Aonowa、EP「愛作のカケラ」から始まる新章――殻を破って見つけた自分たちらしい音楽とは
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Aonowa 撮影=浜村晴奈
今春、バンド名を「おもかげ」から「Aonowa(アオノワ)」へと改めた、横浜発、メンバー全員21歳の4人組。2023年に18歳で結成され、全員が20歳を迎えたタイミングで改名を決断したと、今回のインタビューに応えてくれた日隈貫太(Vo.Gt)と左近航介(Dr)は語った。
9月16日にリリースされたAonowaとして初のEP「愛作のカケラ」には、大人と子ども、10代と20代の狭間で揺れ動く心情を、さまざまな角度から切り取った4曲が収められている。淡い青だけでは語れない、濃く複雑な表情を見せる青い想い。解けそうで解けない苦さや、まだ名前のついていない想いも抱えたまま走り出す、彼らの現在地を映し出した作品になっている。
おもかげ時代に発表した「18歳」で彼らは、<青がすぎていく/このままでいさせて欲しかった>と歌った。あの頃から時を重ねた今、Aonowaの中にある「青」はどんな色、どんな輝きをしているのか。EPの4曲に耳を傾けながら、ツアー『Blue Moment』で彼らがその想いをどう鳴り響かせるのか期待したい。
日隈貫太(Vo.Gt)、左近航介(Dr)
「愛作のカケラ」が、自分たちの目指す場所へ向かう出発点になれた
ーーAonowaとして初のEP「愛作のカケラ」は、バンドが始まった頃は10代だった4人が20代になり、今年の春におもかげからAonowaに改名し、さまざまな節目を迎える中で作られた作品だと思います。できあがってみていかがですか?
左近航介(以下、左近):おもかげ時代からの僕ららしさ、温かさももちろんありつつ、挑戦の意味も込めてこれまでやってこなかったジャンルの曲もあり、僕らがやりたいことを詰め込んだ作品になりました。
日隈貫太(以下、日隈):曲を作った時期はバラバラで、改名を発表した後の最後のおもかげのツアー中にも書いてました。僕はその時20歳で、今21歳なんですけど、そういう年齢の境目とか節目っていうタイミングでもあり、その時期ゆえの葛藤とかも曲に詰め込めたと思います。それぞれの色があってジャンルも全然違う4曲を集めたEPにできて、それが愛されたら嬉しいなっていうイメージでタイトルも考えました。
ーータイトルの「愛作」は初めて聞く言葉だったんですが、リード曲「シネマに恋をして」の歌詞に<名作じゃない、傑作でもない 毎日観たくなる愛作を>とありますね。
日隈 :ハイ、僕が作っちゃった言葉です(笑)。これは、自分たちが今21歳で書いた曲が、この先少しずつ広がってたくさんの方に聴いてもらえて知ってもらえていく中で、名作とか傑作って呼ばれるようになったらいいなという思いがあって。じゃあそうなるまでの、今現在この作品をなんて呼ぶか?となった時に、大切にされるべき曲であり作品であって欲しいから、愛作かなって。このEPの1曲1曲が愛作のカケラだなって。
ーー最初にそのタイトルを聞いた時、左近さんはどう思いました?
左近:最初に聞いた時から、いいなと思いました。自分でも今回の4曲のフレーズを考えていく中で、聴いてくれる人たちに愛されるような作品にしたいなと思っていたので。
日隈:みんなに「これでいきたいです」って出した時に即決だったもんね。
左近:うん、そう。
日隈:自分で作った言葉ではあるけど、この先自分たちがライブで歌ったり、曲を聴いてもらえたりしていくうちになじんでいく言葉になるんじゃないかなって思ってます。
日隈貫太(Vo.Gt)
ーー曲作りやタイトルを決める時はそうやって4人で意見を出し合っていくやり方ですか?
日隈:基本的な軸は僕が任せてもらってて、作詞作曲もデモ段階まで作ってみんなに共有して、楽曲のアレンジは全員で詰めていきますね。自分たちでこんなふうに見せたいみたいなセルフプロデュース面は、世界観も含めて「こういうのでいこうと思う」って提示させてもらい、それに対して、「いいじゃん」とか「OK」みたいなリアクションがあって……という感じで進めていってますね。
左近:歌詞もそうなんですけど、僕は貫太(日隈)の思考がめっちゃいいなと思っているので、いつも「ありがとう」と思っています。彼はとっても賢いので(笑)。
日隈:やめてください(苦笑)。
ーー1曲目の「Ready」はイントロなしでいきなり「Are you ready?」と始まる。文字通り耳に飛び込んでくるような曲で、インパクトがありますね。
日隈:1曲目で、「準備できてるの?」って聞きたくてそういう始まり方にしてみました。この出だしのつかみを褒めてもらえることが多くて、嬉しいです。
左近:ロック調だよね。
日隈:そう、ダンスロックっぽくてサビはすごくノリノリになるから、ライブでも楽しめる曲になるだろうなって。僕らはずっとギターロックを主軸に青春ロックサウンドと呼ばれる楽曲をやってきたんですけど、それをもっと広げるのが今のタイミングかなと思ったんですね。これは改名を決めた想いにもつながるんですけど、日本語ロックを届ける上でも、英語圏の人に届く工夫とか、音楽シーンのトレンドも見つつ、もともと好きだったオアシスとかのUKロックやグリーン・デイとか洋楽からの影響ももっとダイレクトに表現していきたい。これまでは、そういうものからの影響を、おもかげの頃に掲げていた「日本語を大切に」という主軸と混ぜた時にぶつかり合っちゃうんじゃないかと思っていたんですね。だから僕の中で勝手に制限していたところがあって。要は言語の壁なんですけど。
ーーおもかげというひらがなのバンド名も含め、和への情熱はバンドの特徴だったと思いますが、表現する上で日隈さんの中に縛りがあった?
