霧矢大夢、真飛聖、寺脇康文にインタビュー『マイ・フェア・レディ』~ イライザは私たちとリンクしていたんです
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(左から)真飛 聖・寺脇康文・霧矢大夢
ロンドンの下町の花売り娘イライザが、言語学者ヒギンズのレッスンで、見違えるように麗しい貴婦人に変貌する―。オードリー・ヘップバーン主演の映画版でも広く親しまれている『マイ・フェア・レディ』。ミュージカル化された本作は、永遠に愛され続けるシンデレラ・ストーリーと心躍る珠玉の名曲の数々とともに再演を重ね、いまもなお不朽の名作となっている。
―― 久しぶりの再演ということで今のお気持ちを。
寺脇: 人間というものはね……忘れてしまうんですよ(しみじみ)。あんな大変な思いをしてセリフを覚えて歌って稽古したのに、時間が経ったら忘れちゃうんです。「楽しい仕事がまたできる!」と思ってお受けしたんですが、よくよく考えるとまた大変なことになるんだなって気が付きました(笑)
霧矢: 寺脇さん、大変でしたからね。
寺脇: またビー玉を口に入れるのかな、とか。
真飛: 歯が欠けちゃうんじゃないかな、とか(笑)
寺脇: また身が引き締まる思いがしますね。よし、やるぞって気持ちですね。
霧矢: 私自身もいい意味で忘れているというか。またメンバーも少し変わったりするので、素敵な作品をやらせていただくことはもちろんですが、自分自身がこの3年間にどう変化しているのか、ということも楽しみにしつつ稽古が始まるのを待っているところです。
霧矢大夢
真飛: 初演のときは、まずは寺脇さんってどういう方なんだろうか、そのあとにヒギンズ教授ってどんな人物なのか、と時間をかけてお互いにディスカッションしながら作り上げていました。今回再演となって、寺脇さんという素敵なお人柄と……
寺脇: ぶーちゃん(=真飛)、今、ウソついているでしょ?(笑)
真飛: (笑) 寺脇さんや他の演者さんとも信頼関係が築けているので。今回新たに加わる方もいらっしゃいますけど、そういう相手を理解するための時間が今回ない分、もっといろいろなこと……互いに信頼しあえているからこそできるお芝居ができるんじゃないかなって。だからセリフを覚えるのは大変ですが早くお稽古したいと思っています。
―― 霧矢さんは前回の初演が退団後初の舞台で、真飛さんは2作目。それから3年経って同じ役をまたやるというのはどのようなお気持ちなんですか?
真飛: まだこれからではありますが、3年ぶりにこの衣裳を着て「ああ、女子って大変!」って思っています。こんなピチッとした衣裳は他の舞台では着てこなかったので(笑)。衣裳はすごく綺麗だし、女性はこういうのを着てみたいという憧れがあるんだろうと思いますが、それでも「女性って大変だなあ」って3年経ってもまだ思いますね。そこの成長がない自分にガッカリです。
霧矢: あははは。
真飛: ちょっと、そこ笑うところじゃないですよ(笑)
真飛 聖
霧矢: 根本はきっと変わらないんでしょうね。初演のときはすべてが初めてで、初めてお芝居でご一緒する方とか、費やされた時間も多かったので、今回はそれ以外の部分で密度を濃くできそうですね。より作品に集中できるんだろうなって思います。私はそれこそ最初は女のポーズがわからなかったし(笑)、あの時よりは今はマシかなっていうくらいで。女性の役を演じる抵抗感がやや緩和されたかな。今回もイライザに対してまた何かを再発見するんだろうなって。
―― やはり退団後は、女性の役を演じることに、何かしらの抵抗感があったんですね。
霧矢: 抵抗というよりは経験がなくて。こういうことはしてこなかったな、ということが山のようにありました。そういった意味では前回から一つ乗り越えて、今回はさらにイライザに近づきたいなと思います。
寺脇: 新メンバーもいらっしゃるからね。
真飛: お母さま役が変わられるからね。高橋惠子さんに!
霧矢: フレディ役も変わるしね。
寺脇: この3人で新しい方々の気持ちもくみ取りながら、また団結できる!という気もしますね。
(左から)真飛 聖・霧矢大夢・寺脇康文
―― 3年たって、かなり女として慣れてきた(?!)霧矢さんと真飛さんですが、お二人がさらに素敵なレディになるために身に着けたいことってありますか?
