AKi ロングインタビュー【前編】音楽的ルーツ、表現者としてのマインドの根幹に迫る

2016.3.31
インタビュー
音楽

AKi/2016.3.18『M.A.D』撮影=江隈麗志

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シドのベーシスト・明希が、AKiとして2015年1月にアルバム『ARISE』でソロアーティストとしての活動をスタート。同年12月にミニアルバム『EPHEMERAL』をリリースし、今春にはMUCCとのダブルヘッドライナーツアー『M.A.D』を廻り、アルバムで築いたものがライヴを通して育っていることを実感しているようだ。5月1日(日)地元・神奈川県のThunder Snake ATSUGIからスタートするソロ初の全国ツアー『HEADZ UP & DO IT!』を前に、AKiのロングインタビューを敢行、前編・後編の2回にわたりお届けする。前編となる今回は【音楽編】とし、彼の音楽的ルーツから表現者としてのマインドの根幹に迫る。


「シドのフィルターを抜きにして、自分の音楽がどんだけのものなのか? 何が作れるのか、自分が知りたかった」

――まずはAKiさんの音楽観を伺いたいと思います。原体験としての音楽との出会いって、いつごろでした? 

もともと実家にピアノがあったのと、父親がクラシック好きだったので、生まれたときから音楽は自然と傍にあったんですね。ホントに小さいときから鍵盤をポンポン触ってたらしいんですけど、ちゃんと始めたのは小学校のとき。鍵盤ハーモニカが下手すぎて、親にピアノを習わされたんですよ。

――鍵盤ハーモニカって、あの小学校でやる?

そうです。「きらきら星」を1フレーズごとに順番に弾かされたら、何もできなくて。 それを親に話したらピアノを習うことになったんですけど、ついた先生がすごく良い方で、どんどん音楽を好きになっていったんです。先生との会話だったり、教室の空気感だったりが単純に楽しくて、もちろん好きな曲や弾きたい曲が弾けるようになることも嬉しくて。やっぱり、出来ないことが出来るようになると楽しいじゃないですか。他にもいろんな習い事をさせられたのに、おかげでピアノだけは続いたっていう(笑)。

――ただ、出来ないことが出来るようになるって、勉強や他の習い事でも同じですよね。

そうなんですけど、ある程度進むと簡単なものなら両手で弾けるようになって。例えば当時流行っていた歌とかゲーム音楽とかの簡単なピアノバージョンだとかを弾いて、原曲では聴こえてこないピアノの響きが自分の指から流れてくることに、すごく感動したんです。自分の知ってる曲が新たな音楽になるっていう。簡単にいうと“再現される”ことが楽しかったのかな? なのでバンドに目覚める前は、ずーっとピアノを弾いていきたいなと思ってました。周りの男子から「女っぽい」とか「ピアノなんか弾いて気持ち悪い」とかってからかわれても気にしなかったし。でも、近所にすごくピアノが上手い女の子がいて、どう足掻いてもその子に勝てなかったんですね。それでピアニストの道は挫折しました。

――その再現する喜びって、ベースを始めたときにもありました?

ありましたね! だから俺、コピーがすごく好きだったんですよ。オリジナル曲を作りだしたのも遅くて、自分ひとりで作り始めたのは二十歳くらいじゃないかな? バンドをやるからにはオリジナル曲を“作らなきゃいけない”から作ってた感じで、あんまり“楽しい”とも思わなかったですね。それより好きなバンドのコピーしてたほうが楽しいし。でも、きっと良い曲を作ってればどこかの有名プロデューサーが観に来て、東京に連れて行ってくれるんだろう……って漠然と夢見てたけど、まぁ“ウチの地元誰も来ねぇな!”みたいな(笑)。

AKi/2016.3.18『M.A.D』撮影=江隈麗志

音楽の道を選んだのは、素の自分に対するコンプレックスがあったから!?

――そこまでしてバンドを続けたかった理由というか、当時のAKiさんにとって音楽とは、どんな存在だったんでしょう?

もう、純粋に気分を高揚させてくれるものだったり、音だけじゃなくルックスも含めて、なりたい自分の姿であり、憧れの人たちですね。特にロックに関していえば。最初の入り口はテレビで観たX(JAPAN)だったんですけど、最初は“なんだこの人達は!?”って、ちょっと怖くて、でも覗いてみたいっていう変な狭間にいたんですよ。そこからLUNA SEAとバッタリ出会い、L’Arc~en~CielにGLAY、黒夢とかにどっぷりハマッて。今みたいにネットで簡単に聴ける時代じゃなかったから、CDを買いに行って雑誌を見て、“一人宝探し”みたいな感じでした。

――となると、彼らに惹かれたのは単に音楽の激しさだけじゃなく……。

ヴィジュアル込みですね。バンド特有のダークというか、ちょっと不良っぽい雰囲気にも憧れたし。たぶん変身願望が強かったので、やっぱり“化ける”っていうところに惹かれたんですよ。

――変身願望が強かったということは、もしや素の自分に対しては何かしらコンプレックスがあった?