日隈:そうです。だから曲のタイトルにも英語は使ってなかったんですね。ただ、18歳から19歳、20歳とずっと曲を書いてくる中で、バンドでやりたいこととか目指す先の広さや規模感も変わってきていて、楽曲とか歌詞の言葉も含めてもっと広く届けたい。そうなった時に、自分の中にある言語の壁みたいなのはもう要らなくない?自由にやらないか?って。ノリがいい曲だったら英語のフレーズも入れたいし、「Ready」のサビで「ターラッタッタッタッター♩」って歌ってるんですけど、そういうサビだっていい。そうやって吹っ切れて作った時に、たぶんどんなジャンルをやったって、僕の声とか僕が作る曲調だったら、Aonowaらしいって受け取ってもらえるだろうなと思えたんですね。
ーーそういう変化があったんですね。
日隈:はい。そうやって作ってみたことで、周りの人からも「一皮むけたんじゃない?」と言ってもらえたり、ライブハウスの人にも良いと言ってもらえて自信がついたのもありますね。今回のEPが、自分たちの目指す場所へ向かう出発点みたいなものになれたかなと思っています。
僕らが持っているのは青で、バンドの軸にあるのは温かさ
ライブが強いバンドであることを誇れるようになりたい
左近航介(Dr)
ーーEPのリード曲であり、タイトルの愛作が歌詞に登場する「シネマに恋をして」も、曲のタイプは違えど「Ready」同様イントロなしで曲が始まり、その瞬間に持っていかれる曲です。
左近:今作で個人的にメロも歌詞も一番大好きな曲です。サビメロが一番好きで、それを際立たせたいと思いながらドラムを作りました。正直、苦戦しました(苦笑)。
ーー具体的にどんなところに心を砕きましたか?
左近:僕はフレーズとかやりすぎちゃう傾向があるんですけど、この曲は「歌うドラム」を意識して作りました。ドラムが前に出るんじゃなく、どっしり支えてメロディーを後ろから押し出すみたいなイメージですね。シンプルだけど、僕的にはメロも他の楽器も聴きながら歌いながら作れたなっていう感じですね。
日隈:そう、ドラムが歌ってるなと思った。僕のパート(ボーカルとバッキング・ギター)とドラムの重なりってめちゃくちゃ大事で、ドラムって電子音を通さず生で音が鳴るので、パワー感とかフレーズとかで歌の聴こえ方がめちゃくちゃ変わると思ってるんですね。初期の頃はなかなかできなくて、「もっと歌ってよ」とか言ってました(笑)。けど、航介自身がいろんなものに触れて吸収していく中で、変わっていってるところを見ていると、高校の軽音から始まって18歳からバンドをやってきた僕らっぽいなって。成長過程すらも曲で楽しんでもらおうっていう、ライフ的な意味で音楽ができてるなって思いますね。
ーーさっき日隈さんが、これまで曲作りにおいて制限してたことを今作では取っ払ったと言われてましたが、演奏面においても何の縛りもなく自由にやれました?
日隈:今回、マジで自由だよね。
左近:そう。楽器隊は結構委ねてくれるので、各々で作って最終的に擦り合わせていくんですけど、今回はかなり自由に作ってたね。
日隈:4曲目の「ブルーモーメント」みたいに時代に逆行するようなイントロ長めの曲もあれば、「Ready」や「シネマに恋をして」みたいに歌から始まる曲もあって、どっちもいいなと思うし、そもそも音楽って自由でしょと思っているんですね。音楽が自由に楽しめる世界こそロックなんじゃないの? みたいな定義の仕方を僕らはしていこうかなと思っていて。「これが正解です」というものをやりたいわけじゃないし、歌詞でも言っていますが、何がオトナなのかもわからなければ、何がコドモだったのかも僕はまだわかってないんで、じゃあ今できるものをやろうぜっていう意思表示ですね。
Aonowa「キミは夏模様」Lyric Video
ーー歌詞の話が出ましたが、「キミは夏模様」にすごく惹かれる歌詞があって。<花火が落ちる前にはボクら/あのふたりと呼ばれるかな>の2行なんですが、この曲は浴衣や線香花火、生ぬるい風など誰もが夏をイメージするものを散りばめながら主人公の<ボク>視点で物語が進む。ただ、<あのふたりと呼ばれるかな>の1行にはふたりを外側から見てる目線が感じられたり、”恋人”みたいに名前のついたものかはわからないけど、ふたりの関係が変わることへの期待が感じられたり。その描写がすごく良いですよね。
日隈:よし!(笑)。これは曲作りの話になっちゃうんですけど、曲と歌詞は別々にずっと書き溜めていて、先に曲やメロディーができてそれに合う歌詞を後からつけていくんですね。レコーディングが始まるといつも、”歌詞はいつ出すの?”みたいに言われるんですけど、1日1秒経つ間にも”ここはもっとこうしよう”って浮かんでくるし、先にオケのレコーディングが始まって歌を録る直前、「貫太、もう録るよ」って言われる直前まで別室で歌詞を推敲し続けてます。100パターン書いて99個ボツが生まれるぐらい。
左近:いつもやってるよね。
ーーそこまでこだわるというか、突き詰めるというか、言葉を磨いていく?
