国境とカルチャーを超えた熱狂の一夜──『GO-AheadZ FutureZ』境界線はないことを証明した4つのロングセット
『GO-AheadZ FutureZ』
『GO-AheadZ FutureZ』2026.9.12(SAT)Zepp Haneda(TOKYO)
2024年に初開催され、「国境・ジャンル・カルチャーを超える」をテーマに、時代を象徴するアーティストにスポットをあててきた次世代音楽イベント『GO-AheadZ』。そのスピンオフシリーズとしてスタートした『GO-AheadZ FutureZ』第2弾が2026年9月12日(土)にZepp Haneda(TOKYO)にて開催された。Sonsi、Benjazzy、JUSTHIS、Tiji Jojoがそれぞれロングセットのショーケースを披露。終演後に行ったJUSTHISへの単独インタビューの内容に加え、Sonsi、Benjazzy、Tiji Jojoから寄せられた音声コメントによるステージの感想も盛り込み、熱狂の一夜の模様をお届けしよう。
●Sonsi
Sonsi
昨年、『RAPSTAR 2025』ファイナリストとして大きな注目を集め、その後も躍進を続けるSonsiがトップバッターとしてステージに登場。「H2O daddy」でライブを始めると冒頭の〈マルチ商法 水素水の詐欺/人を騙し 金を稼ぐdaddy〉というフレーズからシンガロングが巻き起こる。まさに彼の持っている現在の勢いをそのまま映したようなフロアだったと言えるだろう。
Sonsi
その後も「ニセモノ」や「Koshy Freestyle(feat. Watson)」、「BBA in da House」、「Real Love」などを披露。終演後に「大きい舞台もちょっとずつ増えているんですけど、緊張しました」と話してくれたが、オーディエンスから飛んでくる野次と会話するような気取らないMCを挟みながらの自然体なパフォーマンスには、貫禄すら漂っていた。
Sonsi
さらには「仕事!」というコールアンドレスポンスが印象的な新曲も届け(新作も鋭意制作中とのこと!)、父親との確執をパワフルにラップする「OYJ」、地元の鹿屋について歌った「KANOYA」で約30分ほどのステージを駆け抜けた。
Sonsi
2015年のKeith Ape「잊지마 (It G Ma) feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh」からアジア圏ヒップホップの交流に触れてきたというSonsiにとって、こういった国境を跨いだイベントに不自然さは感じなかったのだろう。緊張感を持ちながらも「めちゃくちゃ楽しかったです」と笑顔で振り返っていた。
Sonsi
●Benjazzy
Benjazzy
Sonsiのパフォーマンスで熱の高まったZepp Haneda(TOKYO)に登場したのはBAD HOPのメンバーとしても活躍したBenjazzyだ。「NOOFFSEASON」で勢いよくライブの口火を切ると、「JJJ知ってますか?」とそのまま「Cyberpunk」へとなだれ込み、さらに加速して「SWEEP」へ。〈Hater 達からはアイドル て言われてからが本物/あのダセエ奴等と 一緒にすんなよ俺等を〉というリリック通り、ラッパーとしてのプライドを背負った圧倒的なラップスキルを見せつけていく。
Benjazzy
さらに畳み掛けるように「NOID」「B2B」「Fashion Week」などをフロアに投下していき、オーディエンスの盛り上がりも加速していく。「馬鹿にされていても、本当に夢に向かってやった方がいいと思っています」とシーンの未来を背負うラッパーたちへとエールを送り披露された「BLINDLY」から、「エモい感じで帰ろうと思ったんですけど、韓国のヤバいラッパーが来てるんで、日本のラッパーの意地を見せないとなって」とラストは「3MINITS」へ。高速ラップを叩きつけてステージを後にした。
Benjazzy
ライブ後のコメントでも、「(ラップが)速くて、上手いスタイルの人が多いんで、参考にもなるし、韓国のラップはめちゃくちゃ聴いていたんです」「JUSTHISさんのことは以前から存じ上げていて。めっちゃカッコいいラッパーだって知ってたんで、その前の出番ということもあって、今回のライブのモチベーションはいつも以上に高かったですね」とBenjazzyはこのイベントへの熱い想いを語ってくれた。
Benjazzy
なお、BenjazzyはBonberoとのコラボアルバム『B2B』のリリースを記念した全国ツアー「B2B TOUR」を2026年10月から11月にかけて全4都市で開催するので、ぜひ足を運んでみてほしい。今回のような長尺でのライブでは、より彼のラップの強靭なパワーを体感することができるはずだ。
