海と山に囲まれた大分・別府の街中で音楽が鳴り響く――君島大空、柴田聡子、向井秀徳、UA、曽我部恵一が集結した『small circle ’26』を振り返る

2026.11.6
レポート
音楽

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『small circle ’26』2026.10.17(SAT)大分・別府 北浜公園

野外イベント『small circle ’26』が、2026年10月17日(土)に大分県別府市の北浜公園で開催された。毎年5月に福岡で行われている野外音楽祭『CIRCLE』のスピンオフ企画として昨年から開催されている。2回目となる今年は、君島大空、柴田聡子、向井秀徳アコースティック&エレクトリック、UA、曽我部恵一がアコースティックライブを披露した。

昨年、何よりも驚いて、今年も驚き直したのは、その立地。北浜公園は、別府駅からも徒歩すぐの街のど真ん中。そして、すぐ横は別府湾であり、高崎山も一望できる。反対側には国道10号線が走り、ホテルや商業施設にも囲まれている。普段は、街の催し物などを開催している縦長でコンパクトな公園。いわゆる都市型フェスともいえるが、海や山という自然とも共存している。街と自然がナチュラルに馴染んでいるのだ。

全国各地あらゆる野外フェス・野外イベントに出向いているが、こんなに街に溶け込んで、自然にも囲まれるという、全ての要素が凝縮して密集されたものは初めて。そして、このスモール感というか、このコンパクト感が誠にいい。だけどインパクトは絶大である。会場の仕切りもたいそうな感じでは無く、葦簀(よしず)を使った独特の緩やかさ、穏やかさがあり、だからこそ街や自然と無理やり切り離された違和感もない。

そうそう昨年は雨天だったので大変であった。にしては、観客は昼間から本当に多くて、常に賑やかだった。今年はというと、とっても暑い夏日に。サングラスをかけている人も多く見受けられる。日焼け止めが必要だったかも知れないと後悔してしまうくらいに素晴らしい晴天。そんな中、『CIRCLE』同様に福岡を拠点に活動するラジオDJ・栗田善太郎が前説を行う。その舞台では、ゴールドのテープが無数に吊るされており、風に揺らめきながら光り輝いている。昨年にはなかった素敵な装飾。晴天だからこそ際立つ。七夕の短冊のような天の川のような雰囲気を持つが、季節は10月で夏ではないのに、夏が持つ特有の煌びやかさを感じる秋。

君島大空

一番手は君島大空。椅子に座りながらガットギターを爪弾き、ハミングのように歌っていく。まるで息を吐き出すかのように届けられる歌声。とっても暑いだけに、その涼しげな歌声には聴き入ってしまう。「星玻璃」、「向こう髪」と軽快に爪弾かれていくが、「19℃」での「踊れなくてもいいよ 笑えなくてもいいよ」という歌詞は特に印象的であった。爪弾きから始まっただけに、速弾きであったり、音をループさせていく「˖嵐₊˚ˑ༄」など、その緩急の付け方には魅入るのみ。とにかくギターの音色が変幻自在であり、狂い弾きのような凄みもある。突然、曲の終わりがやってくる感じもクールで格好良い。

つぶやくように歌われる「エルド」から「琥珀の遠景」へと自然に入っていく中、気が付けば、残すところあと一曲に……。観客の残念がる声に対して、「やれと言われれば、いくらでもやりますが、二度と別府には……。それでも良いならやりますよ!」とジョークで返すのも粋であった。「少し早いんですけど」と前置きして、ラストナンバー「夕暮れの梯子」へ。残響を舞台上に漂わせて終わり去っていくのも、これまたクールであり、立派に一番手を務め上げてくれた。

柴田聡子

二番手は柴田聡子。一般的にはPAとも呼ばれるミキシングコンソールを操るのは、Dub Master X(FOH)。日本のサウンドエンジニア界における大御所。野外で、それもコンパクトな北浜公園での『small circle』で、このサウンドが聴けるのは贅沢すぎる。彼女の場合、何でもない挨拶や掛け声が男っぽく勇ましく聴こえるのも良い。からっとしているというか、特有の乾きがある。

