Manic Sheep(マニックシープ)『Rewind』来日公演インタビュー

2026.7.6
インタビュー
音楽

Manic Sheep 左から、楊浩(Gt.)、White Wu(Dr.)、Chris Lo(Vo.)、阿毛(Ba.)、Hung Yu(Gt.)

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Manic Sheep(マニックシープ)が来日公演『Manic Sheep【Rewind 2014】リリース記念ワンマンツアー/東京』を7月7日(火)に東京・Spotify O-nestで開催する。

台湾・台北を拠点に活動するシューゲイズ/ノイズ・ポップ・バンド・Manic Sheepは、2010年の結成以来、フジロック出演や海外ツアーを経て、アジア・インディーシーンを代表する存在として評価を確立してきた。シューゲイズやドリーム・ポップの浮遊感とノイズ/ポストパンクの衝動性を併せ持つサウンドは、優しさと不安、静寂と爆音が共存する独自の世界観を描き出す。最新作『Rewind 2014』は、2014年に録音されながら未完成のまま残されていた音源を、10年後に完成させた作品である。元ギタリストHung Yuのハードディスクに保存されていた音源をもとに、2024年にChris Lo、Hung Yu、White Wuの3人が再集結し再構築された。前半は台北アンダーグラウンドの空気感を、後半はクラウトロックやインダストリアル、ノーウェイヴ的な緊張感へと展開し、時間を横断する構成となっている。「Rewind」はカセットテープを巻き戻す行為を意味し、同時に時間を遡る象徴でもある。本作は過去の音を現在へと引き戻し、未完の物語を完成へと導く試みだ。

今回のインタビューでは、『Rewind 2014』リリースを記念した来日公演にあわせ、Manic Sheepの10年以上にわたる時間の往還と、その間に積み重ねられた心の軌跡をたどった。

 

ふたたび動き出した『Rewind』

Manic Sheep

――『Rewind』というアルバムは、どのようにして動き始めたのでしょうか。コロナ禍で再び連絡を取り合うようになったことがきっかけだったのでしょうか。

Chris Lo:実は当時(2014年喧嘩してから)もHung Yuに仕事では連絡を取っていました。ただ、プライベートではほとんど交流がなかったんです。ある日、たまたまHung Yuのスタジオの近くを通りかかったときに、「Hung Yuが中にいるよ。挨拶していけば?」と友達に言われて。「じゃあ、せっかくだし」と思って、そのままスタジオに入ったんです。

Hung Yu:ずっと気になってたんだけど、あの辺って何を食べに行ってるの?(笑) なんでそんなに毎回あそこを通るの?

Chris Lo:最初は本当に挨拶だけのつもりだったんです。でも座って話し始めたら、そのままずっと話し込んでしまって。仕事の話というより、お互いのプライベートについていろいろ話しました。それまでは仕事のやり取りばかりだったんですが、その日を境に、また自然とつながりが戻ったような感覚があったんです。それからしばらくして、Hung Yuのほうからこの音源の話を持ちかけてくれました。コロナ禍の頃にも、この作品について話したことはありました。でもその時点では、本格的に動き出すことはなかったんです。その後、2022年頃からバンドとして新しい作品の制作が始まり、その計画に集中していたので、この音源はいったん保留になりました。EPをリリースしたあとになって、改めて「この作品を完成させたい」という気持ちが戻ってきたんです。まずは、メンバーみんなに「やってみない?」と声をかけました。当時レコーディングしていた頃と今では、メンバーそれぞれの状況も違っています。でも、久しぶりにセッションデータを開いて聴き返してみると、みんな「これは面白いね」と感じたんです。そこに収められていた音は、いまの僕たちではありません。もちろん、今いちばん得意なスタイルでもないし、いま目指しているサウンドでもない。それでも、その頃の私たちが確かに存在していて、その瞬間がそのまま記録されていたんです。アルバムの制作期間はとても長くて、2024年から始まり、完成したのは2025年の終わり頃でした。聴き返したときは、本当に不思議な感覚でしたね。どこか懐かしいのに、同時に少し他人のようでもあって。

