話題のピアノトリオ3組による”新しい””もの凄い”イベントを直撃。「PIANO TRIO TOGETHER」ライブレポ これは伝説になる…

2016.3.12
レポート
音楽

PIANO TRIO TOGETHER

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以前SPICEでもインタビューをさせてもらった、ピアノトリオ3組による夢のイベント「Piano Trio Together Vol.3」が2月26日に渋谷のTSUTAYA O-EASTにていよいよ開催された。

インタビュー記事はコチラ(⇒spice.eplus.jp/articles/30291

それぞれのバンドの代表である3人に話を聞いてから、一体どのような表現のされるイベントで、お客さんはどのように楽しむイベントになるのだろうなど、全く想像もつかないままその夜は幕を開けた

PIANO TRIO TOGETHER・H ZETT M、まらしぃ

1階は見る場所に苦労するくらい満員のO-EAST。まずはサブステージに照明が灯る。向い合せるように並べられた2台のキーボードに現れたのは、H ZETT Mとまらしぃ。おもむろに”競弾”とも言うべき激しい演奏が空間を切り裂くように紡がれていく。「残酷な天使のテーゼ」のフレーズを散りばめたセッションで早くも会場からは歓声があがる。圧倒的スキルに裏付けされた二人の共演は、イベントの最初からかなり贅沢なものに感じられて、これから繰り広げられる一夜が相当に”ヤバイ”ものであると想像させてくれた。

その後もMCで「タイトル未定」とされた二人のオリジナル曲が披露されたのだが、これまたH ZETT Mのロック臭とまらしぃのいい意味での電波臭さが気持ち悪い程絶妙に混ざり、唯一無二の世界観を展開していた。

コミカルなMCを挟みつつイベントの開幕を宣言。間髪入れずにメインステージにfox capture planの登場SEが鳴り響く。

fox capture plan

お洒落とはこのことを言うのだろう。グランドピアノに向かう岸本亮はなんとも言えない風格を放ち、アップライトベースとドラムの上でアグレッシブながらも流麗でセンスあふれるフレーズを叩き出していく。彼が座った途端全ての鍵盤がお洒落な音しか鳴らさないようにピアノがなってるんじゃないかと思うくらい、グイグイと観客の耳へJAZZYな塊を放り込む。

MCでは打って変わって「H ZETT MとまらしぃからtwitterのDMで誘われた」など関西人らしい親しみやすい語り口で笑いをとるなど、実に良い空気を作っていた。ピリッとした演奏と、人間らしいMCのバランスも絶妙。

曲は進み、3曲目の「Butterfly Effect」ではDrumの井上司が左手でずーっとゴーストノートを叩きながら、右手で各リズムをつむいでいくという、これまたお洒落なプレイを披露している。おそらくエレクトロやドラムンベースなどのトラックのような要素も含む楽曲なため、こういった手法をとっているんだろうが、粒の細かいビートとダイナミックなアップライトが何とも言えないリズムを繰り出すとこにも、彼らの魅力の一端があるのだろう。

fox capture plan

要所には、誰もが知っている曲のフレーズが挟まったり、エンタテインメントぶりもうかがえる。そして彼らの発表している中で一番再生回数が多い曲と宣言されドロップした「疾走する閃光」などは絶品で、圧倒的なスネアのフィルと、美しいピアノのリフレインがからまり、ストーリー性の強い曲構成に、ググッと引き込まれる。日本人の琴線に絶妙に触れるフレージングを聴くに、とても天才肌なんだろう。

そして本人たちの一つの目標でもあったというBillboard Live TOKYOでのライブが決定したことを告げ、最後の曲「RISING」へ向かう頃にはfox capture planが会場を虜にしていたといっても過言ではない。今後の彼らには要注目したい。

この時点で心で思っていたのは「このイベント完全に大当たり」ということ。ここから全く個性の違う、もう2つのピアノトリオが堪能できるのは贅沢というもの。そう思わせる空気に観客も関係者もなっていた。

logical emotion

そんな中登場するのは、この「Piano Trio Together」の発端である一人、まらしぃ率いるlogical emotionだ。先のfox capture planとは出自も、音楽性も全く違う。同じなのはピアノ、ベース、ドラムのトリオであるということ。動画投稿サイトへの数々の投稿動画で人気を得たまらしぃが、ラーメンが好きな仲間とラーメン同好会のつもりで立ち上げここまで来たというのだから、実にコミカルでエッジが効いている。

