感じたことが「世界とつながる」体験を エディンバラで連日完売、2Shoulderpads『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』凱旋公演まもなく開幕! 稽古場レポート&ミニインタビュー
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CUBE GLOBAL STAGE PRESENTS 2Shoulderpads『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』
劇団鹿殺しの菜月チョビ、丸尾丸一郎による新たなプロデュース形態「2Shoulderpads」(通称ショルパ!!)。衣装は2枚の肩パットのみ、肉体と想像力を武器に、演劇の世界を無限に解放する創作スタイルを貫く彼らが、2025年・2026年と世界最大級の舞台芸術祭である「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」に参加。その作品『GALAXY TRAIN-銀河鉄道の夜-』が、株式会社キューブが公演をバックアップするCUBE GLOBAL STAGE PRESENTSという新プロジェクトとして始動する。2026年11月、東京・大阪での1ヶ月にわたるロングラン凱旋公演が行われることに。本番を控えた稽古場で行われた通し稽古と、菜月チョビ、丸尾丸一郎、橘 輝へのミニインタビューをお届けする。
今回の凱旋公演は、カンパネルラ役の丸尾とマルソ役の橘は固定、あとのキャストは日替わりとなる。この日のジョバンニ役は笠松遥未。おのおのが発声練習やアップに余念がない中、通し稽古開始のアナウンスとともに演出・菜月の声が飛ぶ。とりあえず通しの感覚を体に入れることがこの日の主題。「凱旋公演のイメージ……エディンバラを知らない人に『これでねじ伏せてきました』と伝えられるように」と菜月。海外公演を経ているキャストだけでなく凱旋公演で新たに加わるキャストもいるため、稽古ではそのあたりの意識のすり合わせも重要なようだ。
この作品、初参加した2025年は1ヶ月間全ステージ完売、主要メディアを含め数々の媒体で星5つを勝ち取り、歴史あるSpirit of the Fringe Award を受賞するという快挙を果たした。2回目の挑戦となる2026年は、エディンバラでは客席数2倍の劇場での1ヶ月ロングランに再び挑戦、連日の完売を記録している。
ストーリーは、多くの人が知る宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』そのままだ。カンパネルラとジョバンニは、星祭りの夜に不思議な「銀河鉄道」へと乗り込む。そこで起こる出来事や、さまざまな人達との邂逅、そして“別れ”……。
セリフは大半が英語で、ところどころに日本語が交じるスタイル。しかし英語と言ってもいかにも流暢な「現地向け」のものではなく、非常にわかりやすい、言ってしまえば「カタカナ英語」! だからなのか、英語力に自信がない筆者のような人間でも、驚くほどすんなりとストーリーや、今何が行われているかが理解できる。このことに、初めて観る人は衝撃を受けるかもしれない。歌舞伎や祭りなど、日本文化らしいアレンジもあちこちに加えられているのが、海外公演を経てきた作品らしさを感じる。
ジョバンニとカンパネルラ以外の2人は、入れ替わり立ち替わりさまざまな人物を演じていく。基本は裸にショルダーパッドだけ、最低限の扮装を加えた姿はなんともおかしいが、これが不思議なことにだんだんと「見慣れてくる」のだ。逆に鍛え上げられた肉体の動きをダイレクトに見られる分、服を着ているよりも伝わる情報量は多いのかも!? とすら。コミカルな動きやいかにもコメディらしいやりとりもありながら、ストーリーはあくまでも真っ当な『銀河鉄道の夜』からブレることはない。この作品を、物語を、イギリスの人たちはどう捉えたのだろう……? さまざまなことを考えながら目の前に釘付けになっているうちに、あっというに終幕。60分という上演時間だが、「とても良質なエンターテインメント」を観た! という満足感が残る。ここから2週間強、本番に向けて、さまざまなキャストの組み合わせでまだまだ稽古が続くとのこと。出演者の組み合わせにより作品の印象も変わってきそうで、そちらも楽しみだ。
