和希そらインタビュー~舞台『聖地X』でストレートプレイに初挑戦「芝居の質感の違いから何を学べるのか楽しみ」
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和希そら
前川知大の代表作『聖地X』が、2026年11月5日(木)~29日(日)東京・PARCO劇場、その後、大阪、香川にて上演される。
劇団イキウメ主宰で、SFやホラー、怪談など“目に見えないもの”との関わりから人間の本質を描いてきた劇作家・演出家の前川による本作は、2015年にシアタートラムで初演、2021年には映画化され大きな話題を呼んだ。
主人公の山田輝夫役には桐谷健太、輝夫の妹で夫と別居して実家に戻ってきた要役は、2024年に宝塚歌劇団を退団し、本作が初のストレートプレイ出演となる和希そらが務める。前川ワールドの真骨頂ともいえる、独特で不思議な世界観のSFコメディに挑む和希に、今の心境を聞いた。
今は芝居を色々学びたいと思っている
ーーまずは、台本を読んだ感想を教えてください。
どういう展開になるのか全然予想できなくて、最後まで楽しみながら作品を読み進めていきました。想像していなかった終わり方だったので、こういう風に着地するんだ、という新鮮さもありましたし、面白かったです。私は今回が初めてのストレートプレイへの出演なので、この作品で描かれている日常的な風景がどのように舞台上で展開していくのか、どんな場面転換がされるのか、というところがすごく楽しみです。
ーーストレートプレイに臨むにあたって、緊張や不安などはありますか。
不安なことは特にないです。ずっと挑戦したかったので、楽しみな気持ちと、何を吸収できるんだろうというワクワクを感じています。
和希そら
ーー初挑戦ではありますが、あまり構えて臨むという感じではなさそうですね。
全然構えてはないですね。ミュージカルの舞台でも芝居パートはありますし、今まで芝居と踊りと歌をやってきて、どれも大好きなんです。ストレートプレイのお芝居とミュージカルのお芝居では質感が違うと思うので、そこから何を学べるのか楽しみです。今は芝居をいろいろ学びたいと思っている時期なので、そんな時にストレートプレイに挑戦できることがすごく嬉しいです。
ーー要という役柄については、現時点でどのようなキャラクターだと思いますか。
極めて普通な人、という印象です。悩んでいることとか、どうして兄のいる実家に帰ってきたのかとか、普通の人の行動や反応だな、と思いました。そんな普通の人が、不思議な体験に巻き込まれていくので、観客と一番同じ感覚を持っている人なのかなという気がしていて、お客様が物語に没入していく入り口のような役割の人だと思っています。
ーー要に共感できる部分や、自分に近いと感じる部分はありましたか。
私がこれまで演じて来た役柄は、理解はできるけど共感しづらい、みたいな役が多かったんですが、要は共感しやすいキャラクターかなと思います。自分に近いかと言われると……どうなんでしょう。同じ体験をしたことがないから何とも言えませんね(笑)。でも、別居して実家に帰って、いざ離婚となった時には情が捨てきれないようなところは、すごく人間味がある人だと思うので、皆さんも共感しやすいんじゃないでしょうか。あと、お兄ちゃんとのシーンが多いのですが、私も兄がいるので、兄との間に流れている親とも違う空気感を、桐谷さんとどうやってお芝居で作っていくのか楽しみですね。
ーー共演者の方は皆さん初共演とうかがいましたが、そういう現場はやはり緊張されますか。
緊張というよりは人見知りをしちゃうタイプなので、うまくやっていけたらいいなと思っています(笑)。
和希そら
ーー稽古場に入る時に何か心がけていることはありますか。
何もないです。変に頑張って話しかけようとかもしないです。じーっと見ています(笑)。皆さんの動向を見て、「この人はこういう人なんだな」と思いながら、焦ることなく、お話しする機会が来るのを待っている感じです。
ーー桐谷さんとは兄妹役ということで、やりとりも特に多くなりそうです。
桐谷さんは今までもいろんな作品で拝見していました。特に『ラーゲリより愛を込めて』という映画がとても好きで、その作品でも素敵なお芝居をされる俳優さんだな、と思って拝見していたので、今回初共演で血縁関係のある役柄でお芝居ができることが楽しみです。
ーー演出の前川さんとは何かお話しされましたか。
