日本フィル正指揮者・山田和樹の契約が2022年まで延長

2016.3.8
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クラシック

山田和樹 (C)山口敦

 今年創立60周年を迎える日本フィルハーモニー交響楽団が記者会見をひらいた。平井俊邦理事長が登壇し、指揮者体制、60周年記念事業、楽団経営、などについて語った。
 (2016.3.4サントリーホール 取材・文:山田治生 撮影:山口敦 写真提供:日本フィルハーモニー交響楽団)


 指揮者体制では、正指揮者・山田和樹の2022年8月までの契約の延長が発表された。2012年に就任しているから、通算10年間の任期となる。現在、日本フィルと「マーラー・ツィクルス」を進行中の山田。来シーズンは、藤原歌劇団との《カルメン》(2017.2/3〜2/5東京文化会館)、柴田南雄生誕100年・没後20年記念演奏会(2016.11/7サントリーホール)などを振る。そのほか日本人作曲家の作品の再演に取り組むという。

 日本フィルは、今シーズン限りでアレクサンドル・ラザレフが首席指揮者を退任し(桂冠指揮者兼芸術顧問に就任)、今年9月にピエタリ・インキネンが新しい首席指揮者に就任する。ラザレフは、首席指揮者としての最後の定期演奏会(7/8、7/9サントリーホール)でショスタコーヴィチの交響曲第15番を取り上げる。インキネンの就任披露(9/27サントリーホール)は、ワーグナーの「ジークフリート」と「神々の黄昏」の抜粋。来年5月には楽劇《ラインの黄金》全曲(2017.5/26,5/27)も手掛ける。桂冠名誉指揮者・小林研一郎は10周年の杉並公会堂でベートーヴェン交響曲ツィクルス(2016.6月〜12月)に取り組む。

平井俊邦・日本フィルハーモニー交響楽団理事長 (C)山口敦

 そのほか、平井理事長から現在の経営状態について説明があった。年間の予算規模は約13億円。2002年度から11年度まで債務超過が続いたが、12年度に脱却し、15年度には1億円ほどの利益をあげるという。日本フィルのような自主運営のオーケストラでは黒字と赤字とが本当に紙一重のようである。収入の7割が演奏会収入(主催と受託)。法人からの寄付が1割5分で、あとは国からの助成、個人からの寄付、物販などである。活動の3つの柱は、オーケストラ・コンサート(芸術性の追求とオーケストラの個性の確立)、エデュケーション・プログラム(子供から高齢者まで)、リージョナル・アクティビティ(音楽で豊かな地域社会を育む)。経営の目標には、芸術性と社会性(社会に音楽の面白さを伝える)、楽団の財政強化と団員の処遇改善、を掲げる。平井理事長は、「もう少し知ればよりクラシック音楽がより面白くなる中間層を増やしたい。そういう人たちにオーケストラの奥深い面白さに触れてほしい。そしてコンサートを温かい音楽の場としたい」という。経済界出身の平井理事長は「経済人にも文化の大切さを知ってほしい」とも訴えた。


日本フィルハーモニー交響楽団
http://www.japanphil.or.jp