日隈:そうですね。助詞や助動詞、てにおはにこだわりますね。さっき言ってもらった<あのふたりと呼ばれるかな>の<あの>とか<かな>の2文字は、描写が伝わるすごく大事なところだと思うし、そういうことを一生やってます(笑)。言葉が好きだからっていうだけなんですけど、そうやって突き詰めたものを良いと言ってくれる人、伝わったと感じてくれる人がいたら僕が100回書いた意味があるなって。
ーーここにも伝わっている人がいます(笑)。そうやって書かれた歌詞を左近さんはどんなふうに見ていますか?
左近:貫太の歌詞は、難しい言葉を使ってるわけじゃないけど詩的で。ただの文章じゃなくて、さっき言ってた助詞とか細かいところにこだわってるからこそ伝わってくる重さとか描写がすごい鮮明だなって僕は思っていて。だから好きですね。
日隈:でもメンバーは基本的に僕が細かいところをこだわっても、<かな>から感じる気持ちとかには気づいてくれないので、そこはリスナーにゆだねてます(笑)。
ーーツアー『Blue Moment』は残すところあと東名阪のワンマンです。Aonowaのライブに初めてくる人に、こんなライブだよって教えてください。
左近:僕たちのライブはライブハウスに行ったことがなかったりAonowaをめっちゃ知ってるわけじゃないって人も、みんなで一つの温かい空間を作れる。自由に楽しくやろうよっていうライブですね。
日隈:色でいうとオレンジ、黄色みたいな感じです。
ーービタミンカラーで温かそうです。ライブのここを観てもらうとAonowaの良さがわかるというところはどこでしょう?
日隈:ライブを観た人から、「こんなに楽器弾いてるんだ!」って言われることが多くて。
左近:言われるね。
ーーライブ動画を観ました。めちゃめちゃ巧くて釘付けになりました。
日隈:ライブ映像を上げるとそう言ってもらえることが多いですね。僕ら16歳の時からオリジナル曲をやっていて、週6とかでスタジオ練習をガンガンやってたんですが、今も好きでスタジオに入っているんですね。その練習好きが昂じて、ライブは演奏力を褒めてもらうことが多いんですが、良い作品を作ることと、その音源よりも確実に良いライブをして楽曲をちゃんと届け切るまでが大事だと思っているんですね。なので演奏力は当たり前で、ちゃんと届くようにやる。それはミュージシャンである限り背負い続けたいと思ってます。ライブが強いバンドであることを誇れるようになりたいし、さらに曲も良くて雰囲気も最高だったら、(左近に向かって)ねえ?いけるっしょって思ってます(笑)。
ーーこの先、Aonowaが目指しているバンド像はありますか?
日隈:僕らがどれだけ大きくなっていろんなところで知られるバンドになっても、”あの頃のおもかげがあるな”って思ってもらえるようなバンドに。というのは、おもかげの頃からずっと掲げているんですね。僕らの年齢的にも活動歴的にも、聴く人によっては僕らを親戚の子とか、孫を見るような目で見てくれたりする人もいると思っていて(笑)、それが日本中に定着したら、いわゆる国民的な存在、みんなが好きで愛してくれるバンドみたいになれるのかなとも思ったりして。そういうのもひっくるめた世界観を色で表すならオレンジだったり、僕らが持ってるのは青で、軸にあるのは温かさかな。力強くてやさしくて、それがあるバンドであればかっこいいかなって思っています。
取材・文=梶原有紀子 撮影=浜村晴奈
リリース情報
1.Ready
2.シネマに恋をして ※リード曲
3.キミは夏模様
4.ブルーモーメント
▼公式アカウント
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCHH9BDX15jzykt6ozsAWGNA
Instagram:https://www.instagram.com/aonowa_band/
X:https://x.com/aonowa_band?s=20
TikTok:https://www.tiktok.com/@aonowa_band
ツアー情報
※終了した公演は省略