歴史的建造物でヴィヴァルディ「四季」を体感ーー大阪市立美術館を光と音が包む『ENLIGHTENMENT JAPAN』が日本初上陸
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『ENLIGHTENMENT JAPAN』 撮影=SPICE編集部(大西健斗)
2026年10月10日(土)から大阪市立美術館1階中央ホールで開催中の、360度没入型・光と音のスペクタクルショー『ENLIGHTENMENT JAPAN(エンライトメント ジャパン)』。世界90以上の都市、100か所以上の歴史的建造物で上演され、累計300万人以上が体験してきた話題のショーが、ついに日本初上陸した。ヴィヴァルディの名曲「四季」を題材に、壁や天井、柱までもスクリーンに変えるプロジェクションマッピングで、壮大な光と音の世界へと誘う約30分間。歴史ある建築空間が幻想的なアートに包まれる体験をレポートする。
四季の移ろいを全身で味わう
大阪市立美術館
1936年の開館以来、大阪の文化を支えてきた大阪市立美術館。本館は国の登録有形文化財(建造物)にも登録されており、その中央ホールの白亜の天井や重厚な柱が、映像によってまったく異なる表情を見せる。会場の造形に合わせて制作された映像が、壁面から柱、天井まで空間全体に広がり、視界いっぱいに迫ってくる。
全6章で構成されるショーの前半は、ヴィヴァルディの「四季」に合わせて春・夏・秋・冬を描き出す。第1章「春」は、カラフルな花々や鮮やかな緑が空間いっぱいに広がる。リズミカルなメロディに乗って、まるで頭上から花が降ってくるような光景が展開。色彩の美しさに引き込まれ、生命が芽吹く季節の喜びを全身で感じられる。
上映風景
続く「夏」では、生命のエネルギーとともに、静かに燃える太陽の熱さや緊張感も表現。嵐が巻き起こり、雷鳴が轟くシーンは迫力満点だ。「秋」になると、豊かな実りを祝うように成熟した果実が現れ、柱の下部まで丸い模様がぎっしりと広がる。育まれたものを味わう喜びが、音楽と映像から伝わってくる。
上映風景
そして「冬」。それまでの鮮やかな景色から一転、空間は次第に凍りついていく。映像が本物の柱を覆い、まるで建物そのものが凍っていくような立体的な演出には、思わず寒さを感じてしまうほど。耳馴染みのあるメロディも相まって、印象深い場面となった。波打つように見える天井、最後に氷が割れる瞬間まで、空間を立体的に使った演出から目が離せない。
「無知」から「覚醒」へ……後半はドラマチックな光の世界に
上映風景
四季の旅を終えると、第5章「イグノランス(無知)」へ。ここからは、生と苦しみの輪廻をテーマにした、サイケデリックでドラマチックな映像が展開する。終わりのない循環のなかで葛藤する姿が、「輪廻(サンサーラ)」のサイクルを表現した重厚な音楽とともに描かれ、前半とは異なる緊迫感が空間を支配する。
上映風景
最終章「エンライトメント(覚醒)」では、あらゆる束縛から解放されたかのように、圧倒的な光がホール全体を満たしていく。生き物も登場し、目まぐるしく躍動する映像と音楽が一体となって、フィナーレへ向けて高揚感がどんどん増していく。四季の美しさをじっくり味わう前半から、光と音に圧倒される後半へ。最後まで見届けることで、作品の世界に深く引き込まれる約30分間だった。
柱も天井もスクリーンに! 建築を生かした没入演出
Anja Diggelmann氏
映像制作を手がけるのは、スイス・チューリッヒ発のクリエイティブ集団「PROJEKTIL(プロジェクティル)」。教会や歴史的建造物を舞台にした没入型ショーを世界各地で展開している。
内覧会では、同集団のAnja Diggelmann氏と、アジア各地でライブ・シアターブランドを運営するBase Entertainment AsiaのGreg Suzuki氏が登壇。「PROJEKTIL」は2008年にアーティスト集団としてスタートし、美術館や博物館、歴史的建造物に息を吹き込む音と光のプロジェクションマッピングショーを手がけてきたという。今回の作品では、ヴィヴァルディの「四季」を録音し直し、独自に組み込んだ音楽と映像で、春・夏・秋・冬・無知・覚醒という6つの章を表現している。
(左から)Anja Diggelmann氏、Greg Suzuki氏
Diggelmann氏は、今回がアジア初公演となることにも触れ、「日本・大阪で開催できるということで、チームは非常にエキサイティングしています」とコメント。会場となる美しい建物を提供した大阪市立美術館への感謝も語った。
歴史あるホールの気品と、最先端のデジタルアートが響き合う本作。柱上部のアーチや階段部分など、建物の造形まで効果的に映像へ取り込まれているのも見どころだ。天井だけでなく、空間全体を立体的に使った演出を、ぜひ隅々まで味わってほしい。
ゆったり身を委ねて、光の世界に没入しよう
会場内は自由席で、ビーズクッションも用意されている。体を預けたり、寝ころんだりしながら、頭上や四方に広がる光の世界を楽しめるのがうれしい。映像の広がりを存分に味わうなら、できるだけ空間全体を見渡せる場所がおすすめ。入口近くの後方からだと、ホール全体の演出を捉えやすい。
公演中は写真・動画の撮影も可能。ただし、寝ころんだままスマートフォンを掲げ続けると腕が疲れてしまうことも。もちろん、カメラを置いて自分の目でしっかりと光と音を味わう時間も大切に。
『ENLIGHTENMENT JAPAN』は、11月29日(日)までの第1期に続き、12月1日(火)から2027年1月11日(月・祝)まで第2期の開催も決定。歴史ある建築の中で、美しい夢の世界に飛び込むような特別なひとときを体験してみては。
取材・文=岡田あさみ 撮影=SPICE編集部(大西健斗)