『細田守の原点/展』内覧会レポート 細田監督と染谷将太が語る「原点」への想い
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『細田守の原点/展』 (C)細田守の原点/展
CREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋)にて、『細田守の原点/展』がついに開幕! この記事では、開幕トークイベントに登場した細田守監督と俳優・染谷将太のコメントを紹介しつつ、気になる会場の見どころや、ショップ、カフェの注目アイテムなどについてレポートする。
『細田守の原点/展』オープニング映像 (C)細田守の原点/展
この『細田守の原点/展』は、映画『時をかける少女』公開20周年を記念して、過去最大規模のクリエイティブ資料で細田守の映像世界を体感するものだ。同監督の原点と言える『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を中心に、絵コンテ、レイアウト、原画、美術ボードなどの制作資料が過去最大規模で展示される。東京会場の会期は2026年8月31日(月)まで。細田作品のイメージにぴったりな、夏空の下での開催というのがなんとも心憎い。
開幕トークイベントに、細田監督&染谷将太が登場!
開幕に先駆けて開催されたプレス内覧会には、細田守監督と、細田作品に4度の出演経験を持つ俳優・染谷将太がゲストとして登場し、展覧会開催にあたっての心境や「原点」についての想いを和やかに語った。
トークイベント風景(左:細田守監督 右:俳優・染谷将太) (C)細田守の原点/展
ーー今回は『細田守の原点/展』ということで、監督が中学時代に制作した自主アニメーションも初公開されていますね。ご自身の原点を初公開されるお気持ちはいかがですか?
細田:もう、むちゃくちゃ恥ずかしいですね。中学生でアニメ作るなんてすごいねって言ってもらったりもするんですけど、僕としては物凄く恥ずかしい。だってねえ皆さん(記者たちに)、中学生の時に書いた文章、人に読ませられますか……? 絶対無理ですよね(笑)。「原点」っていう展覧会タイトルじゃなきゃ絶対出してないような作品なんですけど、出さざるを得なくなってですね。恥ずかしいんですけど、その恥ずかしさも含めて原点なので見てください、みたいな、思い、です……。
染谷: いや僕、その作品を見させていただいたんですけど、中3でこれを作れるなんて本当にすごいって思いましたよ。短いけどすでに映画になってますし。しかも登場するモチーフも今の作品につながっているものが多くて、監督の中で中学生の頃からずっと続いているものを感じたというか。
細田:うん、この展覧会をきっかけに昔の自分を振り返って、案外変わってないところが多いんだなって感じましたね。「やっぱり竜が出てくるんですね」ってさっき染谷くんにも言われたしね(笑) 三つ子の魂百までじゃないですけど、やはりそういう部分はあるのかもしれません。
ーーそもそもは、どういう経緯で中学生の時に8mmフィルム作品を制作しようと思われたのでしょう?
細田: アニメを自分で作ってみたかったんですよ。アニメを「作る」っていうことにチャレンジしたかった。アニメって見るのが好きな人は多いけど、作る人はあんまりいないじゃないですか。45年前……当時NHKで『YOU』っていう若者向けの番組があって、1982年の夏に、アニメの自主制作をしている高校生や大学生を特集したんです。当時中学生だったんですけど、それを見てもう羨ましくて、作らずにはいられない気持ちになってしまって、それがきっかけでした。まさか45年後に、こういう場でお見せすることになるとは。
オフィシャル提供画像(撮影:山本倫子) (C)細田守の原点/展
ーーひと足先に展覧会をご覧になって、特に印象に残った展示について教えてください。
染谷:そうですね、僕は映画3作品についてももちろんなんですけど、監督の大学時代の……。
細田:えっ、そっちですか!?
染谷: はい(笑) 油絵の色調や主題も、今の作品に繋がってるなと感じられて。大学時代の自主映画も拝見したんですけど、そこで描いているメッセージなんかも、今の監督と地続きになってるんだなって思いました。監督が昔から持ってる本棚の本とかも展示されているし、本当に細田監督の原点がそのまま見れるんだなぁって。こういう機会ってなかなかないですよね。
細田:そういう風に言ってくれて嬉しいです(照)。
オフィシャル提供画像(撮影:山本倫子) (C)細田守の原点/展
ーー染谷さんは近年、ご自身でも映画を撮られるそうですね。同じ撮る側として、監督の学生時代の作品に触れるのは、共感したり刺激を受ける部分もあったんじゃないですか?
