らそんぶる、夢を見続けるために対峙した弱さと現実「初期衝動で終わらせちゃいけない!」
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らそんぶる
心のピースを探しに
2026.5.31(SUN)東京・恵比寿LIQUIDROOM
「軽音部に入って、小さくて暑い部室で鳴らした全然格好良くない音。だけど、その時の私にとっては、それが凄く格好良かった。あの時の初期衝動に背中を押されてるなと思います。だけど、この景色を見たら、初期衝動で終わらせちゃいけない! ずっと続けていきたいって思いました」
ライブも折り返しに差し掛かる頃、そら(Gt, Vo)はこう口にした。
2026年5月31日(日)、らそんぶるが東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催したワンマンライブ『心のピースを探しに』。1月に世へ放った2ndミニアルバム『心の隙間を埋めるのは』を携え、東名阪を回ったツアーの最終日、彼女たちは右も左も分からなかった新米バンドマンを大きく飛び出し、この言葉通り、確かに骨太になった音楽家としての自負を示してくれたのである。
その逞ましくなった雄姿は、今作のアートワークとも呼応するパズルピースのモニュメントやシェードランプが配された舞台に鳴りはためいた開幕曲「ロングヘアー」から照然と表れていたものだった。みやび(Dr)が響かせるフォルテッシモのバスドラムや高音に寄せたスネア、それに負けじとなんちー(Ba)が弾き倒すキュッと締まった八分音符。「最高の1日にしよう!」と続けた「START DASH★」では、ゆー(Gt)のアルペジオに釣られてそらが飛び跳ねると同時に、ストラトキャスターを掻きむしっていく。《私が選んだから。》の1句に合わせ、胸に手を当ててうなづいた仕草からも読み取れるように、己の足で到達したこの光景を存分に噛み締めていく。
ここで忘れてはならないのは、そもそもらそんぶるが眩しいほどの音楽愛を氾濫させてきた集団であることだろう。冒頭に記したMCから突入した「ロックンロールに恋をしたんだ!」で歌われている通り、4人はあのステージに立っていたスターへの憧憬を、6弦を揺らした瞬間の感動を、エフェクターを踏みつけた時のトキメキを原点としてきた。思わずこちらの口角が上がってしまうほどの笑顔を浮かべ、純粋無垢なミュージックを手渡してきた。
しかし、それは裏を返せば、ある種の無鉄砲さと表裏一体だったとも言える。そんな中、彼女たちは各地のライブハウスを巡ることで自らのリアルを知り、大舞台を踏みしめることで憧れが巨大な壁として立ち塞がるポイントに遭遇したのではないか。だからこそ、「いつまでもみんなの心に光を与えてくれる音楽をやっていきたい」と捧げた「昼間の三日月」や、はち切れんばかりに疾駆していくビートを添えて大合唱が巻き起こった「カラフル」で見られた、各パートがマキシマムに存在を主張しながらもそらの歌声によって均衡を保っていくスタイルは、不動の地力を指し示していたのだ。
キュッキュッと音を立てるリードギターに乗せ、澄み渡ったファルセットを浸透させた「ストロベリームーン」を終えると、ふわりとコバルトブルーの照明が会場を包む。「どんなに素敵な歌が書けても、どんなに素敵なラブソングを作ってもずっと歌いたい曲」と贈られたのは「もしも」だ。リバーブがかった数発を合図に、次第に上昇していく調べを描くこのナンバーを、果てまで演奏し抜きたい理由。それは「大きな宝石もダイヤモンドもいらない。君と一緒に星を見れれば良い」と呟いた台詞の行間にしたためられていたはず。
というのも、「昼間の三日月」や「ストロベリームーン」から窺えるように天体がそらのキーワードであることを踏まえれば、夜空に瞬く星は素朴で愛おしい存在のアイコンとして機能していくのだ。つまり、らそんぶるにとって「もしも」とは、背伸びをして仮初の幸福を掴み取るのではなく、等身大の暮らしとささやかな祈りを抱擁していく表明なのではないか。
こう考えると「愛するために何かを捨てなきゃいけないと知りました。今、目の前にあるものを必死に愛してるから、大事なものの愛し方を忘れたくない!」という語りからドロップした最新曲「いつかまたひとりぼっちだったら」だって、このマニフェストの延長線上に位置づく作品として聴こえてくる。フィードバックが充満し4人のシルエットが白色のライトで型抜きされる中、口火を切ったフィルインも、全体重をかけて編まれていった音塊も、自身の手で掬える範囲を思い知らされながら、決してギブアップしなかったらそんぶるの覚悟を代弁していた。
ふいに二者択一を迫られてしまう不条理を知り、いつまでもイノセントなままではいられないことを知った今、それでも「夢を見ることを諦めないでください。私たちが諦めなければ叶うことを証明してみせます」とラストを彩ったのは「夢を見よう!」。《何歳だって夢を見よう 何歳だってうた歌おう》と何度も繰り返された特大のシンガロングは、少しばかり大人になった彼女たちが改めてピュアな情動を胸に走り出していくと伝えていたのだ。
アンコールで披露された新曲「素直になれたら」は、長い髪とその場しのぎの関係を絡ませていくラブソングだった。しかし、「私のB面」をはじめ『心の隙間を埋めるのは』という一枚が、これまで隠してきた弱さを曝け出し、ファンとより親密な会話を交わすためのディスクだったことを考えれば、この表題はらそんぶるの本心にも思えてくる。《いつか本物になりますように》。こう耳に飛び込んできた1ラインは、誰もが認めるロックバンドへと手をかけんとする彼女たちの痛切な願いのよう。であるならば、遠くない未来でこの望みは現実へ変わるに違いない。なんせ、そらはこう言い放ったのだ。「君の心のピースを埋めるのが、私たちの音楽でありますように」。これまでずっと明かされなかった「心の隙間を埋めるのは」に続く単語を、自分の一挙手一投足に責任が伴うと自覚している彼女が言い切った事実。それはらそんぶるの進化とオーディエンスへの信頼を何よりも裏付けていた。
取材・文=横堀つばさ 撮影=西光史郎
セットリスト
2026.5.31(SUN)東京・恵比寿LIQUIDROOM
02:START DASH★
03:恋する少女はヒーローだった
04:昼間の三日月
05:カラフル
06:風船
07:BAD-BYE!
08:ロックンロールに恋をしたんだ!
09:コンティニューして!
10:ストロベリームーン
11:もしも
12:夢みがちガール
13:オーライ
14:いつかまたひとりぼっちだったら
15:私のB面
16:コンティニューして!
17:夢を見よう!
<ENCORE>
19:いつかのうた