歌声となると、また別であり、1曲目「すこやかさ」に続いての「結婚しました」は特にキュートに聴こえる。歌詞の言葉感覚もユニークであり、「大作戦」でのバラエティに富んだワードセンスには思わず感心してしまう。そして、曲終わりの「センキュー!」というひとことも外タレっぽいスケール感があり、何度聴いてもたまらない。「ちょっと長い曲」という注釈が付いた「どうして」も全く長さを感じずに耳を傾ける。ずっと立ちながら歌うが、その姿も威風堂々としている。「Synergy」→「雑感」という良い歌から、ラストナンバーは「ワンコロメーター」。エレキ1本なのにダンサブルであり、若者を筆頭に観客の「聴きたかった曲が聴けた!」という想いが手に取るようにわかった。

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

若手のふたりからベテラン勢へと突入していく三番手は向井秀徳アコースティック&エレクトリック。サウンドチェックでの何気ないシャウト一発だけで持っていってしまう凄みある圧……。「地獄温泉の方に一発入ってきますんで!」と謎の言葉を残して一旦舞台袖へとはけて、缶ビール2本持って現れた本番。椅子に座って吞むだけで歓声が沸くなんて、本来は意味がわからないはずだが、実際その場で観ていると本当に一挙手一投足から目が離せないし、何をしても観ているこちらはついつい声が出てしまい興奮してしまう。

「別府シティ」、「Matsuri Studioからやって参りました」、「This is 向井秀徳」、全ての言葉にドキドキする。サウンドチェックと同じく歌い出しただけで全てを持っていってしまうし、「TATTOOあり」「鉄風 鋭くなって」「ZEGEN VS UNDERCOVER」という約26年前のナンバーガール時代の楽曲3連発という畳みかけは、それこそヤバイ、さらにやばい、バリヤバ……である。

「くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動」というお馴染みの向井による言葉が聴ける「Water Front」。別府湾という水際で聴けるのも乙だ……。「永遠少女」での「探せ 探せ 探せ」という最後の言葉が迫ってくる緊迫感というか、一挙手一投足と先述したが、どの言葉も聴き落とせない。「なーんか無性にささくれ立っていらいらしてる」というインパクトしかない言葉から始まる「はあとぶれいく」で〆。久方ぶり45年ぶりの別府だったらしいが、充分すぎる爪痕を残したのに、何食わぬ顔で缶ビールを持ってお辞儀して去っていく姿には痺れるしかなかった。

UA

四番手はUA。「みんな、やっちょん!?」などと地元の言葉である「ちょん」を付けて、観客とコミュニケーションをはかっていく。考えてみればUAは関西出身であり、私も同じく関西出身であり、どうしても関西で観ることが多いので、至って普通に彼女の関西弁を聴いていた。だが、『CIRCLE』もそうだが、彼女は訪れた地域の言葉でいつも話しかけていく。しまいには高崎山のお猿さんにも呼びかけている。何よりも、そのいでたちが素敵すぎる。腕や肩が美しく見えるシックな黒のドレス。髪に付けられた黒いターバンに手に付けられた黒い手袋というトータルコーディネートに見惚れながら、オープニングナンバー「微熱」を聴き入る。

観客エリアには美味しい飲食店が並び、ビールなどのお酒も進む中、「ほっとひとときいかがですか?」と「お茶」へ。ムーディーな時間なのだが、中盤から終盤にかけては、「スカートの砂」を皮切りに、90年代のヒットナンバー連発であり、それが鈴木正人の鍵盤のみという豪華なふたり編成で聴けるという至福の時間。ロングトーンに沸いたり、しっとりとした歌い出しからしてロマンチックな「ミルクティー」から、とどめを刺されてしまう「甘い運命」。でも、まだまだ終わらないし、UAは大分の言葉「ちょん」で気さくに観客に話しかける。

アカペラで歌われる「水色」は沁みいるしかないし、ちょうど30年前の10月に発表された1stアルバム「11」収録というのも感慨深かったが、やはり今が一番格好良いというのが何よりも嬉しい。「また別府にVIPな感じで呼んでね!」という言葉から、ラストナンバー「プライベートサーファー」へ。黒というシックな衣装で鈴木とふたりのアコースティックな編成なのに、UAが歌うと華やかで明るくなる。