染谷:自分は全然そんな大それたことの言える人間じゃないんですけど……でも自分も、学生の時から役者をやりつつ同級生と自主映画とか撮ったりしていて、何かを作りたい、映像を生み出してみたい、って欲求が強い学生時代を送っていたので。そういうところは共感できて嬉しかったですね。
細田:やっぱりその「作りたい」っていう衝動ってね。抑えきれないというか、もうね(笑) 誰に頼まれてるとか、お金が貰えるとかではないじゃないですか。なのに作ってしまう、作らずにはいられないっていう気持ちのまま、ここまでやって来た気がします。だからいま何かやりたいって気持ちを持っている若い人が、こういう展覧会を見て「自分でもやってみようかな」とか「やっていいんだ」とか、「自分ならもっとうまくやるぞ」とか、そういう刺激になればいいなって思いますね。
ーー最後に、展覧会を楽しみにしている皆さんへ、メッセージをお願いします。
細田:今まで過去を振り返ることなくやってきたんですけれども、こういう機会を頂いたことで『時をかける少女』を作っていた20年前をありありと思い出して。「この先どうなるかわからないけど、ひたすらいいものにしたい」っていうあの時の気持ちを、改めて思い出しました。やっぱり『時をかける少女』は自分の中のひとつの原点です。
僕は『時かけ』の真琴っていう主人公の、バイタリティー、若々しさ、瑞々しさ。そして『サマーウォーズ』や『おおかみこども』の、家族や親戚のワイワイした感じとか、そういうものをずっと描きたいと思ってやってきたんだなって実感してますね。今回はそこに学生の頃の創作物とかも含めて見ていただいて、皆さんに「細田守はこういうことがやりたい奴なんだな」って伝わったらいいなと思います。
ご家族連れでも、ご自身の20年前に想いを馳せながらでも、ぜひいろいろなスタイルでこの展覧会を楽しんでいただきたいです。
展示のハイライトをご紹介
〜『時をかける少女』編〜
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
それでは、展示室の様子を写真多めでご紹介していこう。展覧会トップを飾る『時をかける少女』のチャプターでは、細田監督による全絵コンテ(およそ450点)が惜しみなく公開されており、冒頭にしてかなり濃密な展示空間となっている。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
絵コンテを囲むように、壁面に掲げられた背景画の大パネルが美しい。横に添えられた解説文では、『時をかける少女』の美術監督を務めたレジェンド背景画家・山本二三氏(1953-2023)に対する細田監督の熱いメッセージを見ることができる。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
作品を象徴する、ジャンプ台のような長い坂道。没入感のある大パネルで眺められるのは貴重な機会なので、ぜひ前に立ってじっくりと鑑賞を。ちなみに山本二三氏による背景画は複製だけでなく、一部の実物もガラスケース内で見ることができる。放課後の理科室や夕暮れの河川敷など、必見の展示である。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
キャラクター設定の真琴が可愛い! 見つめていると、トークイベントで監督が語っていた「若々しさ、瑞々しさ」というキーワードが思い出されて深く納得である。キャラクターデザインの貞本義行氏から「ポロシャツは地味すぎる」とダメ出しされたエピソードなど、制作当時の空気感が伝わってくる解説パネルも面白い。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
ほか、このチャプターでは「細田守作品の『空』映像集」や「街をかけぬける真琴」といった映像展示も。
「細田守作品の『空』映像集」は、『時をかける少女』から『果てしなきスカーレット』まで、作品の枠を超えて空と雲のシーンをコレクションした映像だ。「空は俯いている時ではなく、見上げた時に見えるもの」という監督の解説文を踏まえて見ると、どの作品でも共通して、青空がまるで主人公に対する作家からの祝福のように感じられる。短いながら心を揺さぶられる映像なので、ぜひ注目してみてほしい。
〜『サマーウォーズ』編〜
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
鍵穴を抜けた先に広がるのは、『サマーウォーズ』のチャプターだ。作中の仮想社会「OZ」の世界をイメージした展示空間で、対峙する「KING KAZMA」と「LOVE MACHINE」の等身大フィギュアがお出迎え。もう、入った瞬間にテンションが沸騰である。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
戦いを見守るOZの住民になったつもりで、敢えて背中越しに撮影してみた。立体化したKING KAZMAはどこから見てもカッコいいが、個人的には風になびくベストからチラリとのぞく背中が最高だと思う。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
