井上芳雄「帝国劇場はまるで人のように生きていた」 日本ミュージカル界初のアリーナツアー『New HISTORY COMING ARENA LIVE -The Imperial Theatre Symphony-』のホスト役としての想いをインタビュー
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井上芳雄 撮影=福岡諒祠
2026年8月~9月に開催される、日本ミュージカル界初のアリーナツアー『New HISTORY COMING ARENA LIVE -The Imperial Theatre Symphony-』。
1911年に日本初の西洋式演劇劇場として開場した帝国劇場。1966年には二代目・帝国劇場が開場し、世界に誇る舞台機構を備え、帝劇だからこそ生まれた奇跡の演劇を提供しつづけ、2025年2月をもって建て替えのための休館に入った。新・帝劇が開場するまでのこの時間に、過去・現在・未来の帝劇に想いを馳せる時間となるような、最高のエンターテインメントを届ける機会として行われるのが、『New HISTORY COMING ARENA LIVE -The Imperial Theatre Symphony-』だ。
SPICE編集部は、本コンサートのホストを堂本光一とともに務める井上芳雄にインタビュー。本コンサートの構想や、旧帝国劇場・新帝国劇場への思いまでたっぷり語ってもらった。
アリーナの専門家・堂本光一と挑む日本初の挑戦
ーー日本ミュージカル界初のアリーナツアー『New HISTORY COMING ARENA LIVE -The Imperial Theatre Symphony-』ということで、帝劇の名前を背負ったアリーナツアーです。改めて、今のお気持ちはどうですか。
1回閉じて、無くなったのだけれど、名前がついたアリーナツアーですからね。帝劇がある意味人のように感じられると言いますか......こんなに愛されて、偲ばれる劇場は他にないんじゃないかな。去年2月に『THE BEST』という形で思いの丈を伝えて、しっかりお別れをしたつもりではあるんですけど、新しい帝劇ができるまでの5年、やはり火を絶やさないというと大袈裟ですけど、帝劇への思いを歌い続けていこうということなんだと思います。
(堂本)光一くんと二人でホスト役をさせていただきます。やはり僕たちは帝劇に育ててもらったので、次の帝劇の完成までしっかりと熱を伝え続けていかないといけないという思いがありますから、今回こうしてホスト役をやらせてもらうことを嬉しく思っています。
ーーこのツアーについて、堂本さんとは具体的にどんなお話をしてきましたか?
光一くんも忙しいので、たまにしか会って話してはいないんですけど......どちらかというと今までは、この前の『THE BEST』もそうですけど、ミュージカルをやっているところに、光一くんをはじめとしたSHOCKチームが来てくれて、一緒にやるという感じだった。でも今回は劇場を飛び出しますから。しかもアリーナ級の会場もありますから。いわゆるミュージカルをやっている僕たちの方が初めてのことが多くて、逆に光一くんはアリーナの専門家みたいなとこあるので(笑)、いろいろなアイデアをもらいながら、やりたいことを勝手に言いながら、「それは難しい」とか言われながらやっています。
いずれにせよ、せっかくやるのだから、今までにないことをやろうとはお互い話をして。アイデアを出し合っている状況ですね。
ーートロッコに乗るというのは......?
そうそう。光一くんのコンサートで、彼がトロッコに乗っていて、なんかアリーナといえば、みたいなところもあるじゃないですか。僕らミュージカル俳優はなかなかトロッコに乗らないので、いいなぁと思っていたんです。とはいえ、言ったはいいけど、全部の会場で乗れるわけでもないし、いろいろ大変そうではあるんですけど......僕は少なくとも乗れるところでトロッコに乗る予定です!
ーーええ!楽しみです!では、結構井上さんご自身も演出面で関わっていらっしゃるんですね?
