AKi ロングインタビュー【後編】5つのキーワードを元に人物像に迫る
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AKi/撮影=西槇太一、ひらりい
シドのベーシスト・明希がソロプロジェクト・AKiとしての初の全国ツアー『HEADZ UP & DO IT!』を、5月1日(日)地元・神奈川県のThunder Snake ATSUGIからスタートする。今春に行なったMUCCとのダブルヘッドライナーツアー『M.A.D』を通してライヴパフォーマンスに磨きをかけた彼の、音楽的ルーツから表現者としてのマインドの根幹に迫ったロングインタビューの前編に続き、後編となる今回は、「ベース」「友達」「故郷」「酒」「人生のモットー」という5つのキーワードを元にAKiの人物像に迫る。
【ベース】
――そもそもAKiさんがベースを始めたキッカケって、何だったんでしょう?
地元の友達が「バンド組むんだけど、俺ギターだからお前どうする?」って言ってきたんです。もともとピアノは弾けたけど、そのときは弦楽器をやってみたくて、「じゃあ、ベースやってみるかな」と。それで高校に入ったときに入門セットみたいなのを買って、ひたすら練習して。でも、最初はベースの音って何だかわかんなかったんですよ。
――歌やギターのように目立つメロディを弾いてるわけじゃありませんからね。
うん。ボンボン鳴ってるだけで、コードもわかんなかったし。でも、タブ譜に書いてある数字の通りに押さえていくうちに気づいたんです。“あ、ベースってピアノの左手と同じ役割なんだな”ってことに。
――ああ、なるほど!
それでベースという概念が理解できるようになったんですよ。そこからは好きな曲が再現されるのが楽しくて、何曲もコピーしてました。ただ、最初のころはスラップに興味が持てませんでしたね。最初に観たのが超テクニカルな弾き方をする人の動画で、音楽というよりサーカスとかの曲芸みたいに感じたんです(笑)。ま、今はスラップもメチャメチャやってますけど。
――つまりAKiさんにとってベースとは、自分のテクニックを見せるものじゃなく、美しいアンサンブルを作るためのものなんですね。
そうそう。地元にいたときバーで飲んでるお客さんの中で弾く、いわゆる“ハコバン”をしていたんですけど、そこでいろんなことを学んだんですよね。スタジオの使い方から技術はもちろん、洋楽にも触れられたし。中でも一番勉強になったのが、バンドの中での呼吸というかタイム感で。どの楽器も曲の要素の一つっていう捉え方だから、俺の作品っていわゆるベースソロが一つもないんですよ。ベーシストのソロアルバムなのに(笑)。
――そう言われれば。
下手に主張しないほうがカッコいいんですよね。ベースってやればやるほど奥深い楽器だし、今はいろんなエフェクターもあるから、もう、やりたい放題なんですよ! 今、出したい音は今、探しに行けばいいっていうスタンスで、俺はやってます。
――では、AKiさんが思うバンドにおけるベースの役割とは、ズバリ?
起爆剤……かな? 音にせよパフォーマンスにせよ、ベースがこんなにガンガン来るんだったら、もっと俺も頑張んなきゃ!って、みんなに危機感を与える役割。だから俺が好きなバンドって、どこもベーシストが魅力的なんですよ。
――シドもそうですよね。初期から、とにかくベーシストに目が行くバンドだった記憶があります。
ああ、嬉しいです。地味なイメージもあるかもしれないけど、俺にとっては何でもアリで奥深い、すごく魅力的な楽器ですよ。あと、フォルムがカッコいい。例えばファッション雑誌で自分がディレクションして写真を撮るなら、ギターよりベースを持たせますもん。まぁ、それは好みかな(笑)。
【友達】
――友達は多いほうですか?
どうだろうなぁ。周りからは「知り合い多いね」とか「顔広いよね」って言われるし、確かにいろんな場所で人と会ったり仲良くなるのは好きなんですけど……例えばそういう人が100人いたとして、100人と毎日会ってるわけないから、結局は一部とばっかり遊びますよね。そうなるとホントに友達と呼べるヤツは4、5人くらい?