このチャプターでももちろん、細田監督の絵コンテがたっぷりと展示されている。クライマックスでKAZMA渾身のパンチが決まるシーンでは、効果音や演出指示欄での「!」の多さに監督の迸る情熱を見ることができる。これだけで漫画の最終回を読んでいるかのような爽快感である。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
絵コンテ、原画、レイアウトに設定資料……と見るべきものの多い本展だが、『サマーウォーズ』ファンの筆者がしみじみ見れてよかったと感じたのは、ナツキとケンジが手を握り合う印象的なシーンの監督指示である。「夏希の手の芝居(求める動き、気持ちの渇望)をもっと作り込んで下さいまし」との短い指示の中に、あのシーンを見た時なぜ感動したのか、その理由が凝縮されているような気がした。
細田監督の原点へ、タイムリープ
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
ここで展覧会はいったん作品世界を離れ、細田監督の創作の原点を知るべく過去の世界へ。展示室どうしを繋ぐスペースに、『時をかける少女』のタイムリープを思わせる演出が施されていてニヤリとしてしまう。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
タイムリープした先に広がるのは『Early Days』と題されたチャプターだ。ここでは『時をかける少女』以前に制作された作品や、細田監督が中学生時代に8mmフィルムで制作した自主アニメーション作品、金沢美術工芸大学時代に制作した実写映像作品、油絵作品などが展示されている(トークイベントで染谷が語った「細田監督の本棚」のコーナーもここだ)。
残念ながら撮影NGだったため行ってみてのお楽しみとなるが、『デジモン』『プリキュア』など東映アニメーション時代の貴重な制作資料に加え、それらがのちの細田作品にどう繋がっていくかを検証するような映像も用意されており、非常に興味深い一角だった。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
壁には、非常口マークかと思いきや、よく見ると真琴のシルエットを使った「タイムリープ口」の標識が掲げられていた。会場の順路を逆行してもう一度鑑賞したい人のための案内板なのだが、心のツボを突いた演出にちょっと感動である。
〜『おおかみこどもの雨と雪』編〜
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
最後は『おおかみこどもの雨と雪』のチャプターだ。花・雨・雪の等身大フィギュアは、本展のために制作されたもの。名シーンをパッチワークした背景パネルとあわせて、ぜひカメラに収めたいポイントである。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
『おおかみこどもの雨と雪』は、細田監督の出身地である富山を舞台とした作品。ここでは絵コンテに加えて、豊かな自然を捉えたロケハン写真や、美術監督・大野広司氏による美しい背景画が見どころだ。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
また、壁面スクリーンの映像展示「雪山をかけるシーン 線撮〜完成画へ」も見逃せない。これは作中きっての名シーン、雪原を疾走する雨&雪を花が追いかける場面を、原画と完成画を組み合わせたオリジナル映像に仕上げたもの。躍動感あふれる劇中音楽「きときと- 四本足の踊り」も相まって、見ている方まで生きる喜びが爆発しそうになる展示だった。
大スクリーンで「あの夏」を追体験
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
展覧会のラストには、エピローグとして『時をかける少女』から『果てしなきスカーレット』まで、作品ごとのダイジェストムービーが放映されている。ベンチに腰掛けてひと休みしつつ眺めようと思ったら、ひとつひとつの作品に胸が熱くなりすぎて逆にヘロヘロになってしまった。時間が許す限り、じっくりと鑑賞したいエリアだ。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
出口付近に、『時をかける少女』の千昭とのラストシーンを再現できるトキメキのフォトスポットを発見! 筆者は惜しくも身長が足らず上手く決まらなかったので、女性陣は精度の高い再現を求めるならヒールのある靴を履いて行った方がいい、かもしれない。
「OZ cafe」で丸ごと味わう細田ワールド
そしてこの『細田守の原点/展』で見逃すわけにいかないのが、併設のカフェだ。『サマーウォーズ』を中心とした細田監督作品の世界観を、目と口で楽しめる特設カフェ、その名も「OZ cafe」である。細田作品の印象的なシーンやキャラクターをモチーフにしたオリジナルメニューがラインナップされており、カメラのシャッターが止まらなくなること必至だ。
