Crystal Kayにしか歌えないJ-POP、新曲「サクラ」に溢れる説得力と深みの理由
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Crystal Kay
久しぶりに会った彼女はとてつもなく明るくてエネルギッシュでカッコ可愛くて、周囲をあたたかくするShineなハッピーオーラを放つ素敵な女性に成長していた。彼女の名前はCrystal Kay。2015年、2年間の単身渡米から日本に帰国してCrystal Kayの第2章をスタートさせたいま、彼女は新曲「サクラ」について、笑顔で堂々と「私にしか歌えないJ-POPがある」と言い切る。そういえるまでに彼女が超えなければならなかった幼少時代からのコンプレックスや抱えていた様々な葛藤を、洗いざらい語ってくれた。それらの人生すべてが刻まれて、さらに深みと説得力を増した“歌”がいまのCrystal Kayにはある。
私にしか歌えないJ-POPがある。いま私が歌うのはコレだなと思いました。
――もう30歳というだけで驚きなんですけど。どうですか? 30歳は。
楽しそう(笑顔)。まだ誕生日を迎えてからちょっとしか経ってないんですけど。ここからまたさらに深い感じで自分磨きをして、自分がもっと“先頭に立つ”という想いを強くしていかなきゃいけないんだろうなということを感じましたね。周りに年下も増えてきてるから、そういう年下の人たちにとってのいいロールモデルにならなきゃいけないなと、すごく感じます。周りの方からも、キャリアが長い分そういうことを期待されてるなというのを感じるから、それをプレゼンテーションできる自分でいなきゃなと。
――では、そんなクリちゃんのニューシングルについて。表題曲のタイトルはカタカナで「サクラ」。
桜をタイトルにした曲はいっぱいあると思うんですけど、カタカナの“サクラ”はなかったみたいで、これでいこう、と。
――今作はメロディも和っぽくて、久々にCrystal KayのJ-POPがきた! とテンションが上がりました。
嬉しい(笑顔)。今回は“ザ・J-POP”な曲ですよね。これ、じつは去年の2月にレコーディングした曲なんですよ。
――アルバム『Shine』(2015年12月発売)後ではなくて?
はい。ニューヨークから帰って来て、1発目のレコーディングがこれだったんです。2年間ニューヨークに行ってて、その間にいろいろ考えることがあって。“私にしか歌えないJ-POPがあるな”と思っていたところに、この曲があったから。このJ-POPさが余計新鮮で、すごく嬉しかった。いま私が歌うのはコレだなと思いましたね。
――まず“私にしか歌えないJ-POPがある”という考えに至った経緯を教えてもらえますか?
私はデビュー当時、R&Bとかアンダーグラウンドなサウンドから始まったんですね。自分も若いから“洋楽っぽいのがカッコイイ”というのがあったんですよ。その流れから、「恋おち」(「恋におちたら」2005年5月発売)が出てたんですけど。
――あそこでブレイクしましたよね。
自分ではいまやっと好きになれた感じなんです、「恋おち」を。
――えぇーー!! どういうこと?
フハハ(笑)。それまでR&B色が強いものをやってたのに、いきなりすっごいJ-POPなキラキラした曲を歌ったら、聴いてくれるファン層が広がったじゃないですか?
――いっきにお茶の間に、ね。
だから、自分的にはそれ以降、例えばアルバムを作るとなるとそれまでのファンとそこからのファン、うまくバランスをとったりしなきゃいけない……。でも自分は洋楽っぽいサウンドがやりたいのにって、複雑だったんですよ。「恋おち」がヒットした後は、レコード会社も当然それを追いかけるような曲を求めるから、自分らしさとJ-POPさをどういう風にミックスしたらいいんだろうって、自分のなかでずっと葛藤が続いてたんです。
――あー、そうだっんですね。
それで、『VIVID』というアルバムでダンスに振り切ったものを作ったあと、2013年にニューヨークに行ったんですけど。
――そこでちょっといいですか? それまでの日本での音楽活動を止めて、よく単身で乗り込んだなと思うんですよね。
乗り込んだときは本当にゼロでしたからね。日本でのキャリアなんて関係ない、向こうではなにもないシンガーですよ。でも、こっちにいては感じられなかったことも感じられましたからね。自分のアイデンティティーとか、自分には全然足りないものとか。まず自分は、アピール力がまったくないんだなというのをすごく感じたんですよ。
――自己アピール力ということ?
