SUPER BEAVER 「音楽」と「あなた」にピュアな情熱を捧げた万感のZepp DiverCityワンマン
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SUPER BEAVER Photo by 青木カズロー
SUPER BEAVER 10周年記念〆「都会のラクダSP~スーパーフィーバー~」 2016.4.10 Zepp DiverCity
ボーカル・渋谷龍太の言葉を借りれば、SUPER BEAVERは「ゆっくりゆっくり階段を上がってきた」バンドだ。その間には紆余曲折もあって、浮き沈みも経験した。音楽を辞めかけたことさえあった。そんな彼らが結成10周年の締めくくりに初めて立ったステージは、2000人を超す観客で埋め尽くされたZepp DiverCity。冒頭の2~3曲を終えた時点で、彼らの歩み全てを見てきたわけではなく、ましてや当事者でもない筆者でさえ胸にくるものがあったのだから、メンバーの感慨は想像に難くない。そして彼らはその想いをパフォーマンスと歌に込めた心で示してみせた。
SUPER BEAVER Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
「SINCE2005」と書かれたロゴ入りのバックドロップのみが架けられたステージ。突如として暗転すると一人ステージに現れた藤原”27才”広明(Dr)が勇ましいドラムプレイを始め、続いて下手から上杉研太(B)が、上手から柳沢亮太(G)が、それぞれ登場、轟音で会場を満たす。最後にゆらりと現れた渋谷が力強く歌い出したのは「361°」だ。たちまちクラップと「オーオー」というシンガロングがフロアにこだまする。続く「鼓動」では渋谷がハンドマイクを手にステージ最前列に据えられたお立ち台から、「気合と気合のぶつかり合いでございます」「いこうぜ、東京!」と彼らしい口調で檄を飛ばす。柳沢と上杉も競い合うかのようにシャウトとアクションでフロアを煽る。
SUPER BEAVER Photo by Suzuki Kouhei
SUPER BEAVER Photo by Suzuki Kouhei
「10周年。こんなにやると思ってなかったよ、10年も」そう感慨深げに呟いたあと、「10年なんてただの数字だと思ってた。でもそこにはたくさんの人の意志とか、顔が見えたんだよ」と渋谷。ただの数字だったはずの「10年」に重みを、意味を持たせたのは、言うまでもなく対峙する人の存在――オーディエンスに他ならない。その認識は一貫しており、「ことば」では<言葉なんて信じない あなたならば信じるよ>と歌われた。そこからの「あなた」「シアワセ」などでも、渋谷のストレートな歌声と繊細なビブラートはドライブ感満点のサウンドに熱と息吹を与え、楽曲に込められた言葉と心の一つひとつを繋ぎ届けていく。そこにさらなる説得力をもたせていたのが彼の仕草だ。ライヴ中ずっと、一人一人と視線を合わせるように客席を見渡しながら時折「そうだ」と頷き、「来い」とばかりに拳を握る。それが何よりも観る者を鼓舞していた。
SUPER BEAVER Photo by MAYUMI -kiss it bitter-
中盤では、かつてのメジャーデビュー曲「深呼吸」も演奏された。その勢いに満ちたエモ/ロックサウンドとは裏腹に、当時、若くして立ったメジャーのフィールドで彼らを待ち受けていたのは、挫折とアイデンティティの喪失という苦い経験だった。改めて渋谷は振り返る。
「若くしてメジャーデビューして……夢を見るじゃない。”そうか、俺は音楽が仕事になるのか、楽しそうだな”って。で、やってみた結果、まぁ好きなようにはできない。……まぁその頃俺らが好きなものはなんだったか、ハッキリはしてなかったとは思うけど、ピュアに音楽が好きだったという自信だけはあるんだ。でも「ただ音楽が好き」という気持ちだけじゃ全く役に立たないことが判明して。もっと強い意志があれば、今みたいにあなたの前に立たせてもらえるという強い自信さえあれば、もっと色々戦えたかもしれないけど、自分たちには意志がなかった。……辞めようと思ったんだよ、そのとき音楽を。楽しくなかったから。でもあのときに俺らが音楽を好きだった気持ちって、本当だった。もう何よりも好きだったから。音楽ができるだけで嬉しかった。それを今になって同じ気持ちで出来る、この10年目。同じ気持ちであなたの前に立てているこの瞬間が、やっぱり俺は何より嬉しい素敵な瞬間だと思う。あの当時は歌えなかった、あの頃の俺らを支えてくれた歌です」
そうして歌われたのは、最初期の楽曲「日常サイクル」だった。彼らの、そしてほとんどのバンドの原点である「音楽が好き」、その初期衝動を詰め込んだ楽曲が、デビューから10年を経た大舞台に輝かしく響く。なんという美しい光景だろうか。
SUPER BEAVER Photo by Suzuki Kouhei
SUPER BEAVER Photo by Suzuki Kouhei
