「<やりたいことやるべきです>という歌詞を今も信じてる」藤井隆、SLENDERIE RECORD『ファミリーコンサート』開催ーー「毎日が初日」全国11箇所で内容が全く異なるほかではありえないツアーとは
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撮影=上西由華
藤井隆が音楽レーベル・SLENDERIE RECORDを設立して早12年。デビュー曲「ナンダカンダ」リリースからは早26年となる。昨年、初開催したSLENDERIE RECORDの『ファミリーコンサート』を、今年は7月10日(金)NHK大阪ホールを皮切りに、福井・香川・宮城・長野・北海道・兵庫・山口・愛知・福岡・東京と約2ヶ月に渡って開催する。
「毎日が初日」という本人の言葉が象徴するように、毎公演出演者が違うので、全く違う内容となっている。計70曲以上を演奏するツアー。終始、「変わったことをやっているのではなくて、やりたいことをやっている」と話す藤井隆。コンサートの当日は、本人が本番前に会場ロビーで物販を売ったりと、通常では考えられないが、ただやりたいことを貫く。是非このインタビューを読んで、ツアーに訪れて欲しい。
ーー『ファミリーコンサート2026』について、藤井さんが発表されたコメントが。とても誠実で真摯なんです。初めて知る人が読むにあたっても素晴らしい取扱説明書だなと思いました。
制作スタッフから、コメントを100~200文字くらいでもらえたらと言われて。そしたら文字数を間違えて長くなってしまったんです。今はSNSでも発信できるので、自分の言葉で伝えないとダメだなと思いつつ、書きすぎたので受注ミスでもあり、発注ミスでもあるんですけど(笑)。
ーー藤井さんの人柄が凄く伝わってきました。
恐縮です。面白味のない真面目なだけの文章になって恥ずかしいなぁ、とも思うんですが、最近はしょうがないとも思っています。通りすがりに目にしていただいて読んでいただけるチャンスもあるのでふざけて変な事ばかり書いてると、時代に合っていないという自覚もあるんです。昔は記者会見でコメントを求められた時でもふざけていたんですよ。ちょっとしたコメントでも先輩方とふざけ合戦になって、書き直したりもしていました。今、怖がっているわけではないんですけど、不快な思いをさせるのは良くないので、どうしてもデリケートになりますね。そういった意味では、自分の中で今は過渡期だと思っていて。夜明け前といいますか、もう少しすれば良いやり方が見つかるような気がしています。
ーー藤井さんのコンサートは、型にとらわれない独自性があるので、事前にご本人の言葉があるのは大きいですよ。
特別なことをしていないと思うんです、この『ファミリーコンサート』って。要は歌とおしゃべりだし、ゲストもいて、みんなやってることなんで。だけど、「藤井隆」という商品がそういったことをする場合は説明が必要というか。プロモーションの時にも、良かれと思って「お笑いはあるんですか!?」と聞かれたりもしますが、「たっぷりあります!」と言うのも恥ずかしくて。自分らしいなと思うのは、ゲストをシャッフルしながら11公演全て内容が違うんです。ここまでセットリストが違うのは(ほかには)ないかなと。自分のやりたいことは、そこなんだなって。自分が面白いなと思うものを、自分の好きな方とタッグを組んで良いものをやるだけですね。「この歌を聴いて、なにか持ち帰って下さい」というのは1ミリもないし、ちょっとでも笑って帰ってもらえたら嬉しいんです。
ただ、全ての公演で内容が異なるとなると、出演者、バンド、スタッフには大変な思いをさせているなと去年やりながら感じました。自分でも変わってると思うけど、自分がやりたいことなので仕方ないんですよね。決して「変な料理を食べて下さい」というのではなくて、「召し上がれ!」の気分なんです。それには70曲近く練習しないといけない。(初日出演だけの)博多大吉さんだけが歌う1曲もあるし、バンドメンバーでも1日だけ来てくれる方もいたりしますけど、他の公演と違うクオリティーではいけない。照明さんも全部プログラミングを変えないといけないし。最早ツアーと言わないというか、毎日が初日ですよね。
去年、「また来年も!」とバンマスの冨田謙さん(key)に相談したら、「やりましょうよ!」と言って下さって。スタッフさんもみんな忙しい方ばかりなので、ホンマに嫌やったら断られると思ってるので、「やろう!」と言ってくれてすごく嬉しかったです。変わった(内容の)ことで、ご負担をおかけしているけど、自信には繋がっています。お客様に「こういう見方を!」というのはないので、ご負担はかけかません。毎回、感情が動いて面白くなりますので。変わったと言っても別に激辛ではないし……でも珍味感はあるかな?(笑)。まぁ、後藤(輝基 )君の誕生日をしつこく祝うとかはしてるけど(笑)。あと、もうひとつの要素は物販パパ。そのオリジナリティーは本来プロモーションで言えるほどではないし、舞台に向けて温存しておかないといけないのに1時間立ちっぱなしで声出しするなんて本来はしちゃいけないことでもあるんですけど。でも、図々しい言い方ですけど、僕は歌手じゃないと思っているので。やりたいことはやらないといけないし、得ることは多いので。
撮影=上西由華
ーー本番前に出演者がロビーで大声を張り上げて物販を売って、お客さんと触れあっている「物販パパ」の姿は衝撃的でした!
