつ遠出ができるようになりました(笑)。今、ツアー中なんですけど、先日は北海道に行った帰りに函館に寄って海の幸と五稜郭を楽しんで温泉でゆっくりしました。修学旅行ぐらいでしか飛行機に乗ったことがなかったので、自分としては想像もできなかったことなんですけど。ここ数年仕事で飛行機に乗る機会が増えて、不甲斐ない話なんですけど、ようやく国内線ですけど一人で飛行機に乗ることができました。旅って見聞が広がるし、アーティストとしても良い作用があるんじゃないかなと思っています。少しずつ落ち着きも出て、以前は全力で演奏するのが良いことだと思っていたんですが、程よく力を抜いた演奏にも良さがあるなと、ここ数年は感じられています。

クラシックの長き伝統の中にある「Evolution」

――ござさんは、クラシックの曲を自分なりにアレンジされることが多いですが、昔の作曲家もリスペクトを持って別の作曲家の曲をアレンジしていました。ご自身もそうしたアレンジの歴史の延長線にいるという感覚がありますか?

例えばロマン派の時代、リストがパガニーニのヴァイオリン曲をピアノ用にアレンジしたようなことですよね。感覚は、ありますね。そういう意味では、今回のアルバムは、クラシックにおけるアレンジの伝統の延長線上にある現在地点……進化の歴史の一時点とも言えるのではないでしょうか。何百年を俯瞰した先にいる、自分なりの「Evolution」ですね。

――そうした自分なりのアレンジ楽曲を、ライブで演奏する奏者はいても、作品として楽譜やアルバムに残す奏者はあまりいないですよね。クラシックの歴史の中で破ってはいけない、「御法度」みたいなものもあると思うのですが、覚悟を持ってそこに挑戦した、ござさんだから見えた景色もありますよね?

そうですね。アレンジしすぎは良くないなという意識もあるんです。そのバランス感覚を持ちながらやっていきたいとは思っていて、そういった意味で1番挑戦だったのが『エリーゼのために』でしたね。

――2曲目の『エリーゼの変容』ですね。

はい、ベートーヴェンのアレンジってなかなかやってる人がいないんですよ。『エリーゼのために』という誰でも知っているクラシックど真ん中の曲をアレンジすることは僕にとって大きな挑戦でした。ある程度の「必然性を感じるアレンジ」を目指して、時間をかけて各所のアレンジ理由を追求しながら作り、バランスをとっていきました。ちょっと民族調のアレンジをしたのですが、自分の中で満足する完成度なったかなと思います。

――エキゾチックで魅力的な作品でした。

そうなんです。エキゾチックな雰囲気、民族調のアレンジって、これまでのアルバムでは入れてこなかったのですが、実は結構好きで得意なので、今回入れられて良かったです。

『エリーゼのために』って、初めてピアノに触る人も弾きたくなる憧れの曲だと思うんです。だから、原曲の先に、「この曲(アレンジ版)も弾いてみたい!」という思いが芽生えてくれたらいいなと思っています。これはYouTuber的な視点なんですけど、配信で演奏している人が弾いてみたくなるアレンジをしているので、目に留まったらいいなぁと。

「全部拾う」をコンセプトにしたアレンジ

――アルバムでは、菅野よう子さんプロデュースの『The Garden of everything ~電気ロケットに君をつれて~』も印象的でした。原曲は坂本真綾さんと、スティーブ・コンテさんの掛け合いが美しい曲でしたが、歌詞がなくピアノ1本で揺れ動く心情を表現されているところに圧倒されました。

そうですね、この曲はそこが難しいところでした。この曲のアレンジを始めたのは2010年代くらいからで、その時も難しさを感じていたんです。当時の演奏も動画にあげているんですけど、弾くだけで精一杯みたいな感じでした。今回は技術的にも余裕を見せたいと思って考えていきました。

