窪田健志(パーカッション) マルチ・パーカッションの刺激的な世界
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窪田健志(パーカッション) ©Issei Mori
打楽器奏者のリサイタルにはさまざまな発見がある。なかなか聴くことができないオリジナル作品、見たことのない物体も含めた多様な楽器の数々、それらを縦横無尽に演奏する奏者の動き。その面白さを知ってしまうと、たとえ未知の作曲家や曲であっても躊躇することなく、好奇心が勝って会場へと足を運ぶことになるのだ。
名古屋フィルハーモニー交響楽団の首席奏者としてティンパニなどを演奏しつつ、東京文化会館ほかでのリサイタルで打楽器の可能性を開拓してきた窪田健志も、そうした打楽器コンサートの楽しみを提示してくれる一人だろう。東京オペラシティの『B→C』シリーズでは、マルチ・パーカッションの古典と位置づけられるシュトックハウゼンの作品から、今回のために委嘱された鈴木優人の新作となる「4台のティンパニのためのB to C」まで、空間狭しとばかりに並ぶ打楽器群を操る姿が堪能できそうだ。
「普段のオーケストラ・コンサートであれば見ないような楽器も含め、多種多様な楽器で聴いたことのない音を出していたり、ツトム・ヤマシタさんが初演したヘンツェの作品では、エレクトロニクスとの共演や、演奏しながら詩を読んだりするなど、とにかくあらゆるアイディアが散りばめられているコンサートです。自分としてもこれ以上はないだろうという大規模な楽器のセットを組み、打楽器関係者に驚かれているほど。今回のために製作を依頼している金属打楽器や、陶器作家の方から譲っていただいた器、さらには自作の楽器もありますので、打楽器奏者の実態を“発見”していただけるリサイタルになるかもしれません」
演奏に際してはステージで楽器を叩くだけではなく、演劇的なアクションなどまで要求されるため「作曲家からの挑戦状みたい」と思うこともあると言う。たとえば1959年に発表されたシュトックハウゼンの「ツィクルス」は、演奏者に曲を組み立てる自由が与えられており、即興性や創造力も求められる作品だ。
「演奏するたびに結果が違うという曲で、マルチ・パーカッションでは避けて通れない名作。今回は楽譜をスクリーンに投影しながら演奏することも考えています。またフィッシャーの『ヴォルケンシュトゥディ』は、2014年のミュンヘン国際音楽コンクールにおける課題曲で、作曲者がこだわり抜いた楽器の指定をクリアして挑む注目作。一方でJ.S.バッハの『無伴奏チェロ組曲第3番』はマリンバで演奏しますが、名古屋フィルに客演していただいた鈴木秀美さんに実際に聴いていただいた上で、チェロとの接点を探りました。バロック音楽の演奏スタイルなどに刺激を受けつつ、マリンバでどういうバッハを創造・表現できるのか、大きなチャレンジになると思います」
打楽器のリサイタルは聴いたことがないけれど面白そうだ、と思う方にはぜひ体験していただきたい一夜。もちろん、先鋭的な音楽には目がないという方であれば、とても刺激的なコンサートになるだろう。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
東京公演 3/22(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問合せ:東京オペラシティ
http://www.operacity.jp
上田公演 3/19(土)14:00 サントミューゼ(小)(上田市交流文化芸術センター)
問合せ:サントミューゼ0268-27-2000
http://www.santomyuze.com