「ファイナル」は「新しい未来」への入り口~ミュージカル『新テニスの王子様』The Final Stage ゲネプロレポート
ミュージカル『新テニスの王子様』The Final Stage 舞台写真
2026年10月2日(金)東京・Kanadevia Hallにて、ミュージカル『新テニスの王子様』The Final Stageが開幕した。2020年12月の初演よりテニミュシリーズの“新作”として走り続けて6年、いよいよ原作の最終回まで到達した記念すべき1作である。そのゲネプロ公演の様子をレポートしたい。
前作「The Fifth Stage」で描かれた「U-17 WORLD CUP(アンダーセブンティーンワールドカップ)」の決勝戦、日本vsスペインの続きとなる本作。日本代表、ドイツ代表、フランス代表らのソロで繋いでいくオープニングナンバーから「自分たちを見届けてほしい」とアピールする選手たち。誇りを持ってこの大会に臨んでいるすべての選手の思いと信念を乗せたナンバーだ。
一幕はその全てがS1(シングルス1)、日本代表・徳川カズヤvsスペイン代表・アントニオ・ダ・メダノレの試合で構成。壮絶な試合展開はもちろん、徳川と双子のメダノレ兄弟との過去から続くドラマが丁寧に語られていく。チームメイトに愛され「スペインの至宝」とまで言わしめる圧倒的な強さのメダノレ。ロマンティックで情熱的なソロナンバーでその“美”と“強さ”を示す當間ローズのメダノレは、堂々とした中にも子供の頃から人知れず背負ってきた悲劇の歴史を胸に抱いた複雑な人物像で、観客の心にクサビを打ち込む。対する徳川はあくまでも「義」、そして仲間と交わした揺るぎない約束を心の支えに、命までをかける覚悟で高潔にコートに立ち続ける。演じる小野健斗はテニミュシリーズにおけるキャリアと信頼の深さで、徳川が引き受ける多大な責任を全う。あくまでも正直に、美しく、そして強く。徳川の中で沸々とたぎり続けていたマグマが一気に吹き出し、日本代表とスペイン代表が入り乱れてのクライマックスはこれぞテニミュ! 舞台上に吹き荒れる嵐に客席全体が巻き込まれてしまった。
二幕はシングルス2、兄弟対決だ。父親である越前南次郎が見守る中、日本代表の越前リョーマとスペイン代表の越前リョーガが真正面から向き合う待望の一戦。U-17 WORLD CUP参加者はもちろん、『テニスの王子様』を愛してきたすべての人が待ち焦がれていたこの戦いは、『テニスの王子様』〜『新テニスの王子様』へと続いてきた物語の“答え”、作者のメッセージの数々が込められている特別な試合である。
リョーマを演じる今牧輝琉とリョーガを演じる井澤勇貴との間に流れる兄弟の空気は心地よく、試合の間中「この瞬間を一番心待ちにしていたのはこのふたりなのだ」という弾む心の内が伝わってくる。今牧のリョーマはこれまでの試合、これまでの経験の全てにさらに磨きをかけ、余計なものを脱ぎ去ったシンプルな強さとカッコよさを纏ってコートを駆け回り、彼の持つスター性やパフォーマンスのセンスがそのまま越前リョーマというテニスの天才が持つ魅力へと繋がっていた。井澤のリョーガはそんなリョーマの無垢なファイター精神と情熱に触れるほどに迷いがなくなり、本来のテニスの楽しさに身を投じていく開放感を体現。「目の前の勝利にこだわるのではなくもっと大きなところでテニスを愛そう」という“テニスの王子様の根源”のようなものを思い出させてくれる素敵な試合だった。
それぞれのキャラクターが活きるシーンや見どころもしっかり用意されているが、今回試合のないメンバーは基本的にベンチワークがメイン。その構造は繰り返し語られる「仲間を応援しよう」「仲間を信じよう」「仲間がいるから戦えるんだ」というメッセージにも直結する。みんながいるから自分が輝き、自分が輝くからみんなも幸せな気持ちになるんだ、と。