――2013年に配信された動画も今年に入って演奏された映像も、どちらも、ござさんのYouTubeで視聴できますね。

2013年当時は電子ピアノの音色で弾いてたので、改めてグランドピアノで収録したいということで、再挑戦の意味合いもありました。この曲は、前半はかなりバラードに近くて、後半は逆に疾走感が出てくる。なので、前半はのびのびと歌うような表現をそのままピアノで表していくことをコンセプトにして、左手が忙しくなる後半は、両手のバランスの中でリズムを表現して、その上にメロディーが乗っかっていくという構造を考えながら組み立てて弾いています。

【再カバー】THE GARDEN OF EVERYTHING 〜電気ロケットに君をつれて〜 12年ぶりに弾いてみた

――アルバムの最後に収録されている『宝島』にも驚かされました。この曲は大きく分けると「吹奏楽」と「T-SQUARE」のバージョンがありますが、ござさんのYouTubeではそれぞれポイントとなるところを抑えていて言葉を失いました。

この曲は今回最も苦戦した曲でした。複雑な楽器構成曲は本来は捨てる音が出るはずですが、「なるべく捨てない」「全部拾う」をコンセプトにして作っています。

――サクソフォン奏者なら誰もが憧れたり目標とするソロパートがありますし、構成は難しかったと思います。

実は僕自身、中学、高校と6年間ぐらい吹奏楽をやっていたので、この曲への思い入れがあって。中学でクラリネット、高校ではユーフォニアムと学生指揮者をやっていて、『宝島』も演奏したことがあります。自分のパートの音が聞こえてきたらうれしいだろうな、と思って、そういう想いにもなるべく応えられる演奏にしたいという気持ちがありました。

卒業後フュージョン曲としてこの曲を聴く機会が増えてきたとき、演奏していた当時とは異なる良さもわかるようになってきました。大人になるにつれ変わったイメージも含めて、現在の自分なりの『宝島』を形にしたいなという気持ちで弾きました。

――現在のござさんが表現した『宝島』はどのような曲になりましたか?

元吹奏楽部員としては、やっぱりこう〝重めの感情〟で聴いている人が多いと思うんですけど、僕自身は自分の中に新たな思い出が刻まれたなという気持ちです。爽やかな曲なので、爽やかに演奏したいですし、僕自身の吹奏楽時代の思い出や思い入れみたいなのが、少しでも伝わればと思います。

――最新アルバムにはオリジナル曲『忘れられた街』も収録しています。

普段はメロディーが降りてくることはないんですけど、この曲に関しては地元を歩いている時に、ふと降りてきたんです。情景が浮かんできて、それとセットで冒頭のメロディーが浮かんだ感じです。そのメロディーをメモって、家に帰って続きを作りました。タイトルにある『街』は具体的な場所があるわけではなく、こういう街に行きたいな、というイメージです。賑やかじゃないけど風情があるとか、廃墟みたいなところでもいいですし。その辺は聴いた人の想像にお任せします。

次の5年の目標は?

――アルバムジャケット、スタイリッシュな衣装に目がいきました。

前回はイラストでしたが、初心を大切に。デビューアルバムと同じ実写に戻ってきました。とあるホテルのピアノがあるスイートルームをお借りしたんですが、めちゃくちゃ大きい部屋で、ビックリしました。

今回はフォーマルな装いで考えて、衣装は準備していただいたものですが、「おぉ、こういう感じも似合うな」と我ながら思いました(笑)。メイク中って、メガネを外すじゃないですか。そうすると全然見えないので、何が行われているか分かんないんですよ。で、出来上がった時にメガネをかけてビックリするっていう(笑)。

今回は背景がダークな色合いで、これまでこういう世界観で撮影をしたことがなかったので、新鮮な驚きがありましたね。楽しいサプライズ。刺激的でした。

――アクセサリーは私物ですか?

準備していただいたものです。こういうのをね、自分からつけられるような、人間になりたいです。こういう撮影をするたびに、自分の中でのファッションセンスみたいなのを磨かせていただいてるような感覚があります。今回も本当に勉強になりました。

『Evolution』ジャケット写真

――ござさんのファンの方はござさんの演奏に癒されてますが、ござさんにとっての癒しはどのようなことですか?

