沢田研二主演の『音楽劇 悪名』で再びお絹を演じる! いしのようこインタビュー
2016.3.22
インタビュー
舞台
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いしのようこ
沢田研二主演で2014年に初演、好評を博した『音楽劇 悪名』がお馴染みのメンバーで帰ってくる。
この舞台は、勝新太郎の映画で有名な八尾の朝吉と弟分の清次が繰り広げる任侠の世界をもとに、マキノノゾミが『音楽劇 悪名』として書き下ろしたもので、朝吉と哀しく別れた女房のお絹の再会のドラマを、笑いあり、涙あり、歌ありの人情エンターテイメントに仕上げてある。
今回の再演で、初演に続いて別れた妻お絹役を演じるのがいしのようこ。この舞台への想いを話してもらった演劇ぶっく4月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。
この舞台は、勝新太郎の映画で有名な八尾の朝吉と弟分の清次が繰り広げる任侠の世界をもとに、マキノノゾミが『音楽劇 悪名』として書き下ろしたもので、朝吉と哀しく別れた女房のお絹の再会のドラマを、笑いあり、涙あり、歌ありの人情エンターテイメントに仕上げてある。
今回の再演で、初演に続いて別れた妻お絹役を演じるのがいしのようこ。この舞台への想いを話してもらった演劇ぶっく4月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。
沢田さんと一緒に歌うなんて、無理無理!と
──初演の話から伺いますが、この作品のオファーが来た時はいかがでした?
びっくりしました。「どうして? 誰から?」と。沢田(研二)さんからと聞いて、昔テレビの番組などではお会いしたことはあったのですが、映画とかドラマでご一緒した経験がなかったものですから、「沢田さん誰かと間違えているんじゃないの?」と言ったくらいで(笑)。それに、歌があるということも聞いて「え、沢田さんと? それはご迷惑かけるから」と、ずっと「無理無理!」とお断りしていたんですけど、沢田さんが「全然構わないから」とおっしゃってくださって。歌の仕事は避けて通っていましたから、ものすごく勇気が要りましたけど、もうこうなったら沢田さんの胸をお借りしようとお受けしました。
──お芝居の中での歌ということで、多少入りやすかったのでは?
逆に、最初はお芝居から歌になっていくということへの壁がありました。ただ、実際に出来上がったら、ダンスのシーンもありますし、普通のお芝居とは違っていて、それに生バンドが入っているということが、ものすごく大きかったです。後ろでバンドの方たちが芝居の流れを見ていてくださって、その時の台詞のテンポ感とか感じながら、ここというところにポンと最初の音をくれるんです。ですからこちらも「あ、今日ちょっとリズムが速めだ」と思ったり。沢田さんだからこその舞台で、沢田さんはこういう舞台を作りたくてずっと続けていらしたんだなと、よくわかりました。
お絹が素敵でなかったら朝吉さんの男が下がる
──この『悪名』の物語ですが、朝吉とお絹さんの関係は波乱万丈で切ないですね。
お絹という人は、一見儚げで繊細な感じはするんですけど、実は「あぁ強いな、逞しいな」と思わせられるんです。運命に翻弄されますし、自分の思うところではないところにいつも漂着してしまう。その中でもがきながらも生きていく。そういう図太さのようなものがあると同時に、思わず手を差し出さずにいられない、女性としての魅力をどこか残していて、強さと儚さというのは相反するものですが、それを2つとも持っていないといけないなと思いました。
──いしのさんにもそれがあるから、沢田さんはキャスティングされたのでしょうね。
というより、どんな女性も逞しくもあり儚げでもあって。女性が持っているそういう女性性みたいなもの、そのエッセンスをお絹という人にうまく乗せられたら、一番素敵なお絹さんになるのかなと。やはりこの舞台を観に来てくださるのは女性のお客様が多いと思いますから、お絹が「何この人?」と思われないようにするのは、とても大事なことなので。沢田さんの朝吉さんにも愛され、他の男性にも愛されるという、すごくおいしい役どころだからこそ、絶対嫌味になってはいけないし、お客様にも愛してもらえる女性でなければいけない。「なんでこんな女を」と思われたら、朝吉さんの男が下がると、そこはとても意識していました。
演じた女性たちのエッセンスが自分の中に
──いしのさんにとって、演じる面白さはどんなところですか?
一瞬、本当に一瞬なのですが、役のその人として生きる瞬間があるんです。お絹だったらお絹として生きている瞬間が、確かにあって、それがすごく楽しいのと、そのお絹のエッセンスみたいなものは、ほんの小指の先ほどかもしれないのですが、自分の中に残るんです。そういうふうに沢山の魅力的な女性のエッセンスをいただいて、自分自身を肥やしていくというか、色々な女性に教えていただくんです。それは自分では思いもつかないようなちょっとした仕草だったり、ちょっとした言葉だったり、「なんて可愛い仕草をするんだこの人」って思うんです。そういうものが、うまくは使いこなせないのですが、ちょっとずつ、ちょっとずつ自分の中に貯まっていく。とても楽しいなと思います。
──まさに役者さんならではの楽しさですね。最後にお客様へのメッセージをぜひ。
この作品は戦後の混乱期が舞台になっていて、粗削りで全然繊細じゃない人たち、一人ひとりが太い感じの人たちが出てきます。そして、後先とかそういうことを考えず、それぞれの情熱や想いを貫いていきます。そういう人間たちの「生きるんだ!」というエネルギーとか輝きが詰まっています。その熱さや匂いを感じていただければ嬉しいです。
いしのようこ○兵庫県出身。アイドル歌手としてデビュー。現在は女優・タレントとして、バラエティやドラマ、映画、舞台と幅広く活躍中。最近の主な出演作品は、ドラマ『銀二貫』『ヒガンバナ~女たちの犯罪ファイル』『カシオペア スーパーひたち殺人事件』『赤と黒のゲキジョー』『デート』『京都南署鑑識ファイル』、映画『怪談新耳袋・異形』『ソフトボーイ』、舞台『志村魂』『黒いハンカチーフ』など。
〈公演情報〉
音楽劇
『悪名 The Badboys Return』
作・演出◇マキノノゾミ(「悪名」/原作:今東光 脚色:依田義賢より)
音楽◇coba
振付◇南流石
振付◇南流石
出演◇沢田研二 いしのようこ/野田晋市 若杉宏二 すわ親治 有馬自由 森下じんせい 木下政治 細見大輔 小椋あずき 宴堂裕子 千田訓子/山崎イサオ 加納幸和
●3/26◎海老名市文化会館
(そのほか大阪、静岡、群馬、福岡、愛知)
●5/9~29◎紀伊國屋サザンシアター
〈料金〉S席¥8,500 A席¥6,300 B席¥4,200(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京・神奈川公演 ココロ公演事業部 03-3355-7393(12:00~17:00)
【取材・文/宮田華子 撮影/岩田えり】