「林遣都さんを独占したかった(笑)」安田顕が語る真っ向勝負の二人芝居『死の笛』【オフィシャルレポート到着】
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安田顕
戦時下のある国で隣同士、敵国の炊事班のコックとして働く――。7月24日(金)~8月2日(日)、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて、人気実力派俳優の安田顕と林遣都の真っ向勝負の二人芝居に魅せられる『死の笛』が上演される。安田が企画・プロデュースし、脚本を坂元裕二、演出を水田伸生が手掛けて2年前に初演した注目作の再演だ。作品が生まれたきっかけやその魅力、林とのケミストリーなどを安田が熱く語ったオフィシャルレポートが到着した。
安田顕
――林遣都さんとドラマで共演した時に、ぜひ一緒に二人芝居をしたいと言われたそうですね。
4年前にドラマ『初恋の悪魔』で共演した時に、一緒に演じていてすごく楽しかったし、心が躍ったんですね。その時の感覚で、二人芝居したらどれだけ楽しいだろうと。ダメモトでお願いしてみたら、林さんも「やってみたい」と快く引き受けてくださったんです。
――企画・プロデュースは安田さんですが、脚本を坂元裕二さん、演出を水田伸生さんにされたのは?
僕は座組を組み、坂元さんには、林さんとの二人芝居にしていただきたい、「鳥の歌」という楽曲を使って、舞台にチェロを入れてくださいとお願いしただけなんですよ。坂元さんの書かれた本には僕は何も口を出していませんし、坂元さんの中から生まれたもの。坂元さんの作品の言葉の美しさはあの方にしか書けないですし、今回のために書き下ろしてくださいました。
演出は坂元さんとタッグを組んで『初恋の悪魔』をはじめ、『Mother』『Woman』など名作ドラマをいくつも作られてきた水田さんにお願いしたら快く引き受けてくださって。19歳で芝居を始めて 、20代は北海道で頑張り、 30代 、40代と色んな世界でお芝居を経験し、積み重ねてきたことの一つの結果として、自分が尊敬する人や大好きな人たちと一緒に作品が作れた。僕にとっては本当にうれしいことで、再演できることはすごい喜びなんです。夢のような座組だからこそ、多くの人に見ていただきたいんですよね。
――「二人芝居」と限定して坂元さんにリクエストされたのはなぜでしょう。
林さんが大好きだから。二人芝居ならずっと一緒にお芝居して林さんを独占できるじゃないですか(笑)。僕は一人舞台はやったことあるんですけど、二人芝居はどんな感じかすごく興味があって。ノンストップで、二人で舞台をずっと動き続け、喋り続けるっていうのは、熱量がはっきりと伝わると思うんです。
安田顕
――安田さんは敵国同士のコックのカノオ、林さんはウスダを演じられます。
カノオは復讐心を糧に生きている人で、ウスダは恋心を生きがいに働いている。共通しているのは、二人とも働くことが嫌いだということ。僕は役との接点はあまりないんですが、林さんはピュアで真っすぐなところが、もうそのままなんです。
――ご一緒されていかがですか。
林さんが考えることや思うことを突き詰めていく姿はすごく美しくて、それに引き込まれるんですよね。1ヶ月ぐらいずっと一緒に稽古してきましたけど、より深めていらっしゃいますし、 2年前と比べてやっぱり30代は一気に頼もしくなってすごいなと。何もかもより大きくなっているし、自分が演じるということに対して真摯に取り組んでいる。その姿勢がすごく好きなんですよね。僕と似たものを感じるというか。林さんのプライベートとか知らないし、食事をしてもいいけど、したことがないんですよ。ただお芝居の話だけしていたいんです(笑)。
――お二人のケミストリーが素晴らしかったです。
舞台は役者が緊張していれば、観客にも緊張が伝わるし、役者が躍動して楽しげだったら、その楽しさや熱量、グルーブが生だから映画よりも伝わりやすいと思うんですよ。決してハードルの高い作品ではなくて、すごく見やすいし、笑えますし、楽しい舞台なんだけど、その中で感じてもらえるものや受け取るものは大きくて深いテーマだったりするんです。
――面白さや切なさ、悲しみや怒り、恐怖や優しさ、この世の正しさ、不条理さなどがギュッと詰まった作品でした。
喜怒哀楽を十分に感じてもらえたらいいなと思っていて、熱量が伝わる舞台を目指しているんですけど、そう言ってもらったらうれしいし、自信になります。
――坂元さんの独特のセリフ回しも耳に残ります。
「父さんの目の覚めるがして。はじめの時。猫がか。鳴くが猫がか。猫がか思うした」というような、非常にトリッキーなセリフが続くんです。坂元さんに「どうしてトリッキーなものにしたんですか」と伺ったら、「人間というのは、興味のある人の話は聞くけど、興味のない人の話は聞かない。喋っている人というのは、人の話を聞いてない、喋るのが好きな人だと。少しセリフがトリッキーであれば、その人が何を喋っているのかなと聞かざるを得ない。対話において大事なのは聞くということで、聞かなければ、それぞれの主張が平行線をたどるだけだけど、聞くということで歩み寄ることができるんじゃないか」と。