また、日本代表の三船入道監督と、スペイン代表の監督であり越前兄弟の父親である越前南次郎の存在も欠かせない。テニス少年たちの物語だからこそ、彼らを支え見守り導く指導者や親の存在は重要。厳しくも愛情たっぷりな三船を演じる岸 祐二の歌唱が素晴らしいのは周知の事実だが、一幕は力強く、そして二幕は慈しむ心を感じる優しい歌声と、ドラマの展開に沿った心情で少年たちにエールを送り続ける姿が嬉しい。そして、南次郎を演じる上島雪夫はミュージカル『テニスの王子様』1作目から振付と演出を担当し、のちに新テニスで同役目を担ってきたミスターテニミュである。飄々とラケットを振り、青少年に茶々を入れ、いざという時には切れ味鋭くテニスプレイヤーとしての矜持を伝授する。その関係性がカンパニー全体の在り方にも重なってくるようで——
『テニスの王子様』はさまざまな形での“継承”の物語なのかもしれない。世代間で繋ぎ語り続けられていく物語に宿る強靭さは、こうしてテニミュシリーズが続いていることでも明らかだ。ファイナルは終わりではなく新しい未来への入り口。テニミュを愛する人々にたくさんの愛とサプライズを与えてくれる“今一番新しい”テニミュ。この晴々とした青春ストーリーに、心の赴くまま拍手と声援を贈りたい。
キャストコメント
■越前リョーマ 役:今牧輝琉
ーー本作でThe First Stageからの6年間の歴史もフィナーレを迎えます。The Final Stageの初日を迎えたお気持ちは?
場当たりを終えて稽古場とはまた違うことが見えてきています。これまではどこか地に足がついていない感じがしていて、自分自身ファイナルということが寂しくて目を背けていた部分がありました。いざ初日を迎えてみると、やっぱりいつも通りに楽しみたいですし、皆さんも寂しい気持ちはあるかと思いますが明るく終われたらいいなと思います。緊張していますが、一生懸命出来ることを精一杯やって、6年間の新テニミュの軌跡を皆さんにお見せできればいいなと思います。
ーー兄リョーガとの真剣勝負が描かれますが、見どころはいかがでしょうか?
(新テニミュでは)The Second Stageでリョーマとリョーガは出会いましたが、これまでの思い出はたくさんありますし、役者としても大きなものを教えてもらったお兄ちゃんに、徳川(カズヤ)のセリフにありますが、「あなたを倒すことが恩返し」だと信じて演じようと思います。今回は特に、単純なテニスの応酬ではなく、それぞれの思いや背負ってきたもの、過去など人間ドラマが炸裂します。リョーガとの試合は家族の物語やリョーガがどれだけ苦しんできたかを描いています。
ーー観劇されるお客様にメッセージをお願いします。
新テニミュが始まってから、これまでの公演が鮮明に思い出せるくらい1つ1つが濃い6年間でした。今回出演しているキャストだけではなく、この6年間一緒に戦ってきた先輩、仲間たちがたくさんいます。その全員の思いを背負って必死に戦いたいなと思っています。
お客様にはリョーマのように希望を与えて、明日も頑張ろうと思ってもらえるような公演にしたいです。ファイナルは寂しいかもしれませんが、それ以上に楽しませる自信があるので、ぜひ僕たちの6年間の集大成を見届けていただきたいです。
■徳川カズヤ 役:小野健斗
ーーThe First Stageから出演されていますが、お気持ちは?
始まった当初を思い返すと、その一瞬を生きて、ボールを追いかけていくのに必死でThe Final Stageが来るなんで一ミリも思うことはありませんでした。でも、時の流れは早くて、ついに本当に最後が来てしまうのかという寂しい気持ちもありますが、今まで一緒に戦ってきた仲間たちの想いも載せて楽しく演じていきたいなと思っています。
ーー優勝をかけた頂上決戦、前作に続きメダノレとの試合がありますが、見どころを教えてください。
各セクションの素晴らしい技術を使った異次元のテニスがみられるというのもそうですし、僕としては徳川の背負っている技能、心や恩返しといったところが物語にどうやってドラマを生んでいくのかというところを見ていただけたら嬉しいなと思います。
■アントニオ・ダ・メダノレ 役:當間ローズ
ーーThe Fourth Stageの出演から3作品目となりますが、作品が完結を迎えるお気持ちは?
