森山未来が語る、『STILL LIFE -スティル・ライフ-』日本初演への思い~人間と自然の関係を見つめ直すダンス作品を神戸・横浜・静岡で上演

2026.6.4
インタビュー
舞台

森山未來       (C)友澤綾乃

画像を全て表示(9件)


俳優・ダンサーとして国内外で幅広く活躍する森山未來。彼がアルゼンチン出身の世界的ダンサーであるダニエル・プロイエットと共演する『STILL LIFE -スティル・ライフ-』は、人間と自然の関係を見つめ直す作品である。振付・演出は、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団やパリ・オペラ座バレエ団からオファーされるノルウェーの振付家アラン=ルシアン・オイエン。2024年に欧州を席巻した話題作が、2026年6月、日本に初上陸し、神戸、横浜、静岡で上演される。森山が同作の創作の歩みや公演への思いを語った。

■世界各地での滞在制作を通して創造

ーー『STILL LIFE -スティル・ライフ-』はどのように制作されましたか?

2024年の1月頃からクリエーションが始まり、僕とダニエル、アランのホームグラウンドを旅する形で制作しました。ブエノスアイレス、神戸、パリでのアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)を経て、オスロで最終のクリエーションをしたのち世界初演しました。それからヨーロッパの4,5か国を周り、今回ようやく日本ツアーができるのでうれしいです。

森山未來       (C)友澤綾乃

ーーお二方との関り合いはどのように?

長い付き合いです。ダニエルとは2012年に初演された『テ ヅカTeZukA』(原作:手塚治虫、振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ)で共演して出会いました。アランともダニエルを介して知り合いました。このプロダクションについては、ダニエルとどんな作品にしていこうかと語り合ううちに、アランが振付家として入ってくれたらおもしろいねという話になりました。

ーーダニエルさんと最初に何を話し合いましたか?

共通の話題が舞踏でした。舞踏の本質的な部分を、どのように作品に落とし込めるのかを話しました。僕は舞踏の創始者の土方巽さんが「舞踏譜」と呼ばれる抽象的で詩的な文字のつらなりのようなものから身体を立ち上げていた、言葉と体の関係値みたいなものに興味を抱きました。ダニエルは日本の文化に興味があって、日本舞踊を学び女形をやっていますが、舞踏の流れでいくと、ブエノスアイレス出身ということもあって『ラ・アルヘンティーナ頌』を踊った大野一雄さんの身体やパフォーマンスに興味を持っています。お互いの舞踏に対する関心が始まりでした。

『STILL LIFE -スティル・ライフ-』 (C)Mats Bäcker

ーーアランさんが加わって、どのように展開しましたか?

言葉と体の関係性に興味があったからこそ、アランに入ってもらいました。言葉は想像力の産物で、言葉を共有することによって何かが存在したり、共同幻想が成立したりします。逆に言うと、言葉から体が立ち上げられていくプロセスも当然のようにあるはずで、それは舞踏が持っているシステムの一つのような気がします。アランは、演劇的な要素が多いダンスカンパニーを率いているので、言葉と体の関係性、言葉から立ち上がる想像力と身体を意識しています。3人の話題は、私たち人間が作り出しているこの社会と自然との関係がどんどん断絶しているということ。我々は、もう一度自然とどのように関わってくのかを話し合い、それをエッセンシャルな形で吸い上げてまとめたのが『STILL LIFE -スティル・ライフ-』です。このタイトルには舞踏と共通する点があります。土方巽は「舞踏とは命がけで突っ立った死体である」という言葉を遺しましたが、「STILL LIFE」=静物画はフランス語で「死せる自然」。最初の対話に始まり、レジデンスを重ねて、作品内容と合っていったように思います。

『STILL LIFE -スティル・ライフ-』       (C)Andrea Avezzu

ーーダニエルさんはどのようなダンサーですか?

