LAMP IN TERREN 果てなき音楽の旅を続ける4人のヒストリーと、新曲に見る現在地とは?
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LAMP IN TERREN Photo by Yosuke Kamiyama
3ピースバンドとしてデビューしたLAMP IN TERRENが、4人となったのが昨秋のこと。新体制となって初めて世に放たれる作品、そしてバンドの歴史の中でも初のシングルとなる「innocence/キャラバン」が5月3日にリリースされる。一部の流動的なスタイルのバンドを除けば、ロックバンドのメンバーが増えるということ自体かなり稀な出来事なのだが、彼らは元々4人組のバンドだ。それが3人となっている時期に世に出た――松本大(Vo/G)はインタビュー中「このバンドは最初っからもう欠けてる状態でデビューしちゃったバンド」と語っている――という経緯がある。そして「加入」したギタリスト・大屋真太郎は、かつて一度は別れた、バンドのオリジナルメンバー。彼らはなぜ多くのリスクを背負う可能性を受け入れ、この4人で進んで行く道を選択したのか、そこから生まれた新たな楽曲たちは何を示すのか。バンドとしてのインタビューではSPICE初登場。結成当初からのヒストリーも含め、たっぷりと語ってもらった。
――まずは前作からの間に、大屋くんがバンドに復帰するという大きな出来事がありました。それも含めバンドとしてのストーリー的な要素は、LAMP IN TERRENというバンドを語る上で、切り離せないものだと思うんですね。なので、このタイミングでバンドの成り立ちとこれまでの歩みから振り返っていきたいんですよ。
中原健仁(B):はい。まず初期メンバーは俺と真ちゃんで。
松本大(Vo/G):僕もほぼ初期メンバーみたいな感じではありますけど。
大屋:まず健仁が中2のときに転校してきて、僕のクラスに入って。僕はギターをやってたんですけど、(中原は)ベースをやってると自己紹介で話があったので、そこからコピーバンドをやろうという話になりました。
松本:この結成の経緯の話、懐かしいね。しばらく大喜が蚊帳の外だけど(笑)。
川口大喜(Dr):俺はしばらく登場しないんで(笑)。
大屋:その後、大が……最初はドラム?
松本:そう、ドラムがやりたいって言ってたんですよ。このバンドを(大屋と中原の)2人で組むっていう話をしてるタイミングで、僕はその場にいたんですよ。で、「俺ドラムやってみてぇ」みたいに言ってたんですけど、なんかしばらくしたらその話が無くなってたことに気付いて……というのも、別の奴をドラムとして誘ってたんです。「あれ!?」って(笑)。
――俺、言ってたのに!みたいな。
松本:超ドラムやりたかった!って思いながら諦めたんですけど。
大屋:しばらくしてボーカルをするはずだった人が、ライヴ直前に「やっぱ出来ない」って話になって、急遽松本に。
松本:騙される形でボーカルになりました(笑)。ギターとして誘われたのに行ってみたらボーカルだったので。「どうしてもギターが弾きてえ」とか言ってたんですけど、初ライヴの当日に急にギターが壊れるっていうね。
中原:そうそう!
松本:いきなりピンボーカルだったね。買って半月で壊れたんですよ、安物だったから(苦笑)。
大屋:それでバタバタしながらもコピーバンドをやり、そこで3人の形が出来て、そこから大が曲を作るようになり。
中原:ちょうど曲を書き始めた頃、僕がまた転校しちゃって。神奈川から長崎に中学2年生のときに行って、高校1年生の夏にまた神奈川に戻らなきゃいけなくなったんですよ。
松本:そう。このあたりから色々と錯綜し始めるんですけど、1stアルバムの1曲目の「L-R」っていう曲は僕が初めてバンドに持って行った曲で、こういう曲をバンドでやってみたいと思った曲なんですけど、まさにこいつ(中原)が転校するタイミングで。そこからバラバラになっちゃったんで、音源を作る作業しかできなくて、地元にいた頃はほとんどライヴってやったことないんです。俺らは。だから、そこがコンプレックスみたいになったところも若干あります。
――大屋くんは上京のタイミングで一度抜ける訳ですよね?
