宮本浩次のこれまでの音楽人生も浮き彫りになったバースデイライブ『60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!』レポート
-
ポスト -
シェア - 送る
宮本浩次
60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!
2026.6.10 ぴあアリーナMM
「ハッピーバースデイ、ディア・エブリバディ」
コンサートの最後の曲が終わると、宮本は花道に出てきて、歌詞の一部を変えた「Happy Birthday to You」をアカペラで歌った。彼の60歳の誕生日を祝おうとつめかけた超満員の観客は、宮本から逆に熱烈に祝福されたのだ。
宮本浩次のバースデイライブ『60周年記念公演 さあ、ドーンと行くぜ!』が2026年6月12日、神奈川・ぴあアリーナMMで開催された。この公演は全国各地の映画館での生中継のほか、配信も行われたため、多くのファンが愛と感動と熱狂の夜を共にした。ライブ開催の2日前の6月10日に、ソロとしての4年半ぶりのオリジナルアルバム『I AM HERO』をリリースしたタイミングでもあり、新作収録曲が散りばめられていたが、エレファントカシマシの曲、カバー曲なども交えた多彩な構成になっていて、宮本のこれまでの音楽人生も浮き彫りになった。
おどけたポーズを取りながら楽屋からステージへと向かう宮本の映像が、ステージ上のモニターに映し出されて、宮本がステージに到着した瞬間にライブがスタートした。真っ赤なライトを浴びた宮本の、光沢のある赤いシャツがキラキラと光っていた。これは還暦の赤をイメージしたものだろう。一部のオープニングナンバーは最新アルバム収録曲の「I love人生!」だった。この曲の《最高の瞬間をお前と感じたいぜ》という歌詞は、この日のライブの始まりにふさわしいだろう。宮本の伸びやかな歌声と強靭かつ自在なバンドの演奏は圧巻だ。“無敵のヒーロー5人衆”と呼びたくなった。バンドのメンバーは小林武史(Key)、名越由貴夫(Gt)、須藤優(Ba)、玉田豊夢(Dr)。これまでも宮本と何度も同じステージに立ってきた、宮本が絶大な信頼を寄せる凄腕ミュージシャンたちだ。
レアな曲もいくつか披露された。そのひとつは、エレファントカシマシの2002年発表の「漂う人の性」だ。30代の頃に書いた曲を60歳の宮本がこんなにも真っ直ぐに、そしてこんなにも熱く歌えるのは、宮本がブレることなく“漂う人”であり続けているからだろう。
この日のステージには花道が設けられていたため、宮本の行動半径はいつもにも増して広かった。花道を歩いたり、客席に下りたり、階段を上がったり、メンバーの横に行ったり。前作のアルバムタイトルを借りて表現するならば、縦横無尽だ。宮本は漂う人であると同時に、グルーヴの中でたゆたう人でもあった。
「over the top」「哀愁につつまれて」など、最新アルバムの楽曲は、ライブで演奏されることで、個々の曲の持っている魅力がさらに際立っていた。バンドのメンバーの集中力の高い演奏に鼓舞され、観客の熱い声援や拍手によってエネルギーを補填していたからでもあるだろう。さらに、シンガーとしての音楽表現とパフォーマーとしての身体表現が一体となることで、説得力も破壊力もパワーアップしていた。
何曲か披露されたカバー曲もそれぞれ、歌、演奏、アレンジが更新されていて、新鮮な表情が見えてきた。「飾りじゃないのよ 涙は」では、破壊された都市の映像が映し出され、ダンサー2人が踊る横での歌となった。激しい雨が瓦礫を打ち付け、宮本の歌声が悲痛に響いた。音楽の素晴らしさのひとつは、聴く側が自由に解釈して受け取れる点にある。還暦の祝いのステージで、こんな演出を成立させてしまうところが頼もしい。予定調和とは無縁の、予測不能のライブこそが宮本の真骨頂だ。
「エブリバディ、今日はありがとうございます。尊敬する最高の仲間たちとのバースデイ。ようこそ」と挨拶し、さらに「この曲からニューアルバム(の制作)がスタートしました。歌えば歌うほど、いい曲だと思っています」とのMCに続いて披露された一部最後の曲は「close your eyes」だった。宮本の言葉に偽りはない。聴けば聴くほど、いい曲でもある。宮本がそうしているように目を閉じ、耳を澄ませて、優美な歌声に聴き入った。
二部のスタートの曲は「夜明けのうた」だ。宮本は赤いケープ風の衣装をまとい、花道の先端部分が上昇した円形ステージの上で歌っていた。希望の匂いのする歌声が、かすかに差す朝日のようにさりげなく、でも確実に染みてきた。最新作収録曲の「愛を抱きしめろ」では、躍動感あふれるグルーヴに乗って、荒々しい歌で客席を鼓舞していった。観客も力強いハンドクラップで参加した。