がっつりとは言えないかもしれないですけど、でもこれまで打ち合わせを3、4回はやっているかな。全部の打ち合わせには出られていませんが、2、3回に1回ぐらいの頻度で出席していますし、他の出演者が決まる前から、楽曲や構成みたいなことに口を出させてもらったりしています。
......この前もプロデューサーと光一くんと3人で飲んでいたんですけど、アイデアがどんどん出てきちゃって。飲んでいるので、覚えていないこともちょっとあったりはするんですけど(笑)、そういう場でも「いいね」と思うことがたくさん出てくるんですよね。今の段階では、光一くんの意見と僕が言うことにそんなに違いはなくて、お互い「いいね」と思っているんです。「それは......」というのは、そんなにない。だからプロデューサーの方が大変そうですね。「マジで?それやる?」みたいな感じだったので(笑)。
とまぁ、僕たちが言いたいことを言っている感じではあるんですけど、でもそうやって、新しいアイデアが実際プログラムになったりはしています。今はまだ稽古中なので、また変わる可能性はあるんですけどね。
ーー今回は『エリザベート』と『Endless SHOCK』の2作品にフィーチャーしたパフォーマンスが予定されていますが、『エリザベート』に堂本さん、『Endless SHOCK』に井上さんが出ることも......?
ありますよ!基本的に全員が何らかの形で両作品に関わるのではないかな。多い・少ないはあると思うんですけど、多少『SHOCK』にも『エリザベート』にも関わっていただくことになると思います。例えば、『エリザベート』は、出ている人は出ているけど、関わったことがない人はもちろん全然知らないだろうし、印象すらもないと思うので、そういう意味でも面白いですよね。「あの人がこれ歌うんだ?」みたいなのが、両作品に関してはあると思います。
ーー井上さんは本当にライバル役に......?
ライバル役もやると思いますし、場合によってはふぉ〜ゆ〜さんがやっていた役まわりみたいなところもやると思います。まぁ、光一くんはコウイチだろうけど、他の人は結構流動的にやると思いますよ。逆に光一くんは、エリザベートの時は1役ではないと思います。下手したら3役ぐらいあるかもしれません。
ーーそれは楽しみです。この2つの作品以外のものもあるんですよね?
そうですね。帝劇の名前を背負ったコンサートだから、帝劇で上演した作品をやるイメージが強いと思うんですけどーー『THE BEST』のときは基本的にそうだったと思いますが、今回は帝劇のものもやりますけど、帝劇でやられていないミュージカルも入っていますし、何ならミュージカルではない、それぞれの自己紹介的なナンバーが入っていたりもします。そういう意味では、結構間口が広いコンサートですかね。
ーー「カレーライスの女」が来たりする可能性も......!
そうですね(笑)。本人が歌いたければ、歌っていいという自由度はあります。
土地ごとに色を変える豪華ゲスト陣と「演劇的」な舞台機構
ーーレギュラーメンバーとして、島田歌穂さん、平原綾香さん、ソニンさん、佐藤隆紀さん(LE VELVETS)、桜井玲香さん、岡宮来夢さん、石丸幹二さん(東京、神戸のみ)という豪華な9名のスターに加え、19名の選りすぐりのシンガーズ&ダンサーズ、30名のオーケストラも編成されています。
全員はまだ揃っていませんが、シンガー&ダンサーズの皆さんの稽古は始まっていて、それぞれ歌稽古してるぐらいかなと思います。いや、意外とまとまりがないというか、いい意味で1色ではない感じのメンバーですよね。お互い共演したり共演したことがなかったりな間柄だと思うので、それは楽しみでもあります。
僕も初めて舞台上でご一緒する方、いらっしゃるかな。多分桜井さんとか岡宮くんとかは公演で一緒になったことはないので、どんな化学反応が起こるか分からないです。
ーーまた東京ガーデンシアター公演は市村正親さん、東京国際フォーラムホールA公演は伊礼彼方さん、札幌・北海きたえーる公演は氷川きよしさん、神戸・GLION ARENA KOBE公演は城田優さん、小倉・北九州メッセ公演は吉原光夫さんがスペシャル・ゲストです。
はい。みんな濃いめなので(笑)、場所によって雰囲気は変わると思います。セットリストも多少デュエットが場所によって変わったり、実際にトロッコに乗る・乗らないといった演出面も変わったりするので、土地土地によって色の違うコンサートになるんじゃないかなという気はしています。
もちろんゲストのコーナーがしっかりあるので、そこで皆さんの歌やトークは楽しんでいただけると思います。異色なところで言うと、氷川きよしさんが北海道に来てくださるので、個人的にはとても嬉しいし、楽しみにしています。ミュージカルのイメージはあまりないのかもしれないんですけど、でもご本人はポップスも含めていろいろ歌われるので、どんな曲を歌ってくださるか楽しみですね。氷川さんはミュージカルとの親和性もあるんじゃないかなと思うんですけどね。キャラクター的にも。
ーーこのコンサートをきっかけにばんばんミュージカルにご出演も......?