――初めて会った人とも、すぐに打ち解けられるタイプではあるんですね。
うん。結構オープンです。昔は引っ込み思案気味だったけど、バンドを始めたことで自分の世界が開けて、人と話すのが楽しくなったんじゃないかな。楽器とか音楽っていう共通言語があるから自分も話がしやすいし、すぐに仲良くなれるんですよね。ただ、音楽で仲良くなった人とでも、話すのはホント他愛のないことばっかりで。「ここの店、美味い」とか「最近、日本酒が飲めるようになってきた」とか、もう、高校生のときの会話みたいなもんですよ。おまけに一回縁が深くなった人とは、俺、ずーっと途切れないんですね。だから幼稚園のころから友達のヤツもいるし、ガキんちょのとき一緒にいたヤツと今でも仲いいし、幼稚園のころの先生とも未だに交流あったりして。
――幼稚園!? それはすごい!
もう“親友”って呼べるレベルのヤツになると、家族に近い存在なんですよね。兄弟みたいな感じかなぁ? 結局は波長が合うか合わないか?っていう単純な問題で、友達/兄弟/親友っていう区別ができないのが一番の友達なんじゃないかと思う。
――そういうお友達とは、旅行に行ったりもします?
します、します。とりあえずパスポート持って、成田に集合!とか。それで空いてる便に飛び乗る弾丸ツアーを2、3回やったことがありますね。下北沢で朝まで飲んでて、なんか盛り上がってきて、いきなり沖縄に行ったこともある。でも、空港で買う航空券って超高いんですよ! 無計画で行くと着いてもホテル探すだけで時間使っちゃうし、もうやめようと(苦笑)。
――ノリのいいお友達をお持ちなんですね。
まぁ、周りが振り回されてるだけかもしれないですけど(笑)。俺、結構行き当たりばったりなんですよ。買わずに後悔よりも買って反省!みたいな。要は快楽主義者なんです(笑)。
AKi/撮影=西槇太一、ひらりい
【故郷】
――ご出身は、確か神奈川県ですよね?
はい。厚木の近くの田んぼしかないところで、子供のころは野っぱらに住宅地が出来始めたばかりの、もう、バスも1時間に1本しかないような町でしたね。でも“故郷”と言われて真っ先に浮かぶのは、生まれてからしばらく住んでた東京のほうなんですよ。俺と両親とおばあちゃんと桜並木を歩いてたり、家族4人でお昼ごはんを食べてたり。それが自分の一番古い記憶じゃないかな。
――いわゆる原風景。それが浮かぶということは、その景色が幸福な記憶と直結しているということでもありますよね。
うん。俺、すごいおばあちゃん子だったんで、おばあちゃんを思い出しちゃうんですよ。初孫だったからすごく可愛がってもらって、でも、小学生のときに父親の転勤で神奈川に引っ越したんです。あ、もちろん神奈川のほうも好きですよ。
――そういえば5月からのツアーも初日はThunder Snake ATSUGIと、厚木のライヴハウスですし。
まぁ、やっぱり俺はココで始まらないとダメかなって。地元にいたころは、何をやるにしても裏に住んでるヤツと一緒にいたかなぁ。今でも親友なんですけど、マサシっていって。そもそもソイツがギターをやったから、俺がベースになったんですよ! だから彼がいなかったら、今頃バンドやってないですね。
――つまり故郷・神奈川の風景は、マサシさんのいる風景?
ああ、マサシありきですね。確かに(笑)。
――ちなみにご実家には、ときどきは帰ってます?
ここ数年帰ってないですね。今年は『M.A.D』ツアー(年明けから3月にかけて行なわれたMUCCとのダブルヘッドライナーツアー)に、去年はソロの初ライヴとかがあったんで、実家に帰ってのんびりしてる場合じゃなかったんです。もう、練習しなきゃ!って感じだったんで、今度のソロツアーが一段落したら帰ろうかなぁと。まぁ、そんな遠くもないんで帰ろうと思えばすぐ帰れるんですけど、そうすると怒られるんですよ。「いきなり来るな!」って。
――親御さんに? なぜ!?
家族なんだから、そんな気遣わなくていいのに、「まぁ、いろいろあるから」って言うんです。きっと、ちゃんとしたいんでしょうね。それはありがたいですよ。
【酒】
――お酒は好きですか?
大好きです! 昔はワインと焼酎くらいしか飲めなかったのに、今や全品種イケるようになりまして。あ、苦いのは嫌いなんで、ビールだけダメかな。それ以外は焼酎、ワイン、日本酒、ウイスキー、バーボン……何でもかかってこい!って感じです。
――なぜ、そんなにたくさん飲めるように?
