ピアニスト・小林海都、演奏者同士の“生きた会話”を ひとつの音楽に 『エトワール・シリーズ プラス』を開催

2026.10.5
インタビュー
クラシック

小林海都      (C)HIPIC

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2026年10月17日(土)彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホールにて、『エトワール・シリーズ プラス 小林海都(ピアノ)Part.1 ピアノと弦楽器のアンサンブル』が開催される。

この度、小林海都への公演について聞いたインタビューが届いたので紹介する。

ヨーロッパで学んだのは“感覚”と“理論”の両輪

ーーピアノとの出会い、そして演奏家としてのこれまでの歩みについて、聞かせていただけますか。

ピアノは姉の習い事に憧れて、3歳頃から自然と楽器に触れるようになりました。小学生の頃、テレビで流れてきたショパンの《幻想即興曲》に心を奪われ、母に頼んでその曲が聴ける演奏会に連れて行ってもらったのですが、それが横山幸雄先生のリサイタルでした。演奏後CDを買ってサインをいただき、握手までしてもらって。子のなんだ」と再認識したあの体験が、そのままヨーロッパへの留学へとつながっていきました。

ーーピリス先生からは、どのようなことをいちばん深く学びましたか?

ピリス先生は音楽を言葉で分析するというより、演奏そのもので教えてくださる方でした。先生が演奏するやいなや、その場の空気が変わる経験を何度もしました。ピアノからどのような音色を引き出したいのか、ハーモニーの変化に応じて音色をどのように変えていくべきなのか、繊細なニュアンスを考えるうえで大きな影響を受けました。先生と連弾したときには、絶妙なペダルの使い方なども非常に勉強になりました。

ーーその後、スイスのバーゼルで、クラウディオ・マルティネス・メーナー先生にも師事されましたね。

ピリス先生が感覚で音楽を伝える方だとすると、メーナー先生はその正反対といえるほど理論的な方で、最初はかなり戸惑いました(笑)。作品を緻密に分析し、フレージングについて徹底的に掘り下げていくんです。感覚だけに頼っていては表現として伝わらないこともある、と知りました。おふたりの先生のアプローチが自分のなかで溶け合うまでには2、3年かかりましたが、今では自分の演奏の両輪となっています。

ーーそうした学びが、室内楽への向き合い方にも生きているわけですね。

室内楽は相手の出方によって演奏がどんどん変わっていきます。すべて自分の計算どおりにはいかないところが、むしろ面白い。自分のパートだけでは音楽としては成立せず、“生きた会話”として互いに影響し合いながら、みんなでひとつのかたちにしていく——その過程がたまらなく好きです。

違った世界を堪能できる贅沢なプログラム

ーー10月17日のPart.1はシューベルトのピアノ三重奏曲第2番と、ドヴォルザークのピアノ四重奏曲第2番というプログラムです。

「好きな作曲家は?」と問われれば、シューベルトは真っ先に思い浮かぶ存在です。ピアノ三重奏曲第2番はヨーロッパ留学中に熱中して取り組んだ、特別な思い入れのある作品です。45分近くにおよぶ大曲で、「天国的な長さ」とも言われますが、終わりがいつまでも訪れてほしくないような感覚を覚える作品です。ドヴォルザークの四重奏曲は、シューベルトと同じ変ホ長調ですが、まったくキャラクターの異なる音楽です。みずみずしさと民謡的なエネルギーに満ちていて、2曲で非常に違った世界を堪能できる、贅沢なプログラムになったと思っています。

ーー共演者の皆さんについても聞かせてください。

辻彩奈さん(ヴァイオリン)、佐藤晴真さん(チェロ)とは、それぞれデュオでも共演してきました。おふたりに共通するのは、室内楽における「聴く力」とでも言うべきものです。互いの音をしっかり受け止めながら音楽を紡ぐ姿勢が、シューベルトにはとりわけ大切なので、ぴったりのパートナーです。田原綾子さん(ヴィオラ)は、本当にさまざまな場でご一緒してきた大切な音楽仲間です。ドヴォルザークに加わっていただくことで、弦の響きがさらに豊かに広がると楽しみにしています。

辻彩奈(ヴァイオリン)        (C)Makoto Kamiya

佐藤晴真(チェロ)  (C)Seiichi Saito

田原綾子(ヴィオラ)        (C)Taira Tairadate

ーー最後に、埼玉のお客様へのメッセージをお願いします。

じつは実家が埼玉にありまして、彩の国さいたま芸術劇場はとても親しみのある劇場です。あのホールの、柔らかく美しいピアノの響きがずっと印象に残っていて、室内楽にもとても良い空間だと感じています。深く豊かな作品を、素晴らしい仲間たちとお届けできる、夢のような舞台。ぜひ多くの方にお越しいただければうれしいです。


取材・文=飯田有抄(クラシック音楽ファシリテーター)

公演情報

『エトワール・シリーズ プラス 小林海都(ピアノ)Part.1 ピアノと弦楽器のアンサンブル』

日程:2026年10月17日(土)15:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
 
共演
辻彩奈(ヴァイオリン)
田原綾子(ヴィオラ)
佐藤晴真(チェロ)

曲目
シューベルト:ピアノ三重奏曲第2 番
変ホ長調 D 929
ドヴォルザーク:ピアノ四重奏曲第2 番
変ホ長調 作品87
 
一般:正面席4,000 円
バルコニー席3,000 円
U-25(バルコニー席対象):1,500 円
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