ベートーヴェンとシューベルト、その音楽の高みへ――日本を代表するヴァイオリニスト・漆原朝子が挑む十数年ぶりの全曲演奏会【オフィシャルインタビュー到着】

2026.9.11
ニュース
クラシック

(C) Naoya Yamaguchi, studio Diva

画像を全て表示(2件)

ヴァイオリニスト、漆原朝子が今年12月から来年にかけて、大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールで『ベートーヴェン&シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための作品全曲演奏会』を行う。これはベートーヴェンの10曲のヴァイオリン・ソナタと、シューベルトの同ジャンルの全作品を全4日(5公演)にわたって取り上げるもの。日本を代表するヴァイオリニストによるひさびさの大型公演として注目を集めている。

漆原朝子は2012~13年に、大阪と東京で『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲ツィクルス』を開催し、その技巧と表現力で多くの聴衆に深い感銘を与えている。またシューベルトについても、2008年にピアノのベリー・スナイダー、ロータス・カルテットと録音したCDが高く評価され、名盤として長く愛聴されてきた。今回の全曲演奏会はそれから十数年を経て、新たな高みへとたどり着いた彼女を聴く、ファン待望のステージと言えるだろう。

現在は東京藝術大学教授、大阪音楽大学特任教授として後進の育成にも携わる漆原朝子に、公演に向けた心境を聞いた。

(C) Naoya Yamaguchi, studio Diva

――多くの音楽ファンが期待する演奏会だと思います。特にベートーヴェンの全10曲を通して聴ける機会でもあり、その意味でも貴重です。今回のプログラムの魅力や聴きどころについて教えてください。

ベートーヴェンが大きな影響を受けたモーツァルトの時代には“ヴァイオリンの伴奏付きピアノ・ソナタ”という形式が色濃く残っていました。そうした中でモーツァルトは時代が進むにつれて、次第にヴァイオリンに重きを置くようになり、ベートーヴェンもモーツァルトに近い作風の、ピアノが主体の最初の3曲から徐々にヴァイオリンに主導権を持たせる作風へと変わっていきました。また彼の体調や心情の変化がもたらした影響を、それぞれの作品に見出すことができます。耳の不調が出始めた3番、ハイリゲンシュタットの遺書をしたためた頃の4、5番、絶望の淵から運命を受け入れようとする気持ちと、それにあらがう気持ちが交錯した6、7番。そして、儚い希望や願いを夢に託した8番。ベートーヴェンが「ヴァイオリンをコンチェルトのように弾いて欲しい」と言ったとされる9番の「クロイツェル・ソナタ」では、運命に動じずに強く生きていこうとする想いが感じられるようにヴァイオリンが大活躍します。晩年の作風に近づいた散文的な10番など、どれも魅力たっぷりの傑作です。そんなことに想いを馳せながらお聴きいただけたら幸いです。

――シューベルトについてはいかがでしょう。ベートーヴェンに比べると作品数は少ないですが、従来の「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」の枠組みを超えるような、歌心やロマン性を感じます。

シューベルトの魅力は内向的で繊細、時に壊れそうなほどの透明感にあるように思います。私自身、彼の音楽がとても好きで惹かれています。彼の作品には音楽が大きく発展していくというより、転調を重ねることで、音の色合いのグラデーションを水彩画のように感じ取ることができます。ロマンチズムや儚い美しさは心の琴線に触れ、どこまでも澄んだシューベルトの心が沁み渡ってくるようです。そうした魅力を表現できればうれしいと思います。

――ピアノの津田裕也さんとの共演に期待することは?

津田さんが藝大の学生だった頃、姉とのデュオのコンサートでピアノを弾いていただき、「素晴らしい方がいらっしゃるんだな」と思ったことを覚えています。その後、ドイツ留学を経て藝大の先生になられ、ピアノ科主任として素晴らしい学生さんを育てながら、コンサートやレッスンに忙しくされている姿を拝見してきました。今回、ますます素晴らしくなられた津田さんとご一緒できることを心から楽しみにしています。

――漆原さんは以前にもベートーヴェンとシューベルトの全曲演奏や録音に取り組み、高い評価を収めています。今、改めてこの2人の作曲家に向き合う心境をお聞かせください。

以前、録音や『ベートーヴェン・ツィクルス』を行ってから、十数年の月日が経ちました。当時は思うような表現ができずにもどかしい想いをしましたが、その頃よりは出したい音や表現ができるようになってきた実感があり、ほんの少しでも作曲家の想いに近づけたらと願っています。演奏している限りゴールはありませんが、より上を目指して演奏を続けたいと思っています。

取材・文=逢坂聖也

はイープラスにて一般発売中。

公演情報

『ベートーヴェン&シューベルト ヴァイオリンとピアノのための作品全曲演奏会』
◾️日程:
2026年12月1日(火)開場 18:30 開演 19:00
 :6,500円(全席指定・税込)
2027年3月26日(金)開場 18:30 開演 19:00
 :6,500円(全席指定・税込)
2027年6月4日(金) 開場 18:30 開演 19:00
 :6,500円(全席指定・税込)
2027年7月3日(土)1日2回公演:開場 13:30 開演 14:00/開場 17:30 開演 18:00
 :6,000円(全席指定・税込)
◾️会場:大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
  • イープラス
  • 漆原朝子
  • ベートーヴェンとシューベルト、その音楽の高みへ――日本を代表するヴァイオリニスト・漆原朝子が挑む十数年ぶりの全曲演奏会【オフィシャルインタビュー到着】