安田謙一郎(チェロ) 名匠がたどり着いた深い響きの宇宙

2016.3.20
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クラシック

安田謙一郎 (Photo:Yoichiro Nishimura)

 国際的なトップ・プレイヤーとして疾走し続け、70歳を越えて、いっそう精力的に活動へ取り組むチェロの安田謙一郎が、自身の師でもあるガスパール・カサドらの作品を紡いだ新アルバム『コダーイ&カサド:無伴奏チェロ作品集』(マイスター・ミュージック)を発表する。また、「東京・春・音楽祭」では、2夜にわたって、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲演奏を敢行。巨匠の音楽への熱い思いは、とどまるところを知らない。

 新アルバムで、いきなり耳を奪う、コダーイのソナタの深い音色と、迸る感情の波。安田が「あらゆる面で支えて下さった、かけがえのない恩師」と表現するカサドの組曲における、響きの宇宙。さらに、カサドの師でもある、偉大なチェロの先達カザルスの愛奏曲で、安田自ら編曲した「鳥の歌」に込めた、平和への思い。無伴奏だからこそ、より収斂された形で奏者の思いが伝わる。

 そして、彼が長年、バッハと並んで対峙して来たのが、ベートーヴェン。今回は、40歳近くも年齢の離れたピアノの俊英・津田裕也をパートナーに、深遠な傑作の森に挑む。まず第1夜ではソナタ第1・4・5番に、ヘンデル「『ユダ・マカベウス』の〈見よ勇者は帰る〉の主題による12の変奏曲」を。さらに、第2夜ではソナタ第2・3番に、「モーツァルト《魔笛》より〈恋を知る男たちは〉の主題による7の変奏曲」と、同じく「〈恋人か女房か〉の主題による12の変奏曲」を組み合わせる。

 また、ピアノの井出久美子と共に、5月には鎌倉教会で公演。大正15年創建の堂内に、シューマンやドビュッシーの調べを響かせる。

文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)


 
東京・春・音楽祭 —東京のオペラの森2016— 安田謙一郎 ベートーヴェンを弾く
3/21(月・休)15:00、4/11(月)19:00
上野学園 石橋メモリアルホール
問合せ:東京・春・音楽祭サービス03-3322-9966
http://www.tokyo-harusai.com

 
安田謙一郎 チェロ・リサイタル
5/15(日)14:00
鎌倉教会
問合せ:鎌倉教会0467-22-1346

 
CD
『コダーイ&カサド:無伴奏チェロ作品集』
マイスター・ミュージック
MM-3071
¥3000+税
3/25(金)発売