Benjazzy
●JUSTHIS
JUSTHIS
そしてついに韓国からJUSTHISがオンステージすると、歯切れのいいラップが光る「LIT」でライブをスタート。おそらくここでその存在をあまり知らなかったであろうオーディエンスも彼のラップスキルの高さに驚いただろう。
1曲目を終えると、なんと「はじめまして」と日本語でMCを始める。ショートインタビューでも「子どもの頃から日本のドラマや映画、バラエティ番組などをいろいろ観てきたんです。m-floやORANGE RANGE、L'Arc-en-Ciel、FPMなど学生時代は日本の音楽もたくさん聴いていました。韓国にHouse Rulezというハウス・ミュージックをやっているグループが紹介していた日本のアーティストもすごく多かったんです」と話してくれたように、彼は日本のカルチャーに大きな影響を受けてきたラッパーなのだ。他にもMCで『風の谷のナウシカ』に衝撃を受けたと話していたので、詳しく聞くと、「子どもの頃、父と本当は『ゴジラ』を観ようと映画館に行ったんです。でも『ゴジラ』のは売り切れていて。それで父が偶然選んだのが『風の谷のナウシカ』だったんです。論理的には説明しにくい、直感的な衝撃で。携帯電話にもダウンロードして、繰り返し観ていました(笑)」とその愛情の深さを語ってくれた。ちなみに、JUSTHISは子どもの頃から、『のだめカンタービレ』『1リットルの涙』『エンジン』『野ブタ。をプロデュース』などの日本のドラマを好んで見ており、そのドラマに出演していた俳優のバラエティ番組出演回まで探して見るなど、日本のさまざまな番組に親しんできたそう。加えて、気になっている日本のラッパーはAwichだと答えてくれた。
JUSTHIS
そんな穏やかなエピソードを語る表情とは対照的に、JUSTHISはコールアンドレスポンスも交えつつハードなラップを次々と繰り出していく。「Curse」や、10年前のアルバム『2 MANY HOMES 4 1 KID』の曲「Motherfucker」「Motherfucker Pt. 2」など強力なナンバーを連発。
「他の韓国のアーティストたちが日本でたくさんライブをしているのに、僕にはなかなかその機会が巡ってこず。今回ようやくライブができることになって、それだけ本当に嬉しかったです。だから今日のステージは、僕のことを知らない人たちにも必ず自分のファンになってもらおうという気持ちでやりました」「セットリストを組むときにも、言葉そのものより、感情や音楽で伝えられる曲をやろうという意識で選んだんです。想像以上にたくさんの方が反応してくれました。日本のお客さん特有のライブの楽しみ方を生まれて初めて体験して、僕自身もそこに入り込んでいけて嬉しかったです。すごく特別な経験でした」と、終演後に語ってくれたように、「韓国語、知らなくても音楽は……」というJUSTHISの言葉に、フロアから「関係ない!」と声が上がった瞬間はこの夜の一つのハイライトだった。その後も「John Cena」などでフロアを沸騰させ、最後には「Gone」を披露し「ありがとうございます!」と日本初ライブを締めくくった。
この機会に補足しておくと、JUSTHISは韓国のアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンで評価を確立したラッパーである。その後、韓国ヒップホップ自体が『SHOW ME THE MONEY』などを通して大衆化していく中で、彼もアンダーグラウンドからより広い層へと知られる存在になっていった。インタビューでは、その渦中にいた当時の心境についても語ってもらった。
「もともとアンダーグラウンドには韓国ヒップホップ独自のカルチャーがあったんです。それが『SHOW ME THE MONEY』というオーディション番組を通して大衆化していって、現在の韓国ヒップホップと、僕がヒップホップを始めた頃のアンダーグラウンドカルチャーは別のものになってしまった。韓国ヒップホップシーンが大きくなっていった時期、僕は自分が憧れていたカルチャーが消えていく、そのど真ん中にいたんです。すごく空虚さや虚しさを感じていた時期でした。今は違いますけど、当時は「それならもう、さっさと金を稼いで辞めればいいや」くらいの気持ちで活動していたんです」