■菜月チョビ&丸尾丸一郎&橘 輝インタビュー
――まず、「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」に挑戦した理由から聞かせてください。
菜月:私は2013年に文化庁の派遣制度でカナダに1年間留学していたんですけど、それ以来ずっと「日本で作っている芝居の面白さは、海外でも伝わるんじゃないか」と考えていて。いつか海外公演をやりたいと思ってたんですけど、それにはまず国内で評価されてからでないと行けないし、順番を待っていたらいつまでも機会が回ってこない。2024年に「これは自分たちで行くしかない」と思い、自分たちで参加できるフェスティバルから挑戦しようと、エディンバラに狙いを定めました。でも、それこそ5000組とか出るので、有名劇場グループみたいなところに参加しないと誰にも見てもらえずに終わっちゃうんですよ。で、1年目は劇場すら借りれず、2年目の2025年もメインストリームの場所は無理だったけど、なんとか劇場は借りれた。そこで評価を得て、今年2026年、劇団としては2回目の参加をした、という感じです。
丸尾:僕らはチョビから海外公演をやりたいという話はずっと聞いてはいたんですけど、コロナ禍の時に「ザ・ショルダーパッズ(Shoulderpads)」と名乗って、この肩パッドスタイルの公演をするようになったのが大きいですね。昔からやっていたことではあるんですけど、「この形態だったら、海外に身1つで勝負できるんじゃないか」というのがつながった。
橘:でも本当のスタートは、やっぱりザ・ショルダーパッズを本多劇場でやった後の打ち上げですよね。「これ行けるんじゃないか」と。
――2023年の劇団鹿殺しザ・ショルダーパッズ『この身ひとつで』 公演ですね。
菜月:作品を見た演劇関係者やスタッフから「これは絶対に海外に持っていった方がいい。日本で順番を待つより、海外で見つけてもらう方が早い」と強く言ってもらったんです。海外公演を経験しているスタッフから「ヨーロッパに合うと思う」と背中を押されたことも大きかったですね。
――このビジュアルの作品を海外に持っていくことに、文化の違いへの不安はありませんでしたか。
菜月:海外公演を経験した人たちの話を聞いたり、下ネタがどう受け止められるかを調べたりはしました。一番危惧していたのは、日本人が海外に来て、いわゆる「ハレンチなことをやっている」と面白がられて、それだけで終わってしまうことですね。でも、身体ひとつで全部を表現する本気さが伝われば、受け止めてもらえるんじゃないかと。
丸尾:「アメリカズ・ゴット・タレント」でも裸に近い格好で出演する人はいますよね。でも「脱ぎ方」というか、自分たちにはなぜその表現が必要なのか、脱いだことに意味がきちんとあれば分かってもらえる、受け入れてもらう土壌があることがわかっていた。だからそこに対する怖さはあまりなかったです。
――劇団員の皆さんとしては、海外に行くと聞いてどう感じていたんですか?
橘:ずっと「いつか海外でやりたいね」と話していたので驚きはしなかったんですけど、実現するのはもっと先のことだと思っていました。決まってからはあれよあれよで……こんなに早く行くことになるとは思っていませんでした(笑)。
菜月:若い頃は「参加するなら招待されて行く方が格好いい」と思っていたんです。でも実際に自分たちで挑戦してみると、エディンバラは誰にでも開かれている場所で、本気でやった分だけ反応が返ってくるし、有名無名にかかわらず、本当に面白いものを見つけてもらえる場所なんですよ。東京に出てきたばかりの頃、毎日路上パフォーマンスをやっていたころのあの感覚があったんです。だから逆に、日本で演劇を続けていくための元気をもらえたというか。2025年にエディンバラへ行ったあと、ブライトンから「費用を用意するから、うちの町でも上演してほしい」と声をかけてもらったり。届く人には自分たちの作品はちゃんと届くんだと、改めて自信にもなりました。
――今回上演する作品は、これまでも長く劇団で上演されてきたレパートリーを海外版にしたものですよね。海外公演を経験したことでの変化はありましたか?
