「チェロのレパートリーを僕が広げる。後世のために先陣を切る覚悟」——留学の地パリから帰国直後の菅井瑛斗が、黒岩航紀と挑むスリリングな“ヴァイオリン曲への挑戦”

2026.7.9
インタビュー
クラシック

『菅井瑛斗 チェロリサイタル2026』

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「ヨーロッパに行ったら、作曲家のことを身近に感じられるようになった」——。芸術の都パリでさらなる進化を続けるチェリスト・菅井瑛斗が、この7月凱旋リサイタルを開催する。舞台に選んだのは浜離宮朝日ホールだ。

そこで彼が披露するのは、チェロの王道曲ではない。フランクのソナタやサン=サーンスといった、ヴァイオリンのために書かれた超絶技巧の名曲たちにチェロ1本で真っ向勝負を挑む。「後世に続くチェリストのために、僕が先陣を切ってレパートリーを増やす」と語る彼の言葉からは、単なる凱旋コンサートに留まらない熱い野心が溢れている。

さらにピアノには、前年8月の公演の楽屋での“ある一言”から物語が繋がっていたという実力派・黒岩航紀を迎える。

実際の作曲家たちが暮らしたパリの空気を吸い、2026年最新のヨーロッパトレンドを新鮮な状態で表現するという菅井。名手・黒岩と舞台上でスリリングな「音楽のイタズラ」を仕掛け合うという、今ここでしか目撃できない特別なステージの裏側をじっくりと紐解く。

■海外留学を経て、久しぶりの日本でのステージへ!

ーー現在は海外へ留学中ですが、日本の外に身を置いたことで、ご自身の「音楽の捉え方」や「音の色」にどんな変化があったと感じていますか?

現在パリ在住になり一番変わったと感じるのは、実際に作曲家が暮らしていたヨーロッパに住む事により作曲家との距離感が近くなった事です。
実際にサン=サーンスが通っていたマドレーヌ寺院を毎日散歩で見かけたり、パリに暮らしていたショパン像が公園にあったりとクラシック音楽が日常に浸透しています。
これまでは架空の人物くらいに思っていた作曲家のことを、日本で言う坂本龍馬くらいの距離感で感じる事ができました。

ーー今回、久しぶりに日本のファンの皆さんの前でリサイタルです。決まったときの率直なお気持ちはいかがでしたか?

最高のタイミングだと思いました。リサイタルの開催日がパリからの帰国直後なので、2026年最新のヨーロッパのクラシック音楽トレンドを日本でお見せできる事がとても楽しみです。
これまで応援して下さった皆様への感謝を音楽を通じてお伝えできればと思います。

■「チェロでヴァイオリン曲を弾く」という、スリリングな挑戦

ーーフランクのソナタに、サン=サーンスの『ロンド・カプリチオーソ』。ヴァイオリニストが命をかけるような難曲たちを、あえて今、チェロで鳴らす。このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

バイオリンで弾かれるモンティ作曲チャルダッシュ。これは元々マンドリンの曲だったと言われています。それをバイオリニストが努力してバイオリンの曲として落とし込む事によりバイオリニストの重要なレパートリーとなりました。
しかし、チェロは他の楽器からインスピレーションを受けてチェロ曲に落とし込むという事をこれまでほぼしてこなかったせいで有名な曲のレパートリー数がバイオリンに負けています。
このままではチェリストのリサイタルにおける選択肢が増えません。その為、後世に何百年と続くチェリストのために、僕が先陣を切ってバイオリンの難曲をチェロに落とし込もうと思ったのが今回の選曲のきっかけです。

そしてフランクとサン=サーンスはパリで過ごした作曲家。今のパリで修行をした菅井瑛斗が最も演奏する意味があると思い選択しました。

ーー高音域の華やかさを持つヴァイオリンの曲を、低音の王様であるチェロで表現する。そのときに生まれる「チェロにしか出せないディープな魅力」とは何ですか?

