太鼓芸能集団・鼓童の平田裕貴(演出)と小川蓮菜にインタビュー 創立45周年を記念した浅草公演『遥か-』の見どころや未来への思いとは

2026.6.6
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(左から)平田裕貴、小川蓮菜

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太鼓芸能集団「鼓童」が、2026年6月24日(水)〜28日(日)に創立45周年を記念した公演『遥か-』を東京・浅草公会堂で開催する。SPICEでは、同公演で演出を務める鼓童の平田裕貴と、出演する小川蓮菜にインタビューを敢行。14度目を迎える浅草公演の見どころや、鼓童の未来について聞いた。

【PV】鼓童「遥か-」Kodo “Elysian”

ーー浅草公演から、鼓童創立45周年を記念したツアーが始まります。演出のテーマから教えていただけますか。

平田:今回の公演は“祝福”をテーマに置いています。とにかく明るい鼓童の公演をお届けしようと、45周年という節目を祝う公演にすることはもちろんなのですが、それだけでなく、シンプルに全ての命が祝福されるような。陽のエネルギーに包まれたステージにしたいと思っています。

ーー小川さんは、「祝福」というテーマの公演についてどのような印象を持ちですか?

小川:そうですね。私にピッタリだなって思いました(笑)。メンバーに選んでいただいたからには、自分が出せるエッセンスを最大に出していきたいなって思いました。

平田:小川は、鼓童の元気印ですから。

小川:はい! エネルギーを出し尽くしたいです!

ーー浅草から始まるツアーは、どのような構成になっているのでしょうか?

平田:休憩を挟む2部構成で、本編は90分。12曲ほど演奏する予定です。最初は全編を通じて明るい鼓童にしようと思っていたのですが、考えていく間に少しずつ変わって、最終的には、第一幕は「喜びに満ちた理想の世界」を表現して、第二幕では、その世界を実現するために立ち上がり、手を取り合って理想に向かっていく。その力強さみたいなものを表現したいです。

ーー喜びと、そこに至るまでの困難を表現しようと思ったのはなぜですか?

平田:昨年の12月に大阪城ホールで行われた、『サントリー1万人の第九』に鼓童もゲストとして出演させていただく機会がありまして、この公演に参加させていただくにあたって、ベートーヴェンの『第九』について勉強したんです。学んでいく中で、「苦悩を通じて歓喜へ」というストーリーがあるということを知り、すごく影響されました。鼓童でもその世界を描いてみたいと思いました。

平田裕貴

ーー第一幕、第二幕それぞれの見せ場についても教えて下さい。

平田:一幕は2つあります。鼓童の中で特に人気がある「彩(いろどり)」という曲を演奏します。高い人気があるのですが、最近の公演ではあまり演奏していなくて、今回は45周年ということもありますし、満を持して演奏しようというのがひとつ。2つ目は、今回の公演の象徴的なシーンのひとつでもあるんですけど、「伊勢大神楽」という芸能を元にした新演目に挑戦します。「伊勢大神楽」は神楽とついていますが、曲芸的な要素も強くて、そこに今回のメンバーでトライしていきます。

ーー肩の上に飛び乗って演奏する場面もありますし、アクロバティックな要素が強いですね。

小川:そうですね。肩に乗って、降りるところまで見ていただきます!

平田:僕ら「鼓童」として太鼓を叩いていますが、各地の伝統芸能を学び、それをベースに創作させていただく側面もあり、今回は「伊勢大神楽」にトライすることに決めました。稽古をつけてもらいながら自分たちでも練習をして、いま演目を創っているところです。

ーー今年「伊勢大神楽」に着目したきっかけは?

平田:実は15年ほど前にも鼓童で2年間ぐらい、「伊勢大神楽」を元にした演目がありました。僕らの大先輩の頃にすでに創られていたのですが、その後誰もやることがなくて。でもその演目を僕、中学生ぐらいの時に客席で見ていて、それがすごく印象に残っていたんです。そこから時が経って、自分が鼓童に入り演出をするようになったこと。あとは、2023年のツアー中に、私ではないんですけど、他の鼓童のメンバーが「伊勢大神楽」の社中の方と偶然、喫茶店で一緒になって知り合いになるということがありまして。つながるべくしてつながった縁を、いつか形にしたいと温めて実を結んだのが今回のタイミングになりました。