――久しぶりに当時のデータを開いたとき、どんなことを感じましたか。

Hung Yu:正直、かなり衝撃を受けました。「昔の自分たち、どうしてこんなにいいものを作れたんだろう」って。中には正式なボーカルすら入っていなくて、デモのまま残っている曲もありました。でも、それでも十分に魅力的だったんです。十年以上前の自分たちが、こんな作品を残していたということ自体がすごく貴重だと思いました。だからこそ、「ちゃんと完成させるべき作品なんじゃないか」という気持ちが、だんだん強くなっていったんです。

Chris Lo:アルバムに収録されている12曲のうち、9曲は当時すでに完成していた楽曲です。残りの3曲だけを、今回新たに仕上げました。

――今回の制作では、大きくアレンジを変えた部分はありますか。

Chris Lo:9割以上は当時のままです。修正したとしても細かな部分だけなので、普通に聴いている人なら気づかないと思います。メロディも、曲の構成も、アレンジの方向性も、ほとんど変えていません。私たちが残したかったのは、2014年当時の精神状態そのものだったんです。

White Wu:例えば、当時のレコーディングでは2人のドラマーが演奏していました。改めて聴いてみると、グルーヴ感に少し違いがあったんです。それならドラムだけ録り直して、アルバム全体の統一感を持たせようということになりました。なので、ドラムに関しては、ほぼすべて録り直しています。

Chris Lo:あと、面白かったのは、歌詞を書き足したり内容を整理したりしているときですね。当時、自分が何を歌っていたのか、ほとんど忘れていたんですよ(笑)。

――こうして作品を完成させた今、「これはもう今の自分たちが表現したい音楽ではない」と感じることはありますか。あるいは、現在のManic Sheepが目指しているサウンドとは違うのでしょうか。

Chris Lo:「表現したいかどうか」という話ではないと思うんです。もっと現実的な話で、この録音は12年前の私たちが残したものなんですよね。当時はみんな20代でした。でも、いまはもう40歳近くになっています。人生のステージも違えば、感じていることも違う。だから、いま書く音楽が、当時とまったく同じになるはずはないんです。でも、それでいいと思っています。

――2014年当時の自分たちは、どんな状態だったか覚えていますか。

阿毛:当時の僕は30歳を目前にしていて、大きな選択を迫られていました。バンドを続けるのか、それとも安定した収入のある仕事に就くのか。海外で働くチャンスもあったんですが、その道を選べば、きっとバンドは続けられなかったと思います。だから2014年は、自分にとって本当に大きな転機でした。結局、僕は「お金にならないほう」を選んだんです(笑)。でも、そのおかげで音楽を続けることができました。今振り返ると、その選択をして本当によかったと思っています。

Howard Yang:2014年の僕は、まだ本格的に作曲を始めてもいませんでした。その後、メンバーの脱退などがあって、作品を整理し直す必要が出てきたときに声をかけてもらったんです。正直、その頃は「曲作りってどうやればいいんだろう」という状態でした。だから、とにかく思いついたフレーズを弾いて、「こんなのどう?」と渡していただけでした。今になって聴き返すと、本当に未熟だったなと思います。当時は自分のスタイルなんて全然なくて、僕が弾いていたリフも、Hung Yuの音楽性をベースに発展させたようなものが多かったですね。「Autumn Rain」みたいな曲も、彼の影響をすごく受けています。当時は彼らと本当に仲が良くて、しょっちゅうスタジオでリハーサルを見ていたので、その音楽的な言葉が自然と自分の中に入ってきたんです。その後しばらくしてから、ようやく「自分は音楽を作っているんだ」という実感を持てるようになりました。EP以降の作品や今の新曲では、自分自身のサウンドをもっと意識して作るようになっています。

