Mrs. GREEN APPLE ワンマンツアー終幕、あの日語った夢物語が現実へ
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Mrs. GREEN APPLE
TWELVE TOUR ~春宵一刻とモノテトラ~
2016.4.10 赤坂BLITZ
正しい・正しくない、カッコいい・カッコ悪い以前に、自分たちが楽しいか楽しくないかでジャッジされた歌が、演奏が、パフォーマンスが、ダンス&決めポーズが、セットリストが、そして光と影が、ステージを形作っていく。だからこの日披露された17曲には恐ろしいくらい嘘がなかった。本当にとても、とても綺麗な時間だった。
満員御礼。逸る気持ちを抑えきれないオーディエンスが、SEのドラムに合わせてハンドクラップ。既に熱気が充満したステージに登場したメンバーは、満面の笑顔でリンゴポーズを決め、それぞれの立ち位置へ。「会いたかったよ、東京ー!」大森元貴(G、Vo)の叫び声を合図に、ライヴはアルバム『TWELVE』同様、「愛と矛先」で幕を開けた。いきなりキラッキラのバンドサウンドがフルスピードで駆け抜ける。合間合間には、お揃いの振り付けやステップ、ジャンプや殴り殴られるアクションなどが挟み込まれ、とにかく全身全霊で会場を揺らし続ける。その上で、ひとりひとりに突きつけるのだ、<君なりに形にして ほら「どうか見せてよ」>。続く「SimPle」では変幻自在なヴォーカルと、練り込まれたサウンド、フロアから沸き立つまっすぐなシンガロングの鮮やかなコントラストとともに、忍ばせた<僕が見たいのは 流される君じゃない>という容赦ないフレーズが全員の胸をジリリと焦がす。そして5人は最大の武器である愛でギュッと包み込む。
Mrs. GREEN APPLE
「アンゼンパイ」ではオーディエンスがクラップにジャンプに美しいコーラスにと大活躍、もはや6人目のメンバーの佇まいだ。「キコリ時計」のあまりのカラフルさに、オモチャ箱をひっくり返したとはこういうことか!なんて妙な納得をしてみたりして。一転、若井滉斗(G)の鋭利なフレーズが緩急を生み出し、混沌とした世界へと引きずり込む「ミスカサズ」。さらに「私」では、藤澤涼架(Key)のピアノを軸に5人が描くサウンドスケープがあまりに美しくて、なんだか切なくなった。自分の弱さを受け入れて生きていくのだと歌う大森の歌声がやさしくて、どうしようもなく苦しくなった。アルバム未収録曲ながら「春愁」はどこか懐かしい匂い。山のように積まれた“大嫌いだ”に隠した、たったひとつの“大好きだ”を愛おしそうに手渡す彼らは誇らし気で。4つ並んだ和太鼓を男性陣4人が豪快に打ち鳴らした「No.7」は圧巻&壮観。ギターロックが音頭に切り替わるトリッキーな展開も、最上級のエンターテインメントにしてしまう説得力が今の5人にはある。
一緒に歌ったり、踊ったり、叫んだり、笑ったり、音楽を響かせながら、Mrs. GREEN APPLEは聴き手の心にスッと寄り添う。決して綺麗事では済まない言葉にドキッとする。奥に秘めた想いにグサっときたりもする。鮮烈にポップで、猛烈にスリリングで、強烈にドラマチックであるけれど、ただ騒げればいいイマドキの音楽とは違う。むしろ多くの人がうまくやるために見過ごしたり、聞き流したり、諦めたりしているひとつひとつと向き合って、まんじりと目を凝らし、見極めて、大事なものだけを掬い上げて目の前に差し出す。感じる心と考える脳みそを刺激する。諦めたくないし、諦めてほしくもない。そのためなら土足で踏み込む覚悟だ。ただしその方法がとびきりの音楽なのだから、最っ高で最強に質が悪い。
Mrs. GREEN APPLE
MCで、「いやぁ、もう最後の曲になりましたよ」と大森が告げると、客席からはイヤだー!コールが吹き荒れる。そりゃそうだ。1曲目からずっと、最後の最後まで全部、クライマックスみたいなライヴだったんだもの。しかしそのまま大森は言葉を続ける。Mrs. GREEN APPLEを結成する以前から、中学の同級生だった若井と一緒に全国ツアーやCDリリースの夢を語り合っていたこと。それがひとつひとつカタチになっていく現実。しかも目の前には、詰めかけた汗まみれの笑顔がシアワセそうに揺れている。「こういう光景が見れて本当に本当に嬉しいし、音楽を始めてよかったと思います。報われる瞬間です。ありがとうございます」。深々と頭を下げたあと、目と目と心を合わせたメンバー全員の「せーの!」の掛け声で勢いよく転がり出したラストナンバー「パブリック」。手渡されたのは正義と悪の隙間にある人間の優しさと儚さと強さだった。
6月に東名阪のクアトロで開催されるツーマンツアーの対バンの発表を挟み、アンコール1曲目「我逢人」はスペシャルなアコースティックバージョン。アコギを抱えて大森が歌うのは、集まってくれたお客さんへの感謝の気持ち。藤澤が奏でるフルートは嫋やかに、山中綾華(Dr.)、高野清宗(B.)、若井、大森、この5人にしか鳴らせないアンサンブルはしなやかに、「庶幾の唄」という曲は実に軽やかに、目の前のひとりひとりに小さなトゲを刺す。ライヴの前とは違う“僕”“私”であるように、楽しかった今日が“僕”“私”にとって意味のあるものでありますようにと、チクッとやさしくトゲを刺す。そしてそれは固い再会の約束でもあった。
それでも欲してくれる声に応えてダブルアンコール。6月15日に2ndシングル「サママ・フェスティバル!」をリリースすることをアナウンスした直後に、初披露。「いやぁ緊張するよね~」と言いつつ、歌い出せば無敵。2コーラス目にはシンガロングが巻き起こる、問答無用のスーパーキラーサマーチューンだ。グリーンとイエローの巨大バルーンが投入され、オーディエンスの頭上を楽しそうに跳ねている。何かの拍子にパチンと弾けると中からカラフルな風船が溢れ出し、笑顔とともにフロア中に広がっていく。その光景に胸躍らせながら、あぁ、2016年夏、Mrs. GREEN APPLEはこんなふうに弾けて日本全国に広がっていくのだと思った。そして再会のステージはきっと、もっとうんと広いに違いないと確信した。
レポート・文=山本祥子
Mrs. GREEN APPLE
2016.4.10 赤坂BLITZ
2. SimPle
3. アンゼンパイ
4. キコリ時計
5. ミスカサズ
6. 私
7. HeLLo
8. 春愁
9. Speaking
10. うブ
11. No.7
12. リスキーゲーム
13. StaRt
14. パブリック
[ENCORE]
15. 我逢人
16. 庶幾の唄
17. サママ・フェスティバル!