大屋:はい。僕が大学進学で自宅浪人をすることになり……
松本:それ言わなくていいんじゃないかなぁ(笑)。
大屋:僕だけ取り残されるかたちになったんですよ。で、他2人は東京に行き、僕は1年間遅れて上京したんです。そこで僕と入れ違いになるように大喜が東京で加入するという。
松本:そうだね。元々長崎で友達だった凄い上手いドラムを叩いてる、っていう奴だったんです。仲もすごく良くて、僕が上京した最初の方も、家が決まらなかったんで大喜の家に居候させてもらってたんですね。そこから紆余曲折あって、サポートでやってもらうことになったんですけど、やっていくうちに正式メンバーになってもらいました。ね?
川口:そうですね、そこでやっと。
――元々仲が良かったけど、長崎時代は一緒にやろうってならなかったんですか?
川口:それが一回もならなかったですね。
松本:他でバンドやってましたからね。
川口:6個とか掛け持ちでやってました。でも……無理でしたね(笑)。
――上京したころも他にバンドを?
川口:やってましたけど、それもなぁなぁで終わり。大と一緒にやることになって、そこからは他にやってない。これしかやってないですね、バンド。
――しっくりくる部分があったと。
川口:いや、そのときはしっくりきたというより、もうこれ以外やる気が無かったっていう。
松本:なんかちょっと嬉しいね(笑)。
川口:音自体は高校生のときに「L-R」のデモ音源を……当時Skypeで送ってもらって、それで知ってたんですけど。それで初めて健仁と会ったんです、東京で。
――あ、そうか。(中原が)いなくなっている間に出会ってて……?
松本:そう、わけわかんない感じになってくるんです(笑)。
川口:いなくなっている間に俺と大が仲良くなってて、でもバンドはやって無くて。上京してからバンドを組んで健仁とも会って……
松本:なんかホワイトボード欲しいですもんね、ここに(一同笑)。
川口:健仁が転校していなくなってる時期に大たちがやったライヴを、たまたま俺が観てたんです。そんときはサポートのベースがいて。確かそのライヴ終わりに初めて(松本と)会話したんですよ。
中原:時系列がね、複雑。
松本:年表にしたら分かりやすいと思うんですけど、4人いるから4通りの話が飛んできて複雑に。まとめるの、なんとかよろしくお願いします(笑)。
LAMP IN TERREN Photo by Yosuke Kamiyama
――了解です(笑)。でも、入れ違ったりはしながらも結局この4人に着地したっていうのは面白いですね。
松本:ですね。メジャーデビュー後に意味わかんない感じだとは思うんですけど(笑)。
――そう、すごいことするもんだなって。大屋くんが戻ってくるのは前提だったんですか?
松本:会社との兼ね合いもあったので……やっぱり結構無理はあるじゃないですか。……正直な話をすると、真ちゃんは技術面でもブランクがあり過ぎるということもそうだし、どこまで話していいのか分からないですけど、給料面の話にもなってくるし。会社からも「LAMP IN TERRENとして大丈夫か?」っていう冷静な目で判断してもらっていた部分と、僕たちの気持ち優先だった部分と2個あって。それで話し合って、自分たちもすごく冷静に考えた結論だったんですよね。やっぱり真ちゃんじゃなきゃダメだし、このバンドは最初っからもう欠けてる状態でデビューしちゃったバンドだと思っていて。やっている側としては、“真ちゃんがいなくなってる”っていう状態でデビューしたっていう感覚が、特に僕はものすごく強くて、その穴を埋めるようにがむしゃらにやってた部分もあったし。(大屋が)いて自然な状態に戻ったんですよね、今だから言える話なんですけど。
――なるほど。
松本:人間関係的にもすごくバランスのとれた状態というか。今はバンドをやっているっていう感覚がより強いんですよね、僕は。
中原:長崎時代に、この3人と当時のドラムとの4人でやっていた、というところから始まっているので、やっぱり4人組のバンドなんだっていう。真ちゃんはそのときからやっているメンバーだし、大喜と会ってからも5年くらいにはなるし、本当に落ち着いた感じ。この4人でやっているっていうのが、やっぱりしっくりきますね。
大屋:僕は僕で3人時代のLAMP IN TERRENを客として観てたので。客として観る分にはすごくカッコ良くて、これも一つの完成系だなとも思っていて。そのときぐらいから(バンドに)戻るっていう話が出てたから、“果たしてこの3人の完成された中に俺が入って、それは良くなるのか?”みたいな、葛藤や疑念みたいなものも浮かんできて、そこは戦うところだったんですけど。
――でも「やりたい」とは思いつつ?