White Wu:2014年は、ちょうどオーストラリアから台湾に戻ってきた年でした。帰国する前から彼らとは知り合いで、Hung YuもChris Loも、もともとはネット友達だったんですよ(笑)。音楽の趣味がすごく近かったので、ずっと連絡は取り合っていました。僕自身もManic Sheepの音楽が大好きだったんですが、ちょうどドラマーを探していると聞いて、「もしかしたら自分にもできるかも」と思ったんです。それで、実際に加入することになりました。加入して間もなく、大きなライブがいくつも決まって、その中には『FUJI ROCK FESTIVAL』の「ROOKIE A GO-GO」もありました。本当にワクワクしていましたね。加入したばかりなのに、こんな大きなチャンスを経験できるなんて思ってもいませんでした。そのとき現地ではSlowdiveやTemplesなども観ることができて、僕たちにとっては本当に大きな刺激になりました。台湾へ戻ってからは、そのとき受けたインスピレーションを自然と曲作りへ落とし込んでいったんです。「Do I Have To Stay Awake」のような楽曲も、あのときライブを観た体験から生まれたものですね。

Hung Yu:僕にとって2014年は、本当に不思議な時代でした。ライブハウスが次々となくなっていった一方で、台湾のバンドシーンが少しずつプロフェッショナル化へ向かい始めた時期でもあったんです。今では「プロとして活動するバンド」が当たり前のように存在していますよね。でも2014年前後の台湾では、まったくそうではありませんでした。いまでは人気バンドの多くがプロとして活動していますが、当時はそうではありませんでした。いまでは有名になったバンドも、当時はまだ地下社会や河岸留言のようなライブハウスで演奏していたんです。「プロのバンドとして活動する」という発想自体が、まだ一般的ではありませんでした。2014年という時代は、本当に面白かったですね。小さなライブハウスが次々と閉店していく一方で、「何か新しいことを始めたい」と考える人たちもたくさんいた。シーン全体が絶えず変化していて、今振り返ると、あれは台湾のインディー音楽にとって非常に重要な転換点だったと思います。

Chris Lo:いま思い返すと、2014年の自分は本当に大変でした。あの年は、Hung Yuと一緒にライブをやった本数がいちばん多かった年なんです。もう「プレッシャーが大きい」というレベルじゃなくて、完全に過労でした。私たちは1~2カ月間ずっと一緒に行動することも珍しくなくて。だから今振り返ると、そのあと衝突してしまったのも無理はなかったと思います。二人とも、本当に限界だったんです。その頃は、ツアーが続いていました。3月、4月、5月と、アメリカ、カナダ、日本を回るツアーを、3年ほど繰り返していたんです。当時のManic Sheepには、マネージャーもスタッフもいませんでした。全部自分たちだけ。時には機材まで自分たちで運んでいました。ライブの本数は増えていく一方で、「このまま続けていいんだろうか」と思うようになったんです。でもその一方で、ツアーばかりしていると、新しい作品を作る時間がまったく取れない。そんな葛藤の中で、ずっと張り詰めた状態が続いていました。

 

Manic Sheep

 

Chris Lo:いまになってこのアルバムを聴くと、「いい作品だったな」と素直に思えます。でも、レコーディングしていた当時は、そんなふうにはまったく思えませんでした。心にも時間にも余裕がなくて、とにかく気持ちが荒れていたんです。レコーディングは9月から11月頃にかけてようやく終わりましたが、その頃にはもう心身ともに限界でした。Hung Yuは、それでもまだ先へ進みたいと思っていました。バンドをプロとして続けていける可能性を信じていたんです。でも私は、その頃にはまったく逆でした。とにかく一度立ち止まって休みたかった。もし、いまの年齢だったら、あるいはもう少し大人だったら、「まずAをやって、そのあとBをやろう」と落ち着いて話し合えたかもしれません。でも、当時は違いました。朝起きた瞬間から仕事。ライブが終われば次の移動。台湾へ戻ってきても、お互い顔も見たくないくらい疲れていた(笑)。だから、あの脱退という出来事も、ある意味では避けられなかったんだと思います。あの頃の私は、本気で「もうManic Sheepは続けたくない」と思っていました。

 

