神谷浩史インタビュー「想像力を補うのが朗読」~「READING LIVE」15周年、新作『Phantom Beauty』への試行錯誤

12:00
インタビュー
舞台

神谷浩史

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神谷浩史、浪川大輔など、男性声優が所属するエンターテインメントレーベル「Kiramune」が2012年に立ち上げた朗読劇「READING LIVE」(通称「リーライ」)が15周年を迎え、2026年10月の公演『Phantom Beauty』を前に現在作りこみの最中だ。毎年公演に参加し、「Kiranemumune」、「リーライ」には欠かせない人物でもある神谷浩史に、「リーライ」の起源からそのこだわり、声優と朗読の関係などを聞いた。朗読や観劇の魅力、そして彼の観劇体験や「リーライ」への関わり方などをたくさん語ってもらっているので、改めて「『READING LIVE』ってどんなもの?」という初心者にもぜひ読んでほしい。

「声優」が直接お芝居を届けるためにできること

ーー「Kiramune」や「READING LIVE」について、神谷さんにとってはどのようなものなのでしょうか。

声の活動を通じて、ライブやラジオ、映像での出演の場があったりするんですが、そういうところで評価してもらうのはなんか気恥ずかしいものがありまして。というのも、やはり声優の本業として、声でお芝居をして評価していただけるのが一番ありがたいなと思っていたんです。でも普段のスタジオワークから直接お芝居を届けることはなかなか難しく、何をすれば届くのかなと常々考えていました。例えば演劇では「声優さんなのにセリフを覚えてお芝居してすごい」のような、少し違う評価になってしまうと思うんですよね。ライブも同様です。しかし「声優」に対する世の中の認識は時代とともに変わってきているので、僕自身の考え方も変えていかなくては、というように思っています。

「READING LIVE」が始まった当初(2012年)、僕らが下駄を履かずに正しく評価していただけるものは何かと考えた時に、「朗読」が一番マッチしてるかなと思いました。「台本を持ってお芝居する」というスタジオワークの延長線上にあるもので拍手をいただけたらいいなというのが、原点であったと思います。

神谷浩史

ーー10~15年で世間はかなり変わりましたね。

そうですね。 特にコロナ禍(2020~2023年頃)を経て、朗読というコンテンツがすごく世の中に増えてきたと思います。それまでは朗読も数を数えるくらいという体感だったんですが、今は本当に多くの方がいろいろな形で挑戦されています。僕らが朗読を始めたタイミングとはまたちょっと違う状況になってきているなという印象があります。

ーーなぜ「朗読」なんでしょうか。

僕が所属している青二プロダクションが設立40周年かつ、「1000年に一度の009イヤー」という2009年に『サイボーグ009』の朗読劇をやらせていただいたことがありました。僕は島村ジョー役で朗読に初挑戦したのですが、原作元である石森プロさんの全面協力で、原画を使った演出という最高の公演だったんです。紗幕やホリゾント(背景用の白い幕や壁のこと)に石ノ森先生の原画を映像として投影したりと、観ている人たちの邪魔にならず「想像力を補う」形での演出で、僕らも時に立ち上がるなど動きがあったんですね。「そうか、こういう風にするとお客さんの邪魔にならない形で想像力を補うパフォーマンスができるんだ」と思ったわけです。

僕はゲームが好きなので昔からよくやりますが、ファミコン時代のゲームはドット絵で「自分の想像力でいろんなものを補いながら」ゲームをしていたなと思うんです。

ーー今ではフルボイスが当たり前ですが、以前は声が入っていなかったのが普通でしたね。

漫画や小説、ゲームでも、頭の中で声を補完しながら読んでいたと思うんですよ。だから人間の想像力がエンタメにとって必要なものだろうなという認識が僕の中にあり、それそのものを映像で見せるよりは皆さんが頭の中でいい像を結ぶ——そういうもののお手伝いを声優である僕らがする。それが朗読のあるべき姿なのかなと考えています。でもそれがどの加減が一番ベストなのかというのが結構難しくて……。芝居の立ち稽古のような中途半端なものに見えてしまってはいけないし、演劇に寄りすぎてもよくない。ずっと試行錯誤しています。