ありました。もう、コンプレックスだらけでしたよ! 例えばスポーツできる子、勉強できる子、やたら話が上手い子とかっていうクラスで目立ってる子に対して、すごく憧れが強かったです。そういう何か特化して得意なものが、俺には何もなかったんですね。で、ずっと続けてた音楽だけは、たぶん人よりちょっとできたから、やめたくなかったんです。ピアノも結局バンドを始めるまで続けてましたし、家に帰ったら自分の好きなものを並べて、こうなりたい、ああなりたいって想像を膨らませてました。

――つまり当時のAKiさんにとって音楽とは、普段は表に出せない自分の理想だったり、憧れを投影できる場所だったんですね。

うん。まさに。

――そんな学生時代の“憧れ”が“現実”になってしまった今、音楽に対する想いは変わりました?

今の今と聞かれると、むしろ高校生のときに戻ったような感じですね。シドもありながら自分のソロも始まったばかりで、あのときの“いっぱい曲作って、いっぱい良いライヴやって頑張ろう!”っていう気持ちが、また訪れてる感じ。ベースを持ちながら歌って、歌詞を書いて、歌なんてド素人だから頑張って練習して。全部が初めてのことなんで、ホントにゼロから作り上げていってる感があるんですね。今、廻ってる『M.A.D』ツアーでも割とセッションの時間を長く取っていて、そこで俺もMUCCのメンバーも音楽に目覚めたころに好きだった曲をやってるんです。そうやってみんなでワイワイやるのも、あのころに戻ったみたいな感覚なんですよ。

――昨年1月に1stアルバムの『ARISE』を、12月にソロ第2弾となるミニアルバム『EPHEMERAL』をリリースして、年明けからMUCCとのカップリングツアーを敢行中ですが(この取材は3月中旬)、ベースを弾きながら歌うというのは大変じゃありません?

大変でした! でも、最終的なアレンジを決める前に、一回ちゃんと自分で歌いながら弾いているので、できないことは入れてないんですよ。あとは弾きながら歌うっていうこと自体に慣れて、モノにしていくだけ。その途上での葛藤は今もあるけれど、シドでベースを弾くときと気持ちはあんまり変わってないですね。

――では、そんな葛藤と初挑戦だらけのソロを始めた動機って、そもそも何だったんでしょう?

自分の音楽というものと、ちゃんと向き合ってみたかったんですよね。シドを10年以上やって、いろんなことを経験させてもらって、キャリアも積んできて。マオくんが歌うなら、Shinjiが弾くなら、ゆうやが叩くなら……っていうシドのフィルターを抜きにして、今、俺一人だったら何が出てくるんだろう? っていうのを見てみたかったんです。だから第1弾の『ARISE』では、自分の中にある普段使ってない引き出しも全部開けて、その中に入ってるものをバーッと全部出すだけ出して。パッと振り向いたら山盛りになっていたものを紐解いて11曲作った結果、「あ、俺ってなんも考えないで作ったら、こうなるんだ」っていうものができたんですよね。そうやって自分で、自分の声で、自分の歌詞で、自分のアレンジで曲を1から100まで作ってみたかった。自分の音楽がどんだけのものなのか? っていうのを確かめたくて、今、やらせてもらってます。

――“これがやりたい!”という欲求のもとにというよりは、自分でわからないから確かめてみようっていうことですね。

あ、そうそう。その通りです。何が作れるのか、自分が知りたかった。もちろん“やりたい”っていう願望は、ちゃんとソコに存在しているんですよ。極論、AKiもシドもやりたいからやっていることに変わりはないけれど、そのキッカケをちゃんと自分で作ってみたいってことで。わかりやすくいうと、アウトプットが一つ増えた感じかな? 普段シドに使ってるアウトプットがちゃんとあって、それとは別に作ったアウトプットがAKiであるっていう。

――そこでアウトプットしたものを確認してみてAKiの音楽、つまり“自分の音楽”って、どんなものに思えました?

言葉でいうのは難しいんですけど……なんか、音楽に目覚めた17歳のときに好きだったものを作れた気がしたんですよね。俺、こういう曲が好きでバンドを始めたなとか、こういうロックを聴いてトキめいたなとか。ガキんちょのときに“おお、バンドかっこいい!”って衝撃を受けたような、熱を帯びた曲。自分にとって“AKi”という音楽は、やっぱりソコに集約されているんだなって。

――ある意味、原点回帰?

