『ミノタウロスの皿』を舞台化 脚色・振付・演出のスズキ拓朗、出演者の加藤清史郎、内田未来が藤子・F・不二雄ミュージアムを訪問し、特別取材会を開催
(左から)スズキ拓朗、加藤清史郎、内田未来
2026年12月10日(木)~28日(月)新国立劇場 小劇場にて上演される、舞台『ミノタウロスの皿』。この度、特別取材会レポートが届いたので紹介する。
漫画『ドラえもん』の生みの親である、藤子・F・不二雄が1969年に発表した短編SF漫画『ミノタウロスの皿』を世界初舞台化。
「食べる側」と「食べられる側」の立場が逆転した世界。言葉は通じても価値観が全く通じないことや、自らの常識から抜け出せない人間のジレンマを鋭く描いた本作。この不朽の名作を、令和6年度(第75回)芸術選奨舞踊部門・文部科学大臣新人賞を受賞した気鋭のアーティスト、スズキ拓朗が脚色・振付・演出を手掛ける。スズキ独自の表現で、原作の普遍的な問いを現代に蘇らせ、4歳以上の未就学児から大人まであらゆる世代が楽しめる舞台を目指す。
「ズン類」と呼ばれる牛が支配する、イノックス星に不時着する乗組員役として主演を務めるのは、加藤清史郎。乗組員がイノックス星で出会う少女・ミノア役に、内田未来。そのほか、森田真和、谷山知宏、柏木俊彦、鈴木幸二、小林らら、星 初音、美守 桃、関口 晴という、スズキ拓朗が主宰するダンスカンパニー「CHAiroiPLIN」のメンバーや、スズキ演出の舞台に出演経験を持つ個性豊かなメンバーが集結した。
『ミノタウロスの皿』特別取材会レポート
『ドラえもん』の生みの親である藤子・F・不二雄が、1969年に発表した短編SFまんが『ミノタウロスの皿』。「食べる側」と「食べられる側」が逆転した世界を描き、強烈な風刺と衝撃的な結末で今も読み継がれる名作が初の舞台化。2026年12月に新国立劇場 小劇場で上演される。
10月20日に、本作の脚色・振付・演出を手がけるスズキ拓朗、乗組員役で主演を務める加藤清史郎、少女・ミノア役の内田未来が、川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムを訪問。3人は館内を見学したあと、特別取材会に臨んだ。
最初に見学に訪れたのは、まんが原画を中心に展示している「展示室Ⅰ」。3人はまず、部屋に入って右奥の『ミノタウロスの皿』広報展示ブースのケースを覗き込む。そこには、舞台化に向けたスズキの演出ノートや絵コンテ、舞台美術家・青山健一による舞台装置のデザイン画など、舞台の世界を形作るための貴重な資料が並んでいた。資料を前に、スズキの頭の中にあるアイディアを巡り、3人で楽しそうに会話する様子も見られた。
館内見学の様子
館内見学の様子
館内見学の様子
壁面右側には、ストーリーを楽しめるモノクロの原画が飾られている。今回の舞台版『ミノタウロスの皿』のキービジュアルになっているコマが描かれた原画も含まれている。3人は歩きながら1枚ずつ原画を追い、物語を読み進めていった。まんがの中のキャラクターと、隣にいる加藤と内田を見比べたスズキは「2人ともキャラにピッタリ!」と嬉しそう。加藤は「牛によって人相が全然違う。人相じゃなくて、牛相?」と、個性的な牛たちの表情を興味深く観察していた。
館内見学の様子
館内見学の様子
壁面左側は、カラー原画の特集コーナー。加藤が出演した藤子・F・不二雄SF短編ドラマの原作『流血鬼』の原画もあり、その前で加藤が2人に『流血鬼』の物語を説明する場面も。
「展示室Ⅰ」をあとにし、廊下を抜けた先にあったのは「先生の部屋」。藤子・F・不二雄がまんがを描いていた実際のデスクが展示されている。木製の大きなデスクの上にはインクやペンといった仕事道具のみならず、大好きだった恐竜のフィギュアをはじめとする、趣味のアイテムも所狭しと並んでいる。「仕事と直接関係ないものが置いてあるのは、藤子先生が想像力を働かせるためなのかな」と加藤。
館内見学の様子
館内見学の様子
遊び心が感じられる圧巻の仕事場に、3人は興味津々だ。ミュージアムのスタッフへの質問も止まらない。スタッフによると、ゴミ箱の中に甘栗の袋があるのは、実際に好物だったからだそう。大きなラジカセから流れていたのは、クラシック音楽。仕事中は、こうした音楽のほか、落語もよく聴いていたそうだ。デスクから見上げると、1万冊とも言われる書籍がズラリ。内田は「これはとても読みきれない……!」と素直な感想を漏らす。これらの本は、子どもたちに間違った知識を与えてはいけない、という先生の想いから集められたものなのだという。
館内見学の様子
(左から)内田未来、加藤清史郎、スズキ拓朗
ミュージアムで藤子・F・不二雄の創作の原点に触れた3人。ここからは、特別取材会の模様をお届けする。
ーー川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れ、見学された感想を聞かせてください。