例えば一緒にいる人がウイスキーを飲んでたら、「ちょっと貰うよ」みたいな感じになるじゃないですか。日本酒も自分では飲む機会がなかったんですけど、そうやって飲みだしたら美味しくて、今はワインと同率一位で好き。家で熱燗とかもやりますよ。
――“家で”って(笑)。
ファンの方から、たくさんお酒をいただくんです。俺、酒癖が良くないというか……あんまり綺麗に飲めなくて。量は飲めるけど、きっと強くないんでしょうね。失敗談もいろいろあるから、そういうのをファンの子も面白おかしく思ってるんじゃないかな。
――ファンの方もAKiさんのお酒好きをわかってるんですね。ちなみに失敗談って、例えば?
シャッターに上って、落ちて、角で手切って、一時期ベース弾けんの?っていうギリギリのところまで行ったことがあります。もう、血ダラッダラで、あとちょっとズレてたらヤバかったよって医者に言われました。他にもいっぱいありますよ。膝小僧の骨が出てきた話とか、肋骨折ったとか、靭帯切ったとか……。
――なんでそんなに自分の体を痛めつけるんです!?
なんか戦ってしまうんですよね。あ、ケンカじゃないですよ。人とじゃなく、地球と戦ってしまう(笑)。だから酔っぱらうと、とにかくケガするんです。ま、最近はそんなにヒドくないですけど。
――そんなに痛い想いをしても、「もう、お酒は控えよう」ってならないんですか?
お酒を飲み続けたいから、そのぶん運動も頑張ろうって、キックボクシングしてるくらいだし。やっぱり、お酒って楽しいじゃないですか。美味しいし、愉快になれるんですよね。一人でしっぽり行くのも好きだし、みんなでワーッとやるのも好き。あ、でも友達限定ですよ。パーティとかで知らない人と騒ぐのは、最近ちょっと疲れちゃうかな。
AKi/撮影=西槇太一、ひらりい
【人生のモットー】
――AKiさんの人生のモットーを教えてください。
過去も未来もなく、今でしかない。つまり“今、思ったことは今、やる!”っていうのがすべてかな。結局やるかやらないかを決めるのって、自分の尺度でしかないのに、なんか周りの物差しで測らなきゃいけないような気がしてきて。その物差しが長ければ長いほど自信がなくなったりとか、考えて立ち止まっちゃうことって多いじゃないですか。
――ああ。“どうせ無理なんじゃないか”とかね。
でも、それが一番もったいなくて。やっぱり今、思ったことは今やんないと、“あのとき、ああしたかったな”って後悔するだけになってしまう。逆に今、全力でやっていれば、その積み重ねが今日になって、明日になって、明後日になって、きっと明るい未来に繋がっていくと思うんですよ。通ってるキックボクシングのジムにも“今、走れば、今、輝く”って、いろんなところに書いてあって。“今、走れば、今が素敵になっていく”っていう意味なんですけど、まさにソレだな!と。不安も自信もすべては人の心が作っているもので、結局は自分の心を映し出してるんですよね。それをちゃんと理解して、今やったことは今に返ってくるっていうのが、自分の一番のテーマかな。
――今まで周りの物差しに左右されて、実際やりたいことをできずに後悔した経験ってあります?
うん、ある。“やってみたいな”で終わったこととか、たくさんありましたね。例えば学生時代に、もっとスポーツやりたかったなぁとか、勉強やりたかったなぁ……とかって今、思うけど、じゃあ、なんで当時やんなかったかの?っていうと、なんか自分で勝手に作り出した“幻の物差し”があったわけですよ。それで自分を測ってみると全然足りないから、“どうせ俺にはできっこない”って諦めてたけど、今になって考えてみれば、やってりゃやれたんだろうなって。結局、自分が“できない”って決めてただけで、その物差しを取っ払えた瞬間に、なんだか急に視界が開けた気がしたんです。
――それって何か特別なキッカケがあったんですか? それとも少しずつ?
少しずつ。でも、やっぱりソロを始めたのもデカいかな。
――ずいぶん最近じゃないですか。
ホントはバンドをやり始めたときから開けてきてたんだろうし、ここ数年“今、走れば今、輝く”っていう精神でずっとやってきたけれど、それを人に伝えられるようになったのは最近かもしれない。だから今は迷わず、何でもやってますね。遊びも、仕事も全部。
――じゃあ、例えば今、やりたいことがあって。それとは別に今、やらなきゃいけないこともあったらどうします?