ーー「リーライ」15周年ですが、今までを振り返ってみていかがですか。

今回は櫻井孝宏さんにゲスト出演していただいているのですが、彼が「朗読劇をやりたい」と言い始めたのがリーディングライブの発端の一因でした。僕が朗読について考えていた頃だったのもあり、ふたりで朗読をやってみようという走り出しで各所に声をかけてみたところ、「Kiramune」が手を挙げてくれたんです。体制ができ始めてから改めて彼に話したのですが、タイミング合わず実現することがなかなかできなくて……。今回はその櫻井さんにも出演していただけるということでうれしく思います。

そして「朗読ってどうやったら一番いい形になるんだろう」という試行錯誤の連続の15年でした。一年目は本当に訳が分からずやっていたところがあります。舞浜のアンフィシアターという素晴らしい劇場にご協力していただいたのもあり、本当に恵まれた環境でした。あの劇場は、どこにいてもお芝居が届く! 普通の劇場だと、距離の遠近の問題でどうしても朗読に限界があると思うんです。お芝居をちゃんと届けられるっていう実感をもって朗読を作っていけたというのは良い経験でした。今は他の劇場でもお芝居をする中で、ずっと「朗読の一番いい形を探し求め、試行錯誤し続けている」この言葉に尽きます。

ーー舞浜アンフィシアターは円形に舞台があり、それを囲むような形で客席があるというほかに例のない非常に特殊な舞台ですよね。

劇団四季の『美女と野獣』も2回見に行きましたし、とても良い劇場だなと思います。円形のステージに出てくると、途端にお客さんとの距離感が近くなります。正面でやっていることよりも、より特別感のようなものが感じられるんだと思います。舞浜という場所は全体的にエンタメの空間づくりをしてくれているので、劇場内だけではなくその周辺を含めても良い場所ですね。

井上和彦さんや早見沙織さんを中心に作っていった公演

ーーこれまでの公演で強く記憶に残っているものをいくつか挙げてください。

僕はだいたい3~4年やると自分でやってみたいことを意見し始める傾向があるのですが、その3年目にやったのが『5コントローラーズ+1』。何かインタラクティブなものを入れたいというプロデューサーの発言に、僕が提案したのがコンピューターゲームでした。リーディングライブの制作でもあるバンダイナムコさんの協力で『パックマン』の使用許可が下りたので、作中で実際にプレイしてその結果によって話や雰囲気が変わっていく、みたいなシーンができました。

そしてだんだん意見の量や質も増えてきて、『パンプキンファームの宇宙人。』(2016年)、『Be-Leave』(2017年)などでも自分で作った設定から脚本を作っていただいたりしています。2018年には井上和彦さんにご出演していただくこととなり、やっぱり「おしゃれな詐欺師」みたいな役どころだったらすごく面白いだろうなと思って。だからある意味、和彦さんを中心に作っていただいたのが『カラーズ』(2018年)​だったりとかしますね。

『作るカノジョと僕らのテ』(2020年)では自分でプロットを書きました。リーディングライブとして女性ゲストで主役、尚且つA、B両チーム全公演にご出演いただくという、初めて尽くしの条件で早見沙織さんにオファーさせていただきました。この時期はコロナ禍でもあったので少人数で成立することも課題としてあったんですよね。とにかく早見さんをイメージした役・内容・チームと言う……早見沙織さんの特別な存在感に頼りきった企画でした。そしてこの翌年が10年目という節目でもあり、福井晴敏さん(小説家/代表作に『亡国のイージス』など)に脚本を書いていただけることになったので、福井さんに自由に脚本を書いていただく上で男性キャストだけでと言う制約を取っ払うための助走と言う役割も担っていました。

こういう風に少しずつ「こうしたら面白いのかも」とか、ストーリー・アイデアなどを出して関わっていって。客観的にはよくわからない関わり方をしているんだろうなと思いますし、今みたいにインタビューを受けてリーディングライブについて話すことになるとは思ってもいませんでした。「継続は力なり」ですかね。

