“日常アウトサイダーポップバンド”夕方と猫が初の全国流通EPを携え、バンド史上最大の挑戦へ「今までの自分たちの全てをかけて挑む」

2026.11.6
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夕方と猫 撮影=浜村晴奈

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日々の苦悩や葛藤をポップかつエッジの効いたサウンドで表現し、その独特な世界観で若年層を中心に幅広いリスナーから高い共感を集めている大阪発の“日常アウトサイダーポップバンド”、夕方と猫。2021年3月の結成以降、ライブハウスシーンを中心に支持を集め、2025年3月に開催した大阪公演と同年6月の初の東京ワンマンライブでソールドアウトを記録するなど、注目度を高めている。そんな彼らが今年10月7日(水)に初の全国流通EP「有頂天ダイブ」をリリース。それを引っ提げ、バンド史上最大キャパシティで行う大阪と東京でのツアーファイナルシリーズ『摩天楼へようこそ』に向け、初の全国ツアー『摩天楼を目指して』もスタートさせた。そこで今回、バンドのことをはじめ、最新EPや挑戦に満ちた摩天楼ツアー、ライブの魅力などについて話を聞いた。

秋宗亮太朗(Vo.Gt)

「夕方と猫」という名前は悩みや絶望からの救い

――まずは、夕方と猫がどういうバンドなのかということについて教えてください。

秋宗亮太朗(Vo.Gt):まず「夕方と猫」というバンド名についてお話しするのが一番わかりやすいかなと思うんですけど、僕が高校生の頃に人間関係をキッカケに不登校になってしまったことがあって、全てのことに対してすごく絶望していた時期があったんです。昼から学校に行ったり、昼に学校から帰ってくるみたいな、単位を取るためだけに学校に行っているような時期があったんですけど、その時の登下校の道に野良猫が1匹いて、その野良猫と遊んでいる時間はどんな嫌なことも、絶望していることも全部忘れて楽しいと思えたんです。その記憶は僕にとって救いだったので、音楽をやるにあたってどういうバンドをやりたいのかを考えた時に、人それぞれ思い悩んで苦しいと思ったり、絶望することがあると思うけども、夕方と猫の音楽を聴いている時はそういうことを忘れて、楽しい気持ちや幸せな気持ちだったり、何かしら希望を感じてもらえる、救いを与えられるようなバンドになりたいなと思ってこの名前を背負いました。

――なるほど。そうしてスタートしたバンドの結成は2021年で、秋宗さんは福岡、おぎそさんは神奈川、やぎさんは大阪と出身地はバラバラですが、どう集まられたんですか?

おぎそまひろ(Ba):僕が神奈川に居たのは小3までで、中高とかは大阪なんですよ。

秋宗:僕が福岡にいたのは小学校1年生までです。

おぎそ:僕と秋宗は高校は別なんですけど、ライブハウスでやろうという文化が軽音楽部にあったんですね。

秋宗:地元のライブハウスにいろいろな高校の軽音楽部が集まってくるので、おぎそとはそこで出会いました。みんな高校を卒業するタイミングでライブハウスから離れることが多いんですけど、僕とおぎそは音楽を続けたいってことで集まった初期メンバーです。音楽を志す人がそんなにいなかったこともありますが、これは運命やったなってすごく思っていますね。

――そこにやぎさんがあとから合流されたんですね?

やぎ(Dr):私はもともと別のバンドを組んでいて、夕方と猫とは対バンで出会っていたんです。最初にライブを観た時に世界観がすごいなって思って引き込まれました。

おぎそ:バンドの大会とかがある時は、バンドの先輩として応援に来てくれていたんですよ。

やぎ:大会で「夕方と猫」って票を入れていました(笑)。そこから私が組んでいたバンドが解散するってなった時に「ドラムがいないのでサポートで叩いてくれませんか?」というお願いがあって、サポートを2年ぐらいしてから正式に加入しました。

おぎそ:内定も蹴ってね。

やぎ:はい。内定も蹴りました(笑)。親が「自分のやりたいことをしなさい」って言ってくれていて、「なんで就活するの?」って言われながら就活をしていたんですよ(笑)。だから、加入のことを親にも相談したら「良かったやん!」って言ってくれて。恵まれていますね。

おぎそ:普通は逆やねん(笑)。

――確かにあまりないパターンかもしれないですね(笑)。やぎさんが正式加入したことで、音楽面でもプラスになったことはありましたか?

