川田知子(ヴァイオリン) 女性二人で聴かせる洗練されたデュオ
-
ポスト -
シェア - 送る
川田知子(ヴァイオリン) Photo:Junichi Ohno
小林道夫、中野振一郎、福田進一、松本望といった名手との多彩な録音で知られるヴァイオリンの川田知子が、約3年ぶりに新譜を発表した。今回は「カワダ・トモコ・デュオ」というヴァイオリン・デュオ名義で、共演は会田莉凡。2010年のルーマニア国際音楽コンクールや、12年の日本音楽コンクールを制した若手実力派だ。
「レコード会社と話し合い、『今回の共演者は若手の女子にしましょう』ということになりまして。それで真っ先に思い浮かんだのが会田さんでした。また、周囲にも色々相談したのですが、皆さんから口を揃えたように『莉凡ちゃん』と勧められて(笑)。彼女は作品の理解度が早く、音楽的にも、人間的にもスケールが大きい。しかも、共演者に細かい心配りもできる。要するに、とても頭のよい方です」
収録曲は全12曲。両端には録音の機会が稀な隠れた名曲、ヴィオッティとシュポアの二重奏曲が置かれている。
「近代ヴァイオリン奏法の父の一人と称えられるヴィオッティの二重奏曲は、いずれも3楽章形式の作品。長調の伸びやかなカンタービレと、短調の憂愁に満ちた色彩のコントラストが特長です。一方、顎あての考案者として知られるシュポアもたくさん二重奏曲を書いていますが、今回は有名な第3番ではなく、重音の美しい第2楽章がとても好きなので、第2番にあえて挑戦しました。私のキャリアの出発点が1991年に優勝したシュポア国際コンクールだったこともあり、いつか必ず録音したいと思っていたのです」
この2人の作曲家の間を多彩に彩るのが、J.S.バッハ、ショパン、ブラームスなどの編曲もの。作品に応じて音色やリズムが精妙に弾き分けられているが、パートはすべて上が川田、下が会田で固定しているというから驚きだ。そうした中、川田は特に、モーツァルトの「恋とはどんなものかしら」と「私は鳥刺し」に思い入れがあるという。
「小学生の頃から、お年玉を貯めて海外の有名歌劇場の来日公演を観に行くほどオペラが大好きでした。モーツァルトのアリアや序曲は、他にも様々な編曲があるので、今後も機会があれば録音したいですね」
また、川田は『I am a Violin〜ヴァイオリン・アンソロジー〜』という、タイスからガルデルまでの作品を収録したアンソロジー(既発売の音源を使用)も同時にリリースする。
川田と会田は、6月に紀尾井ホールで行われる『心を潤すサロン楽の極み〜Part 2』(主催:特定非営利活動法人クウォーター・グッド・オフィス)でも共演する。ベテラン&若手による珠玉の室内楽で、ヴィオラの鈴木康浩、チェロの上村昇、クラリネットの吉田誠らも参加。モーツァルトやブラームスの傑作を瑞々しい音色で織り上げることだろう。なお、このコンサートの収益金は、東日本大震災の被災地への復興支援出前コンサートに充てられる。
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
第28回チャリティーコンサート
心を潤すサロン楽の極み〜Part 2〜
6/11(土)18:30 紀尾井ホール
問合せ:特定非営利活動法人クウォーター・グッド・オフィス03-3505-0343
http://www.npo-qgo.org
『恋とはどんなものかしら/カワダ・トモコ・デュオ』
マイスター・ミュージック
MM-3077
¥3000+税
5/25(水)発売
『I am a Violin〜ヴァイオリン・アンソロジー〜』
マイスター・ミュージック
MM-3078
¥2500+税
5/25(水)発売