チェロの一番の特徴は音域の広さです。
「序奏とロンドカプリチオーソ」をチェロで演奏すると、その超絶技巧の合間に現れるゆったりとしたメロディがより深みのある低音で歌う事ができます。緩急の差がより広がるのです。
人の声に最も近いといわれるチェロの音色であるからこそ生まれる新たな発見を感じて頂けるはずだと確信しています。

■黒岩航紀と仕掛ける、妥協なき音の対話

ーーピアノには、実力派の黒岩航紀さんを迎えます。今回のプログラムはピアノパートも超重量級ですが、黒岩さんとリハーサルを重ねる中で、どんな火花が散っていますか?

昨年8月のソロリサイタルツアーの最終公演である東京銀座王子ホール公演が満席で終演した後、黒岩さんと楽屋で少しお話をするタイミングがありました。
その際黒岩さんがふと、『次回はソナタもやりたいな』とおっしゃったんですね。
そのセリフが妙に僕の頭に残り、しばらくバイオリンソナタをチェロソナタに落とし込めないか探していた時期があったんです。
そんな中で今回のリサイタル開催が決定し、パリからの帰国直後という事があったのでフランスにゆかりのある作曲家に絞る事が出来ました。
そういう意味では、昨年の8月からこのリサイタルの物語が始まっていたとも言えますね
今回はピアノオンリーの箇所も多いので、そこで自由に歌って頂いたピアノに反応してチェロが出てくる相乗効果が本番まで続くのでとても刺激を頂いてます。

黒岩航紀(ピアノ)     (C)Makito Ishikawa

ーー単なる「伴奏とソロ」ではなく、二人の名手がステージ上で対等にぶつかり合う面白さはどこにありますか?

黒岩さんは緻密に音楽を組み立てられ、尚且つ自由に歌われる特別なピアニストです。
そんな黒岩さんとソナタを演奏すると、僕が本番でだけしかける音楽のイタズラみたいな物をどっしりと受け取って下さるだけでなく、舞台上でイタズラし返して下さります。
これまでのリサイタルでそんな事が多々ありましたが、今回はソナタが2曲もあるのでよりその仕掛けあいが興味深く味わえると思います。

■この夏、ここでしか聴けない「新しい響き」を目撃せよ

ーー7月19日、当日ホールを訪れる観客の皆さんの脳裏に、どんな衝撃(あるいは景色)を焼き付けたいですか?

パリ留学による進化です。フランスの師匠の元で沢山の新しい音色を獲得しましたし、ヨーロッパで沢山の芸術を吸収してきました。
それはもちろん音楽だけでなく絵画や建築、そして生活感も学びました。
ルーブル美術館やオルセー美術館、オランジュリーにジヴェルニー。
フランスでの師匠デュマルケットのレッスンでも、『ここはパリだよ。今日もいい天気でしょ。もっと気楽に歌ってごらん』と毎回のように教えられました。
パリ修行でどのような進化が起こったか楽しみに見て頂ければと思います!

ーー最後に、新しい音楽の体験を求めているSPICE読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。

チェロによるバイオリン曲プログラムと、チェロ曲の名曲どちらも含まれた特別なコンサートです。そして2026年最新のヨーロッパトレンドを新鮮な状態で表現します。
今しか体験できない特別なコンサートプログラムとなっていますので、当日皆様と一緒に感動出来ることを楽しみにしています!

公演情報

『菅井瑛斗 チェロリサイタル2026』
 
日程:2026年7月19日(日)13:30分開演(開場12:30分)
​会場:浜離宮朝日ホール
 
出演:
菅井瑛斗(チェロ)
黒岩航紀(ピアノ)

プログラム:
・フランク ヴァイオリンソナタ イ長調 FWV8
・サン=サーンス 序奏とロンドカプリチオーソ Op.28
・フォーレ 夢のあとに
※都合により曲目・曲順などを変更させていただく場合がございます。ご了承ください。


一般 5,000円
U25 3,500円

主催:タクティカートクラシックス
お問い合わせ:TEL 050-1792-0075 (平日11:00-18:00)
  • イープラス
  • 菅井瑛斗
  • 「チェロのレパートリーを僕が広げる。後世のために先陣を切る覚悟」——留学の地パリから帰国直後の菅井瑛斗が、黒岩航紀と挑むスリリングな“ヴァイオリン曲への挑戦”