加藤:このミュージアムは、僕が生まれ育った地元・川崎市にあるんです。なので、幼少期から足を運ばせていただいていて、今日は数年ぶりの来館になりました。何度来ても心躍る展示がたくさんあって、どの空間も見どころだなと改めて思います。期間限定で『ミノタウロスの皿』の展示ブースも作ってくださり、僕たちの舞台への思いや、拓朗さんの手描きの絵コンテもあって、より一層楽しんでいただけるんじゃないかなと感じました。
内田:私はこのミュージアムに今日初めて伺いました。なので、来る前からすごくワクワクしていたんです。実際に原画を目にしたら、迫力がすごくて! 藤子先生が当時描いていた生の感じがガンッと伝わってきて、それを味わえたことでとても幸せな気持ちになりました。
スズキ:先ほど清史郎さんが話していた『ミノタウロスの皿』のブースで、僕が描いた絵と藤子先生の絵が同じケースに入っていて、とても光栄に思いました。藤子先生は、机の引き出し、扉、畳といったような、生活の身近なところに夢を描くんですね。このミュージアムそのものも、廊下やトイレの表札など、いろんなところにかわいらしい演出が施されています。先生を愛する人たちの想いが脈々と受け継がれることで、ミュージアムも魅力的なところになっているんだなとしみじみ感じました。
(左から)スズキ拓朗、加藤清史郎、内田未来
ーー『ミノタウロスの皿』のまんが原作を初めて読んだときの感想は?
加藤:『ミノタウロスの皿』は、先生の数多くある作品の「SF短編集」に収録されているもののひとつですが、その中でもひときわメッセージ性の強い作品だと感じています。「ここで終わるのか!」という物語の終わり方や、食べ物と人間の関係に留まらないメッセージをたくさん受け取りました。そういう想いを“SF”(すこし・ふしぎ)という形で世に送り出した先生は、やはり偉大な方だなと痛感するばかりです。その作品を舞台化する上で、この役目を任せていただけたことをすごく誇りに思います。
内田:初めて読んだときは、かなり衝撃を受けました。異星人の物語ではあるけれども、実は身近な自分たちの話なんじゃないかな、と。当たり前だと思っている常識や価値観に対して、真っ向から「違う、間違っている」と言われたとき、自分はそれをどう受け取るのだろうと。そんな風に自分自身を顧みる機会にもなりました。藤子先生の作品は、ただ正解を渡すだけでは終わらないところが面白いなと思います。
スズキ:僕が最初に原作を読んだのは、確かトイレの中だったんです。何のためにトイレに行ったのか忘れてしまうくらい、最初から最後まで集中して読んでしまいました。最初は怖いという印象があったんですけれど、牛たちの表情がとてもかわいらしいんですね。怖いことを描くために、あえて明るい視点も必要なんだなと。対照的なものを一緒に描いてしまう、藤子先生の目線に感動しました。スラスラ読めて、かつ何度も読みたくなる作品だと思います。だから、この作品を舞台化したいなあと思ったんです。
ーースズキさんは15年ほど前から本作の舞台化を考えていらっしゃったそうですが、夢が叶った今の心境は?
スズキ:すごく嬉しいです。15年前は、とにかく舞台でやりたい、僕はこの牛を演じたい、踊りたい、という想いだけがありました。けれど、まんがを舞台化するための道筋がさっぱりわからなかったんです。今回、こうして素晴らしいキャストの方々に恵まれ、新国立劇場という場所で実現できることが本当に嬉しくて。人生においてのターニングポイントと言えるほど、意気込んでおります。
ーー加藤さんは以前、SF短編ドラマ『流血鬼』(NHK、2023年)に出演されていました。藤子作品に続けて出演されるお気持ちを聞かせてください。
加藤:「またやれるんだ」という気持ちと、ご縁があるなあと感じています。『流血鬼』や『ミノタウロスの皿』といったSF短編集には、自分を省みるような作品が多いなと思うんです。それは、ちょっと嫌な夢を見たときの感覚に近い気がしていて。例えば寝坊する夢を見たら、パッと起きて「ああよかった、夢か」となりますよね。同時に、寝坊しないように気をつけようと思うじゃないですか。そういった積み重ねが、SF短編集の中にはいくつもあるんです。SFかと思いきや、そこに日常が潜んでいる。藤子先生がファンタジーと現実の間にいてくださるお陰で、僕たちはファンタジーから現実的なメッセージを見出して、自分たちの人生に活かすことができるんです。面白くて、しかも人生の教えにもなるような作品をポンと出せてしまう、先生のすごさを感じます。そんな先生の作品に携わらせていただけることは、これ以上ない幸せです。
(左から)スズキ拓朗、加藤清史郎、内田未来
ーー加藤さんと内田さんは今日が初対面ということですが、お互いの印象はいかがですか?
