板歯目、未来を左右する自身最大キャパでのワンマンはバンドの大きな成長を見せる
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板歯目
『板歯目 LIVE TOUR 2026~なんてHAPPY LUCKYツアー~』2026.06.26(fri)Spotify O-WEST
6月26日、東京・渋谷のSpotify O-WESTで『板歯目 LIVE TOUR 2026~なんてHAPPY LUCKYツアー~』ファイナルを観た。3月にアメリカで〈SXSW 2026〉出演、4月に2nd EP『なんてHAPPY LUCKY』リリース、そして怒涛のツアー。ここまで7本は対バンだが、今日はワンマン、しかも過去最大キャパ。フェスで最前列に突っ込んでいきそうなタイプのオーディエンス(私見です)で、フロアはしっかり埋まった。天運我に有り。バンドの未来を決める試金石だ。
1曲目は『なんてHAPPY LUCKY』と同じく「黄色い」。メタリカタイプのスラッシュメタルなギターリフにダンサブルなグルーヴを加えた、煽情的な1曲。千乂詞音(Vo&Gt)は黄色いボブヘアーに目元きらきらラインストーン、お洒落に決めて歪んだギターを弾きまくる。庵原大和(Dr)は一見無表情、しかしとんでもない熱量の爆裂ドラムでリズムをリードする。長身美形サポートベースの音も図太い。3人揃って実験室で何かが爆発してるような音がする。「地獄と地獄」「POLICEMAN」「KILLER,Muddy Greed」と、ノンストップでロックンロールが途切れない。危険な音だ。
千乂詞音(Vo&Gt)
「ファイナルにたどり着けました。今日もやるべきことをやるだけです。いっぱい曲やります」
しゃべる時はゆるくてキュートな千乂は、歌う時は爬虫類の目に豹変する。庵原はコーラスで時に千乂を喰うほどの叫びを聴かせ、シンプルなセットから3人ぶんくらいの複合リズムを叩き出す。「イルカ is here」「ちっちゃいカマキリ」「誰かのフラストレーション」と、ワルツ、カントリーパンクなど曲調の幅を広げながら劇的ロックバラード「カプセル」へ。プログレメタルばりの高度なスキルと複雑な構成、静と動のコントラストでぐいぐい引き込む。
中盤のハイライトは間違いなく「わたしたちのストレージ」だ。スローな中に熱情を込めた激しいバラードで、スポットを浴びて時につぶやき、時に喚き叫ぶように歌う千乂の気迫が凄い。思い入れのある曲なのだろう。きれいに整っていないし、恰好もつけない。でも歌わずにはいられない、表現者の性(さが)を見せつける圧巻のパフォーマンス。
千乂の強烈なギター搔きむしりから始まる「芸術は大爆発だ!」で、誰かがマイクを持って一言だけ叫んで駆け抜けていく。誰だあれは。続く「沈む!」で再登場、今度は千乂にしっかり紹介してもらったのは、バンドのヘアメイク+グッズ制作スタッフの「たまちゃん」。千乂の旧友で、曲作りにもTシャツ作りにも大いに貢献してるらしい。二人のフレンドリーなゆるいトークに、会場内の空気が急にほっこりした。バンドの素顔が見えた気がした。
庵原大和(Dr)
シニカルにコミカルに攻め立てる「悪口」から戦闘再開。みんな揃って“うるせぇ!”と声を揃える「スランプメーカー」から「オリジナルスクープ」「FREEMAN」、そして“めんどくせぇ!”の「親切」。口の悪いバンドに思われそうだが、板歯目は普段着の言葉を歌にしているだけだ。声を揃えて歌うオーディエンスの代弁者だ。ここまで歌い叫んでびくともしない千乂の喉は宝物だ。スティックさばきがあまりに速すぎ強すぎ、自然にディレイがかかったように聴こえる庵原のドラムは化物だ。
「あと何年できるだろうってよく思います。今日が最後になるかもと思いながら、あとちょっと、全力でやります。共に生きましょう」
板歯目
千乂の本音のメッセージが、オーディエンスの心にグサッと刺さったのがわかる。変拍子を織り込んで突っ走る「オルゴール」から始まるラストスパートは、千乂の“今日が最後になっても全力スピリット”をぶちまける「心底心中したい」、庵原の狂気じみた陽気が炸裂する「HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY」と、『なんてHAPPY LUCKY』からの二連発で駆け抜けてゴールテープを切る。およそ70分、しかし密度と満足度は時間よりはるかに濃い。
アンコールで「父ちゃん、母ちゃんが来てるんだ」と紹介し、「大きく育ててくれてありがとう」と言って拍手を浴び、「いつかちゃんと就職するから許して。もうちょっと遊ばせて」と言って笑いを取る。千乂のキャラクターは唯一無二だ。「まず疑ってかかれ」「さいごの天地物語」、そしてもう一回「HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY」を演奏して、これでツアーはすべて終了。お疲れさまでした。と思いきや、鳴りやまない拍手に呼び戻され、「残業かよ!」と言いながらも、本日3回目の「HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY」(やるたびに速くなる)を叩きつけ、ツアーは幕を下ろした。大きく成長を遂げた演奏力はもちろん、オーディエンスとの一体感こそが最大の収穫だろう。板歯目を、自分の歌としてまっすぐ受け止める人がこれだけいる。バンドはまだまだ伸びる。
取材・文=宮本英夫
板歯目
リリース情報
1.黄色い
2.スランプメーカー
3.心底心中したい
4.悪口
5.FREEMAN
6.HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY HAPPY
7.板歯目 pre.居合
(誰かのフラストレーション~納得いかない~カプセル~親切~さいごの天地物語) @2026.02.26.渋谷Spotify O-Crest
※CD限定収録