72件が日本初公開、特別展『躍動する明代の書-台北・何創時コレクションの至宝』で出会う自由な表現ーー読めなくても楽しめる、書家たちの個性と素顔
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1995年に台北で創設された財団何創時書法芸術基金会が蒐集(しゅうしゅう)した、中国・明清時代の書を特集する特別展『躍動する明代の書-台北・何創時(かそうじ)コレクションの至宝』が12月20日(日)まで、大阪市立美術館で開催されている。
趙宧光《篆書王維積雨輞川荘作》
同展が焦点をあてるのは、何創時コレクションの中でも質・量共にもっとも充実しているとされる、明代中期から明末清初の書。ちなみに明代とは、日本では室町時代から江戸時代初期にあたる。展示される書は82件あり、そのうちの72件が日本初公開。これだけ大規模な展示・公開も日本初となる。
何国慶理事長
10月8日(木)には記者説明会が開催され、大阪市立美術館・内藤栄館長、何創時書法芸術基金会・何国慶董事長、何創時 財団法人芸術文教基金会・何恩礼執行董事、大阪市立美術館・弓野隆之学芸員が出席して同展の見どころを語ったほか、内覧会も行われた。
読めなくても楽しめる! 書に表れた個性と心情にふれる
展示風景
明清時代の書に馴染みのない人にとっては、そこに何と書かれているのか読み取るのはかなり難しいはず。ただ「ちゃんと読もう」としなくてもいい。なぜならそこに表れているのは、書家たちの個性や、その時々の心情、そしてシチュエーションであるからだ。作品に添えられている解説文から社会や時代、そして書き手の背景をイメージすると、“初心者”には難解な書も自然と受け止めることができる。
祝允明《草書蚕衣五篇》
弓野学芸員は「(書家たちが)自分が持っている個性や心情を表現している作品が多い」と解説し、何国慶董事長も「個性を表に出す傾向が強くなった背景には、文人たちの思想が開放的になっていった面があります。知に従って自由に自分を表現してよいという考え方が広まり、明代の経済が非常に発達していたことが影響しています。特にスペインがアメリカ大陸を発見した後、大量の銀が中国へ流入した影響が強くあります。中国の陶磁器や絹織物、お茶などを買うために、海外から大量の銀が中国に入ってきたのです。蘇州や松江などは経済的に非常に繁栄しました。思想の開放と経済的な豊かさがあったからこそ、当時の書家は自分の個性を表現することができたのだと思います」と付け加えた。
酔って筆を走らせ、愛猫を描く――書家たちの素顔が見える作品
王鐸《雑書贈愚谷詩》(部分)
そうしたことを意識して鑑賞すると、それぞれの書がとてもユニークに感じられる。特に興味深かったのが、王鐸(おうたく)の「雑書贈愚谷詩(ざっしょぐこくにおくるし)」だ。同書は、王鐸が酒を飲みながら書いた俚言(りげん/俗語・くだけた言葉・方言のこと)。五言律詩九首(ごげんりっしきゅうしゅ/9つの5文字8行の詩)を、陽気なテンションで書いたのではないかと想像が膨らむ。楷書、行書、草書など様々な書体を使っていることからも、王鐸が酒と食事を楽しみ、気の向くままに書いた様子が伝わってくる。
(右から)傅山《草書酔後浪書》《行草書李商隠詩》
字体のおもしろさという点では、傅山(ふざん)の「草書酔後浪書(そうしょすいごろうしょ)」と「行草書李商隠詩(ぎょうそうしょりしょういんのし)」ではないだろうか。一つ一つの字が、別の字にまとわりついているように見えるのだ。「草書酔後浪書」も、傅山が酒に酔った勢いで書いたものだそうで、奔放さの中に傅山の情感が宿っている。
宋玨《隷書黒児像賛》
親しみやすさで言えば宋玨(そうかく)の「隷書黒児像賛(れいしょこくじぞうさん)」だ。黒児(こくじ)と名付けられ、崔子鎮先生と生活を共にした猫の絵も描かれており、丁寧な毛の線、丸みのある身体、かわいらしい表情などが特徴である。先生が亡くなった際、棺の周りを回りながら悲しげに泣いていたそうで、そうしたエピソードを読むとより黒児が愛らしく思える。
3.5メートル超の大作から、お詫びの手紙まで
展示風景 (左から2番目)張瑞図《草書王維宮傀陌》
圧巻のスケールで展示されているのは、張瑞図(ちょうずいと)による長条幅(ちょうじょうふく/縦長150センチ以上の用紙に書かれたもの)の作品。特に3.5メートルを超える長条幅の「草書王維宮傀陌(そうしょおういきゅうかいはく)」の迫力はすさまじく、継ぎ目のない一枚紙に、一文字一文字が人間の頭ほどのサイズで豪快に書き下ろされている。
八大山人《与喝濤或石乾書》
八大山人(はちだいさんじん)の「与喝濤或石乾書」は、現代でいう手紙だ。そこには、依頼された絵を完成させたものの、相手に渡すのを忘れ、謝罪の意が表されている。字面からも八大山人の申し訳なさが感じられるのではないだろうか。
お気に入りの書を、トートバッグやクリアファイルで持ち帰ろう
ミュージアムショップ
また同展では、様々な書がプリントされたトートバッグやクリアファイル、さらに筆などのグッズが販売されている。自分が気に入った書のグッズを見つけて、手に入れてみてはいかがだろうか。
ミュージアムショップ
書の世界に初めて触れる人はぜひ、柔らかい感性で受け止めてみてほしい。
取材・文・撮影=田辺ユウキ
イベント情報
※本展は予約制ではありません。
※災害などにより、変更となる場合があります。
※災害などにより臨時で休館となる場合があります。
高大生 1,200円
小中生 500円
※本展の観覧券で、企画展示もご覧いただけます。(観覧当日のみ)