うん、そうですね。それでしかないってことが、よくわかった。

――プロになって年月が経って、憧れを実現できてもなお、自分が求めている音楽のカッコよさの根本は変わっていないということですね。

ソコは自分でもすごく感じました。“ああ、俺、なんも変わってないんだな”って。歌詞に関しても曲が呼び起こす言葉をズラッと出なくなるまで書いて、パズルを組むように繋げていってるんですけど、それを見返しても音楽が俺に与えてくれたもの……憧れだとか、解き放って、叫んで……っていうことを、やっぱり書きたいんだろうなぁって思いますね。

――『M.A.D』ツアーで度々演奏されている「The Inside War」(『EPHEMERAL』収録)なんて、まさしく叫び、解き放った先の未来へ進んでいこうという、非常にポジティヴなメッセージに溢れた曲ですもんね。ちなみに音源制作の際は、あらかじめライヴも想定して曲作りなさってます?

ああ、してます。特に今回の『EPHEMERAL』はそうですね。

――それは17歳のころ自分がトキめいたものをイメージしたとき、やはり音だけではなく映像が伴うから?

そうですね。音も映像もヴィジュアルも全部含めて、自分はあのころ憧れていた人になれているのかな? と。極論をいえば、会場のどこかに17歳のときの自分がいると思って毎回ライヴをやってるんですよ。その子が憧れてくれないとダメで、その子が目をキラキラしたまま帰ってくれれば大成功。ライヴの良し悪しの基準はソレだけなんです。

――すごくわかりやすいし、シンプルですね。

なんかね、例えば俺がステージでピアノ弾いても、17歳の自分がトキめかなきゃダメなんですよ。逆にロックでうるさければ良いってわけでもなく、そのときのライヴの中にある熱みたいなものが全てというか、そこに全部の真実がある。だから今の流行りとかは、俺、あんまり考えてないかもしれないです。もちろん常にアンテナは張ってるし、そのとき好きな音楽が自然と出てくることはあるんでしょうけど、意図してやったりはしない。とにかくライヴの中で巻き起こる熱を、ちゃんと帯びているのか冷めてしまっているのか? っていうことだけですね。俺が大事にしてるのは。

AKi/2016.3.18『M.A.D』撮影=江隈麗志

AKiがライヴをやるのは誰のためなのか?

――それでは熱を冷まさないために、ライヴのパフォーマンスにおいてAKiさんがモットーにしていることって何でしょう?

ギターとかボーカルに比べると、ベースって花型ではないじゃないですか。そのぶん“超やり用あんな!”って思うんです。ベースのイメージが地味であればあるほど、なんか“イケる!”って気がするんですよね。

――花形じゃないぶんイケるって、どういうことですか?

例えばスポーツの場合、有名校が勝っても当然だけど、無名チームが勝ち上がってきたらインパクト大きいじゃないですか。そういうマンガも俺、好きなんですよ。例えば『DEAR BOYS』とか、超天才児が超廃れたバスケ部に入って上りつめる話なんで。そういうことです。

――なるほど! 確かにAKiさんって初期からヴィジュアルも非常に華やかで、ベーシストとしては規格外な動きをしていましたもんね。

ああ。よくいわれてましたね。若いころは(笑)。

――ある種ギタリストっぽい派手な動きをしていたから、数多のバンドやベーシストの中でも突出して目立っていましたし。それが“やり用がある”っていうことなんでしょうか?

そういうところはあると思います。ベースでここまでやる人いないよね! っていう感じ。 まぁ、当時はガムシャラだっただけで、そこまで計算してやってたわけじゃないですけどね。ルーツは踏まえつつ、好きなものを全部入れてただけ。

――結果、どこにも無いオリジナルを作り上げていたのは立派ですよ。そのスタンスはソロでも変わらない?

変わってないです、全然。真ん中に立ったからって大人しくなるのは本物じゃないだろうし、マイクの前にいなきゃいけなくて窮屈だと感じることもない。おかげで動き過ぎて、歌が始まるまでにマイクの前に戻れないことがありますけどね(笑)。

――そうやって常に17歳の自分がトキめくようなライヴを……。

やっていきたいですね。初期衝動に目覚めたときの自分が夢中になれるライヴを。

――となると極端な話、AKiさんは自分のために音楽をやっている部分もあるんでしょうか?

