明治座『御宿かわせみ』で本格時代劇に挑む! 柳下大インタビュー
2016.5.15
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明治座で5月3日から『御宿かわせみ』が公演中だ。江戸の大川端にある旅籠を舞台に、人情と恋模様と捕物の面白さが詰まった、小説もドラマも大ヒットした作品の舞台版で、主人公の武家の次男坊・神林東吾には中村橋之助、旅籠の女主人るいに高島礼子が扮して、江戸の情緒をたっぷりと盛り込んだ舞台となっている、この作品で、かわせみの宿泊客で原作でも人気のある登場人物、天野宗太郎に扮しているのが若手演技派として活躍中の柳下大。今年2月に自ら企画した舞台『オーファンズ』の好評を受けて、今回は本格時代劇への挑戦となる。
その作品への抱負などを語ってもらった演劇ぶっく6月号の記事に新たに付け加えて、「えんぶチャート」3年連続10位以内へのランクインの感慨なども話してもらった。
神林東吾が事件を解決する手助けを
神林東吾が事件を解決する手助けを
──柳下さんは明治座に出演するのは初めてだそうですね?
そうなんです。D-BOYSのメンバーたちが色々な公演で出させてもらっていたので、客席には何度も来たことがあるのですが。
──その明治座で本格時代劇という話を聞いて?
びっくりしましたが、もし明治座さんに出られるのならぜひ時代劇でと思っていたので、実現したのがとても嬉しいです。それに今回、中村橋之助さんをはじめ先輩の俳優さんが沢山いらっしゃるので、これまで同世代との舞台が多かった僕としては、年上の役者さんたちの芝居を学べるいい機会だと思っています。
──長崎帰りのお医者さんの役だそうですが?
天野宗太郎という人で、話の最初は、「かわせみ」の宿泊客で釣りが好きという設定で出てきます。若い時にちょっとやんちゃしてて、親から見放されて長崎に行って、医学の修業をして江戸に戻ってきた。「かわせみ」で橋之助さん扮する神林東吾と知り合って、事件解決の手助けをすることになります。
──橋之助さんとの場面が多そうですから、色々吸収できそうですね?
橋之助さんは知識がすごく多い方で、この時代に関することや時代劇に必要な所作とか作法とか、そういうものを教えてくださるんです。どんどん吸収したいし、ほかにもベテランの俳優さんたちが沢山出ていらっしゃるので、どんなふうに役を作っていくのか身近で見られるのが有り難いです。実は演出のG2さんも初めてという初めて尽くしで、(高橋)和也さんが稽古場にいらっしゃると、めちゃ安心します(笑)。『オーファンズ』の共演で勝手に身内感覚になっているので(笑)。
──橋之助さんもとても優しい方だそうですね。
ムードメーカーと言ったら失礼なんですが、稽古場をいい雰囲気にして、みんなが居やすいように気遣ってくださるんです。
──慣れなくて戸惑うことなどありますか?
着物もですし、動きもです。初めての立ち稽古では挙動不審になってました(笑)。
──同じ時代劇でも『真田十勇士』はわりとカジュアルな衣裳でしたからね。こういう江戸情緒の舞台は佇まいが大事なのかなと?
そう思います。明治座で和物でこういうキャストの方々の中で、どうやって自分を出していけばいいのか、それが今の課題です。それに原作ファンのお客様もいらっしゃるので、天野宗太郎という役のイメージを壊さないように。その上で自分の色を出していければ、と思っています。
『オーファンズ』で改めてスタートラインに
『オーファンズ』で改めてスタートラインに
──それにしても今回は、『オーファンズ』から考えると180度違う役ですね。
フィラデルフィアで獣のように生きてましたから(笑)。和也さんも今回は同心役でハロルドとは大違いです(笑)。
──『オーファンズ』は、柳下さんが自分で企画して宮田慶子さんにオファーした作品でしたね。好評で収穫が多かったのでは?
収穫というより、改めてスタートラインに立ったという気持ちです。宮田さんにも厳しく鍛えていただいて、稽古はきつかったけど嫌ではなかったし、逃げたいとも思わなかった。これを超えないと自分は変わらないと思いましたから。あれを経験して役者としての考え方とか見方が変わったと思います。
──3人芝居でしたが、平埜生成さん、高橋和也さんとのチームワークもよくて、あの3人だからできた作品なのでしょうね。
宮田さんが素敵なことを言ってくださったんです。たまに演劇の神様が降りてくることがあって、この作品ではそれが見えたと。
──柳下さんは、ここ数年つかさんの作品に出て大きく成長しましたが、また新たな表現に出会ったという感じですか?