ーーありがとうございます。続いて2幕での見どころも教えて下さい。

平田:二幕は鼓童の極めてクラシカルな部分と、最先端の鼓童のコントラストが際立つものになっていると思います。そのギャップを面白がって見ていただけたらうれしいなと思っています。

ーー45年の伝統を継承しつつ、それぞれのバックボーンをいかした最先端の鼓童を創っていく。二幕の中には、伝統と革新を体現する皆さんの姿も重なりますね。

平田:まさにそういうステージになると思います。二幕の冒頭では、新曲を2曲演奏するのですが、図らずも拍子感がすごく独特な楽曲になっているんです。いわゆる変拍子を取り入れるなど、トリッキーな曲が2曲生まれたのは、難しくしようと意図したものではなくて、そういうものが今の鼓童のメンバーの中にあるものなのかなって。それぞれ作曲者は違うんですけど、体の中にあるリズム感っていうのが現れた結果がそうだったという。本当に計らずしてなんですけどね。トライしてるエッセンスもそうですし、僕らは旅をしているので、旅する先で出会ったものとの掛け算が、それぞれの中で起き続けているというのは、大きいと思っています。

創立45周年記念 鼓童 浅草公演2026『遥か-』

ーー話が少しそれますが、初めて行った海外の場所で、その地に根付いている楽器や音楽の音が懐かしいと感じることや、共鳴することも多いですか?

平田:結構ありますね。

小川:そうですね。なんか楽しいなとか、どうしてこれはこんなに共鳴しているんだろうみたいなことは結構ありますね。同じ打楽器の人だと、特にそういうことは感じます。

ーーツアーの初日は浅草公会堂です。同所での公演は今回で14度目になりますが、同ホールの良さについてもお話しいただけますか?

平田:客席にいて音に包まれるみたいな感覚になれる。太鼓の音に包まれるという感覚がすごく強い劇場です。

小川:お客様との距離感が近いところが魅力だなと感じています。劇場も街の中にある“小屋”という雰囲気がありますし。私は公会堂で演奏するのは、今回が2回目なんですけど、自分が小さい時にあこがれていた鼓童の中に自分がいて演奏していることが新鮮ですし、それは何回ステージに立ってもそのうれしさは変わらないので、浅草のステージに立てるよろこびを伝えたいと思っています。

ーー小川さんが鼓童に魅了されたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

小川:最初に鼓童を知ったのは、小学校3年生の時でした。私は岩手出身なので習い事というか地域の活動みたいな感じでやっていました。東日本大震災の時に鼓童を見る機会があったのですが、震災の時に聞いた“ガタガタ”という音が太鼓の音に似ていて、恐怖がよみがえったことで、太鼓に対して良いイメージを持てなくなり、太鼓に興味がなくなる時期がありました。その後、高校2年生の時に、学校の芸術鑑賞に鼓童が来て、その時にビビっときて、もう一度やろうとその日に決めました。それまでは教員になろうと進路も決めていましたが、鼓童の演奏を聴いた30分後くらいに、担任の先生に「進路を変えます」と言いに行きました。

ーーすごい決断力ですね。

小川: 私の両親は、小さい時から何でもやりたいことをやらせてくれていたんです。人見知りをせずに、なんでも挑戦してきたんだから、その道筋をブレずにいこうと。太鼓の音にすごく心が揺れたことも大きかったです。震災の後に見た鼓童と、高校2年生の時に見た鼓童というのは、自分が成長していることもあって感じ方にも違いがあったと思います。本当にビビッときて。叩きたい! って。どうしてこの人たちはこれだけ人を感動させる演奏ができるんだろうって。今もその答えにはたどり着いていなくて、それを探してモヤモヤする時もあるんですけどね。

小川蓮菜

ーー真剣に向き合われているからこその悩みですよね。すごく素敵だなと思います。平田さんは演出家として、大切にされていることはどのようなことがありますか?

