心斎橋を舞台に、“いま”を作り出す総勢11組のアーティストたちが集結したボーカリスト・ナイト

2016.2.25
レポート
音楽

『OSAKA NOW』

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OSAKA NOW 2016.2.19 FANJtwice

大阪は心斎橋FANJtwiceを舞台に、歌い手たちが作り出す“いま”の音楽シーンを代表する面々が集う人気イベント『OSAKA NOW』。平日にも関わらず会場は満員御礼! 初ライヴにも関わらず堂々としたアクトで沸かせたLCA!!!がオープニングアクトを担い、総勢11組のアーティストが集結したその模様をレポートしよう。

本編1発目に登場したのは、2013年に結成されたハイクオリティ宴会部長・Call My Nameの4人だ。「騒がしいグループだから怒らないでね」(JAFY(Vo))なんておどけた言葉以上に、会場を揺さぶる熱量高いパフォーマンスを展開! まずはうどんへの溢れる愛を歌った「U.D.O.N」から。KAZUMASA(Vo)の艶やかな声質とエモーショナルなJAFYのボーカルが合わさり、不条理な歌詞にも関わらず何だかグッときてしまう自分に思わず混乱。確信犯的な表情を浮かべる彼らに初っ端から翻弄されつつも、続く「What’s up」では、ポップなサウンドで軽快に。右へ左へ、オーディエンス全体がステージ上の彼らと一体になる様は実に圧巻だ。疾走感に満ちた「JET MAN」では、これまでのポップさを拭うかのように攻めに攻め立てる4人。FANJtwiceにいる全員の興奮を肌身で感じつつ、弾丸のようなコール&レスポンスに声を上げずにはいられない! そんな中、あっという間のラストナンバーは「PARTY DRUNKER」だ。Call My Nameを形容するようなタイトルに偽りなく、ギアを一層上げていく彼ら。ダイナミックなパフォーマンスを繰り出すYAGI-と繊細なアクションで魅せるMoguという異なるカラーのパフォーマーが先導し、場の温度は一気に上昇。JAFYの「飛び跳ねろー!」というシャウトに呼応する観客のジャンプも実に爽快だ。ポップネスに開幕したかと思いきや、ラストは熱くストイックに魅せたその手腕に拍手! もうクライマックス!?と思わせるほどの熱気が会場を包んでいた。

『OSAKA NOW』 Call My Name

Call My Nameが温めたステージだけに、次なるアクトのプレッシャーも絶大なはず。……とそんな心配は瞬時に杞憂に終わる。裸体がまばゆい、いわゆる“パンイチ”の状態で登場した草光健二(Vo)と、ハードな衣装に身を包んだ今井昇(Vo)のふたりによる1+1(ダブル)がオン・ステージ! 出オチ感の否めない草光の姿は、彼らいわく“正装”。途中パンツの衣装替えを挟みつつ、いきなりのアンセム「I need your Lie」をお見舞い! そのギャップに二度見必至な草光のスイート・ボイスと今井のパワフルなボーカルで、場の空気を瞬時にさらっていく。今井がタオルを回せば、草光はパンツを投げ飛ばす。一挙手一投足におフザケをかましつつ、あまりにも美しいハーモニーと四つ打ちのリズムに身体は自動的にノってしまうのだからその実力たるや驚異的! さらに照明を少し落とし、ムーディーに「Drama」を。美メロに乗せ、切々と歌い上げる様にじっと聴き入る観客は、すっかり1+1の世界に誘われている。MCでは思わず真面目な表情も。「好きな人に甘えたくても甘えられなかったり、距離ができてしまったり。そんな気持ちを素直に書いた曲です」(草光)と、続いては「つよがり」を。凛とした空気感と表現力豊かな歌声に、思わず自らを重ねて聴き入ったオーディエンスも多いはず。最後はライヴを愛するストレートなメッセージと明朗なサウンドメイクの「LIVEを観に来い!!」で大団円に。ファースト・インパクトを覆すセンシティブな歌声から、場をアゲる熱気溢れるチューンまで。緩急の強過ぎるステージに、早くも客席の燃料を奪い尽くす!?ひとときとなった。

