妖精帝國インタビュー「へヴィで美しく、アニソンで攻撃的な彼らが人気な訳」
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妖精帝國 撮影=原地達浩
音楽を通じて人間達に妖精の存在を思い出させ、妖精帝國を再興させるため、日々、音楽活動を行っている噂の妖精帝國が10年ぶりのオリジナルフルアルバムを携えて「妖精帝國第八回公式式典 SHADOW CORPS[e] LIVE TOUR」を開始する。終身独裁官、皇女であるゆい(Vo)が率いる妖精帝國のコンセプトとは? 式典と呼ばれるライヴではいったい、どんな光景が繰り広げられるのか? 謎めく5人にインタビューを試みた。
攻撃性が増したのは人間へのメッセージなのかもしれないな。
――初登場となりますので、まずは妖精帝國のコンセプト、メンバーひとりひとりの役割について教えてください。
ゆい(Vo):まずコンセプトというところだが、私はかつて妖精帝國というところに住んでいたんだな。だが、人間共が妖精の存在を信じなくなってしまってから妖精帝國は荒廃の一途を辿っていった。よって私が人間界に降りてきて音楽によって妖精の存在を知らしめることによって、帝國の復興を進めていこうとしているわけだ。人間界でいちばん最初に見つけたのがギターの橘尭葉だ。橘は最初はギターではなくキーボードだったな。
橘(G):役職は大尉でよろしかったですか?
ゆい:おそらく。補足しておくと我々はバンドとしては妖精帝國第参軍楽隊ということになるので、役職がそれぞれにあって、アルバムやツアーへの貢献度によって上がり下がりしていく。
――貢献度によって出世したりするわけですね
ゆい:そういうことだ。今のところは橘が大尉だ。
橘:曲を作ったり、ギターを弾いております。式典(ライヴ)では役職が落ちないようにひやひやしながら頑張っております。
妖精帝國・終身独裁官 ゆい 撮影=原地達浩
——そこはひとつの重圧になっているんですか?
橘:ええ。後に加入したギターの紫煉やベースのNanami、ドラムのGightなど強力なメンバーしかいないので、つねに戦いです。
ゆい:サラリーマンのようだな(笑)。
橘:そのような危機感を持ちつつ、いい曲を作るためにみんなで切磋琢磨している軍楽隊です。
ゆい:橘の次に加入したのがNanamiだ。役職は准尉だ。
Nanami(B):ベースのほか、作曲もしています。
ゆい:その後、同時に2人加入したのだが、役職でいうと上なのが紫煉曹長。
紫煉(G):ギターを弾き、曲も作っています。加入前はこの御三方と前任のドラムの方がいらっしゃったのですが、以前は速弾きするようなタイプの曲があまりなかったので主にそういう部分を担当しています。
橘:リードギター担当ですね。
妖精帝國・紫煉 撮影=原地達浩
——役職の上下についてどう感じていますか?
紫煉:自分はあまり気にしたことはないです。
ゆい:紫煉は自信家だからな。「俺が弾いていれば下がることはない」と思っているようだ。
——なるほど。橘大尉とNanami准尉の性格というのは?
橘:秘めた攻撃性は持っていると思います。
——内なる炎が燃えているわけですね。
ゆい:燃えているのだろうが、厚い壁にはばまれていて、なかなか外から垣間見ることはできないな。Nanamiもクールなところがあるが、心はおしゃべりだな。普段表すことはないが。そして紫煉と同時期に入ったのがGight軍曹だ。
Gight(Dr):ドラムを叩いているGightです。
ゆい:それで終わりか(笑)。
橘:彼も曲を作っています。性格的には嘘がつけない良い人だけど頑固。よく言えば真面目。
ゆい:そういう意味では全員、頑固だろうな。悪い意味ではなく、自分がやってきたことや作ってきた曲にこだわりを持っていたら当然、頑固になるはずだ。音楽をやる上では大事なことだと思うな。
——妖精帝國、実は頑固な軍団であるわけですね。
ゆい:軍団というものはある意味、そうあるべきだと思うが。
妖精帝國・橘 尭葉 撮影=原地達浩
——音楽的にはゴシックロック、ヘヴィメタルが主軸で、近年、メタル色が強くなってきているということですが。
橘:年々、メタル要素は強くなってきています。
ゆい:こう見えて2017年には結成20年を迎えるのだ。先ほど話したように橘と2人で結成した時はゴシック色はなく、だんだんゴシック、メタル色が強くなった感じだな。
——どんどん攻撃性が増していったのですね。
ゆい:そうだな。攻撃性が増したのは人間へのメッセージなのかもしれないな。最初は優しくさとしていたのだが、聞く耳を持たないので、今は大声を張り上げて伝えている。
橘:年々、ギターの音も大きくなり。
ゆい:ギターソロの時間も長くなり。
Gight:年々、ドラムの音数も増えてきたり。
ゆい:みんな自分の限界を超えているな。アルバムを作りながら「これは本当にステージ上で弾けるのか?」と葛藤をしている(笑)。
妖精帝國・Gight 撮影=原地達浩
——妖精帝國がライヴを“式典”と呼んでいるのは神聖なものだからですか?
