ミュージカル『ゴースト』両バージョンのゲネプロレポート 3度目のサムを演じる浦井健治と星風まどか&竹内夢が演じるモリーとのケミストリー
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浦井健治
2026年8月8日(土)~8月30日(日)日比谷シアタークリエにて、ミュージカル『ゴースト』が上演される。
1990年公開された大ヒット映画『ゴースト/ニューヨークの幻』をもとに、ブルース・ジョエル・ルービンが手掛ける脚本・歌詞と、音楽・歌詞を担うデイヴ・スチュワートとグレン・バラードが紡ぐ切なくも激しいメロディとが一体となりミュージカル版として誕生した本作。2018年に日本オリジナル演出版として初演、その後2021年の再演を経て5年ぶりにシアタークリエの舞台へ蘇る。
主演のサム役には、初演・再演から続投となる浦井健治、サムの恋人モリー役には、Wキャストとして、宝塚歌劇団・元花組・宙組トップ娘役の星風まどかと、NHK Eテレ『おとうさんといっしょ』で、うたのおねえさんとしておなじみの竹内夢、敵役となるサムの親友カール役もWキャストとして、ミュージカル『SPY×FAMILY』初演で主演のロイド・フォージャー役を演じた鈴木拡樹とミュージカル『十二国記』の楽俊役で、その実力を遺憾なく発揮した太田基裕が務める。
そして、映画版でウーピー・ゴールドバーグがコミカルに演じた霊媒師のオダ・メイ役には、ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』でもその魅力を発揮する森公美子が初演・再演に引き続き、盤石のウーピー節を炸裂させる。
初日に先立ち、浦井・星風・鈴木・森バージョンと浦井・竹内・太田・森バージョンの公開ゲネプロが行われ、SPICEでは両バージョンを取材した。これから観劇する方のために極力物語の核心に触れずに、その模様をお伝えしよう。
1990年に日本で公開された『ゴースト/ニューヨークの幻』は、不朽の名作として今なお人気の映画である。主題歌となった「アンチェインド・メロディ」を耳にすると、条件反射でサムとモリーのロマンチックなシーンを思い出す方もいるのではないだろうか。ミュージカル『ゴースト』は、映画版のイメージを裏切ることなく、舞台だからこそできる数々のリアルな演出で観客を物語に没入させる。
主演のサムを演じる浦井は、ゴーストではなく人間を演じる時間は短いものの、誠実な銀行マンという役どころがよく似合う。スーツをさわやかに着こなし、モリーを優しく包み込む姿にグッとくるファンもいらっしゃるのではないだろうか。
(左から)鈴木拡樹、浦井健治
今回特に感じたのは、サムの感情が爆発するシーンの多いことだ。生きていた時は「愛している」という言葉もストレートに言えないクールなサムが、ゴーストになってからは、理不尽な暴力で幸せな生活を突然奪われた悔しい気持ち、そして愛するモリーを残してきた不安を爆発させる。浦井は迫力のある歌唱でサムの心の内を吐露するのだが、その気迫といったらすさまじいものだった。
浦井健治
浦井健治
そして何よりも2人のモリーによって、雰囲気の違うサムになるところも見どころの一つと言っていいだろう。星風が演じるモリーは、どことなくしっかり者のお姉さんっぽい雰囲気があるので、弟のような表情を見せる瞬間がある。
浦井健治、星風まどか
一方で竹内が演じるモリーは少し幼く、サムに甘えているような雰囲気があるため、一変して兄のような表情に。この違いを堪能できるのは、まさにWキャストの醍醐味だ。
浦井健治、竹内夢
そんなモリーを演じる星風と竹内も盤石な演技をみせてくれた。先にゲネプロを行った星風は、サムに愛され芸術家としても順調に歩んでいる幸せいっぱいの女性を等身大で演じた。サムが亡くなってからは悲嘆にくれるものの、なんとか立ち直ろうとする芯の強い女性としての姿を全面に出していたように思う。
星風まどか
竹内は、これが初のグランドミュージカル出演とは思えないほどの堂々としたヒロインぶりをみせてくれた。浦井との声の相性がよく、デュエットが心地よい。どこか幼さが残るモリーなので、サムが亡くなった後の落ち込みぶりは心をえぐられる。そこから一歩一歩進んでいこうとするモリーを竹内は情感を込めて演じた。
竹内夢
そしてカール役の鈴木と太田もそれぞれの色を出し、好演している。サムとモリーの良き友人であるカールだが、鈴木が演じるカールは笑顔でありながらもふとした瞬間に冷たい表情を見せる。太田は、人懐っこい笑顔を見せながらも目が笑っていない。カールがどのようにサムとモリーに関わっていくか、ここでは言及を避けたいが、2人が演じるカールが物語に与える影響は大きい。
鈴木拡樹
太田基裕
ゴーストになってからのサムが頼りにするオダ・メイを演じる森は、圧倒的なパフォーマンスで会場を包み込んだ。初日前会見で森が「私も67歳になりまして……」と言ったときに「うそっ!!」と心の中で叫んだのは筆者だけではないだろう。この日、2つのゲネプロを変わらぬパワフルボイスで魅了した森に67歳という年齢はあまりにも似合わない。
(中央)森公美子
そんな森が演じるオダ・メイは、サムとの掛け合いでみせる抜群の間で笑いをさらっていく。浦井は初日前会見で「漫才のような関係」と表現していたが、まさにそのとおり。この2人の掛け合いを観に行くだけでも、この作品を100%堪能できるといっても言い過ぎではない。
浦井健治、森公美子
時にアドリブもあり、息がぴったりの2人は、お互いの役に誇りを持っていることがうかがえる。3度目でなければ出せない味のある演技が期待できる。
浦井健治、星風まどか
竹内夢、浦井健治
サムとモリーのラブストーリー、そしてオダ・メイとの間に生まれる不思議な友情だけでなく、アンサンブルのメンバーがいなければ成り立たない華やかなステージと少し背筋が寒くなる仕掛けが楽しめる本作。ぜひ劇場で堪能していただきたい。
東京公演終了後、9月から全国ツアー公演が予定されている。
浦井健治
取材・撮影・文:咲田真菜