春茶、文字通りファンを自身の部屋に招き入れて届けたのは最高の空間の共有

17:00
レポート
音楽

「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」

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「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」2026.09.12(sat)shimokitazawaADRIFT

9月12日、YouTubeアーティスト春茶のファンクラブイベント「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」が下北沢ADRIFTにて昼夜2部制で開催された。ここでは夜公演についてレポートする。

会場内に足を踏み入れると、穏やかなピアノ曲がファンを出迎える。ステージには白いレースカーテンのような紗幕がかかっていて、ひだの部分に沿って草花が飾り付けられていた。それを、ゆっくりと回る照明が照らしている。この日は涼しくもジメジメした天気だったが、ここはまったくの別世界。白を基調とした静謐な会場の空気も相まって、とても居心地がいい。春茶はまだ姿を現していないが、すでにイベントが始まっているかのよう。「ROOM」というタイトルどおり、彼女の部屋で本人の登場を待っているような気分。雰囲気づくりがとても上手だ。

本公演は、着席で鑑賞するスタイル。紗幕の向こうに春茶が姿を現し、「イベントタイトルにぴったりだなと思って選びました」と柔らかに曲紹介をし、「bedroom talk」を披露した。その歌声は、こちらに話しかけるかのような優しいトーン。まさにベッドルーム・ポップ的な小品は、彼女がいうとおり、この場にぴったりだ。

「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」

続いては、手拍子をしながら楽しんでくれたら、とメジャー1stシングル「私の恋 is over」を歌う。心地よさそうに体を揺らす彼女を、赤に近いピンクの照明が背後から照らした。息混じりのボーカルには、余計なエフェクトはかかっていない。歌というよりも、彼女の声の成分までも堪能できるのがうれしい。

ホッと一息ついたのか、「ありがとうございます」という声は、さっきより一段上がっていた。「元気?」「元気!」と声を交わし、ギターを手にする春茶。「今日はルームなので、いつも家で弾き語り配信をしているし、完全な弾き語りではないんですけど歌いたいと思います」とwacciの名曲「別の人の彼女になったよ」をカバーした。あまりライブで歌ったことがないという曲を、ファンが集まる場所だからこそパフォーマンスしてくれる気持ちが温かい。

この曲は、<あなたも早くなってね 別の人の彼氏に/私が電話しちゃう前に>というフレーズでエンディングを迎える、超弩級の恋愛系エモ曲なのだが、男性が歌うことによって感情に抑止力が働くのであって、女性が歌うのは反則だと自分は思っている。だって、メッセージが直接的すぎて、ダメージがデカいでしょう? さらに、女性ボーカルの場合は、歌い方によって受け止め方が大きく異なってくる。語りかけるような春茶の歌声に、大きく心が揺さぶられてキツい。いや、ボーカリストとしてはとてもいいことなんだが、聴く側としては切なくてたまらない。

「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」

歌唱後、春茶は「なかなか珍しくギターを弾いています。今日は珍しくエレキです。ファーストライブのときはアコギだったけど、これからエレキの出番が増えるのかなあ」とフワフワとうれしそうに話す。このあと、薄い青と薄い緑が溶け合うような照明をバックに、彼女は最新シングル「想い知る」を歌った。両手で一人ひとりにそっと手渡すように優しく、歌と言葉を届ける。部屋と呼ぶには大きな会場ではあるが、隣に座る友人に向けているような親密さが感じられた。

「めっちゃ重いんですよ、エレキ」と言いながらギターを置き、彼女は「またねー!」とステージ上の準備のためいったん舞台袖に下がる。ほんと、距離感が友達。準備が整うと、ライブパートでかかっていた紗幕が開かれ、黒いキャップ、白いスウェットの上下にサングラスという、お忍びの芸能人感溢れる春茶が再度登場。何を思ったのか、マイクを持たずにしばらく話し続けた春茶は、ようやく違和感に気づいたのか、慌ててマイクを持つスタッフの元へと小走り。リラックスが過ぎる!