そう。日本だと、そんなに“自分は他の人とこれが違う”というのをアピールしたりしないじゃないですか。アメリカはいろんな人種がいて、そのなかで“なにが君はできるんだい?”という感じだから、ガツガツした人を求めるんです。でも、自分は日本で生まれ育ってるから、そういうときにどう自分をアピールすればいいのか、そのスキルがまったくなくて。チャンスかもしないというときにうまく自己アピールができない。そういう場面が何度もあったんです。
――思いきり日本育ちが出ちゃった、と。
そう。誰かのマネージャーとか大事な人に会わせてもらったときに“私はこうでこうなんです!”っていうのが本当にできなくて。逆にそれがお高くとまってるように思われたりしてしまうんですよ。
――日本では控え目といわれる態度が。
特にニューヨークは自分をしっかり持ってないといけない場所なんですよね。みんな自分のやりたいことがしっかりあって、夢を持って集まってきているから、そこでは“自分はこれこれこうでこういう人なんだ”というものがないと置いていかれちゃうんです。そういうのを感じながらアメリカに2年いて。でも自分は日本でスタートして、日本でのキャリアがある訳だから、日本を捨てることは絶対にしちゃいけない。戻らなきゃいけないと思ったときに、何かを形にしてから日本に帰りたいと思ってライヴをやったんです。
――えっ、いきなりニューヨークで?
はい(笑顔)。私と、現地で紹介してもらったギタリストと二人で、アコースティックセットでライヴをやったんですけど。ライヴは決めたもののお客さんも来るかどうか分からないから、インスタで一生懸命宣伝して(笑)。そうしたらソールドアウトしたんです。
――すごじゃないですか!
びっくりしました(微笑)。ちっちゃい場所だったんですけど、すぐにヴェニュー(会場)から連絡があって“ソールドしたから次の日も出て下さい”っていわれて2daysやったんです。初めての日本以外でのライヴだったから、すっごい緊張してて。何を歌ったらいいのか、どういう人が来るのかも分からないけど、とにかく余計なことは考えないで“自分の歌を聴いてもらう”っていう素の自分で挑んだんですね。そうしたらすっごく楽しくて、お客さんもめっちゃ盛り上がってくれて。自分に自信がついたんですよ。
――そこではクリちゃんのオリジナル曲も歌ったの?
「恋おち」とか「Superman」も歌ったし。あとは向こうにいるときに60曲以上作ったから、そのなかから4曲ぐらいと、あとはカバーを3曲。そうしたら超盛り上がってくれて。“なんだ、自分やればできるじゃん!”って、すごく自信がついたんです。その後、日本に戻ってきて。戻ってすぐに『FNS歌謡祭』に出たんですけど、そこで歌ったときに“クリ、いままでと歌が違うよ”“芯が出てきたね”といわれたんですね。気づいたら、それまでずっと自分にかかってた靄みたいなものが取れた。以前からずっと“声に雲がかかってる”とウチの母にはいわていたんです。たぶんそれは、自分のコンプレックスとかアイデンティティーに対するモヤモヤがあったからだと思うんです。それが、ニューヨークに行って取れたんだと思う。
――もしかしてクリちゃんはニューヨークに行くまで、自分に自信があまりなかったの?