真飛: もうありすぎて。「そもそもレディってなんですか?」ってくらい低レベルで。
霧矢: レディって、今風でいうと「女子力」かなあ。
真飛: 「レディって何?」ってところから3年前は入っているじゃないですか。イライザを通してヤンチャから淑女になるので、自分たちのその時の状況とちょうどリンクしていたんです。「女不慣れ」ってところから(笑)。ある意味、とても素直に演じられましたね。
霧矢: それこそ「ああ、女子力磨かなきゃ。こういうことやああいうことをやったほうがええんかなぁ」ってことはあったんですが、結局3年の間に……一昨年大ヒットしましたが「ありのままで」(笑)。変に型にはめず、「女とはこうあるべき」とすることがそもそもいちばんよくないって思ってね。もちろん品性とか女性らしさといったものは目指したいんですが、まずは自分らしくイキイキと楽しくいることがいちばんかなって。 (横の寺脇を見て)先生、どうですか?
寺脇: 100点!!(笑)
―― そんな寺脇先生にもお伺いしたいのですが。
寺脇: ん。なんだね?(偉そうに)
―― 寺脇さんが、より紳士として身に着けたいことはありますか?
寺脇: (一転、低姿勢で)これがねー、またねー、いろいろな男性雑誌とかあるじゃないですか。「ここでこんなワインの知識を持て」とか、そういうのを見るとかっこいいなって思いますけど! それが果たして本当の意味で男性らしさとなるか、というとそうではないと思うんです。ワインのことはよくわからないけど「これおいしいね、どっちがおいしいかな」って言いあいながら飲めればそれでいいのかな。あと、霧やん(=霧矢)が言ってましたが、「無理しない」っていうのが大事なのかなって。年を取ってわかってきたこともあったんですが。
霧矢: 寺脇さん、若いときは何かに挑戦したことってあったんですか?
寺脇: 「サーフィン、かっこいいなあ」とか。でも合わないものは合わないんです。自分でやりたいと思わないとダメなんですね。これやったらカッコイイんじゃないか、モテるんじゃないかと言って始めることはあまり身にならないし、それによってモテるということもない。
寺脇康文
―― 地球ゴージャスでは毎年新しいゲストを迎えて公演されています。前回は大原櫻子さんが入られましたし、そうなると寺脇さんは、地球ゴージャス的・イライザを育てる側にいらっしゃったと思うのですが。
寺脇: 育てるってほどではないんです。大原櫻子ちゃんは初舞台だったので、どうしたらいいのかまったくわからなかった。だから、僕が持っている知識は教えました。でも、彼女のすばらしい演技は彼女が元々持っていた才能なんです。そういう意味ではヒギンズも、こっちが押し付けたものでイライザが素敵になると思っているけど、それは大間違い。押し付けているうちは反発するだけ。相手のことを思いやることで初めて才能や魅力が花開くんだと思うんです。
―― では「女不慣れ」とおっしゃった霧矢さんと真飛さんについては?
寺脇: そりゃあトップスターだったお二人ですから、スタンスが男側にあるのもしょうがないと思うんです。観察眼もすべてね。でも女性なんですから! そこは絶対わからない訳はない。
霧矢: 一般的な女性よりは男勝りなのを寺脇さんが受け止めてくれるからですよ!
真飛: そうそう。舞台稽古中に自分が他の方の芝居を観れるときがあるじゃないですか。そのときに寺脇さんを見て「本当の男の人って大きいんだな!」って思ったんです。見た目もですが、大きく包まれている感があって初めて「私、女なんだ!」って実感しましたね。実際に男の方とお芝居をすると自分の中に生まれてくる感情が「ああ、メスなんだ」って。
寺脇: メスって(笑)
霧矢: 原点に戻るよね。やっぱり男性は強いんだな。って
寺脇: お互いいいところがありますから…。でも女性はこっちから見ると「強い」んですけどね。女性の手のひらの内で遊んでいるのは結局男なんで(笑)
(左から)真飛 聖・寺脇康文・霧矢大夢
■日時・会場:
【東京公演】2016年7月10日(日)~8月7日(日)東京芸術劇場プレイハウス
【名古屋公演】2016年8月13日(土)~8月14日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2016年8月20日(土)~8月22日(月)梅田芸術劇場 メインホール
■脚本・作詞:アラン・ジェイ・ラーナー
■音楽:フレデリック・ロウ
■翻訳・訳詞・演出:G2
■出演:霧矢大夢/真飛 聖(Wキャスト)、寺脇康文、田山涼成、松尾貴史、寿ひずる、水田航生、麻生かほ里、高橋惠子 ほか
■東宝ミュージカル公式サイト:http://www.tohostage.com/myfairlady/