ーー今回は「脚本協力」というところにお名前がありますね。

打合せに何も武器を持たずに行くのは違うだろうと思っているので、いち役者ではあれど、プロットや内容を文章に書いて持っていくようにしています。見えないところですが、打ち合わせの数だけそういうものが存在します。たまたま原案、脚本協力などの名前をクレジットで表記していただくこともありますが、水面下ではもっとたくさんいろいろなものを提案していて、ごく一部を選んでいただいているような形です。今回も15周年の公演を作るにあたって、持って行ったプロットを採用していただけたという流れですね。

ーー先ほど櫻井孝宏さんのお話が出ましたが、「Kiramune」のライブでお話をされてかなり大きな反響があったとか。

そうですね。彼は僕の中でちょっと特殊な存在です。鈴村健一、櫻井孝宏、神谷浩史——この3人は同い年ですけれども、2人の方がはるか先に売れたんです。以前から3人でご飯を食べに行ったりとかお酒を飲んだり普通に仲が良かったけれど、ある時から彼らが何を喋っているのかわからなくなってしまったことがありました。アニメーションでの主役や重要なキャラクターを任されているふたりと自分を比べたときに、そういうものを経験していない僕はよくわからなくなってしまって。彼らは全然違うステージに立っているんだな……と思った時期があったんですね。そこから何年か遅れて僕も同じ道を歩み始めることができて、「そうか、彼らはこういう目線だったのか」と、なんとなくまた会話が成立するようになって。デビューしたての頃の話で、若い時の考えってすごく偏っていたり、くだらないことで悩んだり思い詰めたり、すれ違ったりすることもいっぱいありますよね。こんな紆余曲折があってなんとなく同じ道を歩いている仲間、同級生の仲間として櫻井孝宏と鈴村健一がいるなと思っています。

「Kiramune」のお客さんの中にはこういう僕らの空気を感じ取ってくれている人もいるんじゃないかな。健一くんがプロデュースしている「AD-LIVE(アドリブ)」のほうにも僕は一度出演しているので、そのうち「READING LIVE」のほうにも絶対出てほしいですね!

ーー今回の公演はどんな進化、どんな試みを期待していいのでしょうか。

今回からShibuya LOVEZという新しい劇場をお借りしています。開業を飾る「Shibuya LOVEZ OPENING SERIES」(『Kiramune Happy Summer Tune』(2026年7月4日開催))をやらせていただいて、客席やカメラからどう見えるかを自分のカメラを持ち込んで撮影して資料を作ったり、実際に体感したりしてきました。見やすさや見えにくさ、一番遠い三階席からの見えかたや、今まで行ってきた舞台装置の出し入れが今回使えるのかどうかなども。おそらく今後も東京公演では、ここShibuya LOVEZがホームだと思いながら舞台に立たせていただくことになるんだと思います。劇場が変わると演出にも影響があります。15周年のこのタイトルが皆様の心に届くものになればいいなと。そんな風に思っています。

神谷浩史

演劇というものの魅力に憑りつかれてしまった

ーー神谷さんが思う、生の観劇体験の良さってなんでしょうか。

僕は18歳の時に、つかこうへいさん(小説家・演出家)の舞台を観るために、シアターに半日並んで入るということをしました。苦労してようやくをゲットし、その後2時間以上の芝居を集中して観たことが僕の演劇の原体験です。役者さんの息遣い、空気感——そういうものに憑りつかれてしまったんだと思います。ライブは生ですから、同じ芝居でも1公演1公演変わります。でもそういう生の観劇経験の良さはいくら言葉にしてお伝えしても、興味のない方に響かせるのはなかなか難しいものだと思います……。

最近は映像配信でコンテンツを楽しまれている人も多いし、配信には配信の良い面があるのも確かでしょう。でもやはり生の観劇体験の魅力には適わない。どんなに遠い席であってもです。