大屋:そうですね。4人いたときのビジョンやイメージみたいなものが頭の中にあったりもするので、ステージに3人で立ってても「ギターがいたらどうなるんだろうな?」とか、音源も明らかに3人じゃないような音源だったので、ライヴでやっぱり欠ける部分っていうのはあって。そこを補うものがあれば良いのにな……と思いながら、僕と大はすれ違ってたんです。
松本:そうですね。「戻ってきてほしいな」「戻りたいな」っていうすれ違いのまま3年間過ごしてました。
――その間どちらかから復帰の話題に触れることは無かったんですか?
松本:無かったっすねぇ。「真ちゃん最近何やってんの? ……そっか、俺はこんな感じ」……しかない、みたいな。
――「最近調子良いねぇ」とか。
松本:「そんなことねぇよ、こっちはいっぱいいっぱいで、ギター足りねえんだ」みたいな(笑)。
――めちゃめちゃ惜しいところまでいってるじゃないですか(笑)。
松本:そう、スレスレですれ違ってました。
川口:「好き」って言えなかったみたいな(一同笑)。
中原:中学生の探り合いの恋愛みたいな。
松本:ニヤニヤしながら言うな、お前。こっちは恥ずかしいんだ(笑)。
川口:恋愛に置き換えると超面白いじゃないですか(一同笑)。
――確かに、当事者以外からすると「なにやってんだ?」ってなります。で、結局告白したと。
川口:俺らには結果を出してから連絡してきたんですよ。
松本:1st(『silver lining』)のレコーディングが終わった瞬間に、「もう無理!」ってなったんです。これはライヴでの再現がまずできない、と。
――自分の作りたい曲は3ピースでは再現しきれない曲だったと。
松本:ですね。まず僕は音源を作るっていうことが何よりも楽しくてやっているし――最近は少しずつ感覚も変わりつつありますけど――それは最低限、バンドとして鳴らせるものであるべきっていう……バンドで出来ないものはやらない、みたいな感覚があるし、音源を妥協せずにライヴでも再現したい、どっちもちゃんとできるバンドでありたいっていう。その理念が壊れると思ったんですよね。……もう、上京してからずっと3人でライヴやってきたんですけど、僕の左側には真ちゃんがいたんですよ。実際にはいなかったけど頭の中では鳴ってるし、曲作ってるときも真ちゃんだったらどう弾くのかな?とか色々考えながらギターのフレーズも考えてたんですよ。そのバランスが崩れたと思ったときに、わがままを言うラインを超えたというか、これは言わなきゃダメだって、自分で自分の背中を押したんですよね。
LAMP IN TERREN Photo by Yosuke Kamiyama
――それが1stを作り終えたときで。2nd(『LIFE PROBE』)も、さほど間が無くリリースされましたけど、そのあたりがまさに復帰するかどうかの渦中だったんでしょうか。
松本:あぁ、そんときは(大屋は)もうレコーディングスタジオにずっといました。「multiverse」っていう曲はもう全員で、4人で歌ってます。
中原:実は入ってるんですよ。
松本:[Special Thanks]のところに名前も載ってますしね。この頃にはもう完全に戻ってくるつもりでやっていたので、ギターのフレーズなんかも相談しながらやっていたりしてました。……だから、戻ってきてもらえて……良かった(照笑)。
――結局そこが大事ですよね。中原くんは「戻ってきてもらおうと思う」っていう話があったときはどう思いました?