そういうところもありますね。やっぱり音楽に目覚めた17歳のころの気持ちって、自分の中で本当に特別で。そのころの初期衝動っていうか、“好き”っていう気持ちが未だに自分の中にこびりついて離れないから、音楽をやっているんだろうなっていう気はするんです。でも、ここ何年かは、自分の音楽がライヴに来てくれる子たちの何かになってくれたらいいなとも思ってるんですよ。

――何かとは?

例えばライヴに来てくれた人からのファンレターとかを読むと、“日常のモヤモヤしたものを吐き出せました”とかっていう声も多いんです。そうやって人の心を浄化できる作用が俺の音楽にあるとしたら、それは嬉しいことだし。元気無かった人がライヴが終わったときに元気になって帰ってくれたり、我々のステージを観て“よし、明日から頑張ろう”って思ってくれれば、俺のやってる音楽にも意味があるのかなぁって。まぁ、ホントの根本にあるのは自分との対峙でしょうけど。

――自分との対峙の延長戦上に、リスナーに何らかの効果を及ぼすことができたら、それはそれで素敵なことですもんね。

うん。自分の音楽がそこにあって、来てくれる人がいて、その歌が誰かの何かになって……っていう、そのサイクルが永遠に続いていけばいいなっていうだけですね。自分のライヴのコンセプトというか目的はそこでしかない。だから一方通行なライヴにはしたくないんですよ。お互いにライヴし合うというか、俺たちは何があっても演奏を止めないんで、フロアはフロアで楽しくライヴしてくれるのが理想かなぁ。ステージは俺らの場所で、フロアはみんなの場所だから、みんなで考えて一つのライヴを自由に作り上げてほしい。ファンの子たちとそんな関係性になれたら一番嬉しいですね。

――ライヴを一緒に作っていきたい、そこで自分の音楽が聴く人の何かになってほしいという想いは、シドでもAKiでも何も変わるところがないと。

そうですね。

――ちなみに『M.A.D』ツアーでの、新作『EPHEMERAL』の反応はいかがですか?

徐々に育っていってる感じですね。そもそもライヴは2月に1回やったきりだったので、今回の『EPHEMERAL』はもちろん、1stの『ARISE』もライヴでは聴いたことのない人が大半だったと思うんですよ。ホントに下地が無い状態で2枚分いっぺんに“せーの!”で披露していって、だんだんファンの方にも“あ、AKiってこういう感じなんだ”っていうのが伝わって。一つひとつ形になって、育っていってるなぁっていう感覚は、今、あります。演奏してる側としても、気持ちもやり方も日々変わっているので、5月からの初ワンマンツアー『HEADZ UP & DO IT! 』は、さらに面白いものにしたいですね。

撮影=江隈麗志 インタビュー・文=清水素子

 
ライヴ情報
AKi Tour 2016 『HEADZ UP & DO IT!』
5月1日(日) Thunder Snake ATSUGI
5月3日(祝・火) 町田The Play House
5月5日(祝・木) 新潟LOTS
5月7日(土) 長野CLUB JUNK BOX
5月8日(日) 金沢EIGHT HALL
5月12日(木) 梅田クラブクアトロ
5月14日(土) 神戸VARIT.
5月15日(日) 京都MUSE
5月19日(木) Live House 浜松窓枠
5月20日(金) 名古屋ボトムライン
5月25日(水) HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
5月29日(日) 広島クラブクアトロ
5月31日(火) HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
6月10日(金) 福岡DRUM LOGOS
6月12日(日) 鹿児島CAPARVO HALL
6月18日(土) 高松DIME
6月19日(日) 松山サロンキティ
6月22日(水) 郡山CLUB #9
6月24日(金) 仙台Rensa
6月26日(日) 札幌PENNY LANE24
7月18日(祝・月) Zepp DiverCity Tokyo
 
料金】前売 ¥5,500(税込)
一般発売日】
2016年4月2日(土) ※2016年5月1日(日)~5月31(火)公演
2016年4月23日(土) ※2016年6月10日(金)~7月18日(祝・月)公演


 

リリース情報
ミニアルバム『EPHEMERAL』
発売中
<初回生産限定盤(CD+DVD)> DCCA-62~63 ¥3,241(税別)

AKi『EPHEMERAL』初回生産限定盤


<通常盤(CD)> DCCA-64 ¥2,400(税別)

AKi『EPHEMERAL』通常盤


LIVE DVD『A Feeling Begins to Arise
発売中
<初回生産限定盤(DVD2枚組)>DCBA-19~20 ¥4,500(税別) 

AKi LIVE DVD『A Feeling Begins to Arise』初回生産限定盤


<通常盤(DVD1枚組)>DCBA-21 ¥3,800(税別)

AKi LIVE DVD『A Feeling Begins to Arise』通常盤

 

 

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