『FUJI ROCK FESTIVAL』がなかったら……いまのManic Sheepは存在していなかった

Chris Lo:大きな衝突があって間もない頃、私たちは「ROOKIE A GO-GO」のオーディションでグランプリを獲得しました。その結果、もう一度『FUJI ROCK』という大きな舞台に挑戦できることになったんです。正直、「続けるべきなのか」と最後まで迷っていました。でも、まずはメンバーを集めようと思いました。最初にHoward Yangに声をかけて、そのあと張芳瑜にも参加してもらいました。実は張芳瑜は当時、ベースなんて弾けなかったんですよ。もともとはバイオリンを弾いていたので(笑)。でも「どちらも弦楽器だから、何とかなるだろう」と思って。そこから一つひとつ教えながら、一緒に形にしていきました。あの頃は、本当に合宿みたいな毎日でした。毎日リハーサルをして、毎日アレンジを直して。私は曲を書くことはできても、一人ですべてを最高の形で演奏することはできません。だからこそ、それぞれの役割に合った人たちが必要だったんです。みんなが集まってくれたから、この作品を完成させることができました。もし、『FUJI ROCK FESTIVAL』がなかったら……いまのManic Sheepは存在していなかったと思います。

――では、いま振り返ってみて、このアルバムがこのタイミングで完成したことは、最も良い時期だったと思いますか?

Chris Lo:そう思います。いま振り返ってみると、これはむしろ「贈り物」のようなものだと感じています。その時点では必ずしも実感できませんでしたが、十年後に開いてみると、いろいろなものがちゃんと残っていることに気づくと思います。この数年間、実際それぞれが別々の活動をしてきました。例えば、Hung Yuはレーベル運営をうまくやっていますし、僕自身も楽曲制作の面でかなり成長しました。小白も、いまではプロのミュージシャンです。それぞれの分野で多くの経験を積んできました。世間的な成功、例えば、興行収入や売上などは、自分たちではコントロールできません。ただ純粋に音楽という観点から見ると、いまのほうがより完成度は高いと思います。

Chris Lo:昔は、自分たちの最大の問題は「作曲」だと思っていました。でも後になって、それは違うと気づきました。実は「ライブの本数が少なすぎた」ということでした(笑)。今回の7月の日本公演は、ほぼ初めて2時間に近いワンマンライブになります。これまで私たちは本格的なワンマンをきちんとやったことがほとんどありませんでした。作品をより多くの人に聴いてもらう機会といえば、音楽フェスや40~50分程度のライブが中心でした。だから今回、すべての楽曲をまとめて演奏するのは、とても新しい体験です。以前はセットリストを組むとき、似た雰囲気の曲をまとめることが多かったのですが、今回は違います。異なる時期、異なるスタイル、異なる感情の曲をすべて同じセットに入れています。そのため挑戦は大きいです。

White Wu:まだ未熟な部分はたくさんあります。これまでこういった形のライブをやったことがなかったので当然ですが、自分たちでも改善できる点はまだ多いと分かっています。欠点はありますが、それが今の自分たちの姿です。また、台北公演の経験を経て、メンバー同士で多くの時間をかけて振り返りや改善を行い、ライブの各要素を改めて見直しました。台湾のライブでは細かいミスはいくつかありましたが、完成度は確実に上がっています。自己採点をするなら、台北公演は6割程度、台中公演は7~8割まで来ていると思います。観客の反応もとても良く、感謝しています。そして、ぜひ東京公演にも来ていただけたら嬉しいです。

 

 取材・文=Asami Ma

ライブ情報

Manic Sheep【Rewind 2014】リリース記念ワンマンツアー/東京
日程:2026年7月7日(火)
会場:Spotify O-nest(〒150-0044 東京都渋谷区円山町2−3 O-WESTビル6F)
開場19:00 / 開演19:30
 
出演:Manic Sheep
 
料金:前売4,000円(税込)
※ドリンク代別途必要
 
受付期間 2026年3月27日(金)12:00~7月6日(月)18:00
 
主催:MUSIC VALLEY/Airhead Records.  
 
問合せ:Spotify O-nest Tel:03-3462-4420