でも一度生で見たお芝居を観たあとに映像を見るのはちょっと意味合いが変わってきますね。劇場では自分の見たいところに視線を向けますが、映像は映っていないところは見えません。画面外で観たものを自分の中で補完ができる。だから2度見るのは、より深い楽しみ方ができるのかなと。オススメは劇場と配信、両方堪能してもらうことですね。

ーー今回の公演の見どころと、皆さまへのメッセージをお願いします。

「READING LIVE」は朗読の新しい可能性を追い求めて15年が経ちました。今回も節目の年ですので、前回の10周年相応、もしくはそれ以上のものになればいいなと思いながら朗読の一番いい形を皆さんにお届けできるように努力しております。

今回は僕がストーリー原案を提出させていただいています。「ホンモノ」と「ニセモノ」の違いって何だろう、みたいなお話です。観劇後、普段楽しんでいるものに当てはめて考えたときに、皆さんの人生がより豊かになるような——そんな内容になればいいなと思っております。東京・Shibuya LOVEZ、そして大阪・オリックス劇場まで足を運んでいただければ嬉しいです。

ーーありがとうございました。

取材・文=松本裕美 

公演情報

READING LIVE 15周年記念作品
Kiramune Presents READING LIVE 2026『Phantom Beauty』
 
【東京公演】
日程:2026年10月24日(土)~10月25日(日)
会場:SHIBUYA LOVEZ
 
出演者:
10月24日(土)[昼公演・Aチーム]13:00開場/14:00開演
【A】上村祐翔/江口拓也/かかずゆみ/木村良平/高木渉/鳥海浩輔/保住有哉/代永翼/声の出演:岡本信彦
10月24日(土)[夜公演・Bチーム]17:00開場/18:00開演
【B】神谷浩史/草野太一/桑島法子/櫻井孝宏/浪川大輔/堀江瞬/吉永拓斗/吉野裕行/声の出演:岡本信彦
 
10月25日(日)[昼公演・Bチーム]12:00開場/13:00開演
【B】神谷浩史/草野太一/桑島法子/櫻井孝宏/浪川大輔/堀江瞬/吉永拓斗/吉野裕行/声の出演:岡本信彦
10月25日(日)[夜公演・Aチーム]16:00開場/17:00開演
【A】上村祐翔/江口拓也/かかずゆみ/木村良平/高木渉/鳥海浩輔/保住有哉/代永翼/声の出演:岡本信彦
 
【大阪公演】
日程:2026年10月31日(土)~11月1日(日)
会場:オリックス劇場
 
出演者:
10月31日(土)[昼公演・Aチーム]12:30開場/13:30開演
【A】上村祐翔/江口拓也/岡本信彦/かかずゆみ/木村良平/高木渉/鳥海浩輔/保住有哉/代永翼
10月31日(土)[夜公演・Aチーム]16:30開場/17:30開演
【A】上村祐翔/江口拓也/岡本信彦/かかずゆみ/木村良平/高木渉/鳥海浩輔/保住有哉/代永翼
 
11月1日(日)[昼公演・Bチーム]12:30開場/13:30開演
【B】岡本信彦/神谷浩史/桑島法子/榊原優希/櫻井孝宏/浪川大輔/堀江瞬/吉永拓斗/吉野裕行
11月1日(日)[夜公演・Bチーム]16:30開場/17:30開演
【B】岡本信彦/神谷浩史/桑島法子/榊原優希/櫻井孝宏/浪川大輔/堀江瞬/吉永拓斗/吉野裕行
 
STAFF
演出:伊藤マサミ
演出助手:瑠香
演出補佐:友花
音楽:佐々木 裕
衣裳:小泉美都(蜂號)
音楽プロデューサー:甲 克裕(Smile day'S)
アソシエイトプロデューサー:水島精二(Hifumi,inc.)

公演に関するお問い合わせ
【東京公演】インフォメーションデスク:https://information-desk.info/
【大阪公演】ソーゴー大阪 06-6344-3326(平日14:00~16:00)
 
企画・主催:Kiramune Project
制作:バンダイナムコミュージックライブ
(C) Kiramune Project
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