率直にさみしいです。僕はThe Fourth Stageから出させていただいて、最初はスペインチームも3人だったところから、ちょっとずつ増えて、もう一人のメダノレも増えて、8人でやっと届けられる! と思ったところでThe Final Stageだったのですが、始まりがあるということは終わりがあるし、どの芸術もそうなんですが、ここまでつながってきたバトン、輝きというのは最後の一瞬で決まると思っているので歴史に残るステージを届けられたらいいなと思っています。
ーー徳川との試合について、メダノレとしての想いは?
世界大会ラストの戦いにもなるのですが、技術であったり力を超えて、この二人には想いや関係があるので、最後までそこを大切に演じていきたいと思っています。
スペイン語で「El mayor respeto que puedes mostrar a tu rival es darlo todo frente a él.(ライバルに対する尊敬というのは自分のすべてを懸けることである)」という言葉があるのですが、まさにその言葉通り、最後の一滴まで自分のすべてを懸けたいなと思っています。
■越前リョーガ 役:井澤勇貴
ーーThe Second Stageからのご出演ですが、完結を迎えるお気持ちはいかがですか?
僕はThe Second Stageからの出演なのですが、なぜか新テニミュは自分が出ていない公演でも物語の中にいるんだという実感を持てるんです。これは新テニミュならではの魅力の1つなのかもしれません。試合を作ることは大変な作業ですが、常に選手のそばに自分もいるんだという気持ちになります。The First StageとThe Third Stageは出演していなかったのに、僕もいたと自信をもって思えるくらい新テニミュの世界のなかにどっぷりと入り込んでいます。今回The Final Stageを迎えますが、悔いなくお客様に楽しんでいただけるように誠心誠意作り上げてきましたので、思う存分発揮したいなと思っています。
ーーリョーマとの試合について、リョーガとしてはいかがですか?
色々な現場で揉まれて大きくなって帰ってきて、を繰り返して、リョーマを演じてきた6年間は(今牧)輝琉にとってすごく大きかったと思いますし、ここまでたくましくなるかと感慨深いです。
僕は兄として立ちはだかりますが、物語の主軸は越前リョーマですし、このファイナルでの越前リョーマの着地点には素晴らしいものがあるので、皆さんにはぜひチビ助の思いを見届けていただけたらと思います。
■越前南次郎 役: 上島雪夫
ーー演出・脚本としてずっと新テニミュを創ってこられましたが、原作の最終回を読んで、The Final Stageをどんな舞台にしたいと思われましたか?
原作が完結したばかりなので、最終回を読んでから慌ててラストシーンを作りました。
どういう風に終わるのかなと思っていましたが、やっぱりテニミュらしく“明日に向かって”という世界で終われるラストだなと
思います。
ーー南次郎として、真剣勝負に挑むリョーマ、リョーガをどんな気持ちで見守っていますか?
(リョーマとリョーガは)両方とも息子ですから、死に物狂いで戦ってくれたらいいと思います。ただ、以前南次郎を演じているときに、なんか必死に戦っているけれどもどこか楽しんでいるというか、楽しむことを忘れないようにと思っていました。世界に通用するようなアスリートも「明日の試合はどう挑みますか」と聞かれて「楽しくやろうと思う」と言っていたのを見て、楽しむことがこんなにも自分のことをリラックスさせるのかと感じました。何かのためにと意気込むと身体が固くなってだめだし、楽しくやろうと思うと身体が楽になる。二人には苦しくつらい戦いをしながらも、どこかで楽しんでほしいと願っています。
取材・文=横澤由香
(C)許斐 剛/集英社・新テニミュ製作委員会
公演情報
日程:2026年10月10日(土)
会場:Kanadevia Hall (東京都)
開演:12:30~(開場 11:30~)
【手数料0円】一般発売
受付期間:2026/8/23(日)10:00~2026/10/10(土)12:30