秋宗:彼女は元々芸大生で、吹奏楽部のパーカッション出身なんですよ。クラシックな音楽の要素だったり、フュージョンとかジャズ系の音楽とか、僕が潜在的に持っていない要素をドラマーとしてすごくたくさん持っているので、やぎりんが加入してから楽曲の説得力みたいな部分はめちゃくちゃ上がったと思っています。実はやぎりんに最初に出会ったのは僕が高3の時で、弾き語り活動をしている時期でした。その時の対バン相手にやぎりんのバンドがいて、めっちゃいいドラマーがいるなと思っていたんですよ。位置的には後ろにいるのに目を惹いたというか、めっちゃいい笑顔でドラムを叩くし、上手いし、すごいなって高3ながらにも思っていて、ずっと頭に残っていたんですよね。

グネグネした線を描くことが自分にとってのまっすぐ

おぎそまひろ(Ba)

――この多彩な3人が集まった夕方と猫の音楽の魅力は何になりますか?

秋宗:「夕方と猫って〇〇っぽいよね」っていうことがないことは魅力というか、すごいことだなって我ながら純粋に思っています。世の中にないものを作りたいという思いがありますし、音の面でもまっすぐなものを作るのではなく、若干変な音階や不安定な音、日常的にある音を入れたりしているんですね。自分の音楽を表現するにあたり、直線ではなくグネグネした線を描く感じというか、複雑な部分を表すことが自分にとってのまっすぐな音楽なので。今回のEPでは電話のボタンを押した時の音とかが入っているんですけど、そういう不思議な音をいかに違和感なく曲に入れられるか、逆にきれいな音は違和感を作れるように入れられるかというところのバランスで夕方と猫の唯一無二を作っています。

おぎそ:秋宗が言ったとおり、唯一無二なところがこのバンドの魅力、強みだと思っています。僕がバンドを始めたのも、秋宗とだったらちょっと変なことができそうやな、面白そうやな、みたいなところからなので、ずっとそれを続けている感じではありますね。

やぎ:音楽性もすごいですし、歌詞もすごくいいなって思っていて、そこも魅力だと思っています。私も高2、高3の時は嫌々学校に行っていたみたいなところがあったんですけど、当時の自分に夕猫の曲を聴かせてあげたいなって思うくらい、自分の味方になってくれる曲がたくさんあるので、そういうところも強みだと感じます。

――そんな夕方と猫の最新の魅力が詰まった初の全国流通EP「有頂天ダイブ」が10月にリリースされました。いろいろなタイプの5曲が入っていて全部が推し曲だと思いますが、あえて一推しを挙げるならどれになりますか?

おぎそ:楽器の見どころで言うなら、ベースは「月火水木金」です。スラップという奏法をしていたり、わかりやすくカッコいいフレーズを弾いているので、ベース好きな人が聴いても面白いかなと思います。ライブの時はがんばって弾いているので、そこも見てもらえたら(笑)。

やぎ:私は「ジコチューロック」です。歌詞に「なんでこんなしょうもないこと 考えちゃったりしてんだろ?」ってあるんですけど、自分に当てはまるなって思いましたし、考えすぎずに過ごしていいんだなって思えたので、聴いていていい曲だなって思います。ドラムのことで言うと、サビでは歌詞のやけくそ感を表すようにバンバン叩いています。

――歌詞に合わせてドラムの叩き方も変えているんですね?

やぎ:はい。歌詞解釈はけっこうしていて、歌詞に沿って叩き方を変えたりしています。

――そういう部分も聴きどころですね! 個人的に、夕方と猫の曲は楽器隊の音だけで聴いても面白いなと思っています。

おぎそ:そうなんですよ。それも強みです!

秋宗:本当にそうだと思います。

――少し話がそれましたが、秋宗さんの一推し曲は?