中原:やっぱりギターは欲しいなっていう話は常々していたので。真ちゃんじゃない別のギタリストとスタジオに入ってみたりもしていたんですよね。でもやっぱり何か違うな、真ちゃんに戻ってきてほしいなって俺は思ってたんです。でもあんま言えねぇしな……って、大と同じような感じで。だから大から「戻ってもらおうと思う、真ちゃんも戻って来たいって言ってる」って聞いたときはすごい嬉しくて。
松本:すっげえテンション高かったもん。
中原:うん、高かった。今でもその瞬間覚えてるんですよ。やっとしっくりくる形になれると思った瞬間、とにかく嬉しかったんです。真ちゃんは不安に思う部分もいっぱいあっただろうけど、僕個人の気持ちとしてはもうそれが第一にありました。
――川口くんはどうでしょう?
川口:そうですね……本当に正直に話すと、(自分以外の3人は)オリジナルじゃないですか、完全に。で、俺だけオリジナルじゃないんですよ。逆にそこは大丈夫なのか?って。「ストーリー的に3対1か? ほぉ~これは勝てんぞ」っていう(笑)。
松本:ちょっと捻くれてたもんね(笑)。
川口:「……前のドラム呼べば?」(一同笑)。っていうのはあったんですけど、実際に「入れる」って大が決めて連絡があったときは特に断ることも無く、“まぁやってみっか!”っていう。真ちゃんとは一回東京で加入前に飲んでるんで、そこで一応真ちゃんっていう人間をなんとなく理解してて……なんか健仁みたいなのがもう一人増えてくるんやろなぁみたいな感じで(一同笑)。
大屋:えぇ~……?
川口:でも面白そうだなと思ってて。地元も一緒だしなんとかなるかみたいな。やってみたら全然普通にできたし。
松本:僕からすると、その時点では長崎でやってた頃よりも、大喜とやっている時間の方が長かったんですよ。だからオリジナルとかいうよりは……大喜が入ってからバンド名もちゃんと決めたし、大喜が入ってから自分はミュージシャンになれたと思うし、大喜のおかげで今の自分があって。ここにいる全員の力で今バンドが存続しているという認識はすごくあったので、「オリジナルじゃないけど、もはやお前はオリジナルだぜ」みたいな。
川口:ヴェルタースオリジナル的な、なぜなら特別な存在だから……っていう(笑)。でも松本くんの取った行動は……
松本:おい、ちょっと距離置くな、お前!(笑)
川口:(笑)。大の取った行動は、正しい決断だったと思います。
――傍から観ていてもどんどんしっくりきてますよね。
松本:ありがとうございます。すごい偉そうな話になっちゃいますけど、しっくりきて当り前だろうと思ってやってたんですよ。元々自分がずっと想像していたギタリストだし、もともと4人でステージに立つ想像で曲を書いてたし。僕の鳴らした音楽を好きって言ってくれる人が、「違う」って思うわけがない!って思ってました、最初から。音源が好きって言ってくれるということは、ライヴでそれが100%再現可能になるわけですし、完成系を歌えるのは自分もものすごく自由だし。ここから鍛えていくんだ、成長していくんだっていうことが自然な発想として芽生えてますね。
中原:真ちゃんが馴染んできたっていうのもあるけど、メンバーそれぞれも4人になったことで意識が変わって、それが上手く溶け合ってきたみたいな。フレーズ自体に変わりはないんですけど、見せ方みたいな部分は大きく変わりましたね。いま3人の頃のライヴを観返すと「俺のスペースこんなにあったんだ」「こんないらねえわ」って思うんですけど(笑)。4人の方が魅せやすいなっていうのは最近思ってて、俺一人だと迫力が足りないとか、物足りなさがある気がするんですけど、4人だと両サイドからボンッと行ける。真ちゃんの動きを見て「俺はこう動こう」とか、遊べるようにもなったというか。
――そんな前3人を後ろから観ていて感じる部分はありますか?