「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」

さて、ライブ後はトークパート。お部屋コンセプトということで、舞台中央に置かれたテーブルの上には、クロミのタッパーや花など、ファンからもらったプレゼントが並べられている。上手側に設置された衣装ラックにも、差し入れでもらったというTシャツなどがかかっている。少し落ち着いたところで、フロアへ向けてどこから来たのか春茶が訊ねると、香港、韓国、台湾と海外ファンも多いことがわかり、彼女の支持層の幅広さを改めて感じた。

司会者を迎え入れておこなったのは「春茶、なんでもベスト3」。テーマに沿ってベスト3を発表するというもの。最初のお題は「得意料理ベスト3」。第3位はグラタン。特によく作るのは海老グラタンで、ホワイトソースから仕込むというまさかの本格的な作り方に拍手が。第2位は、「一人暮らしといえば?」というヒントに対してカレーという声が多く上がったが、正解はパスタ。トマト缶を使うこともあるけど、普段はレトルトを使うことが多いそう。そして、第1位は、春巻き。大変じゃないかという司会者の疑問に、「簡単ですよ?」と春茶。チーズ、大葉、ピーマン、豚肉を焼肉のタレで和えたものなど、適当に具材を入れるだけだという。

次は、「いま食べたい物ベスト3」。こんな内容でいいのかと司会者が戸惑う中、発表。第3位は「ロールケーキ」。しかし、実はこれが1位だった。春茶は、間違えて1位から発表してしまったのである。しかも、「よく食べますか?」という問いに、「食べない。さっき、スマホでロールケーキ見たんです」とこの日何度目になるかわからない天然ぶりを発揮。気を取り直して、2位は「チーズケーキ」。特に、レアチーズケーキのタルト部分が好きなんだという。「『何を聞かされてるんだろう?』ってならない?」と本人までが不安になる中、第3位を発表。ショートケーキだ。「ショートケーキはお好きなんですか?」「さほど」というやりとりも最早通常営業である。

しかし、最後のお題には、春茶も思わず、「これはいいわ!」とテンションが上がる。「ファンの人から言われてうれしかった言葉ベスト3」。まず、3位は「カバー動画を公開したときに言われる言葉」。つまり、「春茶さんの世界観に染まってるね」みたいな感想だ。文節ごとにわけて歌詞を分析するなど、彼女もしっかり考えてから歌っているだけに、こういう言葉はありがたいという。ちょっとしたコメントだが、彼女のカバーに対するこだわりが垣間見えた。第2位は「初めて聴いたときは◯◯歳だったのに、もう◯◯歳になったよ」。これは、たとえば、小学生だった頃に初めて春茶の音楽を知った人が高校生になっても聴いていて、その間もずっと自分の音楽がその人のそばにあった。それが、「一緒に歩いてる感」があってうれしいそうだ。

第1位は、「辛いときに聴いて救われたよ」。落ち込んだときに安心するような音楽を届けていきたいと思っているから、しんどいときに自分の音楽を聴いて救われたと言われると、自分も救われるという。本公演中もっとも真面目な回答に、本人も「真面目ですよね? 今日イチ真面目!」と照れ隠しのように声を上げた。

「HARUTYA FC LIVE - ROOM -」

その後、ファンからの質問にフランクに答えたあと、「もう終わりですか?」とゴネる春茶に、「もう終わりです!」と司会者。最後に、高知旅行をしてきた彼女のお土産争奪戦をじゃんけんでおこない、春茶自身が制作したムービーが流れた。そこで告知されたのは、来年開催のZeppツアー。内容は、「今までの私とこれからの私を全部まとめて、これからの景色をみんなで見るための、一つの区切りになるようなライブ」と説明。特別ゲストも決定しているとのことで、ファンとしては期待が膨らむ報告となった。かなり大きな発表だったが、それをこぢんまりとした「部屋」で行うことにファン思いの春茶の一面が見えた。

エンディングでは、「最近はいっぱい雨が降ってどんよりとした気分になりますけど、こういう楽しいイベントとか配信をこれからもいろいろ届けていきます。今日はそのうちのひとつということで、来てくれてありがとうございました。また明日、朝活配信で!」と春茶はステージを去った。非常に人の匂いを感じるイベントだったが、それこそが彼女の狙いだったのだろう。会場を出ると、ジメジメした空気が不思議と気持ちよく感じられた。


取材・文=阿刀"DA"大志 撮影=飛鳥井里奈

ツアー情報

HARUTYA ONE-MAN LIVE『ここから。』
2027年2月21日(日)大阪・Zepp Osaka Bayside
2027年2月28日(日)東京・Zepp Haneda
 
オフィシャル先行
受付期間:2026年10月13日(火)12:00~2026年10月25日(日)23:59
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