秋宗:全部いいんですけど、今回はリード曲の「摩天楼」ということにしておきます(笑)。やっぱりリード曲を張るくらい名曲だなって我ながら思っているんですね。イントロのギターのリフしかり、サビのメロディーもすごくキャッチーで中毒性がありつつ、でもクラシカルな音楽の良さみたいな部分もちゃんとあるというのが僕としては完璧やな、すごくきれいなメロディーが作れたなっていう印象があって。変なニュアンスを感じさせつつも、ある意味、王道なキャッチーさが常にあって、スッと耳に入ってくるところはこの曲のカッコよさかなって思っています。それと、ギターソロの手前のところではテンポとか拍を無視してひたすらに叩いて弾いて――というセクションを作ることで、もがきながらも前に進むということを表現していて、ギターソロ後の合唱パートでは辿り着いたことを表しているので、一曲を通して映画や小説のようなストーリー性があるところも魅力かなと思っています。

夕方と猫「摩天楼」ミュージックビデオ

有頂天に向けてダイブして、本来の自分を取り戻す

やぎ(Dr)

――聴きどころも多いEPですが、改めて「有頂天ダイブ」というタイトルに込めた思いも教えてください。

秋宗:「有頂天ダイブ」というのは有頂天からダイブするのではなくて、どっちかというと有頂天に向けてダイブするっていうイメージなんです。「有頂天ダイブ」のジャケットには年を重ねて積み上げてきた経験・知識を塔として描いているんですけど、そこに登るのではなく、いろいろなしがらみを手放して、重力に身を任せるかのように本来の自分を取り戻そう、摩天楼、塔のてっぺんを目指そうよという思いを込めてタイトルをつけました。小さい頃ってヘラクレスオオカブトになりたいとか、アニメのキャラクターになりたいとか、人それぞれ馬鹿げた夢を持っていたと思うんですけど、そういう中に純粋無垢な自分があるんじゃないかなってすごく思っているんですね。だから、現実に躓いた瞬間こそ、今の自分には関係ないと思っていること、小さい頃のそういう夢を改めて思い出して純粋無垢な自分を取り戻して、年を重ねた今だからこそ実現できることもあるという意味も込めています。

――そのEPを引っ提げたツアーがスタートしています。

秋宗:このEPを下げて回るので、さっきお話したみたいな摩天楼、頂上を目指す、本来の自分を取り戻すキッカケになるような一日一日を作りたいという思いがまずあります。そして、僕たちにとって全国ツアーというものは初めてなんですね。いろいろなバンドに各地に連れて行ってもらったり呼んでもらったりした中で夕方と猫に出会い、そこで待っていてくれる人たちがいるからできたことだと思っているので、“みんなの居場所を作りたい”という掲げた思いを叶えられるライブをやりたいなと思っています。

おぎそ:高松、福岡はツアーで行くのは初めてなんですけど、ライブでは通っていた地域ではありますし、1年に1回だった名古屋も今年2回目で、大阪と東京ではこれまでのワンマンの中で一番でかい場所でやれるんですけど、それは今まで摩天楼のように積み上げてきたものがあったからこそ、こうやってできていると思っています。

やぎ:本当に全部の地域でお客さんが待っていてくれてることがすごく嬉しいことだと思っています。お客さんがいてくれるからこそ、この全国ツアーができているので、すごくありがたみを感じていますね。「本当にありがとうございます」という感謝を込めて、今回のツアーも回っています。

――『摩天楼を目指して』は対バンで、大阪と東京で行われる『摩天楼へようこそ』はワンマンライブになっていますね。

秋宗:ライブハウスの一日を夕方と猫だけの世界にできるというところは、ワンマンならではの要素かなって思いますし、夕方と猫はいろいろな曲を持っているので、たくさん曲をやるところも1つの楽しみだと思います。対バンツアーでは、10月14日の高松でORCALANDっていう僕たちがすごくお世話になっている先輩バンドでもあり、仲間みたいな存在に力を貸してもらって一日を作ったんですが、そういう思い入れのある人たちとライブを作る魅力があるので、すべての出会いを大切にしながら対バンツアーを回れたらいいなって思っています。

――各地でバトンを受け継いでワンマンに向かっていくという感じですね?

秋宗:そうですね。対バンは『摩天楼を目指して』というツアーなので、このツアーで出会った人たちがワンマンライブに足を運びたいと思ってもらえるような対バンツアーにしたいと思っています。ワンマンツアーの大阪と東京の2日間は夕方と猫だけで勝負するので、それを見届けてほしいなという気持ちがすごく強いです。

――では、ライブならではの魅力も教えてください。

おぎそ:ライブにおいては世界観を大事にしていて、それこそツアーや自主企画の時は衣装も変えますし、入場SEも秋宗が毎回作っていたり、今回新しいEPを出したことによって世界観もガラッと変わっているので、そういうところが魅力だと思います。個人的なところで言うと、シンセベースを弾いていたり、音色を変えている曲があったりするので、様々な部分に注目してもらえると嬉しいです!