川口:前に何人いるかっていうより、やっぱり自分の前にボーカルがいるっていうのが不思議な感覚というか。今までは自分の斜め前に大と健仁がいたわけで。でも元々俺は、大はサイドで歌うタイプじゃないって思ってたんですよ。センターの人だと。
――わかります。
川口:だから前に大がいるのが普通で、ただ……お客さんからは俺が見えなくなるなぁと(一同笑)。でも実際、ドラマーからの景色って、あそこからしか観れないじゃないですか。それこそヴェルタースオリジナル的な景色なんですよ。
LAMP IN TERREN Photo by Yosuke Kamiyama
――だいぶ擦りますねぇ(笑)。ということで、バンドの作品としては4人になって初の、そしてLAMP IN TERRENとしても初のシングル「innocence/キャラバン」がリリースされます。聴かせていただきましたけど、なんというか……今までのテレンの曲ってキャッチーではなかったと思うんですね。
松本:あぁ、はい。最近言うキャッチーでは100%ないですね。
――と、捉えてたんですけど、今作は表題の2曲ともタイプは違えどキャッチーに仕上がったなと思うんです。でもちゃんとテレンらしさも出ていて。
松本:お、そうですか? 良かった。僕としてはどっちも大事な曲になりましたね。もともと2ndまでは僕は自分の土台をつくるもの、核をはっきりさせたいと探っていた時期なんですけど、ここから開いていくっていうか。音楽的なところよりも、僕は精神的に核を作りたかったんですけど、そこからやっと「自分たちはバンドで歌をやってるんだ」って自信を持って言えるようになって、初めて音楽的な部分に踏み出せた。だから今はもう音楽的にも色んなものをやってみたいなって思うようになっていて。ダークな曲もカッコいい曲も優しい曲も、マルチに鳴らせるバンドになりたい、そのすべてが良い曲でありたいと思うんです。歌詞の内容としても意志の強いものにできたというか、正直にできて、その踏み出すきっかけとなった曲だと思います。キャラバンの方はバンドの根幹で。気づいたらそうなってたという感じなんですけど……だから1stシングルに自分たちが新しく開くところと、自分たちが絶対に忘れないところを、2つともちゃんと両極端に置くことが出来たっていうことは、自分の中ですごく大きいです。
――キャラバンは確かに「バンド」の曲ですね。
松本:そう、気付いたらなってました。前向きで。
――ここまで前向きな曲って今まで無いですよね?
松本:今までは結構なんか……儚げに進んで行く感じのバンドで(笑)。
中原:「ワンダーランド」なんかはわりと。
松本:でもあれもさ、「変わってしまうのが分かってる、だから行くんだよ」みたいなところがある。
中原:あぁ(笑)。ちょっと影がある感じだ。あからさまに行こうぜ!みたいな曲は……
松本:無かったですね。
――それができたっていうのはやっぱり「一歩踏み出せた感」が作用しているんでしょうか。
松本:個人的にはすごく正直になれた、そこが大きいのかもしれないです。……素直に、もっとたくさんの人に音楽を聴いてもらいたいって思えるようになったんですよ。前まではそれを隠し気味というか、「分かってくれる奴だけ聴けば良いよ」みたいに斜に構えた部分っていうのが少なからずあったんですけど。それが……なんだろう、「好き」って言ってくれるたくさんの人と音楽を共有したいし、こうやって音楽を作ったものを「良い」って言ってくれるみんながいるからこそ、それを誇れる自分たちでいたいなと思うようになってきて。純粋にミュージシャンとしてたくさんの人に聴いてもらいたい、観られるんだったらカッコ良いバンドでありたい、お客さんが誇れるような曲を届けたい、どこまでも一緒に行きたいとか、色々な感覚があって。その表れなのかもしれないですけど、すごく素直に言えるようになったんです。やっと自分にしかないものを認められるキッカケを手に入れたみたいな部分はあって。今までやってきたことが間違ってたなんて一つも思わないですけど――やっとLAMP IN TERRENの一員の松本大として、歌を歌うことができるようになったっていう風に思ってます。
――そんな松本くんの変化も含め、今回の2曲での変化はほかのメンバーから見てどうですか?
