DIR EN GREY 約1時間半の濃密なパフォーマンス、唯一無二の魅力とミュージシャンシップの高さに溢れたツアー東京公演レポート

2026.6.2
レポート
音楽

DIR EN GREY

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TOUR26 Downer Absolutely No One
2026.5.20 Zepp Haneda (TOKYO)

2026年4月8日に最新アルバム『MORTAL DOWNER』をリリースしたことに伴い、4月15日から『TOUR26 Downer Absolutely No One』と銘打った全国ツアーへと旅立ったDIR EN GREY。『MORTAL DOWNER』は高い評価を得ると共に多くのリスナーの注目を集め、ツアーも各地で大盛況となった。5月20日に行われた東京Zepp Haneda公演もは完売で、ライブ当日の場内は1階フロアはびっしりとオーディエンスで埋まり、2階席も立ち見客が出るという超満員状態だった。開演前から熱気が渦巻く中で行なわれたDIR EN GREYのZepp Haneda公演の模様を、お伝えしよう。

暗転した場内にオープニングSEとして「ISOLATION」が流れ、ステージにDIR EN GREYのメンバーたちが姿を現した。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、ライブは「灰燼に帰す」で幕を開け、「蜿蜒」「Unraveling」へと続く流れから始まった。ステージ中央に力強く立ち、幅広い声域と多重人格者を思わせる表情の豊かさを活かした歌声を聴かせる京(Vo)。内面の激しさを感じさせる荒々しい立ち居振る舞いとソリッドなギターサウンドのマッチングが印象的な薫(Gt)。クールなオーラを放ちつつ効果的なフレージングで楽曲を彩るDie(Gt)。ロックを感じさせるシルエットと重厚なベースサウンドでオーディエンスを魅了するToshiya(Ba)。強い存在感を発しながら職人的な安定感と華やかさを兼ね備えたドラミングを展開するShinya(Dr)。凛とした5人がステージに並び立った情景やダーク&ラウドなサウンド、激しいリアクションを見せるオーディエンスの姿などが折り重なって、Zepp Hanedaの場内は瞬く間に非日常の空間へと移行した。

続くセカンドブロックではメロディアスな歌中とパワフルなサビを配した「Discard」や、薫とDieが奏でる華麗なギターハーモニーをフィーチュアした「鱗」、重厚さを湛えた「The Devil In Me」などが演奏された。長いキャリアを持つアーティストの場合、ニューアルバムを携えたツアーでも新曲は2~3曲だけで、後はライブの定番曲を並べるということもあるが(それを否定しているわけではありません。アーティストそれぞれの考え方がありますので)、今回の公演は『MORTAL DOWNER』を核にしたセットリストになっていることが印象的だった。このことからはメンバー全員が同作に自信を持っていることがうかがえるし、それを裏づけるように、まだあまり耳に馴染みのない楽曲が多いにも拘わらず、オーディエンスは終始熱い反応を見せていた。自分たちの過去の財産だけに頼ることなく、始動から30年近い年月を経た今なお新たな物語を紡ぎ続けているDIR EN GREYは、さすがの一言に尽きる。

京(Vo)

ライブ中盤では“静と激”のコントラストを活かしたアレンジでより深くオーディエンスを惹き込む「カムイ」や、ヘヴィでいながら夢幻的という独自のテイストが光る「懐春」、緊迫感や狂気などを感じさせる「There's nothing else」、ダークネスと爽快感を融合させた「Demand」などが届けられた。DIR EN GREYの楽曲はリスナーを引きずり込むような暗さや重さを纏っているが決して陰鬱ではなく、様々な感情を突いてくることが特色といえる。

薫(Gt)

ご存じの方も多いと思うが、DIR EN GREYは「人間の弱さ、浅はかさ、エゴが原因で引き起こす現象により人々が受ける様々な心の痛みを世に広める」という思いのもとに結成されたバンドである。そこから考察するに、彼らは「暗くてアグレッシブな音楽をやろう」ではなく、「人間の“負”の部分を表現するとなると、こういう音楽だろう」という思考なのだと思う。それが、楽曲の説得力につながっている。そして、人や人の世というものを描くのであれば、“美しさと醜さ”や“強靭さと脆さ”“怒りと哀しみ”といった様々な表裏一体も表現する必要がある。ただ単にダークかつラウドで終わらせることなく起伏やエモさ、抒情味などが巧みに織り交ぜられたDIR EN GREYの楽曲は、まさしくそういうものになっている。