『OSAKA NOW』 1+1

3組目の登場に客席からは一層の黄色い歓声! そろいの赤く煌びやかなジャケットに身を包んだCLOWN’S CROWNのお出ましだ。王子様然とした佇まいの5人は、どこかドリーミーな世界感の「CIRCUS CIRCUS」から、CCワールドへ一挙に惹き込んでいく。ストリート出身とあって、パフォーマンスの力強さはお墨付き。会場のひとりをも逃さないという強い意志を持った視線に、多くの女子たちがKOされていく。続いてはキュートな男心を歌う「僕のとなりで」を。お約束のアンセムにオーディエンスの合いの手もぴったり! “絶対的センター”と称されるロビン(Vo)を筆頭に、カラフルな声色で実に豊かな歌世界を見せてくれる。アイドルばりのメンバー紹介を挟みつつ、「はじまりプレイス」へ。冒頭、ひとりずつ声を合わせていく様子は、ボーカル・グループとしての確固たる地力を感じさせ、その1アクションだけでも聴き惚れてしまうほどだ。MCではシャイな表情でなかなか言葉が続かない橋本敬吾(Vo)も、打って変わって甘い歌声を響かせるのだからそのギャップも◎ くるくるフォーメーションを変えつつ軽やかにステップを踏む中、ラスト・ソング「MY WAY」へ。「オーオオー!」と一層大きな歌声で会場をひとつにし、優しい視線の応援ソングが一際心に響いていく。メンバーひとりひとりが歌のバトンを繋ぎ、大きな円になるような安心感。思わず身を委ねてしまうような包容力で、その人気の高さにも大きく頷ける一幕となった。

『OSAKA NOW』 CLOWN’S CROWN

例えば、スッと出した指の先端まで全神経を尖らせているような、さらに例えるなら動いた先の空気までも計算されているような……。そんな、ひとつ一つの細やかなアクションにも血の通ったパフォーマンスを感じさせ、“魅せる”という言葉を体現したようなグループ。それが続いて登場する5IGNALだ。もともとが一流アーティストたちを手掛けてきたコレオグラファーやバックダンサーである彼ら。「バックに留まるのではなく表舞台に立ち、世界に挑もうと」(TJ(Vo))との言葉どおり、ド頭「NASTY GIRL」から驚愕のスキルで惑わせていく。ステージの端の端まで使い、時にダイナミック、また時に繊細にと、緩急自在にジェットコースターのようなパフォーマンスを放出! その凄まじさに客席は瞬きもできないほどだ。パフォーマーたち4人の高品質なダンスに魅せられる中、ドラマティックな歌声で場を翻弄しつつパフォーマンスにも全力投球するボーカリスト・TJには何とも驚かされる。「ENCORE」「NOT OVER」と容赦なく攻め立てていく中、いよいよエンディングが。メンバーも力を振り絞るように、ステージの最前まで飛び出し煽る煽る! ちょっぴり90年代のムードを醸し出す「TURN UP THE MUSIC」でエンディングへ。海外メインストリームを取り込んだクールで艶やかなダンス・サウンドをお見舞いし、流石の一体感をもたらした彼ら。ステージを去ったあと、先頃終わったグラミーの舞台でも見劣りしないはず……なんて想像もむくむく広がるのだから、そのスケールのデカさに大きな説得力を感じたオーディエンスも多かったのではないだろうか。

『OSAKA NOW』 5IGNAL

次世代のケツメイシを探すオーディションをきっかけに結成。RYOJIをして「ライバル!」と言わしめたという、男性6人+女性2人の大所帯ユニット・1 FINGERがFANJtwiceのステージに降り立つ! ステージに所狭しと並んだメンバーは、それぞれが異なる個性で目を引く、瞬時にツワモノとわかる面々たちばかりだ。初っ端、洒脱な「Shooting Star」ではneco.(MC&Vo)の軽快なラップから始まり、代わる代わる色を変える8色のボーカルへ釘付けに! その貫禄とのギャップが楽しいメンバー最年少のシンガー・大志(MC&Vo)の鮮烈な歌声に酔わされたと思いきや、低体温のTOSHI(MC&Vo)のフロウがアーバンな雰囲気を演出。続いて「AFIRIO」では女性陣の男前さがフルスロットル! 芯のあるまっすぐな声質のイリナ(Vo)に加え、コケティッシュな魅力いっぱいのCha-ka(MC)の高速ライムには圧倒されるばかりだ。男性陣も負けじと、J-CROWN(MC&Vo)が腹の底から突き上げるような重厚さとシブさをたたえたハーモニーを提示。ピコピコ感がどこか未来的な「FLY」では「飛べる体力が残ってるでしょう!」とIMANISHI(MC)が煽り、爽快な世界感を聴かせるなど、振り幅の広さには驚かされる。まだまだ聴きたりない中、最後はTaKu (Vo)のスイートな歌声がよく映える「Dream」でシメ! 確かな実力とそれだけに留まらない突出した個性のぶつかり合い。スゴい奴らが現れた……そんな、なかなかお目にかかれないだろう“スゴい奴ら”=1 FINGERとの出会いに多くのオーディエンスが興奮を隠せなかったようだ。