そうだといいですよね!......あとはコンサートが大嫌いな吉原光夫さんがどうして出てくれるのかなって(笑)。ちょっと小倉・北九州メッセ公演が心配ではあるんですけど(笑)。帝劇の『THE BEST』のときに、「自分は本当は嫌なんだ」とすごく言っていたから、よく出てくれるなと思うんですけど、でもそれぐらい貴重ですよね。光夫さんは舞台で芝居をしながらなら歌えるけど、そうでないと歌えない人なので、また歌ってくれるのは、すごく楽しみですね。
それから、市村さんはね、もう市村さんが来てくれないと始まらないというぐらい、ミュージカル界の重鎮ですから。今回は何を歌ってくれるのかな。帝劇の『THE BEST』のときも来てくださって、あの時の1曲の入魂具合と場をもっていくエネルギーはすごかった。あれは市村さんしかできないから、1周回って何の勉強にもならないなというくらいの(笑)、オーラがあるので、市村さんが来てくださるのは大きいと思いますね。
伊礼くんはこの前たまたま空港で会ったんですよ。お互い違う地方公演に行くときで「よろしくお願いします」と言っていました(笑)。でも伊礼くんも実はあんまりコンサートのゲストにバンバン出るイメージがないというか、どちらかというと、光夫さん寄りなイメージなんです。お芝居を特に今頑張ってらっしゃいますし、歌も歌えるけれどああ見えてシャイなところもあると思うんで、その伊礼くんがどんなミュージカルスターぶりを見せてくれるか楽しみだなと思います。
あとは、(城田)優くん。僕は最近ご一緒できていなくて、コンサートぐらいなんですけど、彼は華やかですから、GLIONという新しい綺麗なアリーナと城田優が合うなと思っています。海辺にあって、すごく雰囲気のいいところらしいですよ?城田優っぽいじゃないですか(笑)。
ーー舞台セットはどんなものになるんでしょう?
松井るみさんのセットの模型を見ていると、帝劇の今とこれからを感じさせるような、結構演劇的なセットなんです。本当の今の帝劇の状況は逐一分かりませんけども、一度解体されて新しくなっていくという帝劇の状況を結構攻めて表現されているなぁと。そのセットを背景に『Endless SHOCK』や『エリザベート』の世界が展開されるというのは、ちょっと他ではみたことが無い雰囲気のものになるでしょうね。
他にも、トロッコもそうだし、すごく高くまで上がる「光剛山(こうごうさん)」と、まさに光一くんと(堂本)剛くんの名前から付けられたぐらいオリジナルな機構があって、うまくいけば空間に人が浮いているように見えるらしいんです。それはミュージカルの舞台ではなかなかできないことだと思うし、僕らもそういうところで歌ったことがないから、どんな気持ちになるのか楽しみでしかないですね。
ーー帝劇ファンとしては『THE BEST』で盛大にお別れをして、これからの5年をある意味楽しみに待つためのコンサートかと思うんですが、改めて井上さんにとっての帝国劇場とはどんな存在ですか。
もう今となっては、帝劇という人というか、擬人化されておかしくないぐらいな感じです。帝劇という生き物がいたんじゃないかなって。まぁ、僕たちが言っている帝劇は2代目ですけどね。それぐらい、生き生きと自分たちの中に息づいている。『THE BEST』をやったときも、こんなにみんなの思い出の中に、それぞれの居方(いかた)で帝劇はいるんだと思いましたしね。
最後、劇場が閉まってから光一くんとちょっと中を見せてもらったりしたんですね。あんなにずっと通っていたのに、それなのにまだ知らない顔があって。まだ見せてくれるか!という瞬間もたくさんありましたし、本当に最後だという時は、やっぱり人と別れるのと同じくらい変わらない寂しさがあったので、帝劇ってやっぱり生きてるんだなと思います。
『THE BEST』の主役は帝劇だったと思うし、今回もある意味同窓会みたいな感じで帝劇を偲んで、帝劇を肴にみんなで集まるコンサートになればいいなと。それぐらいみんなに愛された人(劇場)だったんだなと思いますね。
ーー新しい帝劇に期待することを改めて教えてください。
そうですね。別に僕が設計に関わっているわけじゃないので、どうなるか分からないんですけど、でもやっぱり前の帝劇は菊田一夫先生が想像を超えるスケールで作られた。もちろんその途中であんまり使われなくなった機構もあったかもしれないですけど、でもそれぐらいの気合の入った、「こんなの他にないね」と言われるようなスケールの大きな劇場であってほしいなと個人的には思います。
もちろん、その時代に合わせて変えていかないといけないものもあるでしょうし、今と5年後で必要とされるものはまた違ったりすると思うので難しいとは思うんですけど、そこは時代に合わせた、誰にでも扉を開く劇場であってほしいし、日本の先頭を走る機構や機能、設備、優しさを持っていて欲しい。というのも、この前、韓国に行ったら、もうメガネに字幕が出て、4カ国語ぐらい選べて、映画の字幕のようにミュージカルを見ることが結構普及していると聞きましてね。今は手話同時通訳の公演もありますが、そういう風にどんな人も楽しめる劇場に…。前の帝劇がそこまでだったかは分からないし、古かったからそこまでじゃなかったところもきっとあったと思うんですけど、みんなに扉を開く、名実ともに大きな劇場であってほしいなと思います。
ーー最後にコンサートを楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします!