両方やる(笑)。そりゃ物理的にできないこともありますよ。例えばライヴの日に他のことはやれないけど、できる範囲であれば何でもやっていいと思うし、逆に自分の時間を全部使いたいものがあれば、そうすればいい。俺が実際そうで、今はシドと自分のバンドに24時間使いたいんですよね。でも、今後もっと自分のバランスが取れてくるようになれば、また何かやりたいことも出てきたりするだろうし……って感じかな。結構単純なんですよ。俺って。
――他人への気遣いもできて、思考のバランスも取れていて、誠実で。お話を聞かせていただくと、AKiさんって非常に真っ当な方ですよね。アーティスティックなオーラを濃厚に漂わせているステージ上での姿とはギャップがあって、正直意外でした。
たぶんね、俺、二人いるんですよ。今、喋っている俺がAKiだったり明希を演じていて、だから音楽について聞かれればAKiや明希で話すし、でも、プライベートのことになるとその二人がいなくなっちゃう。お酒が好きなことも友達に対しての感情も、ホントに素の自分で答えるから、ギャップを感じるのは当たり前なんですよ。“演じる”って言うと無理してやってるみたいに聞こえるかもしれないけど、俺にとっては自然で。ステージ上で毎回、同じ役を演じてるような感覚ですね。
――前編のインタビューでも「変身願望が強い」とおっしゃってましたもんね。
それが変身願望だとするなら、ずーっとそうですね。誰かや何かに対する憧れっていう力が、AKiや明希を作ってきたんだろうし、それだけで今まで生きてきたんだと思う。なんか、なりきるのが得意というか、好きっていうか。
――その憧れを模倣するだけでなく、キチンと自分の中で消化してオリジナルにできているのが、AKiさんの素晴らしいところですよ。
嬉しいですね。そう言っていただけると。
――5月1日から始まるワンマンツアーでも、また、どんな“AKi”を演じてくださるのか楽しみです。
もう、全部やったれ!って感じですね。もちろん『M.A.D』ツアーも面白かったけど、ワンマンはワンマンで違う面白さのあるものにしたいんです。セットリストや曲数も違えば、また新しい曲も披露しようと思ってるし。来てくれた人に「ワンマンってこんな感じなんだ。イベントと違ってこっちもいいじゃん」って言わせるくらいのものにしたい。
――そもそもファンにとっては、ライヴハウスツアーというもの自体が珍しいんじゃありませんか?
シドのほうでも最近はホールツアーが多いですからね。でも、ライヴハウスの空気感ってやっぱり独特なもので、またホールとは違った良さがあるんですよ。だからステージに臨む自分の気持ちは変わらないですけど、ライヴハウスを100%生かせるような構成だったり演出っていうのは考えてます。そもそもシド自体がライヴハウスで育ったバンドなんで、そのへんは心配もしてないし。ライヴハウスに行ったことがないっていう人にも、この機会にぜひ遊びに来てほしです。きっと楽しいツアーになりますから。
撮影=西槇太一、ひらりい インタビュー・文=清水素子
>> AKi ロングインタビュー【前編】音楽的ルーツ、表現者としてのマインドの根幹に迫る
5月1日(日) Thunder Snake ATSUGI
5月3日(祝・火) 町田The Play House
5月5日(祝・木) 新潟LOTS
5月7日(土) 長野CLUB JUNK BOX
5月8日(日) 金沢EIGHT HALL
5月12日(木) 梅田クラブクアトロ
5月14日(土) 神戸VARIT.
5月15日(日) 京都MUSE
5月19日(木) Live House 浜松窓枠
5月20日(金) 名古屋ボトムライン
5月25日(水) HEAVEN'S ROCK宇都宮VJ-2
5月29日(日) 広島クラブクアトロ
5月31日(火) HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
6月10日(金) 福岡DRUM LOGOS
6月12日(日) 鹿児島CAPARVO HALL
6月18日(土) 高松DIME
6月19日(日) 松山サロンキティ
6月22日(水) 郡山CLUB #9
6月24日(金) 仙台Rensa
6月26日(日) 札幌PENNY LANE24
7月18日(祝・月) Zepp DiverCity Tokyo
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2016年4月2日(土) ※2016年5月1日(日)~5月31(火)公演
2016年4月23日(土) ※2016年6月10日(金)~7月18日(祝・月)公演
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