本当に美しく、初めて知った時から衝撃的でした。バレエ出身ではあるけれど、アイソレーションの可動域が広く、体のコントロールが強い。仲が良く、信頼関係もありますが、ソロダンサー体質なんだろうなと感じます。コンタクトがある瞬間もいっぱいあるので、コミュニケーションをとってすり合わせながらやっています。素晴らしいダンサーなので、そこに関してはシンプルに期待していただければ。

森山未來       (C)友澤綾乃

■欧州での新鮮な反応、日本ツアーに向けての新たな取り組み

ーーヨーロッパでの公演時に「驚異的な身体表現と演劇的な演出の融合」などと評価されましたが、テキストも使ったアランさんの演出についてどう感じますか?

正直自分がどこまでこの作品を理解できているのかわかりません。アランは、クリエーションの中で僕とダニエルから生まれた身体や言葉のマテリアルを集め、そこからパズリングして最終的に作品にしていきました。制作の中でアランと様々なディスカッションを行いましたが、最終的には彼の中で整理されていくので、自分の理解を超えた部分ももちろんあります。朗読するテキストに関しても「別のテキストを書いてみたよ」と言って渡され、まったく関係なく作られたマテリアルに組み込むことがあります。こういったことはよくあるプロセスなので、客観的に見ることができていないかもしれません。だけど、アランは対人関係的には柔らかく、基本的にすべてを受け入れてくれる人です。

『STILL LIFE -スティル・ライフ-』 (C)Mats Bäcker

ーー初演時の手ごたえはいかがでしたか?

基本的にダンスフェスティバルや劇場のダンスプログラムに組み込まれていたので、観に来られる方はダンスを期待していたでしょう。しかし、決して踊っていないわけではないのですが、身体性だけで魅せる作品なのかというと、そうではない部分があります。おもしろかったのは、ヴェネツィア・ビエンナーレで上演された際のリアクションです。建築や現代美術といったさまざまな部門の中の一つとしてパフォーミングアーツがあるのですが、ダンスを観にヴェネツィアに訪れたわけではない観客も混ざり合っていて、すごく新鮮に楽しんでもらえたような気がします。現代アートの文脈では、パフォーマンスに対する考え方がまた違う視点なんだろうなと。

森山未來       (C)友澤綾乃

ーー今回のツアーに向けてアップデートしてきたい点は?

それぞれのツアーにアランが帯同するので、3人で少しずつアップデートしています。今回は今まで英語で話していたテキストが日本語になる部分もあるでしょう。字幕も使うので、その辺の遊び方が大事になる気がしますね。

『STILL LIFE -スティル・ライフ-』 (C)Mats Bäcker

■神戸から世界に向けて発信

ーーご出身は神戸です。本作は神戸での滞在制作から始まった作品ですね。そして、今回は神戸文化ホールの企画制作・招聘により神戸のほか横浜赤レンガ倉庫1号館、静岡県コンベンションアーツセンター/グランシップでも上演します。神戸から創造・発信することへの思いとは?

以前から東京ではない別の場所にも拠点を持ちたいと考え、最初は海外を想定していました。しかし、コロナ禍もあって国内を見渡してみたときに偶然出会ったのが神戸でした。アーティスト・イン・レジデンスを通して作品を創るのは自分の性格に合っています。東京という一つの場だけではなく、ある土地に限定されない作品作りができたらいいなと思って探しているうちに神戸に出会いました。神戸は港町です。その流動的な風土は文化にもつながっていて、自分の性格とも親和性が強く、この5年近く神戸と東京を行った来たりしています。都市であろうと田舎であろうとローカルから立ち上げる作品は、ある種の独自性をすでにはらんでいます。そのローカリティがグローバルへと移っていく流れを目指していきたいです。今回は神戸との関わりの中で立ち上がった、とても良き流れなので喜ばしいです。