やぎ:自分はパワフルなドラムだねってよく言われるんですけど、そこが魅力だなと思っています。目を惹くドラマーだと思いますし(笑)、叩き方やパフォーマンス力を見てカッコいいって言われると嬉しいです。

――確かに目を惹きますし、ニコニコ笑顔でパワフルに叩いていてすごいなと思いました。秋宗さんはいかがでしょう?

秋宗:ライブの魅力は、やっぱり音源では感じられない生身の熱みたいなものを感じられるところだと思います。音源は音源の良さがあると思うんですけど、ライブではMCを含めてよりストレートに思いを伝えますし、楽曲の生々しさというか、ライブ感を楽しんでもらえるんじゃないかなってすごく思っています。あと、曲間にはすごくこだわりを持ってライブ作りをしているので、セットリストを含めてそういうところも楽しみにしてもらえたら嬉しいです。いろいろありますが、個人的には本当に自由に楽しんでもらって大丈夫です。

初の全国ツアーは「大阪城ホール」への第一歩

――すでに始まっていますが、ツアーへの意気込みもお願いします。

おぎそ:初の全国ツアーということで僕たちもすごく気合いが入っています。今回新しくEPを出して回るツアーで新しい試みもあったりしますけど、ここまでずっとバンドをやってきたからこそ回ることができる、ここまでの集大成のようなツアーでもあるので、これまでの全てをかけた僕らのツアーに遊びに来て欲しいですね。

やぎ:「有頂天ダイブ」という全国流通したCDを掲げて全国ツアーをできるのは本当にありがたいことなので、来てくれる方々、お待ちしておりますという気持ちです。

秋宗:まずは初の全国ツアーができて、すごく嬉しく思っております。ライブひとつひとつに対して本当に思い入れがあって、今年一番出演していて僕たちのことを語るうえでは欠かせない高松 TOONICEという場所でツアー初日を迎えられましたし、僕の生まれ故郷の福岡に初めて自主企画で行くことができ、名古屋では初めて1年で2回目の自主企画ができることもすごく嬉しいです。ワンマンライブをやる2つの会場は僕たちのワンマン史上最大キャパで、超えないといけない大きな大きな挑戦でもあるので、今までの自分たちの全てをかけて挑む。これに尽きるかなと思っています。絶対に後悔させないので、ぜひ見に来て欲しいなと思います。

――最後に、「摩天楼」にちなんで夕方と猫として今後、積み上げて形にしていきたい夢は何になりますか?

おぎそ:せーので言いますか?

秋宗:せーので言おうか。じゃあいきます。せーの……

秋宗・おぎそ・やぎ:大阪城ホール!

――ちゃんと揃いましたね!

秋宗:はい!(笑)。大阪城ホールでライブをやることがバンドを始めたときからの夢というか、目標です。僕らは大阪出身のバンドで、大阪城ホールは一番行っている大きな会場なので、そこに立ちたいという思いは強いです。大阪城ホールでライブをできたらOKという話ではなく、そこでライブができるくらいの大きなバンドになりたいと思っています。

――今回の初の全国ツアーは夢への第一歩ですね。

秋宗:そうですね。なかなかデカい会場なので遠い道のりかもしれませんが、そこへの第一歩だと思っています。

取材・文=金子裕希 撮影=浜村晴奈

リリース情報

夕方と猫 
EP「有頂天ダイブ」

2026年10月7日(水)リリース
価格:¥1,650(税込)
配信リンク:orcd.co/yuugatatoneko

【収録曲】
1.パンピー速報
2.気になっちゃう
3.月火水木金
4.摩天楼
5.ジコチューロック

ツアー情報

全国ツアー『摩天楼を目指して』
※終了した公演は省略
11月10日(火)名古屋 HeartLand
 
:学生 2,800円/一般 3,300円

ツアーファイナルシリーズ『摩天楼へようこそ』
11月18日(水)大阪 梅田シャングリラ
12月4日(金)東京 下北沢シャングリラ
 
:学生 3,000円/一般 3,500円
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