注目の新進ナンセンス劇団・トリコロールケーキが新作
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トリコロールケーキ 左:今田健太郎 右:鳥原弓里江
前回『甘い匂い』というタイトルの公演を打ったせいでもあろう。トリコロールケーキという劇団名からは、なにやらポップな甘き香りが漂ってくる。しかし“甘い”のはそう思ってしまう安易さだけであって、実際、彼らの演劇自体は何も甘くはないのである。それは例えば、チョコレートケーキと名乗る社会派劇団の芝居がけっして甘い内容ではないのと同様に、である。ただし、トリコロールケーキは社会派の劇団ではない。ならば、彼らは何派の劇団なのか。劇団チョコレートケーキや劇団しゅうくりー夢などと共に“ケーキ派”の劇団と安易に呼ばれているわけでは、もちろんない。
トリコロールケーキは、いわゆるコメディ派の劇団である。というか、“派”は要らない、素直にコメディ劇団である。コメディ劇団といっても、色々なタイプがある。彼らはナンセンス派である。というか、ナンセンス系と言い換えよう。ナンセンス系にも色々あるが、なんというか、ボケがあってもツッコミがほとんどないような、純度の高いナンセンス系である。
演劇史を齧ったことのある人ならば歯茎から血を滲ませながら、「それはベケットのようなものか?」と言いたがるかもしれないが、いや、むしろイヨネスコの『禿の女歌手』の色合いに近いものである。もちろん、そのことは筆者がそう書きたがっているから書いてるだけであって、イヨネスコなど聞いたことがないという人にも、もちろん楽しめる演劇である。
(と、その舌の根も乾かぬうちに言ってしまうと) だからといってトリコロールケーキは、誰にでも楽しめる万民向けの笑いを提供する劇団でもない。純度の高いナンセンス系の笑いとはそういうものなのである。…などと書けば、なにやら偉ぶった、いやらしい印象を与えかねないので敢えて述べておくが、彼らは何もひたすら“孤高”を目指す劇団というわけでもない。しかしナンセンスの笑劇は“虚空”を目指す。ナンセンス演劇界の巨匠・別役実がそうであったように。
“虚空”の笑劇においては、笑いの指標がないので、どこで笑っていいのか、観客が迷子になってしまう。だから、演る側はモチロンのこと、観る側にも、それなりの“センス”が求められるのだ。それなりの“センス”? ナン“センス”なのに? …とまあ、このようなツッコミを入れてしまうと、まさに“センス”としていかがか、となってしまうのである。ともかく、冒頭に述べたトリコロールケーキの“甘くなさ”とは、畢竟そういうことなのだ。
トリコロールケーキは、鳥原弓里江を代表として2010年に旗揚げされた。その後、今田健太郎が参加し、最近では企画・原案を鳥原が、脚本・演出・音楽製作を今田が担当する体制が定着している。二人は出演もする。今田は、テニスコートやナカゴーへの客演で俳優としての注目度も高い。不必要なほどデカい声を発するところが演劇的必殺技といえる。しかし、それ以上に個人的に注目している点は、今田・鳥原の二人とも頭部が大きな立方体に見えることだ。体つきも似ている。生けるチビキャラのようなところが、タマラなく愛しい。
そんな彼らの新しい公演が、4月12日~17日に千本桜ホール(最寄駅:学芸大学駅)で開催される。トリコロールケーキ・アニマル#4『モグララ』という。トリコロールケーキ・アニマルって何だ? 本公演とは違うシリーズのことらしい。もはや説明が難しいので、あとは当事者たちに任せよう。
◆「トリコロールケーキ・アニマル」について:鳥原弓里江
「トリコロールケーキ・アニマル」は、本公演と違うことをやってみようと思い立って始めた少人数でお送りする公演です。少人数であるぶん思いのほか密度が高い仕上がりになったりして、その結果、その後しばらくのトリコロールケーキの作風を決定づけたりもしています。「アニマル」ということで毎回なにかしらの動物にまつわることを縛りにしているのですが、別の候補として、毎回なにかしらのおでんのタネにまつわる「トリコロールケーキ・おでん」という案もありました。おでんとアニマルの板挟み。でも、なんか、アニマルのほうがかわいい。そう思って始めたのが「トリコロールケーキ・アニマル」です。
◆『モグララ』について:今田健太郎
今年1月に『甘い匂い』という公演をやったときに「熱量のある演技っておもしろい」と気づいたので、今回はもう一度それをやってみます。前回はわりとストレートな熱量表現だったので、今回はできるだけ誤った熱量にしたいと思います。トリコロールケーキに初めて出演する方も多いのですが、みなさんおもしろいです。そのおもしろさを、できるだけの熱量で、できるだけの誤った感じで、お見せできればと思います。
トリコロールケーキ・アニマル#4『モグララ』出演者たち
とある過疎地域の動物園に新設されたモグラふれあいゾーン。
一見すると土ゾーン。見渡す限りの土ゾーン。
果たして、そこにモグラらは本当に存在するのだろうか?
我先にと殺到したモグラファンと土ファンの小競り合いは次第に活気を帯び、
いつしか、町おこしめいた状態へと陥っていく……
■会場:千本桜ホール(学芸大学)
■出演
鳥原 弓里江
今田 健太郎
香西 佳耶
(以上、トリコロールケーキ)
川口 雅子
川﨑 麻里子(ナカゴー)
高澤 聡美
畑中 実(ミラクルパッションズ)
矢野 昌幸
■脚本・演出・音楽製作:今田 健太郎
4/12 (火) 20:00-
4/13 (水) 20:00-
4/14 (木) 15:00- / 20:00-
4/15 (金) 20:00-
4/16 (土) 15:00- / ♪19:00- (イベントのみ開催)
4/17 (日) 15:00-
~~~~~~
※受付開始・開場は開演の30分前から
※上演時間は約90分を予定
♪スペシャルイベント『今田と今泉のおしゃべりバースデー』開催回
(本編の上演なし。出演:今田健太郎、今泉力哉)
■料金:予約2,500円 / 当日3,000円
■公式サイト:http://www.toricoro.com/