「宮本浩次、実は歌手デビュー50周年の年でもあるんです」というMCに続いて、宮本が東京放送児童合唱団に所属していた10歳の時にレコードとして発表された「はじめての僕デス」の音源が流れ、途中から60歳の宮本が歌い始めると、大きなどよめきが起こった。60歳の宮本と声変わり前の10歳の宮本がユニゾンで歌っていた。夢の共演に盛大な拍手が起こった。
スクリーンに映し出された月が三日月から満月へと変化していくなか、ヒューマンな歌声が染みてきたのは「今宵の月のように」だ。さらに、ハードなロックンロールへと転生した「ロマンス」、銀テープが発射される中で、包容力あふれる歌声が観客を抱きしめていくようだった「ハレルヤ」など、全曲がハイライトと言いたくなる濃密なステージが展開された。
「全員、6月12日が誕生日の人が集まっているというのが、私の勝手な妄想です。60周年記念、どうもありがとう。幸せです。信じられません!」という言葉に続いて、「Today-胸いっぱいの愛を-」が演奏された。愛にあふれた歌声が、金の紙吹雪が舞う空間を満たしていく。曲の終わりで、宮本がステージの上の段に設置されたドラを鳴らし、観客を祝福した。二部のラストは最新アルバムのタイトル曲と言えそうな「I AM HERO」だ。限界を突破していくような宮本の渾身のシャウトと白熱の演奏が、観客の血をたぎらせた。自らだけでなく、会場内全体を鼓舞していくような、すさまじいエネルギーがほとばしった。
三部で登場した宮本は赤ずくめだった。赤いスーツ、赤いシャツ、赤いネクタイ姿で、赤い紙吹雪が舞う中で「冬の花」を歌うその姿は、真っ赤に咲き誇る冬の花のようでもあった。厳寒の中でも枯れない花の強さを、今の宮本は持っている。会場内の全員に愛を告白するような「P.S. I love you」に続いての三部の最後の曲は、エレファントカシマシの「RESTART」だ。バンドのデビュー30周年イヤーの2017年に発表された曲であり、苦難を乗り越えた証が刻まれたロックンロールだ。還暦には“60年を経て人生が一巡し、新たな人生のスタートを迎える”という意味がある。この日のこのシチュエーションにもぴったりだった。
「さあ、出かけようぜ」という言葉が、曲の始まりの合図だった。宮本の歌声からは、ポジティブなエネルギーがほとばしっていた。途中から、スクリーンに若かりし日々の宮本の写真の数々が映し出された。夢を見続け、明日を思い続けてきた男は、今もなお、夢を見て、明日を思い、挑み続けている。《ここからがRESTART》というフレーズは、今のこの瞬間を表すものでもあるに違いない。宮本浩次という物語は、さらにスケールアップして、新章に突入したところだ。
三部が終了して、宮本が「Happy Birthday to You」を歌った直後に、モニターに60本のロウソクが灯る映像が映し出された。宮本が「一緒に消そうぜ、エブリバディ」と提案し、宮本の「せーの」の合図で、観客全員が「フー!」とロウソクの炎を消して、盛大な拍手を送った。互いに祝い、祝われるような麗しい関係が成立していた。このライブ空間こそが宮本の原動力でもあるのだろう。2026年末から2027年にかけてのアリーナツアーも発表になった。『I AM HERO』の楽曲の中にはまだ披露されていない曲もたくさんある。それは今後のお楽しみということだろう。
取材・文=長谷川誠
撮影=伊藤彰紀(aosora)
配信情報
配信期間 2026/6/15(月)23:59まで
視聴
Streaming+ https://eplus.jp/sf/detail/2974560002-P0030106P021001
リリース情報
2026年6月10日(水)発売
【収録曲】
0. さあ、出かけよう!
1. over the top(TVアニメ『トリリオンゲーム』第2クール オープニングテーマ)
2. I love人生!(テレビ朝日系2026年4月期火曜9時枠新ドラマ『リボーン ~最後のヒーロー~』主題歌)
3. かなりニュールネッサンスなnew dayよ!
4. 零地点Bomb
5. 風と私の物語
6. close your eyes(TBS系『news23』エンディングテーマ)
7. feel so fine
8. Today - 胸いっぱいの愛を -(フジテレビ4月期火9ドラマ『人事の人見』主題歌)
9. 哀愁につつまれて
10. 生きているから
11. I AM HERO(映画『爆弾』主題歌)
12. 愛を抱きしめろ
ライブ情報
2026年12月25日(金)・26日(土)
福岡・福岡国際センター
2027年1月5日(火)・6日(水)
愛知・クロコくんホール(日本ガイシホール)
2027年1月23日(土)・24日(日)
宮城・ゼビオアリーナ仙台
2027年2月10日(水)・11日(木・祝)
東京・国立代々木競技場 第一体育館
2027年2月27日(土)・28日(日)
兵庫・GLION ARENA KOBE