amazarashiが描いた“世界最後の一人の生の物語”、中野サンプラザに響いた讃歌

2016.3.11
レポート
音楽

amazarashi

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5th anniversary live tour 2016 世界分岐二〇一六 2016.3.6 中野サンプラザ

僕はamazarashiのライヴを観るとき、どうしても姿勢を正したいような気分になる。実際、いつもより椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばしている気がする。きっと場内の観客たちも同様なのではないか。なにせ曲間の拍手と歓声以外にはシンと静まり返った場内に秋田ひろむ(Vo/G)の叫びとバンドサウンドが響くのみの2時間弱なのだ。amazarashiのサウンドが(流麗なピアノこそフィーチャーされているものの)純然たるオルタナティヴ・ロックで、魂を揺さぶるタイプのものであるにもかかわらず、だ。理由はおそらく、秋田の歌が彼自身の胸の内をむきだしに晒け出していて、amazarashiのライヴはそれと対峙する瞬間だからなのだと思っている。もっといえば「人生」そのものを晒け出しているといってもいい。ときにリリカルに、ときにものすごく具体的で直接的に、僕らの眼前に突きつけられるのだ。痛みも、悲しみも、葛藤も、希望も。

『世界分岐二〇一六』とサブタイトルの付いたツアーファイナル。最新アルバムが『世界収束二一一六』であるから、数字を西暦だと捉えるとそこからちょうど100年前=今年・2016年ということになる。言うまでもない話だが、アルバムタイトルとツアータイトルとが密接に繋がったネーミング。結論から言うと、この日のセットリストは全17曲で、そのちょうど真ん中、分岐となる9曲目に「百年経ったら」が配置されていた。つまり、大雑把にいうとそこを境に「現在」と「100年後」といったところだろうか。

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まず前半戦から振り返る。BGMが途絶えると即座に場内が暗転。オープニングSEも無し、真っ暗なステージにピンスポットが当たると、秋田の朗読が始まる。「収束」だ。そこから「季節は次々死んでいく」へと繋ぎ、『東京喰種√a』としても多くの耳に届いたこの楽曲を凛と歌い上げる。冒頭の2曲以外には「タクシードライバー」「スピードと摩擦」が『世界収束二一一六』から披露され、その合間に静謐で優しいサウンドで包む「雨男」や、初期の作品からの朗読風楽曲「コンビニ傘」などが織り込まれていく。

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いつものように、ステージには紗幕が貼られ、そこに映像やタイポグラフィで楽曲ごとに多彩な視覚的演出が投影されるのだが、まるで3Dかのように立体的かつ球状のモチーフが映ったり、夜の首都高を疾走する車窓からの映像で引き込んだり、淡くも鮮やかなアニメーションが流れたりと、楽曲ごとの世界に没入させるための仕掛けはますますクオリティが上がっている。レーザーや照明での演出も然り。バンドの演奏自体はシャープで、歪んだ音の壁をぶつけてくるような迫力あるサウンドと、一つひとつの音の粒を置いていくような繊細さとを巧みに使い分けている。秋田のボーカルは以前からの噛みつき叩きつける絶唱にくわえて、静かな熱を湛えるような抑えた歌声に、より迫力を増しているように感じた。

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「百年経ったら」のアウトロで音が消える瞬間、映像内の時計の針が0時から一つ時を刻み、ライヴ後半へ。ここでも最新作からの楽曲の合間に旧来の楽曲が挟まっている。「スターライト」で力強く前を向く意思を歌い上げたかと思えば、独白のような楽曲「しらふ」では救いのない苛立ちや憤りが辛辣な言葉の数々となって吐き出される。続く「美しき思い出」では柔らかな重低音とオルゴールのような鍵盤の調べに乗って、断片的な事象や想いが矛盾だらけのまま、そのまま並べられていく。

希望も絶望もあって矛盾だらけ。いずれも製作された時期やアウトプットされた形は違えど、これらの楽曲はみな人生そのものを歌っている。......そうか、これらはみな秋田の人生であると同時に、観る者全ての人生でもあるのだ。僕らは彼が晒け出す胸の内を観ながら、己の胸の内と対峙していた。だから自ずと姿勢を正してしまうのだ、そんなことを思う。

そうして最後は人生の終わりの瞬間を綴る「エンディングテーマ」で“ありがとう”と歌い、「それでも人生は美しいと言えるのか」と自問しながら「ライフイズビューティフル」を届け、「現在」と「100年後」を時折朗読を挟みながらコンセプチュアルに描いたライヴ、“世界最後の一人の生の物語”は幕を下ろした。

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人生は美しい、秋田は『世界収束二一一六』でそんな曲を作り、この日それを歌った。それは決して、彼の人生が希望に満ちたものになった!ということではないだろう。だが、音楽を続けるうちに彼の中に訪れた変化も事実としてあるはずだ。終盤に一度だけあったMC。そこで秋田はこう言った。
「感慨深いです。アルバムを作っている時は『世界終われ』とか思っていたんですけど......こうしてツアーをまわってキレイなものを一杯もらったんで、青森に帰って、また形にしたいと思います」
“キレイなもの”と表現した何か。それこそが彼をして「ライフイズビューティフル」と言わしめたものであり、また新たな形となって僕らの前に現れるものに違いない。そのとき彼が見せる胸の内はどんな形をしていて、僕らは己の内側に何を見るのだろう。


レポート・文=風間大洋

セットリスト
5th anniversary live tour 2016 世界分岐二〇一六 2016.3.6 中野サンプラザ

1. 収束
2. 季節は次々死んでいく
3. タクシードライバー
4. 性善説
5. 雨男
6. ラブソング
7. スピードと摩擦
8. コンビニ傘
9. 百年経ったら
10. 花は誰かの死体に咲く
11. 夏を待っていました
12. スターライト
13. しらふ
14. 美しき思い出
15. 多数決
16. エンディングテーマ
17. ライフイズビューティフル
 

 

ライヴ情報
amazarashi LIVE 360°
 
2016年10月15日(土)幕張メッセ イベントホール
open:16:00 start:17:00
:前売 ¥6000(税込)当日¥7000(税込)
(ソールドアウトの場合は当日券販売ナシ)
券種:全席指定
問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999
 
一般発売
2016年4月2日(土)12:00~

※「公演当日は、コンサート収録を行う可能性があります。お客様がカメラに写り込む事があるかもしれませんので、予めご了承ください。」
 
オリジナルグッズオフィシャルweb shop
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