なかったなかった。たぶん、ちっちゃいときから知らないうちにコンプレックスができてたんだと思う。韓国人と黒人のハーフは、私が知ってる先輩に1人いたぐらいで、ほとんどいなかったんですよね。黒人と日本人か、白人と日本人とか、日本人とのハーフばかりで。じゃあ私は韓国人なのかな? とか。そういうアイデンティティーのコンプレックスがあって。それが、歌を歌い始めて人前に出ることで、さらに自分の内側の方で大きくなっていったんだと思う。“日本の人と違うんだ”ということを、当時の自分は武器だと思えなかった。マジョリティーのなかのマイノリティーっていう風に考えてたんです。それを、ニューヨークに行って初めて、マイノリティーだらけなのに、それぞれ自分自身をちゃんと持ってて“ああ、自分もこれでいいんだ”って思えたんです。向こうの友達とかは“なになに、アメリカの血が入って韓国の血が入って、日本で生まれ育って、日本語でも英語でも歌えるなんて、そんな素晴らしいことないよ! もっと誇りに思った方がいいよ”みたいな(笑)。そういうアングルで海外の人は見るから“あ、いいんだこれで”って、どんどん思うようになって。そこから“韓国人と黒人のハーフでJ-POP歌ってるのって私しかいないかも!!”と思うようになり(笑)。それで、向こうでライヴをやったことで、さらに自信がついたから“私しか歌えない”になった。そういう経緯での“私しか歌えないJ-POP”というお話でした。
――そんなディープな背景があったとは。でも、以前はこういうバックグラウンドをインタビューで話してくれたことはなかったじゃないですか? それは…。
自分のなかで、まだすっきりしてなかったからでしょうね。モヤモヤが。
――今日こうしてお話しを聞いて、やっとこちらも靄が晴れました(微笑)。
だから、本当に行ってよかったなと思って。
――そういうことを経て、靄が晴れた状態で歌った記念べきJ-POP第1弾がこの「サクラ」という訳ですね。
そうですね。久しぶりに日本語で歌ったから、最初すっごい緊張してたんですよ。日本は歌詞をすごく大事にする文化だから、うまくそれを伝える歌が歌えるのかなって緊張しながら歌ってました。
――この曲はせつないラブソングだけれども、クリちゃんの歌のアプローチからはこの曲に希望ある未来を与えている気がしたんですよ。
歌詞はパッと見るとせつない感じなんですけど、私は恋愛というよりも、出会いとして捉えていて。若かった頃の自分に優しく歌ってる感じで歌いました。10代の頃は“一生続くよね”って感覚で恋愛するじゃないですか? でも年を重ねると、いろんな現実があって。
――歌詞にあるように、恋愛も“永遠はないんだ”ということを悟りますよね。
そして、それぞれ違う生き方、道を歩む訳ですが。でもそれは別に悪いことではないし。そういうものをいろいろ経験して人は大人になっていく。
――そういう大人の視点が入った曲なんですよね。この曲は。
だから、せつない曲だけど悲しい気持ちではなく、ポジティブな、前向きな気持ちを込めて歌ってます。
――そういう歌詞や歌のアプローチも含め、30歳のいまだからこそ歌える桜ソングという気がしますね。あと、気になったのはこのアーティスト写のピンク色のワンピース。めちゃくちゃ似合ってますね。
うはははっ(笑)。結構評判いいんですよ。
――こんなラブリーなクリちゃん初めて見た!! ここも靄が晴れて振り切ってる。
ねっ。初めてこんな女っぽい衣装着たからね(笑)。いままではキメてる写真が多かったですから。
――この衣装を着て「サクラ」を歌うクリちゃんを見てみたですね。
これ、結構ミニですよ? でも、どこかで着てもいいかもね(微笑)。
――ではカップリング曲についても聞かせて下さい。2曲目の「Waiting For You」はクリちゃんが作詞・作曲に携わったナンバーで、こちらは軽快なエールソングに仕上がっています。
こっちは「サクラ」よりもヤングな感じ。「サクラ」よりもビートがあって軽快に前に進む感じで、卒業する人たちにエールを送った曲です。エールを届けるところは、アルバムの延長線ですね。『Shine』を作ったとき、人の背中を押せるものにしようと思って作ったので。そこは最近のテーマなんです。人の背中を押せる歌を歌うというのが。
――なぜそういうものを歌いたいと思ったんだろう?