――深く納得します。セリフにはリズムがあり、詩のようにも聞こえますし、段々と意味も分かってきます。フックになって引き込まれました。
それは坂元さんの言葉がシンプルだからなんですよね。シンプルであるがゆえにすごく伝わる。本の中には、「お前考えるしろ」という、考えるという言葉がすごく出てくるんですよ。考える=人間にしかできないわけで、考える、悩むことも含めて、生きている限りは考える。考えることをやめるっていうのは、脳が死んでいるのと一緒だと言っているんじゃないかと思うんです。また、「当たり前」という言葉もよく出てきます。なぜ当たり前なのかを考えてみようよと。当たり前だからと言った結果、「今の世の中、どうですか?」という提示だと思っています。
安田顕
――初演から2年経ち、再演に向けて坂元さんが新たに改稿されました。
物語の〝骨子〟になっている部分は変わらないんですが、前回にはなかったシーンもあり、坂元さんの中に、 2年間で思うところがあったんでしょうね。初演を見ていただいた方にも楽しんでもらえると思います。
――作品自体が今の時代によりマッチしてきたと感じます。
AIや SNSなどのネットは何でも入ってきて、絶対便利だし、時間も短縮できる。新しい文化も生まれると思うんですけど、僕はもう30年経ったら 80歳だし、そんなに生き方は変わらないと思うんですよ。現に今52歳で、色々と凝り固まっているけど(笑)、信じたいのは、やっぱり自分で考えて自分で動く。最近、この世の中で、なんか嫌だな、気持ち悪いなと思うことは多くありませんか?
――それはもう色々とあります。
そんな漠然とした中で生きていくし、自分はこうだと叫んだところで何も変わらないのかもしれない。だったら黙って働いていくしかないのかな……という日常を舞台の上で提示しているんじゃないかと思うんです。機械は利用するのはいいけど、頼りすぎると創作における楽しみがなくなってくる気がするんですよ。アナログかもしれないけど、肉体を使って何かを演じ、体はきついけど、ずっと動いて、その熱量を感じていただくという作業が好きなんですよね。
――水田さんの演出はいかがですか。
役者が考えて提示してくるものをすごく尊重されます。それをどう生かすかというのを一言で表してくれる方ですね。これをつけてみよう、あれしてみようという一言でシーンがより豊醇になる。僕と林さんがそれぞれ持ってきて、 二人でやった時に、相乗効果で芝居がワーッと重なって面白くなっていくわけですよ。それを水田さんはすごく楽しんでいらっしゃる。今回、林さんと話しているのは、坂元さんが産んでくれた言葉をちゃんと喋ろうと。喋った上で、その面白さ愉快さに2年前よりも重きを置いていこうと。
――シリアスで重いシーンにも、絶妙のタイミングで面白いセリフが入ったりして空気が変わり、笑いのバランスも秀逸です。
坂元さんならではです。僕らが共通して意識を持たなきゃいけないのは、舞台のハードルの高さをとにかく排除していかないとまずい。 今の世の中の動向や景気では、ライフスタイルの楽しみ方の選択肢に演劇が入ってこなくなるんじゃないかという恐れがあるんです。一回舞台を見て、もういいやと思われたら終わりなので。舞台はこんなに楽しいんだ、もう一回行ってみようと絶対思ってもらえる作品だと思うんです。
――『死の笛』というタイトル通り、お二人が笛を吹くシーンもたびたび出てきて強く心に響きます。
舞台に出てくる「鳥の歌」という楽曲は、スペインのカタルーニャ民謡で、世界的チェリストのパブロ・カザルスさんが、ニューヨークの国連で演奏して、「私の生まれ故郷カタルーニャの鳥はピース、ピースと鳴くんです」とスピーチしたことで有名なんです。
僕はカノオという役柄もあり、笛を吹く時は「死」に対する思いが強いのかなと解釈していたんですが、水田さんは、「生きていく」という思いがあるんじゃないかと。観客の皆様それぞれに解釈してもらえたらうれしいですね。ただ、お客様の家内安全、商売繁盛、無病息災を祈りながら吹かせていただきますので、決して縁起の悪いものではございません(笑)。安心してご覧になってください。もうこの座組では集まれないかもしれないので、1公演、1公演を大切に誠心誠意、演じていきたいです。
安田顕
取材・文=米満ゆう子
公演情報
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生
出演:安田顕 林遣都
企画・製作:クリエイティブオフィスキュー、アミューズ
https://www.teamnacs.com/stage.php?ex=2026_03
■大阪公演
日程:2026年7月24日(金)~8月2日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
運営協力:リバティ・コンサーツ
問い合わせ:キョードーインフォメーション0570-200-888 [平日12:00~17:00]