加藤:今日着ている服がまるで舞台衣裳みたいで、初めて会ったその瞬間に「もうミノアじゃん!」と(笑)。本当に原作の少女・ミノアそのままだなと思いました。
内田:清史郎さんの印象は、とても頭が良い方なのだろうなあと。先ほどから語彙力もすごいですし、いろんな角度からお話をされているので、とにかく「すごい!」という感じです。
ーースズキさんに質問です。現時点での演出プランを教えていただけますか?
スズキ:ミュージアムで展示中の絵コンテにもありますが、『ミノタウロスの皿』というタイトルなので、お皿で何か遊べないかなと。最初の宇宙のシーンで、皿回しを使ったUFOなどを考えているところです。ダンスのパフォーマンスシーンも盛り込む予定です。また、本作はクレタ島のミノア文明がベースにあるお話です。その遺跡の柱を、私たちの身近なものを使って舞台セットにしようと考えています。そこも面白おかしく見ていただけたらなと。そして最後にどうしても言っておきたいのですが、清史郎さんと未来さんは歌もダンスもお上手なんです。だから、2人にはエンターテインメントとして楽しい舞台を作っていただけたらと、心から期待しています。
ーー最後に、本作への意気込みをお願いします。
スズキ:初の舞台化なので、僕もとても緊張しております。ですが、大人も子どもも、国籍も関係なく楽しめるものを作ろうと思っています。心と頭を空っぽにして、劇場へ足を運んでいただけたら嬉しいです。頑張ります!
内田:拓朗さんとお話ししたり、資料を拝見したり、今回の舞台化に関するアイディアを聞いてはいるんですけれど、やはり未知数なところがとにかく多いんです。私もまだ何も予想できていないので、今は楽しみな気持ちでいっぱいです。体当たりで挑みたいなと思っておりますので、ぜひ劇場でご覧いただけたら嬉しいです。
加藤:原作を基に舞台化することは、非常に難しいことです。僕は、その最適解は再現ではないと思っています。ただ、原作には最大限のリスペクトを持って、何よりも藤子・F・不二雄先生の持っていらっしゃる世界観とメッセージをお届けしたい。拓朗さんという素晴らしい演出家・振付師と共に実験を重ね、そこで生まれた化学変化を、僕の持てる力の全てを使って表現するのみだと思っております。おそらく、稽古が始まったらびっくりするくらい痩せると思いますが、いっぱい食べるので心配しないでください(笑)。精一杯、頑張りたいと思います!
(左から)スズキ拓朗、加藤清史郎、内田未来
取材・文=松村蘭(らんねえ) 撮影=阿部章仁
公演情報
【会場】新国立劇場 小劇場
【脚色・振付・演出】スズキ拓朗
【衣裳】渡部淳子 【ヘアメイク】川端富生 【演出助手】神野真理亜 【舞台監督】山添賀容子
A席 おとな(中学生以上) 8,800円/こども(4歳~小学生) 3,300円
B席 おとな(中学生以上) 3,300円/こども(4歳~小学生) 1,650円
Z席(当日)1,980円
新国立劇場ボックスオフィス TEL:03-5352-9999 (10:00~18:00)
新国立劇場Webボックスオフィス https://nntt.pia.jp/
4歳〜小学生のお子様とご同伴の大人の方が優先的にご購入いただける、舞台間近のエリアです。
※残席がある場合、11月1日(日)に全席開放(以降は大人の方のみの購入も可能)。
※12/14(月)・16(水)・18(金)・21(月)・23(水)・25(金)の14:00公演は対象外。
小学生以下のお子様と同伴される大人の方は、A席大人
◎適用条件:A席こども
※アトレ会員割引を含む、各種割引との併用はできません。
* Z席1,980円 Z席は、公演当日朝10:00から、新国立劇場Webボックスオフィスおよびセブン-イレブンの端末操作により全席先着販売いたします。
先着販売後、残席がある場合は、公演当日朝11:00からボックスオフィス窓口でも販売いたします。※電話予約不可。
* 当日学生割引 公演当日残席がある場合、Z席を除く全ての席種について50%割引にて販売。要学生証。電話予約可。
* 各種割引 新国立劇場では、高齢者割引(65歳以上5%)、障がい者割引(20%)、学生割引(5%)、ジュニア割引(小中学生20%)、アトレ会員割引(5~10%)など各種の割引サービスをご用意しています。
富山公演
オーバード・キッズシアター『ミノタウロスの皿』
【会場】オーバード・ホール 中ホール
【出演】スズキ拓朗/内田未来/森田真和、谷山知宏、柏木俊彦、鈴木幸二、小林らら、星 初音、美守 桃、関口 晴