ここで別府市の長野恭紘市長が急遽登場して御挨拶。聴くところによると市長は90年代の音楽が好きらしい。北浜公園真横のホテルニューツルタの鶴田氏も登場したが、こんな街中でライブが開催されるのは、よく考えたら当たり前じゃない。アコースティックとはいえ、生の音楽が街中で鳴らされているわけで。街の皆様の協力があってこそであり、街ぐるみの祭なのだなと感じられたひとときだった。

曽我部恵一

いよいよ五番手大トリの曽我部恵一。17時20分から出番だが、舞台に現れたのは17時13分。UAと同じく、ちょうど30年前の名盤『東京』から「東京」をサウンドチェックとして歌い、17時17分。「ちょっと早いけどやりますか」というひとことに、観客は大喜び。最近では、サニーデイ・サービスでの4時間にも及ぶライブが大きな話題だけに、観客の期待値も高すぎるくらいに高い。1曲目は『東京』にも収録されていて、95年発表シングル曲「恋におちたら」。歌い終わるとすごい歓声だが、続いて、2000年代の曽我部恵一BAND時代の「キラキラ!」へ。静寂から衝動へと振れる幅の大きさで、初っ端から大爆発の曽我部。

大分は第二の故郷の説明として、自身は香川育ちだが、生まれは熊本ということ、そして大分の女性と結婚したが、色々なことがあり大分には来なくなったので、久しぶりに来れたと喜びを交えながら話していく。そこからの「白い恋人」は、メロウでありスイートでありセンチメンタルでありと、話からの見事なつながりが生む物語性に、うなるしかなかった……。何とも言えない美しいナンバー。そして、コンビニのコーヒーが好きという何でもない日常話から、その名も「コンビニのコーヒー」へ。曽我部の歌は、その時代時代で表現性が変わっているように見えながらも、時代を問わない普遍性がある生活の歌を歌い続けている。先程の結婚話ではないが、今度は、上の子が25歳、末っ子が高校3年生という子どもの話をしながら、「おとなになんかならないで」へ。生活と歌に一貫性がある。

「永い夜」「春の風」という爆弾、でっかい車など耳に引っかかる言葉がある歌の威力を思う存分感じたところで、<そっちはどうだい うまくやってるかい こっちはこうさ どうにもならんよ 今んとこはまあ そんな感じなんだ>というキラーフレーズが聴こえてくる。そう!「青春狂走曲」!! 観客全員が両手を上げて手拍子をして大熱唱する。

そんな火照った心身を癒してくれる「LOVE-SICK」で完全に締まったのだが、3分早くスタートしたこともあり、最後にもう1曲。この日は10月ながら夏日で、夏の最後かもということから、夏の恋の歌「サマー・ソルジャー」へ。これまた30年前のナンバーだが、「それは天気のせいさ」という歌詞が何とも言えず詩的で情緒的……。

「知ってるやつは一緒に歌ってくれ!」

曽我部がそう言い放った瞬間、舞台袖から向井が現れ、曽我部と向井が歌う。これ以上の夏の最後の想い出はあるだろうか……。最強で最狂なふたりの最高の歌。

終演後、会場にはRoger Nichols & The Small Circle Of Friends 「Don't Take Your Time」が流されている。どうやら今年中に『CIRCLE』から何かお知らせがあるらしく、年明けにもまた何かお知らせがあるらしい。まだまだ、ワクワクとドキドキは続いていく。そして、何よりも来年また別府で『small circle』が絶対に観たい、ということも最後に書き残しておきたい。

取材・文=鈴木淳史 写真提供=『small circle '26』(撮影:勝村祐紀)

イベント情報

『small circle '26』
日程:2026年10月17日(土)
会場:大分・別府 北浜公園
 
■出演者
UA、君島大空、柴田聡子、曽我部恵一、向井秀徳アコースティック&エレクトリック
 
 
主催:TONE / BEA
企画・制作:TONE / BEA / 音泉温楽
 
■オフィシャルサイト
http://circle.fukuoka.jp
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