『OSAKA NOW』 1 FINGER

いよいよ『OSAKA NOW』も折り返し地点。後半戦の開幕を告げるは福岡が生んだ異端エンターテインメント集団・FLEA MARKETだ。12年の活動期間を誇る彼らだが、先般6月の解散を発表したばかり。ファンに取っては1公演1公演が貴重な中、なぜかMASH(DJ)の芸人・永野ばりのヒステリックな雄叫びからスタートを切る。未来への期待感を込めた歌詞が、ユニットの未来を暗示するような名曲「てのひら」では、 常に合いの手が「解散するけどね〜」(fro-zen(MC))。……いい歌なんだよね?なんて、周りに思わず確認したくなるほどグイグイおフザケを積み上げていく3人に、客席からも笑顔が途切れない。さらに「これから一生付き合おうと思っている曲です」(B-EAR(MC))と、一転真面目な表情で曲紹介する様子にこちらも安心していた中、続くは「桃太郎」。まばゆいサウンドをふんだんに散りばめたグッドメロディでの現代版・桃太郎のストーリーには、感服するほかない。MCでも「サングラスの内側におかんの写真を貼ってたから安心感ハンパなかった」(B-EAR)、「初めて見たよね、ぽっちゃりとデブ。個性が死んでるグループです」(fro-zen)なんて、凄まじい勢いで笑いを取りにくるもんだから、笑顔どころか会場は爆笑の渦! ラスト「またね」でも、合間合間に九州のヒーロー・福山雅治の名曲を挟んでくるなど、ネタの大盛り状態に。ある意味、ポップの究極形を見せつけたステージングと、そんな中でも輝きを失わない名曲たちで鮮烈な存在感を刻み付けていた。

『OSAKA NOW』 FLEA MARKET

先ほどのFLEA MARKETが九州から来た中、彼らはさらに南。遠く沖縄の地からはるばるやって来たスゴ腕ボーカル・グループ、Sky's The Limitの登場だ。1曲目「Desperado」のカバーから、その凄まじさがベールを脱ぐ。酸いも甘いも噛み分けた黒人ミュージシャンのようなドラマティックさをたたえる声の持ち主・山本卓司が先頭を切り、その厚く太いハーモニーに多くのオーディエンスの心が射抜かれていく。音楽の初期衝動が改めて降ってくるような、その幸福感たるや! スイッチを切り替え、続く「You Don't Stop!!〜STLのテーマ〜」では日本人離れしたファンクネスなサウンドを提示。ジャジーな素養を感じさせるスモーキーな声質の若江爵紀をはじめ、ファルセットの太さに、声質の使い分け、吐息ひとつとっても計算され尽くしたボーカル・ワークには圧倒されるほかない。続いて三線を取り出した前田秀幸が口火を切り、CMソングでお馴染みの「海の声」をカバー。沖縄民謡で培った情感豊かな前田の歌声が響き渡り、さざ波の幻聴すら聴こえそうなほどだ。あまりの濃厚さに時間の経過を短く感じる中、「The Day」でラストへ。ピュアネス溢れるハイトーン・ボイスの大城貴史を筆頭に、流れるように歌声を繋ぐ4人。全員が出色した声を持ちつつも、それらを合わせた結果、その個性はプラスどころか何重にも増幅されていく。そんな最高にして天性の“楽器”を持ったSky's The Limitの描く景色をこれからも観続けていたい……そんな豊かなステージとなった。