舞台の仕事でも劇場のロビーはもともと好きな場所でしたけど、ますます好きになりました。今年はせんとこかなと一瞬思いましたけど、でも代えがたい体験だなと。例えば、「このグッズ、他の色はないんですか?」とか、そういう声をお客様から直接聞かせてもらって嬉しかったんです。スタッフが打ち合わせで提案してくれたけど否定したことが、お客様からも同じことを言われて、ようやく「だからか!」と肌で感じることもあったりするんですよね。優しい人は物販パパを「面白い」と言ってくれますけど、ただただ自分のためにやっているので。準備してきたり想像していたことの答え合わせができると思うとゾクゾクしますし、(初日の)NHK大阪ホールの物販にいるお客様の顔がはっきり見えますから。
ーー当日のお客さんの顔が想像できる、というのは凄いことですよね。単純に本番前に出演者の方が本番以外のことをやるというのは、集中力であったりとか、色々こちらは勝手に心配していました。
感情が開いたり閉じたりパタパタしている方が(気持ちは)のせやすいんですよね。自分の歌ではあるんですけど、自分のことのように歌うのは照れくさかったりして。でも、物販パパでパタパタしていると、そのままステージに立てるというか。後藤君のツアーの時に物販パパから、そのままステージに立ったことで上手くいった成功体験があるんです。なので全部、後藤君のおかげです。あと何年できるかわからないですけど、デビュー曲の「ナンダカンダ」で<やりたいことやるべきです>という言葉を今でも信じているんです。当時のレコード会社の社長の坂西伊作さんが「デビュー曲は一番多く歌うから大切にしてね」と言ってくれて。(「ナンダカンダ」を)鼓膜通して、わりと聴いたから、自己暗示じゃないけど、もともと我慢忍耐と言うのは向いてないので、やっぱり「やりたいことやるべきです」だなと。やりたいことだから、(本番前の)物販パパは疲れにはならないと思っています。控え目の方が遠くから見てくれてるなとか、30年応援して下さっている方だなとか、初めて観に来られた方かなとか……物販に立っていたら、お客様の骨格で見てわかるというか。南野陽子さんのファンの方で認めて下さった方とか、和久井映見さんの歌が聴けて喜んでくださるファンの方とか……はいだしょうこさんのチビッ子ファンが『ファミリーコンサート』やと思ってきたらKOJI 1200(今田耕司)の「ナウ ロマンティック」を聴いてくれたり、すごいことになってきているなと思うんですけど、本当にありがたい限りです。
ーー先程、藤井さんがおっしゃったように、『ファミリーコンサート』は「毎日が初日」という言葉が本当にぴったりですよね。
最初は気付いていなかったんですけど、全部やってること違うやんとなって。だけど、セットリストを考えるのは、めちゃくちゃ楽しいです。「後藤君がここでノッてくれる。ここで呆れる、またノッてくれる」とか、そういう感情の動きや流れが見えるんです。お風呂に入っていても、寝る前でも、ずっと考えていましたし、そういうことを考えているときが一番楽しいです。今回も、まだ曲順が変わるかもしれませんが、冨田さんも「いいですよ」と言って下さっていて。バンドメンバーはみんなべらぼうに優しいです。
撮影=上西由華
ーー今年は、コーラスでココリコの田中直樹さんが出演されるのも楽しみです。
同い年で地元も隣町で、吉本同期と仲良くなる要素がありましたし、尊敬をしているんです。柔軟だし、優しいし、むちゃくちゃ戦っているはずなのに、その姿を見せないところも憧れなんです。チャレンジングな人なのに、刀が見えないというか。凄い速さで振っているはずなんですよ、刀を。本人は「歌が下手」と言うんですが、カラオケのレパートリーも広くて凄く良いし、驚きと発見をくれるんです。応援したくなるんですよね、「直樹!」みたいな。後藤君も、そんなところがありますよね。椿鬼奴さんとRGさんは海外アーティストのような感じですが(笑)。
昔、母が理容師の時代があって、『新美容』という雑誌を読んでいたんですね。「自分の好きなものを理解してないとダメですよ」というコラムがあって、好きなスニーカーを観ながらデッサンして、何日か後に今度はスニーカーを見ないでデッサンして、その時にしっかり描けたところが好きなところなんだというお話が書かれていて。そのトレーニングを自分もやってみて、自分が何かを好きになる理由はなんだろうかって考えてみると、「応援したくなる」という感情なんだということがわかってきました。田中君には、「ナンダカンダ」をリリースする時に、ロケバスの中でサンプル盤を渡すと喜んで褒めてくれたんですよね。
その人がリハーサルでコーラスを歌ってくれているのを聴いた時、「時を経て」というか……。バンドメンバーの中には学生時代の仲間という関係性という方もいて、僕も友達がおったら良いのにと思って、田中君にお呼びさせてもらったので。「時を経て」というのを、とても感じています。なので、自分にとってもご褒美感のあるツアーですね。もう1組、「時を経て」と感じるのは島田珠代さん。20年くらい前、『上海大腕』という番組でCDを出すことになった時に珠代さんとのギャグを残したくて、一緒に歌ったんです。それで一つ、達成感はあったんですけど、珠代さんと信頼しているバンドで歌ったらどうなるんだろうと、今回実験してみたくて。早見優さんはSLENDERIE RECORDを立ち上げた当初にプロデュースするという機会を下さった方で、本当に僕に力をくれたし、自分は何が好きなのかを考えるキッカケをくれた方なんです。(桂)三度さんは、ジャリズムさんの頃からテレビに呼んで下さったり、作家さんの時もナベアツさんになる時も、三度さんに変化する前夜も見せてもらえて。タフガイですよね。それと子供の頃から飽き性でそこがすごく嫌だったんですけど、何かひとつのことだけを成し遂げなくてもいいんだよというのを体現してくれている僕のヒーローですね。
ーーこうやってお話を伺うと、改めて「毎日が初日」だと強く感じています。
本当はしちゃいけないことですけど、それでも「やろう!」とみなさんに言っていただけたので、成功しないといけないです! グッズも本当にあのいいものが作れたと思ってますので。ぜひ見ていただきたいですね。
撮影=上西由華
取材・文=鈴木淳史