初っ端から、実に飄々とさらっと登場し、最早代名詞といってもいい「千本桜」で一気に会場は最高潮へ駆け上がる。多彩なフレーズ、遊びのあるプレイのまらしぃ(Pf)と、パワフルなリズムを叩き付けるタブクリア(Drums)仮面をかぶりコミカルな動きで一人だけ自由に歩き回れるdrm(Bass)が会場を煽る。気持ちいライブ感と、観客と一緒になって楽しむという感じが伝わるエンタテイメントぶりは、明らかに先ほどのfox capture planとは真逆のベクトルのアプローチだ。こうして超ハイクオリティな全く別ベクトルのバンドが楽しめるのは実に嬉しい。

興奮はそのままに、魔法少女まどかマギカの主題歌でもおなじみの「コネクト」のアレンジ。これまたハーフテンポのシャッフル的リズムで渋いアレンジに耳を持って行かれる。無理に客をのせようとするわけでもなく、彼らの音楽に浸りながら自然に体が動いてしまう。またブレイクや決めに併せてdrm(Bass)のコミカルな動きに笑いも起き、何かチャップリンの映画でもみているような気になってくるのだから不思議だ。

MCでは実にゆるく自らの成り立ちを語り、「名古屋仕込みの味噌ミュージック」を聴かせると宣言。確かにじっくりと味の染み込んだアレンジたちは美味だ。

まらしぃ

そしてこれまたこういったバンドでやるというのは実に珍しい、東方アレンジ(東方projectというゲームの音楽をアレンジして演奏するカルチャー)から「砕月」が放たれる。いやぁこんなにお洒落な東方萃夢想の砕月はなかなかお目にかかれないし、曲の良さも引き出しながらオリジナリティとライブ感を同居させる様はお見事。

そして名古屋から東京に来る途中に車が廃車になり、時間が押してしまったせいで、海老名のインターに寄れずラーメンが食べれなかった悲しみを語り会場を和ませたところで後半戦に突入。

ここでドロップされた彼らのオリジナル曲がかなり驚愕の演奏で、わかりやすく言えばこのピアノ、ベース、ドラムという実にアナログでシンプルな編成なのに、途中のブリッジセクションでDUBSTEPやGRITCH HOPのようなEDMサウンドが紡ぎだされた。ベースシンセなのかカオスパッドのようなものを仕込んでいるのかわからないが、とんでもないシンセ音で会場を沸かせる。アレンジやカバーも勿論秀逸なのだが、この彼らのオリジナル曲のドゥープさとありえないグルーヴにはもっともっと彼らの曲を聴きたいと思わせる魅力にあふれていた。

終始、良い意味で力の抜けていながら、エンタテインメントに溢れたステージは本当に圧巻。最後は彼ららしくラーメンの曲で、締めのごはんもいらないくらい、完璧に締め。大歓声の中見送られた。

ここまで2バンドだけでも、かなりの満足度。これだけ違う楽しみ方のできる奥深い演奏が堪能できるなんて思ってもみなかったし、なにより観客一人一人が本当に楽しんでいるのがわかるのだ。さあいよいよ大トリはH ZETTRIOを残すのみとなり否が応でも期待は高まる。どんな演奏、曲、アプローチで来たらこの流れを受け継げるのだろうと考えながら彼らの登場を待つ。それくらいここまでの流れが出来すぎていて、これで終わってもいい位の満足感があったからだ。

しかし、そんな不安など全て引っぺがして、丸めたものを剛速球で投げ返されたくらい最高のステージが待っていたのだ。

H ZETTRIO

全観客の期待を受けつつこれまた飄々とH ZETTRIOの3人が姿を現す。そして「うわー!」と歓声をあげたまま、突入した1曲目の「ツァラトゥストラはかく語りき~Beautiful Fligit」の一連の流れが始まると、もうその口が閉じることはなかった。

曲がどうこうの話じゃない。演奏のスキルとキレ、その演奏にはこのアクションしかない!というくらいピタリ来るステージングがそこにはあって、もう何もかも圧倒していた。なにしろH ZETT M(Key)が本当に本当にカッコイイ!スタイリッシュでいながら、めちゃくちゃ激しく打鍵し、パワフルなのかと思いきや飄々とした表情で笑い、しなやかに足をあげて曲を表現していく。それはまるでサーカスのようで、見ている全ての人を驚かせ、沸かし、楽しませる。こんな鍵盤弾きみたことない。