平田:僕は演奏もしますので、演出家と演奏者ではなく、同じ演奏者というフラットな目線と、その関係性の中でクリエーションをしていけることが、強みというか良さかなと最近感じています。奏者の体の個性や、奏法などが分かるので、奏者の個々の魅力をピックアップして、それぞれが生きる演出をしたいと思っています。そのためにも普段の関係性というのは大きいなと思っています。基本的にはすごいストイックなんですけど、底抜けに明るい部分も持っている。今回は祝福というテーマに乗じて、みんなの本性を露わにしてやろうと思ってディレクションしています(笑)。

ーー小川さんの個性がいきる場面、注目ポイントを教えて下さい。

小川:私の! っていうところじゃなくても大丈夫ですか? 今、裕貴さんが言っていた、「メンバー一人ひとりの良さ。おいしいところを引き出している」のが、今回の公演の良さだと思っています。なので、この曲はこの人っていうよりも、それぞれの曲の中に、個々が生きる場所があるので、そこを見てほしいです。公演中に言葉を発することはないんですけど、全て見終わった後には、一人ひとりの自己紹介を全部聞いたみたいな色が見られると思います。浅草は16人でやるので、終わった後には16人の顔がパッと思い浮かぶような、体に刻まれるものになると思います。

ーー公式サイトに、「創立45周年の節目に、未来へ向けて… 心躍り、喜び溢れる、希望の音をお届けします」というスローガンが記されています。未来への思いも聞かせていただけますか。

平田:僕は太鼓という楽器そのものの音が、そこにいる人が共感しやすいと感じています。“ドン”という音の響きに引きつけられ、さらに空気の振動を感じることができる。集まってる人たちを繋いでいく力がすごく強い楽器だと思うんです。この楽器と一緒に世界を旅して思うのが、人と人という点を繋いでできた線が円になって、その円がどんどん大きくなるということ。ひいては理想の世界になっていくみたいなというのは、太鼓とか音楽が直接それを作れるわけじゃないですけど、そのきっかけにはなりうるなというのを信じてやっています。表現の仕方は変わっても、そういう使命を胸に持っていたいと思っています。

小川:鼓童のメンバーは、研修所で2年間カリキュラムを学ぶのですが、それは45年間の中で変わらずに続いてきたことで、それを経験してる人が今舞台に立っているんです。入所した時期が変わっても研修所で過ごした時間、思いは共通していて、そういうものがあるからこそ、同じ気持ちでステージに上がることができるんですよね。今回浅草で演奏する『彩』は、昔のメンバーと、今のメンバーとで演奏が違うという人もいるかもしれないけれど、時代が変わっても変わらない精神があることを未来にも繋いでいきたいです。

(左から)平田裕貴、小川蓮菜

ーースローガンの中のひとつ。「心が躍る瞬間」について、それぞれ教えて下さい。

小川:いっぱいありますけど、鼓童には太鼓好きが集まっているので演奏中に、音で会話しているなっていう瞬間ですね。やっぱり顔にも音にも溢れているので、心踊ってるなって思いますね。

平田:僕もほぼ同じようなことを考えていました。演奏中に、台本になかったことを、誰かが繰り出してきた時に、その演奏がすごいイケていたりとか、自信を持って出してきたものが炸裂した時が、僕はすごい心躍るなって思います。

ーーお2人とも、太鼓にまつわるお話しでしたね(笑)。最後に浅草公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

平田:浅草での公演は、鼓童としてもすごい特別な公演です。いつもあたたかく歓迎してくれるホームのひとつだと感じてやっています。全ての公演を100パーセントの気持ちでやっていますが、人間が演奏してるので、特別な思いのある場所というのは、さらに特別なエネルギーが出てくると思っています。ぜひ一緒に体感してもらえたらうれしいなと思います。

小川:公演を見て下さった人の人生が、公演後も輝き続けるように思いを込めて演奏しようと思っています。浅草は、祝祭の1日目。そのスタートとしてふさわしいと感じてもらえるような作品になっているので、ぜひ劇場に来てそれを感じていただきたいです!
 

取材・文=翡翠

公演情報

創立45周年記念 鼓童 浅草公演2026『遥か-
 
日程:2026年6月24日(水)〜28日(日)
会場:浅草公会堂
 
出演
演出:平田裕貴(鼓童)
出演者(予定):見留知弘、阿部好江、小松崎正吾、地代純、三浦康暉、北林玲央 、米山水木、小平一誠、吉田航大、詫間俊、定成啓、野仲純平、廣嵜一馬、小川蓮菜、木村優月(準メンバー)、舩倉瑠生(準メンバー)
 

S席:¥7,500
S席(U25):¥3,500
A席:¥5,500
A席(U25):¥3,500
 
公式サイト https://www.kodo.or.jp/
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