ゆい:我々から神聖なものでなければならないと打ち出している訳ではないのだが、臣民(ファン)たちはそう受け取っているようだ。
橘:初期の式典は臣民たちが神聖なものだという意識が高すぎたのか、どうやって感情を我々に伝えていいかわからず、粛々と受け止めていましたね。最近はコール&レスポンスも増えて、お互いに盛り上がれるようになってきています。
——臣民との関係も月日を経て変化してきたわけですね。
ゆい:そうだな。昔はおごそかな雰囲気だったのだが、我々がステージ上で腕を振り上げたり、頭を振るなりして伝えてきた結果という感じだな。が、調べさせたところによるとインターネットの世界では「妖精帝國の式典はルールが多すぎて行きづらい」という意見があるらしい。私に言わせれば、どこぞのグループよりルールもなければ変な振り付けもなく自由にやってかまわないスタンスなのだが、なぜか今だに敷居が高いと思われているのだな。声を大にして、ただ心のままに叫び、拳を振り上げ、頭を振っていただけたらそれで良いと伝えたい。
橘:怪我だけはしないようにしていただけたら。
——You Tubeに「妖精帝國公式式典参加時に於ける注意事項」という動画がアップされていますよね。それによると会場では最前線区域と後方支援区域が自然と形成されているとか。
ゆい:そうだな。とにかく暴れたい者は前の方に来い! 我々や臣民が暴れている様をゆっくりと鑑賞したい者たちは後方支援区域で。その中間を望む者は真ん中あたりで見ることをお勧めする。それと毎回、少し高くなっている場所にロープを張って女性エリアというものを作っている。ただ、暴れたい女性もいるので前列の半分ぐらいは女性だな。
橘:最前列とは言え、男子は優しいので女子を前にしてあげたりするんです。
紫煉:あとは式典後半になると、だいたい1人、2人、会場からいなくなってしまうので、そこは気をつけてほしいですね。
ゆい:途中で運ばれていってしまうのだな。やはり曲が始まると後ろのほうから波が押し寄せてくるし、空気も薄くなるからな。
——自分はどのエリアで見たらいいか考えた上で式典に臨んだほうがいいんですね。
ゆい:そうだな。その日の体調、体力、気合で決めてもらいたい。
橘:あとは水分が大事です。特に最前は水がないと戦い抜けないので。
——装備として必要ですね。服装も黒一色でないといけないとか、そういう指定もないわけですもんね。
ゆい:全くそのような指定はない。
紫煉:暴れたいならとんがっている靴は履かないとか、まわりに怪我をさせないような配慮はぜひしていただきたいですが。
ゆい:そうだな。自由な格好でかまわない。ただ、会場で物販のTシャツを買うのも良いプランではないだろうか。式典を楽しむために1枚買って、終わったら濡れたTシャツを着替えるためにもう1枚、買う。これはやり方が汚いな(笑)。
橘:思い出が増えていいと思います。
妖精帝國・Nanami 撮影=原地達浩
——では、4月29日から始まる「妖精帝國第八回公式式典 SHADOW CORPS[e] LIVE TOUR」はどんな内容になるんでしょうか? 昨年、発表された10年ぶりのオリジナル・フル・アルバム『SHADOW CORPS[e]』の曲が中心ですか?
ゆい:もちろん、アルバムの曲はほとんど演奏するのだが、それ以外の曲については演奏したい曲が多すぎて、みんなでかなり意見を交換して決めている。我々には名曲が多いからな。それと新しいアルバムはエネルギッシュなので、今回のツアーは体力、持久力が必要になると、ここであらかじめ言っておこう。
橘:軍隊感をかなり強めに出したアルバムなので、全体的に激しめな式典になると思います。統制のとれた声を臣民のみなさんには聞かせてほしいですね。
紫煉:『SHADOW CORPS[e]』は臣民に式典で声を出してもらうことを前提に作られた曲が多いので、かけ声、一緒に歌う部分が多いんです。みんなでアルバムを完成させていきたいので、ぜひ予習しておいてほしいと思います。
Nanami:よりハードロック、メタル色が強くなって妖精帝國として新しいことに挑戦しているので楽しんでいただけるんじゃないかと。
Gight:アルバムの中に1曲だけ歌がないインストゥルメンタルが収録されているんですが、その曲も公式式典ツアーで披露するので頑張ります!
——それに加えて、ツアー直前の4月27日にはTVアニメ『ビッグオーダー』のOPテーマとなる新曲がリリースされるんですよね。
ゆい:そうなんだ。先日、レコーディングを終えたばかりで我々もかなり気合いを入れたので、相当いい曲になっている。TVから流れた時に見た者が興奮する様が手にとるようにわかるが、当然、式典でもやるのでぜひ覚えて来ていただきたい。
紫煉:またチャレンジした曲調なので驚きがあると思います。大尉による曲です。
橘:アルバムとはひと味違いつつも、妖精帝國という芯はブレていない曲です。この新曲にも臣民が声を出せる箇所があるのでぜひ!
ゆい:最近、そういう曲が多いな。
——臣民も式典前日は声が枯れるカラオケとか控えたほうがいいかもしれないですね。
ゆい:そうだな。今回のツアーは妖精帝國第参軍楽隊と臣民という関係性ではなく、式典では全員が妖精帝國であるという一体感を感じたいと思っている。ぜひ、本番に備えて各自、自主トレをしてきてほしいところだな。
撮影=原地達浩 インタビュー・文=山本弘子
妖精帝國『SHADOW CORPS[e]』
M01 : Attack!!
M02 : "D" chronicle
M03 : 闇色corsage
M04 : 白銀薔薇奇譚
M05 : 残夜の獣
M06 : calvariae
M07 : Infection
M08 : 檄
M09 : ancient moonlit battleground
M10 : Shadow Corps