そうですね。リアルな会話劇というものが初めてでしたから。難しかったけど新鮮でしたし、宮田さんに一から教えてもらいました。
──自分を晒すということではどちらも一緒でしょうが、広げて表現するのと閉じ込めて表現するくらい違いますね?
『オーファンズ』のトリートはとにかく内にためてためて、出さないで、とにかくそこにいるという。そこがやっててつらかったです。
──その「ため」が最後のシーンで見事に想いとなって噴出していました。
そんなに全力で演じたのに、もう気持ちはすっかり『御宿かわせみ』になっていて(笑)、自分でも不思議なんですが。今はこの、橋之助さんや高島さんを中心にした素敵なカンパニーの中で、天野宗太郎という人を楽しみたいと思っています。
「俺もいるよ」という思いで、生きていた。
「俺もいるよ」という思いで、生きていた。
──ところで、今年もえんぶチャートの10位にランクインしました。3年連続10位以内というのは快挙ですね。
本当に支持してくださった皆さんのおかげです。まさか今回は入れるとは思わなかったです。2015年の後半は怪我で舞台を休んでいましたから。ただ、前半に『真田十勇士』と『いつも心に太陽を』という素晴らしい作品に出させてもらって、それが大きかったと思います。
──どちらも当たり役で高い評価を受けましたね。そういう舞台で見せる柳下さんの強い演劇愛が、読者にも伝わったのだと思います。
ずっと1つ1つの舞台でしっかりお客さんを楽しませたいと思っていましたし、そういう自分を観ていてくれていた方たちがいた。それが嬉しいです。これからも自分を信じてできることをやっていこう、1つ1つの作品で恩返ししていこうという思いがあります。
──休んでいる半年間はやはり苦しかったでしょうね?
また舞台に立てるかどうかもわからない状態で、不安でいっぱいでした。でも幸せなことにまた舞台に立てるようになった。だったら今の自分でできるようなものではなく、難しいものに挑戦しようと『オーファンズ』を選びました。稽古している期間は、半年間休んでいたことを取り返そうと必死だったし、「俺もいるよ」という思いで、生きていました。
──その思いが実を結んで、『オーファンズ』は大きなステップになりましたね。そんな柳下さんがこれからめざすところは?
色々な舞台にたくさん出たいです。10月には『Dステ19th お気に召すまま』があるのですが、初めてのシェイクスピアですし、青木豪さんの演出も初めてですから、また一から鍛えていただこうと思っています。
──まさにチャレンジですね。
ある意味で今年こそ勝負の年というか、2015年のランクインは、『真田十勇士』と『いつも心に太陽を』という作品の力が大きかったと思っているんです。だからこそ今年は俳優としての自分の力だけでランクインできるようになりたいと思っています。
──3年連続10位以内という快挙を果たして、いつかは1位へという思いもあるでしょうね?
やはり素晴らしい方たちが1位になっていらっしゃるので、憧れです。すぐにではなくても、いつかはそこへ行きたいし、目標です。そのためにもできるだけ多く板の上に立ちたい。舞台に立ち続けたいです。
やなぎしたとも○1988年生まれ、神奈川県出身。06年、俳優デビュー。以降、映像や舞台で活躍中。最近の出演作品は、ドラマはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』BSスカパー!藤沢周平シリーズ『果し合い』(監督:杉田成道)など、舞台『熱海殺人事件 Battle Royal』ブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』『真田十勇士』(13,15)『いつも心に太陽を』(主演)『オーファンズ』など。秋には本多劇場で上演される「Dステ19thお気に召すまま」(演出:青木豪)にオーランドー役での出演が控えている。また6月27日にパルコ劇場でリーディングドラマ『ラヴ・レターズ LOVE LETTERS ~2016 The Climax Special~』に出演予定。
『御宿かわせみ』の舞台レビューはこちら
http://blog.livedoor.jp/enbublog-journal/archives/1861358.html
〈公演情報〉
明治座五月公演
『御宿かわせみ』
原作◇平岩弓枝(「文春文庫」刊)
脚本・演出◇G2
出演◇中村橋之助、紺野美沙子、西村雅彦、高橋和也、柳下大、朝海ひかる、高島礼子 ほか
● 5/3~27◎明治座
〈料金〉S席(1階席・2階前方席)¥12,000 A席(2階後方席)¥8,500 B席(3階席)¥6,000(全席指定・税込)学割:各種 2割引
● 5/3~27◎明治座
〈料金〉S席(1階席・2階前方席)¥12,000 A席(2階後方席)¥8,500 B席(3階席)¥6,000(全席指定・税込)学割:各種 2割引
〈お問い合わせ〉明治座 03-3666-6666(10:00ー17:00)
【取材・文/吉田ユキ 撮影/安川啓太】