私が出演している舞台を見に来てくださって、その時に短い時間ですがご挨拶させていただきました。今回この作品に出ることになったら、他の舞台で共演した方たちが、みなさん口をそろえて「前川さんの作品に出るの、すごい!」とか「絶対楽しいよ!」とザワザワしていました(笑)。それを聞いて、本作に挑戦することがさらに楽しみになりました。
自分の考え方次第で結果が変わる
ーーなかなか他にはない世界観の作品なのかな、と思います。
そうですね。ホラー要素もあるということで、ファンの方からは「ホラーはちょっと苦手だから……」という声も聞こえているのですが、想像されているようなホラーではないから観に来てください、ということはお伝えしています。この作品は、人間の脳の考え方の話でもあると思うので、そこにとても共感できるなと思っています。これまでも「考え方次第だ」と思って生きてきたところもたくさんあったので、読みながら分かるなぁ、と思うことが多かったし、そこに面白さを強く感じました。
ーーコメントでも「人間の脳ってすごいなと思った」とありましたが、具体的にどの部分でそう思われたのでしょうか。
私は、同じことをするにも自分の考え方次第で結果が変わる、と思っています。いつも言うのは、例えば30回腹筋してくださいと言われた時に、「しんどい」と思って30回やるよりも、「お腹のこの部分に効くんだ」と思ってやった方が、成果の現れ方が変わると思います。体力的にハードな作品でも、「疲れた」と言ってしまうと脳が疲れたモードに入ってしまうから、公演の最中は絶対に口に出して「疲れた」と言わない、そこにフォーカスしないと決めています。元々そういう考えを持っていたので、この台本を読んだ時に「これ分かるかも」みたいな感じで自分の考え方とリンクする部分があって、すごく面白いなと思いました。
ーー考え方一つでいろんなこと変わるというのは、確かに多くの人が実感としてあると思います。
見え方が全然変わりますよね。不思議に感じられる世界も、不思議だと思っている人たちの感情で出来上がってるものなのかもしれないな、と考えると、深いですよね。見た人によって「こうなんじゃないか」「ああなんじゃないか」と考えられる作品が好きで、見た後に作品について誰かと喋るのも好きなので、本作は「絶対にこう」という答えがありすぎない作品でいいなと思いますし、そこも含めて楽しみたいです。あと、いわゆる“お笑い”的な面白さではなくて、例えば人間の辛辣さが重なって面白く見えてくるというような、間合いとか返しとかセリフの掛け合いからにじみ出る、日常生活にもよくあるような人間の面白さがとても感じられるな、と思いました。
和希そら
ーー本作は場所にまつわる話でもありますが、和希さんにとって何か特別な力を感じる場所はありますか。
これまでそういうふうに考えたことがなくて……。ニュートラルに生きているからなのか、ドライだからなのか、場所に対して「この場所は自分に合っている」とか「ここは嫌かも」ということもそこまでないんです。でも、前に人から言われたのが、私は水属性らしく。以前、滝を見に行ったことがあったのですが、「一生ここにいられる」と思うくらい気持ちいいなと思いました。
ーー例えば海とか、水のある場所はお好きですか。
きれいな海が好きなので、旅行に行くとなったら、南の島に行きたいな、と思って沖縄を選ぶことが多いかもしれないです。ハワイにも以前行ったことがありますが、絶対もう一回行きたい、という気持ちがあります。
ーー逆にここは苦手だな、と思う場所はありますか。
車を運転していたときにたまたま行った街が、とんでもなく道が狭くて、しかもその日が大雨で運転しづらくて、切り返さないと曲がれないくらい狭いところで後ろから車が迫って来てしまって、すみません下がってください、みたいなことも重なって、珍しく「あ、この街には一生来ない」と思ってしまいました(笑)。
元々、人混みは好きじゃないな、とかは思ったことがありましたが、特定の土地に対してそこまで強い思いを抱いたのは初めてかもしれません(笑)。
ーー最後にメッセージをお願いします。
最初にこの作品に触れた時、『聖地X』って何? というところから始まって、どんどん作品に引き込まれていきました。一緒に不思議な世界に入っていって、最後「こうなんじゃないかな」という答えが自分の中で見つかるというような作品なので、この作品を既にご存じの方はもちろん、まだご存じではない方も、どういう意味なのか、どういう世界なのか、と思いながら観に来ていただいて、いろんなことを紐解きながらお楽しみいただけるんじゃないかなと思っています。私自身は、ご一緒する皆さんのお芝居の質感をたくさん吸収しながら、新しい挑戦として頑張りたいです。
和希そら
取材・文=久田絢子 撮影=荒川 潤