ボカロ界の新星・ナブナの1stアルバム発売!リード曲の動画公開も
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ジャンルを超越したシーンが生んだ、新世代アーティスト
ボーカロイドを使用した楽曲を投稿する、“ボカロP”による作品が世に出るようになってずいぶん経つ。米津玄師やヒトリエなど、ボカロP出身のシンガーやバンドも増えてきた。
だが実際はまだまだ偏見や聴かず嫌いといった要素が、広がりを邪魔しているジャンルでもあると思う。それは元々ニコ動シーンの渦中で取材をしていた時も感じたし、今現在も大きくは変わっていないように思う。
ネット音楽であろうがライヴハウスであろうが、優れた楽曲やアーティストは存在し、同時にどうしようもないものも存在する。単純にそれだけの話であるのだが、それぞれが勝手に引かれた線引きを超えられない様子は、なかなかもどかしい。
そんな現状を変えていくとすれば、若い世代のクリエイターなのかもしれない。現に、音楽にハマった中学・高校時代には既にボカロが市民権を得ていた、という層が自らボカロ曲を投稿し、再生数を大きく伸ばしているのだが、彼らはボカロやネット音楽とそれ以外の音楽を、特に分け隔てなく聴き、抵抗も感じない世代であると言ってもいいと思う。彼らにボカロやネット音楽の文化を背負ってほしいとまでは言わないが、自然と溝を埋めていくように、優れた楽曲を世に出していってもらいたいとは願っている。
昨日1stフルアルバム『花と水飴、最終電車』をリリースしたナブナ(n-buna)もそんな若いボカロPの一人。もっとも若さを話題にされることを本人は好んでいないが、いわゆる“ボカロ的”な変拍子や転調の使い方と、オーソドックスなPOPやロックのサウンドが違和感なく合わさっている作風からは、やはり新世代の空気を感じる。
アルバム発売に合わせてMVが公開されたリード曲「無人駅」は、どちらかといえば“ボカロ的”な要素が強く、ギターが印象的なロックナンバーだが、サビで一気に転調、リズムも変化するなどエッジの効いた楽曲。それに対し、アルバム以前に公開され本作にも収録されている「夜明けと蛍」では、あえて残響をカットし淡々と繰り返されるギターのカッティングに特に抑揚も大きくないメロディを重ね、それでいて十分ドラマティックに仕上げるといった、大人びたアレンジもやってのけている。はっきりいってすごいセンスだ。
なお、動画で欠かせない映像部分は、あわしまが担当し、水彩画のようで繊細なイラストも印象的な仕上がりなので、是非視聴してみてほしい。
彼ら若い世代のボカロPやシンガー、あるいはバンド達に共通して感じること。
それはジャズやファンク、エレクトロ、メタル、さらにはプログレまで、多くの要素が混在するボカロシーンを通過して育った彼らが、それらを違和感なく飲み込んでスッと消化できる才能を持っているという事実。
その引き出しの多彩さに触れ、彼らがいつかジャンル間に引かれたつまらない線引きを越えていくことに、期待せざるを得ない。
1st Full Album「花と水飴、最終電車」
好評発売中
初回生産分限定スリーブ仕様
全15曲収録
2,000円(税抜) / DGUR-10005
<収録曲>
01 もうじき夏が終わるから
02 無人駅
03 始発とカフカ
ウミユリ海底譚
04 昼青
05 背景、夏に溺れる
透明エレジー
06 ヒグレギ
07 夜祭り前に
08 メリュー
09 ずっと空を見ていた
10 着火、カウントダウン
敬具
11 夜明けと蛍
花と水飴、最終電車