森山未來       (C)友澤綾乃

ーー楽しみにされている皆さん、関心を持たれる方に一言お願いします。

まずはシンプルにアランの、ヨーロッパの第一線で活躍している振付家である彼の世界観をしっかり堪能してもらいたいですね。さきほどもお話ししたように、ダニエルも素晴らしいダンサーです。日本から神戸から端を発してクリエーションが進んだ作品の凱旋公演でもあるので、それを見届けていただければ幸いです。
 

ヘアメイク:河西幸司 (アッパークラスト)
スタイリスト:杉山まゆみ
衣裳:ジャケット ¥69,300、シャツ ¥25,300、パンツ ¥38,500、レーススカート ¥27,500、オペラシューズ ¥50,600
以上すべて LAD MUSICIAN
[問]=LAD MUSICIAN HARAJUKU 03(3470)6760

 

取材・文=高橋森彦

公演情報

『STILL LIFE -スティル・ライフ-』

出演: 森山未來、ダニエル・プロイエット
 
出演合唱:
こどもの城合唱団(横浜)
混声合唱団はもーるKOBE(神戸)
青葉会スペリオル&男声合唱団(静岡)
 
スタッフ:
演出・振付・テキスト:アラン=ルシアン・オイエン
美術・衣裳:アイーダ・ヴァイニエリ、アラン=ルシアン・オイエン
音楽:ヘンリク・スクラム
音響:マティアス・グロンスダル
照明:マーティン・フラック
STILL LIFE (C) 2024 winter guests / Alan Lucien Øyen
 
上演時間:約70分(休憩なし)、終演後アフタートーク実施
 
企画制作・招聘:神戸文化ホール(指定管理者:公益財団法人 神戸市民文化振興財団)
制作協力:NPO法人DANCE BOX、サンライズプロモーション

【ツアー詳細】
■横浜公演
日程:2026年6月13日(土)18:00開演 /14日(日)15:00開演
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
一般発売: 好評発売中

料金(税込):一般6,500円/U-25・ダンサー割4,000円/高校生以下2,000円/当日券7,000円 ※全席自由 、入場整理番号付き
お問合せ: 横浜赤レンガ倉庫1号館[公益財団法人横浜市芸術文化振興財団]
045-211-1515(10:00~18:00)
主催:公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
 
■神戸公演
日程:2026年6月20日(土)・21日(日)各日15:00開演
会場:神戸文化ホール 中ホール
一般発売:好評発売中

料金(税込):一般5,500円/神戸割(市内在住・在勤)5,000円/U25(25歳以下)2,500円※未就学児入場不可
公演に関するお問合せ: 神戸文化ホールプレイガイド 078-351-3349(10:00~17:00 月曜定休※祝日の場合翌平日)
に関するお問合せ: サンライズプロモ―ション 0570-00-3337(平日12:00~15:00※土日祝日休)
主催: 神戸文化ホール(指定管理者:公益財団法人神戸市民文化振興財団)
協力: Artist in Residence KOBE(AiRK)
 
【関連イベント|小さな北欧セレクション】
公演当日の劇場ロビーに北欧の空気を感じるミニ・マーケットが登場。北欧雑貨や焼き菓子、コーヒーなどをご紹介。初夏の劇場で、北欧の光を感じるひとときを。(出店予定店舗:OKAYU LABO、北の椅子と、ほか)
 
■静岡公演
日程:2026年6月26日(金)19:00開演
会場:静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 中ホール・大地
一般発売:好評発売中

料金(税込):全席指定 一般6,000円/こども・学生1,000円
お問合せ: グランシップセンター 054-289-9000(10:00~18:00/休館日を除く)
主催:公益財団法人静岡県文化財団、静岡県
後援:静岡県教育委員会
企画監修:宮城聰
  • イープラス
  • 森山未來
  • 森山未来が語る、『STILL LIFE -スティル・ライフ-』日本初演への思い~人間と自然の関係を見つめ直すダンス作品を神戸・横浜・静岡で上演