丸尾:あると思います。役者それぞれが「ここはもっとできる」「ここはもっと伝わるようにできる」と工夫していったし、あと単純にセリフの言い方というか、海外の方に英語で伝えながら日本語でも伝えるという部分は、かなりブラッシュアップされてる気がしますね。
橘:見てもらったらわかるんですけど、本当にカタカナ英語なんですよ。でもこれが意外と伝わる。最初は試行錯誤というか、英語の発音とかいろいろ考えなきゃいけないのかなと思ってたんですけど、そんなことしなくても全然大丈夫で。
丸尾:イギリスでは、輝が一番ウケるんですよ。ちょっと『Mr.ビーン』みがあるからかな。
橘:ポップじゃないからですかね。
――ご自分で言うんですか(笑)。
菜月:輝のちょっと毒のあるシニカルな笑いが、イギリスに超合ったんですよね。やってることが全て伝わる。何ならもう、輝の登場シーンで「スター出てきた!」みたいな反応になってましたからね。
――今回、11月の凱旋公演は株式会社キューブの主催公演となりましたが、実現した経緯を教えてください。
菜月:エディンバラで作品を見てくださったキューブの方が、上演後に食事をしているときに、すぐに凱旋公演の話をしてくださったんです。エディンバラでは、家族連れがふらっと劇場に来たり、お酒を飲んだあとに遊びに来たりと、演劇が生活の身近なところにある。それを一緒にエディンバラで体感して、もっと演劇を身近に感じてほしいという目的意識を持った人たちと一緒に企画を実現できる。それがとてもうれしいです。
――今回の公演は、英語を主に使う人や、海外から来た人にも楽しんでもらえそうですね。
菜月:日本で英語を主に話す人が、劇場に行けばそのまま楽しめる作品は、現状ではなかなかないですよね。日本育ちだけど英語話者という子供たちも増えている今、ノンバーバルでないこういう作品は貴重なのかな、と思います。日本人の方の中には英語セリフということでもしかしたら「理解できないのでは」と構えてしまう方がいるかもですけど、本当に半々というか、本当にカタカナ英語なんですよ(笑)。だから英語話者の方が私たちのカタカナ英語を理解できないのと、日本の方が「この英語なんだっけ」となる部分、多分トントンなくらい(笑)。
――日本の方の場合、大半の人が『銀河鉄道の夜』を知っているというアドバンテージもありますしね。
菜月:そうです! みんなセリフは7割くらいの理解度だけど、ちゃんと伝わるので。安心して来てください。
――今回の凱旋公演では舞台芸術全般の活動に従事する人々を対象とした「アートワーカー
菜月:これもエディンバラで知った仕組みなんです。フリンジだけでなく、同時期に開催されているエディンバラ国際フェスティバルでも設定されていて、演劇関係者だったら当日券を手頃な価格で購入できる。すっごくお金がかかっている公演でも、10ポンドくらいで観ることができて。
丸尾:日本円で2000円くらい。すごい作品を、しかも時には前の方の席とかで沢山観ることができたんですよ。
菜月:これには、本当に刺激をたくさんもらいました。日本では、演劇を作っている人たち自身がお金や時間の余裕がなく、知り合いの公演を見に行くので精いっぱいということが多いじゃないですか。でも本当は自分たちと違うセンスで活動している人の作品を見ることで、新しい刺激を受け、演劇界全体が面白くなっていくはずなので。
――この凱旋公演を楽しみにしている人へメッセージをお願いします。
菜月:「海外向けに作った作品」と思わずに見てほしいです。イギリスに持っていくために作品を海外向けに変えたわけではなく、劇団としてずっと大切にしてきた、人間の面白さや演劇の良さを、そのまま伝えることを大事にしたので。自分が感じていることや想像力は世界とつながっているんだ、というのを楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
丸尾:逆にね、これがエディンバラで褒められた作品だと思うと、日本の演劇のレベルの高さをわかってもらえると思いますよ……いや自分たちを下げる必要はないんだけど(笑)。 特に演劇関係者の皆さんなんか「俺たちの方がもっとやれるぜ」って思うかもしれない。そう思ってもらっても構わないし、なんかかっこいいなって思ってくれても嬉しいし、どちらでもいい。とにかく観て、何かを感じてほしいです。
橘:何より「この英語で行けるの!?」っていう。
(全員爆笑)
菜月:そこが一番だよね(笑)。
取材・文・撮影=川口有紀