Die(Gt)

さらに、陰影に富んだ楽曲を最適な形で聴かせる演奏力の高さも見逃せない。DIR EN GREYは秀でたプレイヤーが揃っているし、中でも京のシンガーとしての表現力は突き抜けている。強い喜怒哀楽を伝えるために感情を垂れ流すパターンとは異なり、すべてを表現へと昇華している京のスキルの高さには圧倒されずにいられない。たとえば、張り裂けるような思いを伝えるために本当に泣きながら叫ぶというのも“あり”だとは思うが、京は常にもっと高いところから訴えかけてくる。それが、彼の歌唱に魅入られるリスナーが後を絶たないことにつながっていることは疑念の余地がない。

Toshiya(Ba)

優れた楽曲と秀でた演奏力、強固な美意識などが活かされることで、DIR EN GREYの世界は暗く、激しく、ヒリヒリしていながら美しさがある。そして、それは誰しもがたどり着けるところではない。DIR EN GREYは模倣することはできても絶対に超えることのできない孤高の存在であることを、今回のライブに触れてあらためて実感させられた。

Shinya(Dr)

ライブ後半ではShinyaのタイトなドラムとToshiyaのファットにうねるベースが生むグルーヴが心地いい「人間を被る」や美麗な翳りを帯びた「Bloodline」、“激情”という言葉が似つかわしい「MOBS」などをプレイ。感情が駆り立てられる瞬間の連続にオーディエンスも激しいリアクションを見せ、場内は怒涛の盛り上がりを見せる。本編のラストソングとなった「MOBS」を演奏し終えてメンバーがステージから去ると同時に、客席からはアンコールを求める熱い声と手拍子が湧き起こった。

アンコールに応えて再びステージに立ったDIR EN GREYはヘヴィチューンの「13」や「OBSCURE」、パワフルに炸裂する「DIFFERENT SENSE」などを相次いで聴かせた。全身を揺らす良質な轟音に身を委ねるのは快感だし、フィジカルなステージングを織り成すメンバーたちの姿に目を奪われずにいられない。DIR EN GREYに牽引されてオーディエンスのボルテージはさらに高まり、客席からは何度となく大合唱が起こった。

そして、「羽田! 生きてるか? どうだ、生きているんだろう? 生きているよな! お前、生きてるのか! 羽田! ラスト行けるか? ラスト、全部ぶつけてこれんのか! ラスト!」という京の熱いアジテーションと共に「T.D.F.F.」をプレイ。暗い世界観でオーディエンスを強く惹き込んだ後、最後にパンキッシュなナンバーで心を解放させるという構成が見事に決まって、DIR EN GREYは場内を埋め尽くしたオーディエンスに心地いいカタルシスを与えてライブを締め括った。

最新アルバム『MORTAL DOWNER』の楽曲を並べたセットリスト(SEの「ISOLATION」も含めると全9曲を披露)を組み、MCを一切入れないというストイックなライブでオーディエンスを魅了してみせたDIR EN GREY。“約1時間半”というややコンパクトなライブでいながら物足りなさを感じさせなかった密度の濃さも含めて、彼らの音楽性の素晴らしさやミュージシャンシップの高さなどに溢れたライブだった。唯一無二の魅力を備えたDIR EN GREYだけに、今回のツアーの締め括りとして7月18日・19日に開催される東京ガーデンシアター公演も本当に楽しみだ。


取材・文=村上孝之 撮影=尾形隆夫

セットリスト

TOUR26 Downer Absolutely No One
2026.05.20 Zepp Haneda
SE   ISOLATION
M01. 灰燼に帰す
M02. 蜿蜒
M03. Unraveling
M04. Discard
M05. 鱗
M06. The Devil In Me
M07. カムイ
M08. 懐春
M09. There's nothing else
M10. Demand
M11. 人間を被る
M12. Bloodline
M13. MOBS
<ENCORE>
M14. 13
M15. OBSCURE
M16. DIFFERENT SENSE
M17. T.D.F.F.

ライブ情報

DIR EN GREY MORTAL DOWNER

■2026.07.18(土) 東京ガーデンシアター
開場 17:00 / 開演 18:00

■2026.07.19(日) 東京ガーデンシアター
開場 16:00 / 開演 17:00
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