中原:んー、でもやっぱり「innocence」は特に今までと肌色が違ったと思って。デモのクオリティがめちゃめちゃ高かったんですよ。単純にDTMの知識と技術がどんどん付いてきてっていうこともあって、表現したかったものをちゃんと表現できるようになったから、すごくキャッチーなものになっていったんだろうとも思うし、見据える方向がしっかりしたデモが送られてくるようになったからこっちも想像しやすかったし、「すげぇ曲になるぞ」っていう気はすごくしました。さっき「キャッチーだ」って言っていただきましたけど、僕らは「みんなで歌をやるんだ」っていう意識があって、各パートがわかりやすくフレーズで歌ってる、みたいな曲だと思うんですよね。歌うようなフレーズを弾いてるから、ライヴで初めて聴いても「キャラバン」をキャッチーに思ってもらえるようになったんじゃないかと思います。
――それは元々そういうやり方をしていたものの純度が増しているんですか。
中原:そうですね。一個の歌っていうものに(それぞれが)向けていくような演奏をしてたんですけど、「俺も歌っちゃうよ」「みんなで歌って、それが合わさって一つの歌になればいいじゃん」みたいな。元々あった感覚がもう1ランク上に行けたというか。さっきもスタジオで練習しながら、面白いな、俺歌えてるなって思ってましたし(笑)。
LAMP IN TERREN Photo by Yosuke Kamiyama
――そういった面でも一歩先に行けたということですよね。それに今作はライヴで観るテレンの熱や荒々しさも、今まで以上にギュッとパッケージされてる気がします。
松本:今まで目を向けられなかった部分というか、単純に知識不足なんですけど、コードの響きひとつ、バンドっていうものを構成する音の素材という部分に、僕自身ものすごく今回はこだわっていて。やっぱりバンド全員が「歌」として機能する、1個のメロディに対してそれぞれの楽器が意味を持つ、5角形みたいな感じなんですよ。歌、ピアノ、ギター、ベース、ドラムっていう。この曲はこうじゃなきゃっていうのが、自分で思うだけじゃなく呼ばれる方向に行けるというか。
――曲としての正解の方向。
松本:そうですね、模索してました。この曲はこうなりたがっている、比喩で言うとそんな感じで。そこの変化は大きかったです。それぞれのパートの音だけを聴いたら意味の分からないコードだったりするんですけど、合わさると気持ちよく響くような。そこも含めて少し開けたシングルになったと思います。
――音もそうだし、気持ちの面も含めて風通しの良くなった作品ということでしょうね。そしてリリース後にはツアーも待っています。そこでも新たに開けていく部分は多いのではないかと思うのですが、各自の意気込みはどうですか?
大屋:バンドとして、歌が中心という話もありましたけど、バンドメンバー4人それぞれがそこに込めた熱や伝えたいことが、ワンマンの長い尺で全力を出し切るライヴをすれば絶対に伝わると思うんです。だからとにかく全力で挑みたいですね。
中原:『GREEN CARAVAN TOUR』、みんなで行進するような、みんなで「行こうぜ」っていうようなツアータイトルなので、本当にその通りになればいいなと思って。はじめて僕らのライヴを観に来るお客さんも、今まで来てくれてた人も、色んな気持ちを持って集まってくる人たちが僕らのライヴを観て、それがどんなライヴになるのかを感じてほしいなと思うんですよね。で、その気持ちをもって日常へ向かっていけるようなライヴになればいいなと。あとは、4人になって2回目のツアーでどれだけ僕らがその間に上がっていけたのか、その表情の変化とか、どんなライヴをするようになったんだ?とか、そこも観てもらいたいなと思います。
川口:ライヴに対するスタンスみたいなものはあんまり変えたくないタイプなんですけど――ライヴ自体、楽器を鳴らしてはいますけど、一個の人生においての時間だと捉えていて。今回2回目のワンマンツアーで、だからより緊張感をもって、強い意気込みと気持ちでいけたらいいなと。後悔しないように。ライヴをしようっていうより、その時間を生きようっていう感じっす。
松本:かっこいい!
