3年連続でエリザベートを演じる蘭乃はなが、2016年版『エリザベート』への意気込みを語る!
-
ポスト -
シェア - 送る
『エリザベート』タイトルロールをWキャストの一人として演じる蘭乃はな
2015年にキャスト、舞台美術、衣装を一新して注目を集めたウィーン発の名作ミュージカル『エリザベート』が一部新キャストを迎え、全国公演として再演される。19世紀末のウィーンを舞台に、ハプスブルク帝国最後の皇后エリザベートと黄泉の帝王”トート=死”との禁じられた愛を描いた物語。タイトルロールを花總まりと蘭乃はな、トート役を城田優と井上芳雄、狂言回しのルキーニ役を山崎育三郎と本作より初登場の成河がそれぞれダブルキャストで演じる。元宝塚歌劇団花組トップ娘役で2014年の退団公演を含め、3年連続で同役に挑む蘭乃はなが合同取材会で、作品の魅力や意気込みについて語った。
●「『自分を愛せているか』と自問する、エリザベートの魂を表現したい」(蘭乃)
--宝塚版と東宝版の『エリザベート』を経験して感じた一番の違いは?
やはり、相手役が男役の方ではなく本物の男性という点でしょうか(笑)。宝塚版では副題に「愛と死の輪舞(ロンド)」とあるように、トートとエリザベートの愛の物語が主軸になっていますが、東宝版ではエリザベートという一人の女性がいかに魂の自由を獲得していくかという部分がフィーチャーされている、そこが大きな違いだと思います。
--昨年の東宝版では、花總まりさんとのダブルキャストでも話題を集めました。
私は、花總さんが宝塚歌劇団宙組公演『エリザベート』でタイトルロールを演じている姿を観て憧れて、宝塚入団を決意しました。自分にとってはもちろん、他の方にとっても本当に偉大なレジェンドだと思っているので。やはり、その方とダブルキャストを務めることはとてもプレッシャーに感じました。考えれば考えるほど、自分を否定することに繋がってしまうんですけれども…。ではなぜ、自分が呼ばれたのかを考えると、蘭乃はなのエリザベートを自分の解釈で演じることが求められているのだろうと。エリザベートは何を求め、どう生きたのか。私の肉体を通して彼女の魂をお客様に味わっていただくことが、私のやるべきことだと思い至りました。
蘭乃はな
--何を求めていたのか…という部分で、見えてきた答えのようなものはありますか。
昨年は自分の出番が大千秋楽の前日に終わったので、大千秋楽を客席で拝見しました。何か自分のエリザベートに足りないものはないか、作品の全体像を観ることで自分が何を思うのかを確かめたくて。すると、プロローグの場面でもう答えが出てしまいました(笑)。冒頭でゾンビたちがエリザベートに問いかける「一人でさまよい、何を求めていた?」という歌詞を聞いた瞬間に「エリザベートは愛を求めていたんだ!」と思って、それも一般的な愛ではなく、これはこの一年間で私が温めてきた思いなんですが…。エリザベートは自分自身を愛することがずっとできなくて、ようやく愛する準備ができたから最後はああいう結末に結び付いたのではないかと。同時にそれは、人類共通のテーマだろうとも思いました。「自分を愛せているか」ということは、普段意識的に考えなくても、そういう思いは誰の心にも潜在的に宿っていて、だからこそ多くの方の心に響く作品になっているのではないのかと。3年目にして行き着いた自らのテーマを、今年は掘り下げていきたいです。
--大抜擢に応えた昨年を振り替えると、無我夢中という心境でしたか?
振り返ると、エリザベートの心境そのままだったなと。自己否定という精神的な重圧と肉体的な過酷さとのせめぎあいの中でずっと演じてきたので。きっと今年も大変な日々になることに変わりはないと思います。ただひとつ、昨年とは役への向き合い方が変わってきそうなので、そこは自分でも楽しみですね。
蘭乃はな
--改めて、エリザベートとはどういう女性だと?
「闘う女性」と言ってしまうのは一番簡単なことだとは思うんですが、では何と闘っているのか。すごく表面的な捉え方をすると嫁姑問題、夫婦間の問題、自分の子供と向き合えないことなど、そういう部分でも共感してもらえるところはたくさんあると思います。でも、その根本にあるのが「自分を愛せない」という思いだと、今の私は思っているので。どういう女性かと、あえて言葉にするならば、誰もが潜在的に抱えている「自分を愛せているか」という思いを意識的に捉えている人だと思います。
●「静寂の城田トート、情熱の井上トート。真逆の個性とギャップが魅力です」(蘭乃)
--花總まりさんとの印象的なエピソードは。
やはり花總さんが、ご自身のエリザベートを作っていく過程を間近で拝見できたことが、一番の学びでした。小返し(一部分を繰り返して稽古すること)の稽古でも、「今回はこうやろう」と時々で変化させても役柄としての軸が絶対にブレない。その積み重ねが確固とした役を作り上げているのだなと体感できたので。憧れて尊敬している役者さんの稽古を同じ空間で拝見できるのは、すごく糧になると思いました。
蘭乃はな
--Wキャストのトートについてはいかがですか。城田優さん、井上芳雄さんと真逆の個性が印象的です。
そうですね、城田さんは稽古場で小池先生に注意されるほど、賑やかな方です(笑)。でもいざトートを演じると”静”を感じさせる。静寂の闇の中から現れるトートには、思わず引きずり込まれそうになりますが、いやいやダメダメと踏みとどまる感じ。対する井上さんは、お稽古場でもお兄さん的立場ですごく寡黙。それが演じている最中は燃え盛る炎のようで、すごく激しく強く迫られるので、同じ力で反発してしまうという感じです。お二人とも個性は真逆ですし、普段とのギャップがありすぎます(笑)。
蘭乃はな
--今年のツアーでは退団後初となる関西公演も含まれます。改めてお客様にメッセージを。
宝塚版で演じたエリザベートを含め、3年連続でエリザベートを演じさせていただきます。よりいっそう深く役柄と歌唱に向き合えるよう日々精進し、エリザベートとしても女優蘭乃はなとしても、進化したものをお届けしたいと思います。
蘭乃はな
撮影・取材=石橋法子
◎一般発売:2016年4月23日(土)
■2016年6月28日(火)~7月26日(火)
■会場:帝国劇場
http://www.tohostage.com/elisabeth/
◎一般発売:2016年6月11日(土)10:00~
■2016年8月6日(土)~9月4日(日)
■会場:博多座
◎一般発売:2016年7月9日(土)10:00~
■日時:2016年9月11日(日)~9月30日(金)
■会場:梅田芸術劇場メインホール
http://www.umegei.com/elisabeth2016/
◎一般発売:2016年7月23日(土)10:00~
■日時:2016年10月8日(土)~10月23日(日)
■会場:中日劇場
http://www.chunichi-theatre.com/presents/2016/10/10gatsu1.html