「なかった事にした あの日の夕焼けパスタ」1,890円(税込)、「キング・カズマのベリーパフェ」1,590円(税込) (C)細田守の原点/展
「なかった事にした あの日の夕焼けパスタ」と「キング・カズマのベリーパフェ」をオーダー。写真は、報道のために用意されたものではなく実際に「お待たせしました」と提供されたものである。一品一品が、なんという完成度の高さだろうか……! ちなみにパスタはトマトソースで海老がぷりぷりしており、パフェは桃がゴロゴロしていて食べ応えがあった。
「あきらめなさんな茶 〜花札モナカ付き〜」990円(税込) (C)細田守の原点/展
メニューはパスタとスウィーツが中心だが、大人にうれしい「あきらめなさんな茶 〜花札モナカ付き〜」のような渋い一品もある。付属の花札型モナカは4種類(ナツキ、ケンジ、カズマ、ラブマシーン)で、どれが当たるかはお楽しみだ。
店内のBGMはもちろん細田監督作品の映画音楽。鑑賞の前後に訪れて細田ワールドにどっぷり浸れば、1日がさらに特別になること間違いなしのカフェである。
青で彩られたミュージアムショップ
ミュージアムショップ風景 (C)細田守の原点/展
さらに、気になるのはミュージアムショップだ。『細田守の原点/展』キービジュアルを使ったアイテムや、「niko and ...」とのコラボアイテムなど、展覧会オリジナルグッズが100点以上展開されている。これは棚の端から端まで、気合を入れてチェックしなければならない。
ミュージアムショップ風景 (C)細田守の原点/展
「空アート」アイテム オフィシャル提供画像 (C)細田守の原点/展
中でもピックアップしてご紹介したいのは、細田作品を象徴する、各作品の空に注目した「空アート」アイテムだ。繊細に青のトーンを使い分けつつ、各作品の印象的なシーンをごくシンプルなデザインに落とし込んでいる。『時をかける少女』から『果てしなきスカーレット』まで、どれも「わかる!」と拍手したくなるハイセンスな仕上がりだ。ジャンプする真琴のワンポイント刺繍が可愛すぎて、筆者は「靴下 空アート(税込1,320円)」を購入。なんだか履いたら跳べそうである。
最後に
『細田守の原点/展』はCREATIVE MUSEUM TOKYO(東京・京橋)にて2026年8月31日(月)まで開催ののち、大阪〜福岡会場へと巡回予定。
本展はアニメーション監督・細田守のキャリアの原点、そして全作品を貫くテーマとしての心の原点を体感できる貴重な機会だ。行けばきっと『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を見直したくなるし、作品を新たな視点で見つめることができるようになるだろう。この夏は、細田守監督の世界から目が離せない夏となりそうだ。
『細田守の原点/展』展示風景 (C)細田守の原点/展
取材・文・写真=小杉美香 写真(一部)=オフィシャル提供
イベント情報
■東京会場
会期:2026年6月20日(土)~8月31日(月)
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO[東京・京橋]
https://www.creative-museum.tokyo/
(東京都中央区京橋1丁目7番1号 TODA BUILDING 6階)
開館時間:10:00~18:00(最終入館 17:30まで)
※ただし、毎週金・土曜日および祝前日、8/11(火)~8/14(金)は20:00閉館。(最終入館19:30)
主催|CREATIVE MUSEUM TOKYO
問い合わせ|050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://hosodagenten.exhibit.jp
展覧会公式X:https://x.com/hosodagenten_
展覧会公式Instagram:https://www.instagram.com/hosodagenten
展覧会公式TikTok:https://www.tiktok.com/@hosodagenten_
巡回情報
■大阪会場
会期:2026年10月28日(水)~2027年1月4日(月)
会場:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
問い合わせ:キョードーインフォメーション TEL 0570-200-888 (12:00~17:00 ※土日祝休業)
■福岡会場
会期:2027年1月22日(金)~3月28日(日)
会場:福岡市美術館
問い合わせ:西日本新聞イベントサービス TEL 092-711-5491(平日9:30~17:30)
■通常
・前売券 ※6月19日(金)の23:59まで
一般・大学生 2,300円
高校生 1,300円
小・中学生 800円
一般・大学生 2,500円
高校生 1,500円
小・中学生1,000円
(C)細田守の原点/展
(C)「時をかける少女」製作委員会2006
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会