最近引っ越しまして、ちょっとだけ部屋が広くなったんです。新しい家にも少しずつ慣れて、リラックスできるようになったので、新しい家、新しい環境が僕にとっての癒やしです。自炊もマメにするようになって、生活の質が良くなりました。最近は〝納豆鍋〟がお気に入りです。

――5年という節目を迎えて、今後目標にしたいことなどはありますか?

 今回のアルバム制作の過程で新しい着想を得た部分もありますので、それを今後の活動に活かしていきたいです。他のアーティストさんから刺激を受けることも多くて、その刺激が今回のアルバムに集約されているので、今後も出会いを大切にしながら活動を続けていきたいです。

――ござさんのYouTubeチャンネルには、海外の方からのコメント投稿も多いですが、国外での活動についてはいかがでしょうか?

海外……。無事に帰ってこれるかな。でも機会があったら行ってみたいですね。

――ツアーは今後、兵庫、静岡、愛知公演を経て、最終公演は7月、東京・第一生命ホールで開かれます。

ここ数年で、旅自体が楽しみになってきて、ツアー先でその土地の名物を食べたり、街並みに触れたりすることを楽しめるようになりました。散歩が好きなので、風景や街の空気を感じることを楽しみにしています。ツアーでは、その地域のファンの方々と会えることを楽しみにしています。

最終地の第一生命ホールは昨年も立たせていただいたのですが、すごく弾き心地が良い会場でした。音が遠くに飛んでいく感じがしたので、再び演奏ができることを光栄に思いながら、臨みたいと思います。

取材・文=翡翠 撮影=iwa

リリース情報

3rd ALBUM『Evolution』
2026.05.27 発売予定
 
価格:3,300円(税込)
規格番号:em-0050
 
収録曲
1. エチュード幻想曲
2. エリーゼの変容
3. 間奏曲
4. ハミングがきこえる
5. THE GARDEN OF EVERYTHING 〜電気ロケットに君をつれて〜
6. ワルツ第1番
7. 家路
8. 「名探偵コナン」メイン・テーマ
9. 忘れられた街
10. 「津軽海峡・冬景色」によるパラフレーズ
11. 宝島
 
ハミングがきこえる 作詞者名:さくら ももこ 作曲者名:小山田 圭吾
(C)1996 by FUJIPACIFIC MUSIC INC. & NAOS CO., LTD.
THE GARDEN OF EVERYTHING 〜電気ロケットに君をつれて〜
(C)2003 by Victor Music Arts, Inc. & Meow on the Bridge Inc.
「名探偵コナン」メイン・テーマ
(C)1996 by YTE LTD. , TMS MUSIC CO.,LTD., GIZA MUSIC,INC. & GRACE
津軽海峡・冬景色 作詞:阿久悠/作曲:三木たかし
(C)1976 by HORIPRO INC.
「TAKARAJIMA」 作曲:和泉 宏隆
(C)1986 by Sony Music Artists Inc.
 
▼詳しくはこちら
https://eplusmusic.jp/release-32

公演情報

『ござ コンサートツアー2026 -Evolution-』(今後の公演)
 
【兵庫】
2026年5月30日(土)開場 12:45 / 開演 13:30
あましんアルカイックホール・オクト
 
【静岡】
2026年6月13日(土)開場 13:00 / 開演 13:30
札の辻 CROSS HALL
 
【愛知】
2026年6月14日(日)開場 13:30 / 開演 14:00
今池ガスホール
 
【東京】
2026年7月20日(月祝)開場 13:00 / 開演 14:00
第一生命ホール

料金
全席指定 5,500円 ※未就学児の入場は不可
 
【主催・企画】Pubchair / ライブエグザム
【制作】ライブエグザム
【協力】兵庫公演:ティーエーエヌジー