川口:そう、俺あんまりライヴをね、“音楽! 音楽を楽しもうぜ! ”っていう感覚じゃないんですよね。ライフタイム的な……ヴェルタースオリジナル的な……(笑)。最後は松本くんが締めてくれますんで。
松本:大層なことはあまり考えていないんですけど、ただバンドとしてこれから……なんか何回も「これから」って言ってる気がしますけど、ようやくバンドとして、この音楽というもので生きていくという心の準備が出来た気がしてるんです。人に届けて音を鳴らしてみんなで共有するっていう、今まではそこに目を向けられなかったんですよね、僕は。自分のためだけにやってたみたいな部分もあって。……聴いてもらって初めて音楽は成立すると思うし、僕が歌って初めて成立するものもあると思うんですよ。だから「ありがとう」とか言ってもらえたりするんですけど、「いやいや、こちらこそありがとうなんだよ」って。だからこそ、自分たちが本当にお客さんがいないころからやっていた原点の下北沢から始めようっていう話になったし、そういうところをちゃんと一個ずつ周っていって。メンバーだけじゃない来てくれるリスナー、ファンのみんなも含めて僕は「団体」――ひとつのキャラバンだと思ってて……これでどこまでも大きい光になるんだよっていう。みんなで集まって自分たちでどんどん大きくしていこう、そのために全力のものを届けて聴いてもらって、また会うために頑張っていこうぜお互いに!みたいな、そうなれればいいなと思ってます。
――前回のファイナルで、松本くんは「付いて来いとは言えないんだ、でも僕らのそばにいてくれるかぎりはずっと音楽を鳴らし続けるんだ」っていうMCをしてたじゃないですか。
松本:はい。
――そこの姿勢は変わらず?
松本:変わらずですね……もうちょっとしたら変わるかもしれないけど……リーダーシップみたいなもの、欲しいっすね(笑)。あったら良いなとは思うんです。そのうち出てくるのかもしれないし、このスタンスは変わらないのかもしれないけど、今はみんなで旅をしているいう感覚はすごくあります。
――その旅の果てに何があるのかは、まだ分からないけど。
松本:ね! 分からないですけど、楽しみです。やっと10ページ目ぐらいですから。
撮影=上山陽介 インタビュー・文=風間大洋
LAMP IN TERREN Photo by Yosuke Kamiyama
『GREEN CARAVAN TOUR』ツアーファイナル
10月23日(日) [長崎]長崎DRUM Be-7 問:キョードー西日本 092-714-0159
○ファーストシングル「innocence / キャラバン」CD封入先行(シリアルナンバー入り):5月8日(土)10:00~
○
6月18日(土) [北海道]札幌 COLONY 問:MOUNT ALIVE 011-623-5555
6月26日(日) [宮 城]仙台 LIVE HOUSE enn 3rd 問:GIP 022-222-9999
7月 2日(土) [広 島]広島 CAVE-BE 問:夢番地 082-249-3571
7月 3日(日) [福 岡]福岡 Queblick 問:キョードー西日本 092-714-0159
7月 9日(土) [大 阪]梅田 CLUB QUATTRO 問:キョードーインフォメーション0570-200-888
7月10日(金) [愛 知]名古屋 CLUB QUATTRO 問:サンデーフォークプロモーション052-320-9100
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初回限定盤(AZZS-45):CD+DVD ¥1,800(tax out)
通常盤(AZCS-2051) :CD ¥1,200(tax out)
M1:innocence(劇場第2部「亜人 -衝突-」主題歌)
M2:キャラバン
M3:とある木洩れ陽より
「THE DOCUMENTARY MOVIE OF THE FIRST ONE MAN TOUR “BLUESYARD ~landing probe tour 2015~”」
2015年に行われた1stワンマンツアー「BLUESYARD~landing probe tour 2015~」に密着した約1時間のツアードキュメンタリー映像
トレイラー映像URL:https://youtu.be/Kb-2xtMd19g
タワーレコードオリジナル特典:オリジナルロゴステッカー タワーレコードver.
その他CDショップ特典:オリジナルロゴステッカー