「でもそんな気持ちで活動を続けながら歳を重ねていくうちに、「俺はなんでこんなことに時間を使って生きているんだろう?」と思うようになったんです。そこからまた新しいレーベルと契約したら、2〜3年は契約に縛られることになる。そうなるともう40歳です。「その歳になってから、また新しい挑戦ができるのか?今以上に勇気が必要になるんじゃないか?それなら、今の自分にこの勇気があるうちに一度やってみよう」。そういう気持ちで、自分のレーベルを始めたんです」
JUSTHIS
そしてJUSTHISは自身のレーベルALL CAPS ENT.を始動。アメリカのジェイ・Z(Jay-Z)やクリプス(Clipse)が、年齢を重ねてもヒップホップシーンで活躍する姿にも感化されながら、一時の流行や世間の声に流されない、確固たるキャリアを築いている。
「僕が憧れてきたアーティストたちも、常に物語を積み上げながらツアーをして、本当の意味で「ファン」を作ってきた人たちなんです。だからこそ、僕も単にヒット曲を生み出すだけでなく、その人自身に没入して、ファンになって、ライブやツアーに行って、その先のキャリアまで追い続けたくなるような、ストーリーのある活動や表現をとても大事にしています」
余談ではあるが、JUSTHISは、韓国ではバンドセットでのライブも行なっている。今回のイベントをきっかけに現地でのライブに足を運んでみるのも素晴らしい体験になるはずだ。
JUSTHIS
●Tiji Jojo
Tiji Jojo
この特別な夜のラストを任せられたのは、Benjazzyと同じくBAD HOPのメンバーとしても活躍したTiji Jojoだ。BAD HOP時代の曲「South Side Night」でいきなりトップギアでライブを始めると、そのまま「Night Heist」へと突入。トレードマークである聞き取りやすい高音のラップと滑らかなフロウが火を吹いてフロアをロックする。
「ちょっと長いけど最後まで楽しんでいこうぜ」と煽り、さらに「上げろ上げろ上げろ」とすでに熱の高まりきったフロアに油を注ぐようにラップした「Go Up」から、「Misfit」「Top Boy」と続けていく。
Tiji Jojo
「まだギリちょっとあったかいんで、夏っぽい曲を」と「Malibu Dream」、STUTSとZOT on the WAVEとの「Perfect Blue」などを届けると、一呼吸おいて「Talk To Me」「Do It Right Now」などでさらにシンガロングの嵐を羽田に発生させる。JUSTHISもTiji Jojoのライブを観て「ああいう音程のあるラップを、あれだけ安定してやるのは実際かなり難しいんです」と語っていたが、本当に安定感のあるパフォーマンスで一切の隙がない。
ハイライトの一つは「古い曲だけど知ってる人はいっしょに歌ってください」と添えて披露された2016年リリースの「White T-Shirt」から今年リリースされた「White T-Shirt 2」の流れだろう。10年前の曲と現在の曲をどちらもシンガロングするフロアに、Tiji Jojoがキャリアを更新し続けるラッパーであることがはっきりと伝わってくる瞬間だった。
Tiji Jojo
「Nightmare」「NRE.」からの「Fam*ly」というエモーショナルな流れから、「今日は俺の昔の友達のBenjazzyもいて」と冗談を言いつつ、今のヒップホップシーンをさらに大きくしていこうと呼びかけると「Crazy Life」で大団円。Tiji Jojoも「最初は異色なラインナップかと思ったんですけど、お客さんがそれぞれのアーティストで熱量高く盛り上がっていて。結果的にすごく面白い組み合わせになりましたよね」と満足そうにライブを回想していたが、まさに異色な組み合わせでありながら、ヒップホップというカルチャーが国境など関係なく地続きなものであることを証明する一夜となった。
Tiji Jojoは10月25日の『FORCE FESTIVAL』でもライブを予定している。ぜひこちらにも足を運んでみてほしい。
Tiji Jojo
取材・文=高久大輝 撮影=オフィシャル写真(Uran Sakaguchi)
イベント情報
日時:2026年9月12日(土)16:00開場/17:00開演/21:30終演
会場:Zepp Haneda(TOKYO)
出演:Benjazzy、JUSTHIS、Sonsi、Tiji Jojo(AtoZ)
主催・企画:イープラス
制作:BiLL
【公式サイト・SNS】
公式サイト:https://go-aheadz.com/
Instagram:https://www.instagram.com/go.aheadz/
X(旧Twitter):https://twitter.com/GoAheadZ_fes
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