鍵盤の極近くまで顔を近づけて打鍵する独特のスタイルで、次曲「晴天 –Hale Sola-」へなだれ込む。しかしH ZETT Mに負けず劣らず、H ZETT NIREのウッドベースもとんでもないグルーヴを出している。ウッドベース独特のトーンでありながら、ウッドベースではないほどのフレーズの繋がりと音の凝縮感がすごい。ものすごい手数で曲の根幹を走り回る。そしてH ZETT KOUもロカビリースタイルなスタンディングドラム。立ったままであのキックと各種シンバル、スネアをああもパワフルに叩けるものかと、もうすべてに釘づけなのだ。

しかも、H ZETT Mがこの日ステージでは、メインで自身の目の前にあるキーボードと後ろに置いてあるグランドピアノ、そして左後方においてあるショルダーキーボードの丁度真ん中に位置取りながら、一体次にどれを弾くのか、何を仕出すのか予測不可能で、目でも楽しめる。しっちゃかめっちゃかに打鍵しているように見えるのに完璧に流麗なフレーズが耳には届くという、本当に何かのマジックショーでもあるかのような楽しさがある。

H ZETT M

ショルキーとキーボードを交互に使いながらソロを奏でる「FIRE」のアレンジも、この曲を知ろうが知らまいが完全に楽しめるように作ってあるのだから、もう本当にこれぞエンタメと言わざるを得ない。

そしてMCがこれまた本当に楽しげで、からかうようにそれでいて奥ゆかしく「楽しい日ですね」などと語りかける。かと思えばドラムの椅子でドライブをしている仕草をみせるなど、パントマイムのショーでも見ているかのような愉快さに包まれる。

激しく圧倒的なスキルで魅せていたかと思えば、自身作曲のTVCMで起用されている「あしたのワルツ」をグランドピアノでしみじみと聴かせてくる。押しても引いても一流なのだろうこの人たちは。

そしてH ZETTRIOの真骨頂ともいえる、「Trio,Trio,Trio!!!」でそれぞれが超絶スキルをみせながら、それでいて実に楽しそうに一人ひとりをフィーチャーしていく。ここにきて、ああそういえば3人だけでこの音楽を奏でているのかと気づく程、音圧もグルーヴもトリオで表現しているとは思えないものだった。

H ZETT KOU

その後も「Smile」「みんなのチカラ」と続けて、観客全員が手をあげ笑顔になり本編が終わる。なんという満足感、本当に良いものをみた時って自然と笑顔がこぼれてしまうんだな頬をさすりながら思う。

余韻が残るステージに再びH ZETTRIOが登場。「Wonderful Flight」で再度会場は最高潮へ。キーボード、グランドピアノを行ったり来たりしながら、フィナーレに向かう。

そして最後はPiano Trio Togetherらしく、3人を繋いだのは、H ZETTRIOの演奏をバックに、3人の鍵盤弾きが「千本桜」でこの日最大の盛り上がりをみせてフィニッシュ。

出所もキャリアも違うこの3人がこの日観客にみせてくれたものは、ピアノやキーボードの無限の可能性と、アーティストとしての力、パワー、観客へ伝えたいという思いさえあれば、歌がなかろうが全ての表現が伝わるのだということ。

そして改めてピアノは素敵な楽器で、音楽に言語はいらないということだろう。

3つのエンタテインメントの塊達はそれぞれの色で輝きを放っていた。
このイベントがみれて心底良かったと、感謝したい。

 

文=秤谷建一郎

 

セットリスト
Piano Trio Together Vol.3 2016.02.26
 
◆fox capture plan
1.tong poo
2.衝動の粒子
-MC-
3.Butterfly Effect
4.彼こそが海賊
5.Attack on fox
6.疾走する閃光
7.Supersonic
-MC-
8.RISING
 
◆logical emotion
1.千本桜
2.コネクト
-MC-
3.砕月
4.Forever Shootingstar☆ミ
-MC-
5.Get Low
6.FLY!
7.ラーメン†デュエル
 
◆H ZETTRIO
1.ツァラトゥストラはかく語りき~ Beautiful Fligit
2.晴天 –Hale Sola-
3.FIRE
-MC-
4.あしたのワルツ
5.Trio,Trio,Trio!!!
6.炎のランニング
7.Smile
8.みんなのチカラ
 
◆En-Core
1.Wonderful Flight(H ZETTRIO)
2.千本桜(H ZETTRIO+まらしぃ+岸本亮)

 

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