自分は25歳ぐらいでクライシスみたいなものを1回感じて。それで、28、29歳ぐらいのときにまた“このままでいいのかな?”“もっとステップアップしたいんだけどどうしたらいいのか分からない”みたいなものがやってきて。それは、私だけじゃなくて、キャリアとか違う人と喋っていても、同世代はみんな同じようなこと抱えてて、グレーゾーンにいたんですよね。それで、アルバムを作るときに、人はみんなこういうところを通るんだから、聴いてる人を勇気づけられる一枚にしようと思ったんです。
――それで、ポジティブな言葉を綴った歌を歌った。
それと、“一人じゃないよ”ということ。私も同じことを感じてるんだよ、というのを伝えたかった。
――なるほど。では3曲目の「Forever Young」。これはネイチャーラボ「LITS」のCMソングとしてオンエアされている曲ですね。
CMのお話を先に頂いて、Crystal Kayにこの曲を歌って欲しいとオファーされたんです。この曲はビヨンセやJay.Zもカバーしてる曲だから、まさか自分が歌うとは思ってませんでした。しかも、それを日本語でというのが新鮮で。日本語の歌詞がすごくいいんですよね。こういう形でこの曲をカバーできたのが嬉しかったです。
――このカバーこそ、クリちゃんがこうして重ねてきた人生が、歌の深みとなってにじみ出てくるんですよね。だから、余計に日本語の歌詞が染みた。こういう歌をクリちゃんが歌うようになったんだなと思って感動しました。
やったー!(笑顔) 本当にいい曲だし、日本語の歌詞がオリジナルの歌詞から離れてなくてすごくいいんですよ。これはライヴでも歌いたいですね。CMもすごく素敵なので、絶対に見て欲しい!
――靄が晴れた後のクリちゃんが放つShineなハッピーオーラに吸い寄せられるように、憧れだった安室奈美恵さんとのコラボや「Forever Young」のCMのお話などが次々とやってきているこの第2期Crystal Kayの流れ、ちょっとヤバくないですか? いま楽しくてしょうがないでしょう、歌うのが。
歌ってるときのパフォーマンスがすっごい楽しい。いままで自分のために歌ってるという感じだったものから、誰かのために歌うものになってきてます。だから、歌しかないです、私には。これからいろんな縁を感じながら、それを歌で返していきたいですね。
――では最後に、Crystal Kayの人生に欠かせないSPICEを教えてください。
歌しかないですかね。なので、これからもさらに自分の歌に磨きをかけて、もっと多くの人に届く、刺さる、背中を押せるものを歌っていくので応援して下さい!
――もちろん! ところで、随分前に『ビリーズブートキャンプ』が流行った当時、みんなが飽きた後も私は止めないといって続けていたクリちゃんですが。いまは?
うはははっ(大爆笑)。もう全然やってないですね。いまは、行けるときは週3で事務所のジムに行ってトレーニングしてます。あと“これだ”と思ったのは食事。炭水化物を摂るときは昼間に食べて、夜は摂らない。太りたかったら簡単に太れてしまう体質なので、アメリカのお父さん側はみんな大きいから(笑)。だから、本当に日本で生まれてよかった(笑)。
インタビュー・文=東條祥恵
2016年3月23日(水)発売
【初回限定盤】(CD+DVD)UICV-9163 ¥1,700円+税)
Crystal Kay「サクラ」写初回
Crystal Kay「サクラ」通常盤
1. サクラ
2. Waiting For You
3. Forever Young
4. サクラ (Instrumental)
<DVD収録内容>
サクラ
○Music Video
○Drama Video
○Video Making