僕たちとしては、帝劇のことをもう1回、みんなで分かち合うコンサートにしたいなと思っていますし、帝劇で上演されたものをはじめとしたミュージカルソングや、広く言えば音楽の素晴らしさをみんなで分かち合うコンサートにしたいなと思っています。
いろいろな場所に行ける、北海道や小倉や神戸に行けることがとても大事だとも思っていて。帝劇のことをお知らせしに行くというか......だって帝劇はそこになかったから、行ったことない人がいっぱいいて当たり前じゃないですか。でも、帝劇ってこういう劇場で、こんな作品が上演されてきて、こんなに僕たちが愛していたんだよということを伝えにいく気持ちが結構大きいかなと思います。
そこで初めてミュージカルや帝劇のことを知ってくださった方が「じゃあ帝劇が新しくできたときには行ってみたいね」とか「ミュージカルって、面白いね」となることもすごく大切な期待すること。僕らは扉を大きく開けて、各地に行って、皆様をお待ちしています!待っていてください!
取材・文=五月女菜穂 撮影=福岡諒祠
公演情報
『New HISTORY COMING ARENA LIVE
-The Imperial Theatre Symphony-』
<CAST>
堂本光一 井上芳雄 島田歌穂 平原綾香 ソニン 佐藤隆紀 桜井玲香 岡宮来夢/石丸幹二
※石丸幹二は東京・神戸のみ出演
シンガーズ&ダンサーズ
青山郁代 朝隈濯朗 家塚敦子 池谷祐子 石田佳名子 植竹奈津美 感音 川口大地 小石川茉莉愛
木暮真一郎 佐伯理沙 酒井航(東京国際フォーラムを除く) 中西彩加 中野太一 原慎一郎 本田大河 水島渓
MAOTO(東京国際フォーラムのみ出演) 吉田萌美
市村正親(8月7日-9日 東京ガーデンシアター公演)
伊礼彼方(8月13日・14日 東京国際フォーラムホールA公演)
氷川きよし(8月20日 札幌・北海きたえーる公演)
城田優(8月28日-30日 神戸・GLION ARENA KOBE公演)
吉原光夫(9月5日・6日 小倉・北九州メッセ公演)
構成・演出:上田一豪
音楽監督:塩田明弘
音楽監督助手・指揮:田尻真高
振付:川崎悦子・青山航士・藤林美沙
照明:関口大和
音響:山本浩一
映像:KENNY・松澤延拓
衣裳コーディネート:風戸ますみ
ヘアメイク:川端富生
歌唱指導:亜久里夏代・後藤祐香
稽古ピアノ:宇賀村直佳・久田菜美・山田梨菜
演出助手:斎藤 歩
プロデューサー:齋藤安彦
製作:東宝
日程:2026年8月7日(金)18時、8日(土)13時/19時、9日(日)13時
会場:東京ガーデンシアター
会場:東京国際フォーラム ホール A
会場:札幌 北海きたえーる
会場:GLION ARENA KOBE
会場:小倉 KITAKYUSYU MESSE