玉田玉秀斎、講談師生活25周年の節目に進化する『JAZZ講談』、ソニー・ロリンズ追悼と即興性が交差する“語りとジャズの融合”
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(左から)里村稔、玉田玉秀斎、畑ひろし、上場正俊
講談とジャズ――。一見すると異なる世界にある二つの芸能は、「物語」と「即興」という共通言語で20年近く響き合ってきた。その魅力を凝縮した『JAZZ講談』が、8月5日(水)、大阪・ブリーゼプラザ小ホールで開かれる。講談師・玉田玉秀斎の講談師生活25年と「玉秀斎」襲名10周年を記念する公演を前に、玉秀斎と里村稔(T.Sax)、上場正俊(Dr)、畑ひろし(Gt)が取材に応じ、ライフワークとして育ててきた『JAZZ講談』への思いに加え、講談とジャズが交差する創作の舞台裏、そしてアメリカ公演という新たな夢まで熱く語った。
玉田玉秀斎
2007年に始まった、ジャズと講談のコラボレーションシリーズ『JAZZ講談』。名曲とその背後にある知られざるストーリーに光を当てる内容が反響を呼び、玉秀斎のライフワークになっている。今回は25周年にちなみ、ジャズミュージシャンたちの25歳の頃のエピソードなど「25」にまつわる物語が語られる。玉秀斎は「『JAZZ講談』は、私の講談師人生のほとんどを並走しているもの。玉田家のお家芸として引き継がれてほしい」と述べ、創作講談をお家芸とする玉田家の新たな柱に育てたい考えを示した。
今回の演目は、オープニングで講談の話芸「修羅場読み」とジャズの融合を披露。本編ではベニー・グッドマンの「サヴォイでストンプ」、チャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」など8つの物語が演奏と共に演じられる。
里村稔
中でも注目は、今年5月に逝去が伝えられたサックス奏者のソニー・ロリンズの「Moritat」。玉秀斎は「ソニー・ロリンズは僕にとって感謝の対象です。(2007年の『JAZZ講談』では)90分間、ソニー・ロリンズについて語らせていただきました。ソニー・ロリンズと共に、JAZZ講談をやってくることができたんです」と思い入れを口に。当時、テナーサックスの演奏を担当した里村は改めて「最初は手探りで、「講談師ってなに?」というところから始まりました。20年の間で作り方のプロセスもあり、今のスタイルが確立されていきました」と回想した。
畑ひろし
『JAZZ講談』の核となるのは、有名なジャズミュージシャンたちの生きた証に迫る点にある。玉秀斎は「講談は、人生の選択の瞬間を描く芸能。彼らはどんな思いで舞台に向かったのか、どんな思いで曲を作ったのか。その人生の瞬間を語り、そして生演奏をしていただきます。背景を知ることで、まるで映画のような空間が広がる。それが『JAZZ講談』です」とアピールする。ギターの畑も「お客さんに感想を聞いたら、(ミュージシャンや曲の背景について)講談で導入があり、それから演奏が始まるので受け入れやすいという声がありました。ご飯を食べているときに後ろで流れている曲でも、出来上がる成り立ちや説明があると印象が全然違うらしい」と手ごたえを明かす。
■共通項は「即興性」――講談とジャズが重なり合う創作の現場
そんな講談とジャズの共通点について、玉秀斎が挙げるのは「即興性」だ。「玉田家は創作がお家芸。先人が残したものを継いでやるのではなく、各地の神話や伝説をその場で聞いてすぐに語るなど、即興性が求められてきました」と説明し、ジャズとの親和性の高さを強調する。「(玉田家の講談の)即興性はまだ進化途中。お互いに違う芸能なので少し無理が出ていましたが、20年経ってそれを乗り越えようとしている時期。25周年にあたって本当の意味でのコラボレーションを追求したい」と語った。
上場正俊
特にオープニングの修羅場読みとジャズの融合は「フリージャズのボーカルみたいな部分が修羅場読みになる」と解説。ドラムの上場も「ジャズは即興性が当たり前の世界。どのテンポで始まるのかも決めていない。玉田先生は「講談にもっと即興性を持たせたい」とおっしゃっていますが、台本にないことから始まる可能性も大いにあると思います」と述べ、『JAZZ講談』のさらなる広がりに期待を寄せた。
また玉秀斎は、これまでの講談師人生について「僕は師匠から“どべた・下手くそ・ざる頭”と言われていました。「お前みたいな下手なやつは見たことがない」と。実際にお客さんにウケる感触もなかったんです」と振り返る。もともと講談師になるつもりもなかったため「いつ辞めてもいい」と考えていたという。しかし2004年、自身がパーソナリティを担当するFMラジオで、オンエアする音楽にまつわる物語を少し語ってから曲を流したことがきっかけに。「もっとがっつり語ったら、音楽(の世界)が広がるやろうな」とひらめき、『モーツァルト物語』を演じたことが『JAZZ講談』の土台になった。玉秀斎は「僕の世代で『JAZZ講談』は完成しないと思います」としつつも、「深い世界と景色をご覧いただけるものを目指したい」と意気込む。
■目指すはアメリカ公演 日本の講談がジャズと“対峙”する未来
これからの目標はアメリカ進出。玉秀斎は「いつかアメリカ公演をしたいです。英語で『JAZZ講談』。日本の伝統話芸である講談がアメリカに乗り込み、アメリカの伝統音楽であるジャズに戦いを挑む。講談は笑いを目的としておらず、華やかでもない。ただ、語るもの。アメリカの伝統音楽に日本の伝統話芸をつけたら、どれだけ素晴らしい世界が広がるか。これが僕のやりたい挑戦です」と『JAZZ講談』の展望を力説した。
(左から)畑ひろし、里村稔、玉田玉秀斎、上場正俊
取材・文=田辺ユウキ 撮影=Nagao.M(SPICE編集部)
公演情報
玉田玉秀斎(講談)、
神田芳郎(Ba)・里村稔(T.Sax)・上場正俊(Dr)・畑ひろし(Gt)
I Remember Clifford(クリフォードの想い出)
Now’s the time(ナウズ ザ タイム)
What’s new?(ホワッツ・ニュー)
など、休憩をはさみ全8曲を予定。