後半戦では再びギアをあげる。新曲「人として」が披露されたほか、記憶に新しい3ヶ月連続リリースのワンコイン・シングルシリーズからは、ここで「青い春」「うるさい」を投下。「青い春」は冒頭から渋谷、柳沢、上杉の3人がボーカルを重ねて、センチメンタルな空気に支配されかけた場内を引っ張っていき、「うるさい」ではステージと客席の間に現れた紗幕にメンバー4人のシルエットが浮かび上がると、さらに様々な映像や歌詞が立体的に映し出されていった。視覚聴覚の双方から立体的に迫る演出と、紗幕を隔てて暴れまわる姿には、思わずフィジカルな興奮を掻き立てられる。さらに「証明」のラストのサビで盛大なシンガロングが巻き起こったところへ銀テープが打ち出され、場内を歓喜に包んだかと思えば、続く「東京流星群」では天井のミラーボールに反射した数え切れないほどの光の粒が場内を旋回し、場内は突如としてロマンチックな空間へと変貌を遂げた。基本的にはシンプル、生身で勝負しているSUPER BEAVERだが、この日はアニバーサリーということもあってか、多彩な演出で特別感を味あわせてくれた。
SUPER BEAVER Photo by Suzuki Kouhei
本編最後のMC。渋谷はSUPER BEAVERの音楽について、「流行ってることとは違うよね。でもこうじゃなきゃ伝えられないことがある」とそのメンタリティを口にしたところで言葉に詰まった。ここまでときに雄弁に、ときにヘロヘロなMCで、これまでの歩みや思いの丈を口にしてきてついに感極まった彼は、「計算外だ(笑)、こういう手は卑怯だから使う気はなかった」と冗談めかしながら客席を見渡し、「ゆっくり歩いてきた、ひとつずつあなたと一緒に着実に階段を登ってきたなって感じがするんだよ。……この景色を見せるのに時間がかかってしまったことは分かってるんだけど、俺はこうなった以上は絶対に離さないぞ、あなたのことを。逃げるなよ絶対に。これからはもっとスピード上がっていくんで付いてきてください」と力強く宣言。大きな大きな拍手が包んだ。そこから「ありがとう」では歌詞を<一緒に歌ってくれて ありがとう><手拍子してくれて ありがとう>と変えて歌って感謝を示すと、ラストは「愛する」。明るく照らされた場内を見ると、一人残らず両手をかざし、ともに歌っていた。
SUPER BEAVER Photo by 青木カズロー
SUPER BEAVER Photo by 青木カズロー
アルバム『27』のリリースと全国ツアーの開催を告知する映像の後、大歓声に迎えられステージに戻った4人は、新作から「秘密」を初公開。SUPER BEAVERの真骨頂といえる鋭いロックナンバーで、各パートごとの見せ場もあるこの曲は、ライヴ映えも満点だ。最後はスリリングな「ILP」で場内を熱狂の渦に叩き込み、柳沢が客席に体を預けるなど激しいパフォーマンスも飛び出しライヴを締めくくった。
SUPER BEAVER Photo by 青木カズロー
実際のところ、彼らはこのワンマンをSOLD OUTできるとは思っていなかったのだと明かした。だから次のツアーもリベンジを果たすためにZepp DiverCityをファイナルにした、と。この嬉しい誤算に「次は即完を狙う!」とぶち上げて喝采を浴びた彼らだったが、その勢いは彼らの予想を上回るスピードで加速しているようだ。ピュアなロマンチシズムと不器用さ、苦い経験、それゆえ生まれた反骨心と強さ、全てを内包し進み続けるロックバンド・SUPER BEAVER。次作とツアーを経た彼らが再びこの会場に帰還するとき、どんな景色が待ち受けているだろうか。そしてその先には何が見えるのだろうか。
レポート・文=風間大洋
SUPER BEAVER Photo by 青木カズロー
収録内容:全13曲収録 ※詳細後日発表
発売日:2016年6月1日(水)
品番:NOID-0012
価格:¥2,700(+tax)
発売元:[NOiD] / murffin discs
販売元:Japan Music System
<ツアー日程>
6月16日(木) 千葉LOOK 《ワンマン》
6月18日(土) 横浜F.A.D
6月19日(日) 越谷EASY GOINGS
6月24日(金) 長崎STUDIO DO!
6月25日(土) 熊本Django
6月26日(日) 鹿児島SR HALL
7月9日(土) 水戸Light House
7月10日(日) 宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
7月13日(水) 神戸 太陽と虎
7月14日(木) 広島セカンド・クラッチ
7月16日(土) 松山サロンキティ
7月17日(日) 高知X-pt.
7月18日(月•祝) 高松DIME
9月2日(金) 静岡Sunash
9月3日(土)京都MUSE
9月10日(土) 金沢vanvan V4
9月11日(日) 長野J
9月16日(金) 高崎club FLEEZ
9月18日(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE《ワンマン》
9月22日(木•祝) 仙台MACANA《ワンマン》
9月24日(土) 札幌COLONY《ワンマン》
10月8日(土) 岡山CRAZY MAMA 2nd room 《ワンマン》
10月9日(日) 福岡BEAT STATION《ワンマン》
10月15日(土) 名古屋CLUB QUATTRO《ワンマン》
10月22日(土) 大阪BIGCAT《ワンマン》
11月5日(土) Zepp DiverCity《ワンマン》
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