『OSAKA NOW』 Sky's The Limit

ラスト3組、カウントダウンを迎えつつあるFANJtwiceのステージに更なる熱気をもたらしたのは、龍雅-Ryoga-だ。海外のブラック・ミュージックやK-POPなどを飲み込んだラウドなロック・サウンドにのせ、初っ端「Break The Chain」から一切のスキも見せないハイクオリティなステージングに! バトル・ダンスの一種・クランプの若手NO.1の呼び声高い後藤慶太郎をはじめとした圧巻のパフォーマーたちを擁し、実に男くさく、それでいてスタイリッシュなステージを展開。「音楽は好きですか? ライヴは好きですか?」と、切々と叫ぶ井出卓也(Rap)が続けるは、「Live For You」だ。後藤のアグレッシブなダンスに向かい合い井出がマシンガンのようなラップをぶっ放す。メンバー間でも火花を散らすような疾走感たっぷりのパフォーマンスで、否応なしにテンションは上昇! どこかハスキーな岸本勇太(Vo)の歌声も、切ないリリックの意味合いを深め、どっぷり彼らの歌世界へといざなっていく。単にルックスがいいだとかそんな言葉では表すことのできない確かな華が彼らにはあるのだ。締めくくりにはハートウォームな「Glory Days」を。まばゆいメロディで一層のポップ感を出しつつも、どこまでも攻めの姿勢は崩さない。4/6(水)にはメジャーデビューを控えている彼ら。今回のステージを「京セラドームへの第一歩!」なんて嬉しい言葉も飛び出すなど、今宵立ち会ったオーディエンスは、彼らの原点を共有したと誇れることだろう。

『OSAKA NOW』 龍雅-Ryoga-

普段は顔出しNG、彼らの素顔はライヴでだけ……なんて、ちょっぴりシャイ(!?)な表情を持つトリオ・キャラメルペッパーズがトリ前を担う。まずは、ティーンの心を鷲掴む「LINE既読なのに返信こない SONG」からスタート! 片思いの揺れる心を歌った共感度200%のリリックに、初っ端にも関わらず大きなシンガロングが生まれる。さらにキャッチーなノリで今宵は大阪バージョンの“ええやん”と歌い変えてくれた「いいじゃん SONG」、タイトルとは打って変わってチャーミングな男心を歌った「おっぱい SONG」と、頭を回るメロディの強さは初見でもお構いなしに口ずさめるほどだ。わかりやすいダンスも場の共有感が高く、実に楽しい。「大阪ただいまー! みんなの笑顔が見られて本当によかった」と嬉しいMCも挟みつつ、ラストは感涙必至の「ウェディング SONG」へ。PASSER(Vo)のハイトーンな歌声と甘い声質のRYO(Vo)、存在感ある低音ボイスのYUICHI(Vo)。3人のハーモニーが醸し出す柔らかな空間に、オーディエンスからもやさしい笑顔がこぼれている。恋愛の教科書ソングと例えられるほど、ふと近くにあるような身近な感情を明朗に歌い上げてくれた彼ら。キャラペの3人が応援してくれている。そう思えば乗り越えられそう、そう感じさせてくれる隣りのお兄さんたち的近距離感のあるアットホームなステージを繰り広げてくれた。

『OSAKA NOW』 キャラメルペッパーズ

さあ、宴もいよいよエンディング! 『OSAKA NOW』ラスト・アクトを飾るのは、ROYALcomfortの3人だ。「何もかも忘れて楽しめるヤツは手拍子!」とBGY(MC)が先導するや、「LOVE MUSIC」で開幕。イントロが流れるとくるくる踊リ出すKAY-I(Vo)は、全身でこのステージを楽しもうという気概に満ち溢れ、まさにこの曲が持つテーマを体現している。爽快な「Glorious Days」を経て、MCでは次なる曲へ向けて、恒例のココだけの振り付けを考えることに。「今日は俺に提案させて。大阪のO(オー)で!」(KAY-I)。「いや、俺もマジで同じやったんやけど!」(BGY)なんて和気あいあいとしている中、ROVER(DJ)が口を開く。「2016年はまだまだヌルい。よってコレや!」となぜか正拳突き! O印と正拳突きが飛び交うお次は「Power of smile」だ。膝をついて熱唱する KAY-Iの姿に思わずじんわり。さらにグループの名を広めた切ないバラード「君に好きと伝えよう」では、ふたりの歌心たっぷりのハーモニーがより一層センシティブな心地を増幅。元来のポジティブさに加え、繊細な気持ちの表現もお手の物と、表現力豊かな手腕を見せつける中、ラストは「for you 〜70億の命の中で出会えた奇跡〜」へ。肌身をふるわす強力なシンガロングを生み、イベントを大団円へと導いてくれた。「トリで歌わせてもらって最高の思い出ができました!」と叫ぶ彼らに、皆こちらこそ!と笑顔を返す様が何とも幸せな空間となった。

『OSAKA NOW』 ROYALcomfort

文=Piece 後藤愛

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